対北制裁は解除せず、強化すべきとき(2008/08/12)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2008.08.12)
以下は、平成20年8月9日に開催された「東京連続集会」で、西岡力・救う
会会長代行が講演したもののほぼ全てで、事務局でテープから再録したものであ
る。8月11日、12日の日朝協議を前に、北朝鮮への制裁に反対する人々への
反論を踏まえ、今後の対応についての見解が述べられている。
対北制裁は解除せず、強化すべきとき
◆拉致問題は今も緊急事態、生きているから「対策本部」設置
中山恭子補佐官が担当大臣になった。総理大臣の補佐官の時は、政策を決定す
る立場にはなかった。拉致問題対策本部の事務局長の時は、ラインの中にいたが、
補佐官はラインからははずれた存在だった。今回は、担当大臣になるとともに、
対策本部の副本部長になった。事務局長の時より格が上で、対北朝鮮政策を決定
するときは、中山さんがいないところで決められることはありえないこととなっ
た。6月の日朝協議の時は、外務省は緘口令をしいたので、一緒に行った他省庁
の人は、どういう協議が行われたのか分からなかった。帰国後の総理への報告の
際、中山さんは呼ばれておらず、総理が「なぜ中山君はいないのか」という話し
をされたようだ。それで5分くらい遅れて参加した。
対策本部を無視して制裁解除はできない。特定船舶の入港禁止は閣議決定が必
要となっているが、対策本部のメンバーは全大臣が兼務しているし、中山さんも
閣議メンバーになったので、力関係は今までとはかなり変わると期待している。
なぜ「対策本部」が設置されたかというと、緊急事態だからだ。被害者がまだ
生きていて救出を待っていると政府が認識しているから2年前に対策本部を作っ
た。そして今回、担当大臣を官房長官が兼任するというのをやめて、専任の大臣
を置いた。大地震が起きたり大きな台風が来るような緊急事態の時に対策本部は
設置されるものだ。従って拉致問題は外交課題ではなく、救出を必要とする緊急
課題だ。だから担当大臣が置かれた。
◆圧力では解決しないという人たち
一部に、「対策本部が置かれたのに何もできなかったじゃないか」という人た
ちに強く言いたい。28年間対策本部を作ってこなかったことが解決を長引かせ
たのではないか。対策本部ができてたった2年で事態が動き出した。
北朝鮮は、5人と家族を帰して以降、「拉致問題は解決済み」といい続けてい
る。岩波の「世界」7月号では、「制裁をしたから解決が遅れている」と和田春
樹氏や東大の姜尚中氏などが批判している。「対北朝鮮??いまこそ対話に動くと
き」という特集で、「対北政策の転換を」という政策提言をしている。
また、衛藤征士郎という福田さんに近い自民党議員は、「安倍前首相は圧力に
重きを置いたがその成果はほとんどなかったのではないでしょうか」という編集
部の誘導的な質問に対し、「外交とか外交交渉というものはすべて対話です。だ
から、圧力や制裁を、わざわざ目の前に品揃えをして見せる必要はない」と述べ
ている。民主党の岩國哲人氏は、「さまざまな問題を精査して仔細に対応しよう
という姿勢ではありませんでしたね。安倍さんの誤りは、交渉していかなければ
ならない相手に対して、いちいち具体的なことを言っても話にならない政権だ、
という突き放した姿勢があったことです。拉致問題についても「返せ」と「謝れ」
の二言しか言わない。対話で相手を揺さぶるのではなく、圧力で揺さぶろうとし
ましたが、結局成果は出せていない。小泉さんも、名指しこそしませんが、圧力
をかけたら事態が解決すると思っているのはまちがいだ、と述べていました」と
述べている。
さらに、平沢勝栄議員は、「今の日本には制裁を続ければ相手が詫びを入れ、
問題が直ちに解決すると考えている向きもある。制裁は当然だ。しかし、北朝鮮
と諸外国との貿易はここ数年急増している。残念ながら制裁だけを続けても問題
が解決することはないだろう」、「膠着状態を打開するには、経済制裁だけでな
く、柔軟な外交行動も同時に必要となる」とし、問題点として、「政府が北朝鮮
外交で必ずしもフリーハンドを持っていない。現状は、関係者が政府のやり方に
介入し、それが政府の柔軟な外交を縛っている」と述べている。この「関係者は、
家族会、救う会、拉致議連のことと思われるが、元拉致議連の事務局長だった人
