守りと攻めの2つの戦略?状況を動かす決意で(2008/01/30)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2008.01.30-2)
今年最初の「連続集会」(1月24日、東京・友愛会館)における西岡力・救う
会常任副会長の情勢報告ををお届けします。
■守りと攻めの2つの戦略?状況を動かす決意で
西岡 拉致問題解決のための戦略が見えないとのお話がありましたが、私たちの
説明のしかたがまずいのかもしれませんが、私は戦略はあると思っています。そ
の戦略に基づいて運動方針を立ててきていると思っています。人間がすることで
すから、間違いがあるかもしれませんが、当面のことは悲観的に、中長期のこと
は楽観的に見るべきと常に思っています。
戦略のためには、まず目標が必要です。全員の帰国が目標です。私たちは「救
う会」を立上げ10年経ちましたが、「救う」ことが目標で、政府の認定、非認
定にかかわりなく、一義的には日本人の救出ですが外国人被害者も含め、「すべ
て」の被害者を救出することが目標です。政府は、すべての拉致被害者の帰国、
実行犯の引渡し、真相究明を目標にしていますので、その点では、我々が10年
やってきたことと、今の日本政府の目標は完全に一致しています。
この目標に向かってどう解決するかを考える時に戦略が必要です。二つの戦略
があると思います。第一に、防御の戦略、第二は攻撃の戦略です。防御では、全
員の帰国について日本は絶対に譲歩しないということを内外に発信し続け、それ
が実現するまで支援をしないということです。支援をしないというのは「守り」
になります。
今は、一部の人が帰ってきても全員が帰ってきていない状況です。「全員の帰
国」というのは一部の人の意思ではなく、国民全体の意思なので、政権が変わっ
てもこの戦略は絶対に変わらないということを金正日政権を初め、米国、中国、
韓国などすべての関係国に知らせることです。譲歩の余地はないということ、交
渉して足して2で割るようなことはできないということです。
これは家族にとっても若干つらい戦略です。北朝鮮が「一部の人を帰します」
と言ってくる可能性が論理的にはあります。実際に5人だけ帰ってきました。返
せば見返りに援助ということになる。しかし、昨年3月の全国幹事会で、この点
については家族会の一人ひとりに意見を聞いて、全員が帰ってこない限り政府は
一切の支援をしないという意思を内外に発信し続けるべきとの戦略を決定しまし
た。これは今実現できています。
安部政権は、6者協議の2.13合意で、核問題について北朝鮮がかなりの譲
歩をしたことに対し、日本は拉致問題が解決しない限り支援をしない方針を各国
に認めさせています。北朝鮮は、核施設の無能力化と核開発の申告を行う譲歩を
しましたが、これは拉致問題における第一次小泉訪朝の時の譲歩に似ていると思
います。北朝鮮が譲歩すると言ったことは間違いありませんが、実際にはまだ申
告をしていない。譲歩した理由は圧力です。
第二の戦略は、北朝鮮が、こちらが要求することをしなければ不利にするとい
うことです。つまり、国際社会の当たり前の要求を聞き入れなければ、無理やり
拉致した人を返さなければ不利にするということです。3年前の9月にアメリカ
が始めた金融制裁、そして日本が行った厳格な法執行はかなり効いています。北
朝鮮はそのダメージをふりのけようとしてミサイル連射や核実験をしましたが、
返って国際社会を反発させ、ダメージが強まった。その結果、昨年2月、核で譲
歩した6者合意になったのです。
この時、ダメージを与えた結果北が動いたことが証明されましたが、日本政府
は核の譲歩だけでは支援を再開できないと主張した。確かに、北朝鮮のプルトニ
ウムの原子炉は止まりました。北は、年間核爆弾2,5発分のプルトニウムを生
産し続けてきており、核危機は深刻化していました。それでも日本政府は見返り
を払わないということです。拉致問題で進展がなければ支援しないということで
す。第一の守りの戦略はまがりなりにも貫かれています。人道支援すらしていま
せん。
進展の定義は安部政権の時に決まっていて、全員の帰国を「解決」とし、その
解決に向けて北がアクションを起こすことを「進展」と決めています。
では、不利にするという面ではどうか。一昨年のミサイル連射と核実験の時、
日本は拉致も理由の一つとして制裁をかけ今も続いています。6か月単位ですか
ら、今年4月に更新されます。政府がどういう立場かは、私たちは6か月ごとに
見ることができます。今のところ、一切の譲歩をしていません。日本が制裁を解
除すれば、拉致問題が動かなくても日本が支援をする可能性があると北朝鮮に誤
解させることになります。中国やアメリカ、韓国にも誤解されることになります。
逆に我々が求めているのは、制裁を強めるべきだということです。何の罪もな
い人間をさらっておきながら帰さない。その拘留が長くなればなるほど彼らの悪
業が増えているからです。被害者の苦しみはどんどん積み重なっています。それ
に対する制裁が同じでいいのかということです。一昨年の制裁以降、北朝鮮が何
の対応もしないことを日本政府は容認していることにならないか、ということで
す。意思表示をしなくていいのか。
全員取り戻すという目標を立て、返ってこない限り支援しないという守りの戦
略と、返さないなら圧力を高めるという攻めの戦略を続けていくべきです。我々
はこのような戦略を立て、運動をしてきて、今かなりの部分が実現していると思っ
ています。しかし、まだ北朝鮮は拉致問題について誠実な対応をしていません。
気持ちは焦ります。家族の方々が、また寒い冬を過ごさせるのかという辛い思い
をさせることは、本当に痛いほど分かります。そして家族の健康の問題も出てい
ます。だから政府にもっと早く動いてほしいと皆さんが言われます。しかし、原
則を曲げてまで動いてほしいということではないのです。
政府の一部で、戦術的譲歩の議論があるという噂があります。早く動かさなけ
ればならないということで、日本は交渉する気があるということを示す何らかの
ジェスチャーを行う、戦術的に若干の融和姿勢を見せるという噂です。この噂は
間違いかもしれません。10年間の対北朝鮮の運動で、あるいは30年の拉致の
経験で、こちらが先に譲歩すれば向こうが動いてくるということはなかったので
す。それよりも、こちらが絶対に譲歩しないことが向こうの前提条件になった時
に、初めて少し降りるためにどうするかという話になります。
政府の担当者は必死で色々なシュミレーションをしておられるでしょうし、我
々には分からないことがもしかしたらあるのかもしれません。一方的な譲歩では
ないことが起きる可能性がゼロとは言いませんが、原則はまげないでほしいと思
います。我々は、北朝鮮に対し頭を下げて、一部の人でいいから何とか返してく
ださいというつもりはないということです。
守りと攻めの戦略は、福田政権でもまがりなりにも踏襲されていると思います。
追加制裁がないので言い過ぎかもしれませんが、後退はしていない。他方、自民
党の小委員会の件ですが、訪朝すると言っている人がいるということは、北朝鮮
と何らかの話をしているということです。北朝鮮が苦しくなってきて、日本の本
音の瀬踏みをし始めていることは間違いない。その日本の本音が、何人返せば制
裁が解除されるとか、大規模な支援を行うとか、そういうことについて色々なア
ドバルーンを揚げてきていることは間違いありません。
しかし、目標は全員の帰国です。何人か返せばいいという状況をこちらが作っ
てしまえば、取り返しのつかないことが起きるかもしれない。だから私は、今は
頂上が見えてきた胸突き八丁だと言っています。苦しいけれどこの道をいくしか
ない。向こうも苦しいんです。その時、日本の本音、歩留まりがどこなのか、色
々なルートで彼らは情報を収集しています。有名なテレビ・ジャーナリストが訪
朝したりするのも、日本の世論を知りたいからです。
我々にとって強力な援軍が、去年12月、韓国で出現しました。李明博政権が
2月に発足します。韓国人拉致被害者のことはこの集会でも何回も取り上げてき
ました。日本人に生まれればよかったと言う被害者家族もおられるくらいに韓国