そんなことを言っている。この2年間の圧力を否定しようとする人たちが、圧力
をかけても何も変わらなかったと言っている。
◆制裁が効いているから「制裁解除」を要求
しかし、6月以降の北朝鮮の動きを見ると、彼らの主張が間違っていたことが
照明されたと思う。6月11、12日に日朝実務者協議が行われたが、それは彼
らの方が望んで言ってきたことだ。日本は制裁をかけながら、協議にはいつでも
応じるとして、対話と圧力の原則で協議することを否定していなかった。他方、
北朝鮮側は、解決済みの問題で協議をする必要はないとして対話を拒否していた。
協議に応じたのは制裁が効いたからだ。なぜなら、彼らが協議に応じた短期的な
目的は、米国のテロ支援国指定の解除と日本の制裁の一部解除を狙ったというこ
とだ。
日本に要望した制裁の一部解除は、朝鮮総連が要望していた内容とほぼ同じで、
チャーター便の受け入れ、朝鮮総連幹部の再入国許可、万景峰号の入港許可だ。
日本は、「拉致問題は解決済み」ということをやめ、生存者を取り戻すためにつ
ながる調査をすると言ったことを背景に、一部解除の約束をした。
北朝鮮が取りたかったのは制裁の解除であって、日本からの支援ではない。制
裁をかけていなければ日本のカードは支援しかない。99年の村山訪朝団は拉致
問題の調査を言っている。これに対し、北朝鮮はコメの支援を求めた。日本は6
0万トン出した。今北朝鮮が、「再調査」というどうなるか分からないカードを
出して要求しているのは、支援ではなく、制裁の解除だ。制裁をかけているから
制裁がカードになっている。「制裁が効いてない」という人たちが言う通りであ
れば、制裁の解除を要求する必要はない。制裁が、彼らの痛い所を突いているか
ら解除を要求するわけだ。
平沢先生、衛藤先生、岩国先生たちは、「制裁は効かない、対話が必要。だか
ら自分たちが言って交渉する」と言ったが、今回北朝鮮が日朝協議を要請した前
に、議員外交はなされていない。圧力をかけ続けていたから向こうが交渉に応じ
てきたのだ。
◆強硬姿勢こそが対話を生む
米国のテロ支援国指定は、当初から拉致問題が入っていたわけではない。拉致
問題を指定理由に入れさせることができたのは、2004年4月の、国務省の報
告書以降だ。北朝鮮がテロ支援国解除を米国に求めた時は、直前に日朝交渉をす
るようなことをしなかった。それは拉致が指定理由に入っていなかったからだ。
2002年には、テロ支援国指定が解除直前までいったことがある。その時は、
拉致問題についての話し合いは一切なかった。しかし、拉致が理由に入ったから、
拉致で何らかの動きがあるとみせないと解除されないから、今回は動いてきた。
拉致を指定理由に入れるための我々の働きかけが効いたのだ。
だから強硬姿勢は対話を生まないというこの人たちの発言は、すべて間違いだ。
共産国家との交渉は圧力があって初めて交渉になる。彼らは理念などは信用しな
い。力を信じる。交渉に応じなければ制裁を続けるだけだ。我々は、制裁と国際
連携で解決をと言ってきたが、日米の制裁と連携で、拉致を指定理由に入れたか
ら、北朝鮮は今回日朝協議に応じてきた。
対策本部ができてから2年間の政府の政策は膠着しているという人もいるが、
なぜ拉致対策本部を作ったかについて、安倍元総理が、『月刊正論』で公表して
いる。私は、安倍元総理が総理になる前に、どうして拉致問題を解決するかにつ
いて聞いたことがある。「黙って、真綿で首を絞めるように、北朝鮮の首を絞め
ていく。そうすれば彼らは交渉に応じてくる」ということだった。そして彼らの
一番苦しいところを突いたのが今の政策だ。
◆金正日体制維持に必要な外貨に日米が金融制裁
金正日政権にとって一番苦しいところというのは、外貨だ。年間5?10億ド
ルの外貨収入がないと政権がもたない。北朝鮮の貿易統計は、1970年代以降、
毎年5?10億ドルの赤字が続いている。世界の資本主義の常識は、金を払わな
いものにはモノは売らない。破産国家の場合は、現金をもってこないかぎり売っ
てくれない。北朝鮮で、貿易統計に載らない外貨収入があり、それを金正日が掌
握しているから、彼の周辺がぜいたくな暮らしができたり、軍や政治警察が維持
されている。ミサイル実験や核開発もできる。
また、北朝鮮はイラクのような石油がない。イラクは、国連が制裁をかけても、