政府は拉致問題については消極的でした。それはこの10年だけのことで、それ
までの韓国政府は世界中で一番拉致問題に積極的でした。横田めぐみさんが北朝
鮮に拉致されたという情報は、韓国から日本に提供されたものです。安明進さん
の情報ではありません。別の工作機関にいた人の情報を、韓国の情報機関にいた
人が偶然に入手したのです。そしてテロは許せないという姿勢の中で、命をかけ
て入手してくれた情報も含め提供されたのです。
当時は、正式な外交ルートで警察庁にその情報が入ったのですが、警察庁は新
潟県警に電話をすれば分かるのにその調査をしなかったのです。それで韓国側が、
あるテレビ記者にリークをしたのです。その事情については詳しく知っています。
田口八重子さん、原敕晁さんの拉致も韓国の調査によって明らかになりました。
久米裕さんや蓮池さん、地村さん、増元さんたちの拉致についても、日本が電波
を傍受しており、拉致だと分かっていたのに手を打たなかったのです。当時の警
察は、富山での拉致未遂事件の時に入手したさるぐつわや手錠の成分について、
韓国当局の協力を得て分析をしています。暗号解読も日本独自で解読できたので
はなく、協力関係があったのです。そして横田さんや、増元さん、地村さんの拉
致が明らかになりました。北朝鮮への調査力やルートを持っている韓国が、オセ
ロが白から黒に変わるように10年前に変わったのです。
李明博政権で黒から白に変わるかどうかは、2月の就任式までまだ分かりませ
ん。就任後も情報機関、外交官の中に親北派がいるので、一種の人事整理をしな
ければならない。レッドパージをきちんとしてもらわなければ情報共有もきちん
とできない。だからすぐにとはなりませんが、主力軍が戻ってきたのは確かです。
李明博氏の対北朝鮮政策には、「非核、開放、3000」という名前がついて
います。核を完全に廃棄させ、改革開放政策をとらせ、大規模な経済支援で一人
当たりGNPを3000ドルにする、というものです。北朝鮮が核を廃棄すると
か、改革開放政策をとると考えるのは甘いと韓国の保守派が批判していますが、
核を完全に廃棄しない限り大規模援助はしないという意思は確固たるものです。
大統領選挙の前日に、盧武鉉政権の国家情報院長、昔のKCIA部長が極秘で
平壌に行き、対南工作の責任者金養建統一戦線部長と会っています。その時の会
話の一部が韓国のマスコミにリークされ騒ぎになりましたが、実は10月の南北
首脳会談で韓国は様々な支援を北朝鮮に約束しています。それは核問題の解決と
は別途に高速道路の補修をするというものです。新政権になってもそれはちゃん
とやってくださいよと言われているのです。核の申告もしていないのに、進んで
いるのです。
李明博政権は、6者協議で求められている核問題を解決しない限り、大規模な
支援はしないとはっきり言っています。そこは揺らがないと思います。北朝鮮は
その姿勢を変えさせるために、今必死で工作をしています。
北朝鮮は今申告ができない。アメリカも完全な申告をしない限り援助はしない
と言っています。日本は、核だけではダメで、拉致も解決を求めています。大状
況では韓国に大きな援軍が生まれ、日本も色々な対応準備をしていると思います。
谷内外務次官自ら政権引継ぎ委員会の幹部と会われたそうです。
同時にもう一つの目標として、韓国政府も拉致問題の解決を国政の最優先課題
にするように働きかけたいというのが、我々が掲げたスローガンです。それを韓
国自身ですべきだということを、1月に韓国の家族会の方々と話をしてきました。
拉致の完全な進展がない限り、韓国政府は支援しないと李明博政権に言わせるこ
とはできないかということです。その立場を韓国が明示すれば、日本は当然支持
しますし、アメリカも支持するとなると、6者協議の北朝鮮を除く5か国のうち、
3か国が大規模支援の代わりに拉致問題の解決を求めることになります。そして
中国に対し、中国人拉致被害者もいるのだから一緒に助けようと言うこともでき
る。
10月の南北首脳会談の前に、福田総理が盧武鉉大統領に会い、金正日に会っ
たら日本人拉致問題を取り上げてくれと頼みました。実際に、話したということ
です。金正日は、「めぐみさんたちは死んだと言った」という報道が一部流れま
した。私は韓国の家族会の方々に言いました。盧武鉉大統領でさえ、頼まれれば
日本人拉致問題について言ったのに、李明博大統領が福田総理に会うとき、日朝
交渉の中で韓国人拉致問題も交渉するように韓国側が頼めば、日本は既にしても
らっているのですから、やらない筈はない。そして、拉致と核の解決なくして援
助はしないという第一の戦略について国際社会を同調させる。ずるずると引き延
ばすならば、第二の戦略であるダメージを与えること、安保理事会でより強い圧
力を検討することが視野に入ってきます。
向こうも苦しい。去年の9月以降、李明博批判をいっさいやめて、盧武鉉と同
じことをさせるような工作をしています。ブッシュ政権のラインよりももっとハー
ドルを上げるよう、韓国の家族が主体となって運動し、連携していく。韓国の家
族会は、昨年12月の国際会議に触発されて、今年6月に国際拉致解決連合の国
際会議をソウルで開きたいと言っています。安倍総理は、一昨年の政府主催の集
会の際、タイ、韓国、ルーマニアの家族と握手して写真をとってくださった。麻
生外務大臣も、高村外務大臣も外国から家族が来日したときは、会ってはげまし
てくれています。ブッシュ大統領は、アメリカ人被害者がいないのに、横田早紀
江さんに会ってくれました。日本の家族がソウルに行き、表敬したいと言えば、
会ってくれないだろうか、というようなことを今考えています。
今年は動くだろうというのではなく、動かすという決意をもって、目標と戦略
を年頭におき運動していきたいと思います。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
●福田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 福田康夫殿
●救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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今年最初の「連続集会」(1月24日、東京・友愛会館)における西岡力・救う
会常任副会長の情勢報告ををお届けします。
■守りと攻めの2つの戦略?状況を動かす決意で
西岡 拉致問題解決のための戦略が見えないとのお話がありましたが、私たちの
説明のしかたがまずいのかもしれませんが、私は戦略はあると思っています。そ
の戦略に基づいて運動方針を立ててきていると思っています。人間がすることで
すから、間違いがあるかもしれませんが、当面のことは悲観的に、中長期のこと
は楽観的に見るべきと常に思っています。
戦略のためには、まず目標が必要です。全員の帰国が目標です。私たちは「救
う会」を立上げ10年経ちましたが、「救う」ことが目標で、政府の認定、非認
定にかかわりなく、一義的には日本人の救出ですが外国人被害者も含め、「すべ
て」の被害者を救出することが目標です。政府は、すべての拉致被害者の帰国、
実行犯の引渡し、真相究明を目標にしていますので、その点では、我々が10年
やってきたことと、今の日本政府の目標は完全に一致しています。
この目標に向かってどう解決するかを考える時に戦略が必要です。二つの戦略
があると思います。第一に、防御の戦略、第二は攻撃の戦略です。防御では、全
員の帰国について日本は絶対に譲歩しないということを内外に発信し続け、それ
が実現するまで支援をしないということです。支援をしないというのは「守り」
になります。
今は、一部の人が帰ってきても全員が帰ってきていない状況です。「全員の帰
国」というのは一部の人の意思ではなく、国民全体の意思なので、政権が変わっ
てもこの戦略は絶対に変わらないということを金正日政権を初め、米国、中国、
韓国などすべての関係国に知らせることです。譲歩の余地はないということ、交
渉して足して2で割るようなことはできないということです。
これは家族にとっても若干つらい戦略です。北朝鮮が「一部の人を帰します」