裏で石油を売り、外貨収入を得ていた。北朝鮮には売るまともなものがない。何
を売るかといえば、偽札だ。そして麻薬・覚醒剤。北朝鮮の覚醒剤は、隠れ家の
ようなところで作るのではなく、国営工場で作るので純度が高い。加えて、かつ
ては朝鮮総連が送った資金、韓国が送った資金がある。金大中は2000年に、
4億5千万ドルの現金を北に渡している。韓国の裁判所が事実と認めたが、「統
治行為」として訴追されなかった。この資金は北朝鮮の国家収入には入らず、金
正日の収入になる。今、韓国に亡命している、金正日の一つの銀行に勤めていた
人は、「その内1億ドルは自分が管理していた」と証言している。6・11銀行
と言うが、6月11日に入金されたからだということだ。
このような資金を止めるために、アメリカは金融制裁をかけ、日本は朝鮮総連
の違法資金に制裁を課した。それが効いたから北朝鮮が動き始めた。特にアメリ
カの金融制裁は大変効いたので、原子炉を止め、核兵器をやめるという「ショー」
をやった。拉致対策本部ができて2年たち、交渉が始まったという本質を見忘れ
てはならないと思う。だから我々は、制裁を安易に解除するなと言っている。北
朝鮮も制裁は苦しい。だから何とかしてくれと言ってくる。それは制裁が効いて
いるということだ。再調査の約束をしたというだけで外務省が安易に制裁を解除
しようとするのは、制裁が効いていることに自信感がないからだ。金正日政権の
外貨依存という一番の弱点をちゃんと認識しているのかどうかだ。
◆最優先課題は、被害者を取り戻すこと
事態は動き出した、北朝鮮はなるべく少ない譲歩で制裁の解除を取り付けたい。
そのために、米国務省と密接な関係を作り、核問題を先に進めて日米分断をはかっ
た。そして昨年2月の6者協議で、核問題を3段階で解決するとした。それが決
まった時、日本は歓迎したが、拉致を棚上げにして拉致が置き去りにされた。し
かも、エネルギー支援を求められた。アメリカを使って、中国や韓国にそういう
ことを(日本も支援をと)言わせようというのが金正日の作戦だったが、日本は、
拉致問題の解決がない限りエネルギー支援には応じられないことを、6者協議の
中で認めさせた。
そして核申告の第1段階が終わり、今第2段階が終わるかどうかというところ
に来ている。そこで米国は、「テロ」支援国指定だから、核よりも拉致に重みが
あるカードなのに、これを核に利用した。アメリカはなんとか成果を出そうと視
野が狭くなった。しかし、アメリカの意見も色々で、北朝鮮が申告したあとも、
財務省は「金融制裁はまだ終わっていない」と言った。そして国防総省は、未だ
に北朝鮮に対する「5030心理作戦」を続けている。国務省は、「話せば分か
る」という路線に入ってしまったが、財務省や米軍が圧力をかけ続けていること
も事実だ。
日本はどうするか。ここで絶対に圧力をゆるめてはならない。なぜ拉致対策本
部があり、担当大臣がいるかといえば、政府は拉致被害者が生存していると考え
ているからだ。早急に解決しなければならないことは被害者を取り戻すことだ。
拉致問題の解決とは、被害者の帰国、真相解明、実行犯の引渡しの3つで安倍政
権の時の6項目の中に書かれている。その中で、最優先課題は、被害者を取り戻
すことだ。そこに全精力を注ぐべきで、だからこそ対策本部があるのだ。そして、
このことについては妥協の余地がない。完全解決の見通しが立たないのに、一部
でも制裁を解除することはあってはならない。
真相解明、実行犯の引渡しは、国交正常化と並行協議ということもありえるし、
その中で制裁の一部解除もありえるが、被害者を取り戻すことが最優先課題だ。
家族会でも、うちの子どもや兄弟だけが帰ってくればよい、という立場はとらな
いことを決めている。名前の分からない人も含めて全員の帰国を求めている。そ
れには妥協の余地がない。
◆北朝鮮に拉致の申告をさせ検証する
北朝鮮がそれをすれば日本も妥協の余地があるという交渉をする時期が来たと
いうことだ。では全被害者を取り戻すというのはどういうことか。核問題では、
北朝鮮のすべての核を廃棄することを目標にしているが何発持っているかは未だ
に分からない。そこで申告をさせる。それを検証することになっている。拉致問
題でも、まず、被害者をすべて返すという約束をさせる。そして北朝鮮が申告を
する。それについてこちらが検証し、必要があれば現場にも行って調査する。検