と言ってくる可能性が論理的にはあります。実際に5人だけ帰ってきました。返
せば見返りに援助ということになる。しかし、昨年3月の全国幹事会で、この点
については家族会の一人ひとりに意見を聞いて、全員が帰ってこない限り政府は
一切の支援をしないという意思を内外に発信し続けるべきとの戦略を決定しまし
た。これは今実現できています。
安部政権は、6者協議の2.13合意で、核問題について北朝鮮がかなりの譲
歩をしたことに対し、日本は拉致問題が解決しない限り支援をしない方針を各国
に認めさせています。北朝鮮は、核施設の無能力化と核開発の申告を行う譲歩を
しましたが、これは拉致問題における第一次小泉訪朝の時の譲歩に似ていると思
います。北朝鮮が譲歩すると言ったことは間違いありませんが、実際にはまだ申
告をしていない。譲歩した理由は圧力です。
第二の戦略は、北朝鮮が、こちらが要求することをしなければ不利にするとい
うことです。つまり、国際社会の当たり前の要求を聞き入れなければ、無理やり
拉致した人を返さなければ不利にするということです。3年前の9月にアメリカ
が始めた金融制裁、そして日本が行った厳格な法執行はかなり効いています。北
朝鮮はそのダメージをふりのけようとしてミサイル連射や核実験をしましたが、
返って国際社会を反発させ、ダメージが強まった。その結果、昨年2月、核で譲
歩した6者合意になったのです。
この時、ダメージを与えた結果北が動いたことが証明されましたが、日本政府
は核の譲歩だけでは支援を再開できないと主張した。確かに、北朝鮮のプルトニ
ウムの原子炉は止まりました。北は、年間核爆弾2,5発分のプルトニウムを生
産し続けてきており、核危機は深刻化していました。それでも日本政府は見返り
を払わないということです。拉致問題で進展がなければ支援しないということで
す。第一の守りの戦略はまがりなりにも貫かれています。人道支援すらしていま
せん。
進展の定義は安部政権の時に決まっていて、全員の帰国を「解決」とし、その
解決に向けて北がアクションを起こすことを「進展」と決めています。
では、不利にするという面ではどうか。一昨年のミサイル連射と核実験の時、
日本は拉致も理由の一つとして制裁をかけ今も続いています。6か月単位ですか
ら、今年4月に更新されます。政府がどういう立場かは、私たちは6か月ごとに
見ることができます。今のところ、一切の譲歩をしていません。日本が制裁を解
除すれば、拉致問題が動かなくても日本が支援をする可能性があると北朝鮮に誤
解させることになります。中国やアメリカ、韓国にも誤解されることになります。
逆に我々が求めているのは、制裁を強めるべきだということです。何の罪もな
い人間をさらっておきながら帰さない。その拘留が長くなればなるほど彼らの悪
業が増えているからです。被害者の苦しみはどんどん積み重なっています。それ
に対する制裁が同じでいいのかということです。一昨年の制裁以降、北朝鮮が何
の対応もしないことを日本政府は容認していることにならないか、ということで
す。意思表示をしなくていいのか。
全員取り戻すという目標を立て、返ってこない限り支援しないという守りの戦
略と、返さないなら圧力を高めるという攻めの戦略を続けていくべきです。我々
はこのような戦略を立て、運動をしてきて、今かなりの部分が実現していると思っ
ています。しかし、まだ北朝鮮は拉致問題について誠実な対応をしていません。
気持ちは焦ります。家族の方々が、また寒い冬を過ごさせるのかという辛い思い
をさせることは、本当に痛いほど分かります。そして家族の健康の問題も出てい
ます。だから政府にもっと早く動いてほしいと皆さんが言われます。しかし、原
則を曲げてまで動いてほしいということではないのです。
政府の一部で、戦術的譲歩の議論があるという噂があります。早く動かさなけ
ればならないということで、日本は交渉する気があるということを示す何らかの
ジェスチャーを行う、戦術的に若干の融和姿勢を見せるという噂です。この噂は
間違いかもしれません。10年間の対北朝鮮の運動で、あるいは30年の拉致の
経験で、こちらが先に譲歩すれば向こうが動いてくるということはなかったので
す。それよりも、こちらが絶対に譲歩しないことが向こうの前提条件になった時
に、初めて少し降りるためにどうするかという話になります。
政府の担当者は必死で色々なシュミレーションをしておられるでしょうし、我
々には分からないことがもしかしたらあるのかもしれません。一方的な譲歩では
ないことが起きる可能性がゼロとは言いませんが、原則はまげないでほしいと思
います。我々は、北朝鮮に対し頭を下げて、一部の人でいいから何とか返してく
ださいというつもりはないということです。
守りと攻めの戦略は、福田政権でもまがりなりにも踏襲されていると思います。
追加制裁がないので言い過ぎかもしれませんが、後退はしていない。他方、自民
党の小委員会の件ですが、訪朝すると言っている人がいるということは、北朝鮮
と何らかの話をしているということです。北朝鮮が苦しくなってきて、日本の本
音の瀬踏みをし始めていることは間違いない。その日本の本音が、何人返せば制
裁が解除されるとか、大規模な支援を行うとか、そういうことについて色々なア
ドバルーンを揚げてきていることは間違いありません。
しかし、目標は全員の帰国です。何人か返せばいいという状況をこちらが作っ
てしまえば、取り返しのつかないことが起きるかもしれない。だから私は、今は
頂上が見えてきた胸突き八丁だと言っています。苦しいけれどこの道をいくしか
ない。向こうも苦しいんです。その時、日本の本音、歩留まりがどこなのか、色
々なルートで彼らは情報を収集しています。有名なテレビ・ジャーナリストが訪
朝したりするのも、日本の世論を知りたいからです。
我々にとって強力な援軍が、去年12月、韓国で出現しました。李明博政権が
2月に発足します。韓国人拉致被害者のことはこの集会でも何回も取り上げてき
ました。日本人に生まれればよかったと言う被害者家族もおられるくらいに韓国
政府は拉致問題については消極的でした。それはこの10年だけのことで、それ
までの韓国政府は世界中で一番拉致問題に積極的でした。横田めぐみさんが北朝
鮮に拉致されたという情報は、韓国から日本に提供されたものです。安明進さん
の情報ではありません。別の工作機関にいた人の情報を、韓国の情報機関にいた
人が偶然に入手したのです。そしてテロは許せないという姿勢の中で、命をかけ
て入手してくれた情報も含め提供されたのです。
当時は、正式な外交ルートで警察庁にその情報が入ったのですが、警察庁は新
潟県警に電話をすれば分かるのにその調査をしなかったのです。それで韓国側が、
あるテレビ記者にリークをしたのです。その事情については詳しく知っています。
田口八重子さん、原敕晁さんの拉致も韓国の調査によって明らかになりました。
久米裕さんや蓮池さん、地村さん、増元さんたちの拉致についても、日本が電波
を傍受しており、拉致だと分かっていたのに手を打たなかったのです。当時の警
察は、富山での拉致未遂事件の時に入手したさるぐつわや手錠の成分について、
韓国当局の協力を得て分析をしています。暗号解読も日本独自で解読できたので
はなく、協力関係があったのです。そして横田さんや、増元さん、地村さんの拉
致が明らかになりました。北朝鮮への調査力やルートを持っている韓国が、オセ
ロが白から黒に変わるように10年前に変わったのです。
李明博政権で黒から白に変わるかどうかは、2月の就任式までまだ分かりませ
ん。就任後も情報機関、外交官の中に親北派がいるので、一種の人事整理をしな
ければならない。レッドパージをきちんとしてもらわなければ情報共有もきちん
とできない。だからすぐにとはなりませんが、主力軍が戻ってきたのは確かです。
李明博氏の対北朝鮮政策には、「非核、開放、3000」という名前がついて
います。核を完全に廃棄させ、改革開放政策をとらせ、大規模な経済支援で一人
当たりGNPを3000ドルにする、というものです。北朝鮮が核を廃棄すると
か、改革開放政策をとると考えるのは甘いと韓国の保守派が批判していますが、
核を完全に廃棄しない限り大規模援助はしないという意思は確固たるものです。
大統領選挙の前日に、盧武鉉政権の国家情報院長、昔のKCIA部長が極秘で
平壌に行き、対南工作の責任者金養建統一戦線部長と会っています。その時の会
話の一部が韓国のマスコミにリークされ騒ぎになりましたが、実は10月の南北
首脳会談で韓国は様々な支援を北朝鮮に約束しています。それは核問題の解決と
は別途に高速道路の補修をするというものです。新政権になってもそれはちゃん
とやってくださいよと言われているのです。核の申告もしていないのに、進んで
いるのです。
李明博政権は、6者協議で求められている核問題を解決しない限り、大規模な
支援はしないとはっきり言っています。そこは揺らがないと思います。北朝鮮は
その姿勢を変えさせるために、今必死で工作をしています。
北朝鮮は今申告ができない。アメリカも完全な申告をしない限り援助はしない
と言っています。日本は、核だけではダメで、拉致も解決を求めています。大状
況では韓国に大きな援軍が生まれ、日本も色々な対応準備をしていると思います。
谷内外務次官自ら政権引継ぎ委員会の幹部と会われたそうです。
同時にもう一つの目標として、韓国政府も拉致問題の解決を国政の最優先課題
にするように働きかけたいというのが、我々が掲げたスローガンです。それを韓
国自身ですべきだということを、1月に韓国の家族会の方々と話をしてきました。
拉致の完全な進展がない限り、韓国政府は支援しないと李明博政権に言わせるこ
とはできないかということです。その立場を韓国が明示すれば、日本は当然支持
しますし、アメリカも支持するとなると、6者協議の北朝鮮を除く5か国のうち、
3か国が大規模支援の代わりに拉致問題の解決を求めることになります。そして
中国に対し、中国人拉致被害者もいるのだから一緒に助けようと言うこともでき
る。
10月の南北首脳会談の前に、福田総理が盧武鉉大統領に会い、金正日に会っ
たら日本人拉致問題を取り上げてくれと頼みました。実際に、話したということ
です。金正日は、「めぐみさんたちは死んだと言った」という報道が一部流れま
した。私は韓国の家族会の方々に言いました。盧武鉉大統領でさえ、頼まれれば
日本人拉致問題について言ったのに、李明博大統領が福田総理に会うとき、日朝
交渉の中で韓国人拉致問題も交渉するように韓国側が頼めば、日本は既にしても
らっているのですから、やらない筈はない。そして、拉致と核の解決なくして援
助はしないという第一の戦略について国際社会を同調させる。ずるずると引き延
ばすならば、第二の戦略であるダメージを与えること、安保理事会でより強い圧
力を検討することが視野に入ってきます。
向こうも苦しい。去年の9月以降、李明博批判をいっさいやめて、盧武鉉と同
じことをさせるような工作をしています。ブッシュ政権のラインよりももっとハー
ドルを上げるよう、韓国の家族が主体となって運動し、連携していく。韓国の家
族会は、昨年12月の国際会議に触発されて、今年6月に国際拉致解決連合の国
際会議をソウルで開きたいと言っています。安倍総理は、一昨年の政府主催の集
会の際、タイ、韓国、ルーマニアの家族と握手して写真をとってくださった。麻
生外務大臣も、高村外務大臣も外国から家族が来日したときは、会ってはげまし
てくれています。ブッシュ大統領は、アメリカ人被害者がいないのに、横田早紀
江さんに会ってくれました。日本の家族がソウルに行き、表敬したいと言えば、
会ってくれないだろうか、というようなことを今考えています。
今年は動くだろうというのではなく、動かすという決意をもって、目標と戦略
を年頭におき運動していきたいと思います。
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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 福田康夫殿
●救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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