証が終わるまでは「全員帰国」とは認めない。これがすべてだという説明責任は
北朝鮮側にある。
イラクの核問題査察に関する安保理決議にこういう条項が入っている。イラク
の核技術者を家族とともに国外に出してインタビューを受けさせる。それをしな
い限り本当の査察とはいえない。そういう決議をしている。日本も同じように、
すべての関係者を家族とともに外国に出させ、インタビューする。それをさせな
いというなら、すべて解決とは認められないようにすべきだ。これは無理なこと
でも何でもない。安保理決議でもやっていることだ。人質がとられていることは
緊急事態だ。そのことを言い続けるべきだと思う。
では、北朝鮮はどう出てくるか。彼らが何らかの対応を迫られるところに追い
込まれているのは事実だ。アメリカも、8月11日の指定解除は先送りした。指
定理由になっているよど号犯もまだ北にいる。拉致問題にはまだ何の変化もない。
ブッシュは福田に、「何も起こっていないのか」と聞いたが、何も起こっていな
い。
◆宋日昊に説得された田原総一郎氏
これから動きが出てくるが、それがどういうものなのか全く分からない。先ほ
ど引用した「世界」では、田原総一郎氏がこう述べている。
北朝鮮をめぐる世界情勢が大きく変わりつつある中で、日本との関係だけが凍
りついて、置き去りにされているという感じが強い。
去年の11月17日に、私は北朝鮮を取材して朝日新聞にこのように記した。
私は平壌で宋日昊と約6時間話した。宋日昊は、姜錫柱第一外務次官を経て金
正日につながっている人物である。日本語も達者だ。宋日昊は、「小泉首相が訪
朝した時、金正日総書記は、拉致や工作船などのことを謝罪し、5人の生存と8
人の死亡という事実を明らかにした。金正日総書記が偽りを表明する必要性は全
くなく、誠意を込めて事実を話した」のだと説明した。
さらに問い詰めると、「8人は死亡、四人は北朝鮮に入国していない。それ以
外の調査は、日本側から依頼されていない。だから環境が整い、新たに依頼され
れば調査する用意がある」と明言した。北朝鮮側が、「新たに調査する」と表明
したのは初めてである。
横田めぐみさんの遺骨とされる骨についても、北朝鮮側は本物だと主張し、日
本側は偽物だと主張している。そして英国の権威ある『ネイチャー』のインタビュー
では、鑑定した当事者が、結果は確定的ではないと答えている。そして当事者は、
メディアの取材に一切応じない。そこで私が宋日昊に、「第三国、例えば鑑定技
術が進んでいる米国で再鑑定してはどうか」と問うと、「日本が同意するならば
賛成だ」と答えた。
あえて記す。宋日昊の説明には不自然だと感じられるところはない。どちらか
といえば、北朝鮮側が「死亡した」と発表した8人を「生きている」と主張して
いる日本側の方に無理があるのではないか。それに、日本側が調査を依頼してい
ない人々の中には生存者がいる、とこれは交渉にあたった外務省の当事者から直
接聞いた。
私は、いつまでも頑迷にフィクションの部分にこだわって圧力一辺倒を続ける
のではなく、現実的な交渉をすすめるべきだと思うが、最近得た情報では、どう
やら日朝間の非公式の交渉は始まっているようである。
宋日昊と6時間話して、彼の言うことは説得力があった、ということだ。日本
側の主張に無理がある、と公然と書いている。6時間の説得は成功している。
「頑迷にフィクションの部分にこだわって圧力一辺倒を続けるのではなく」とい
うのは、生きていることにこだわるな、ということだ。これは本当に許せない。
6時間、宋日昊と話す中で、死亡に関する具体的な証拠があったのか。増元る
み子さんが死亡したという具体的な証拠があるのなら、増元照明さんのところに
来て話すべきだ。家族は生存を信じている。それは死亡の証拠がないからだ。田
原氏は、「生きていると主張している日本側の方に無理がある」と言っている。
6時間の面会で、客観的な証拠があったのかどうか。明らかにする義務がある。
少なくとも家族には伝える義務がある。田原氏は先月の「朝まで生テレビ」の番
組に増元さんを呼んだが、一言もそういう発言をしていない。北朝鮮高官のただ
の話だけで死んだというのは、被害者救出を妨げる重大な人権侵害であり、内通
行為だ。私も「朝まで」に呼ばれたが、田原氏が司会なら出ないと答えた。「死
亡」という人が司会の番組で公平な議論ができるとは思えない。
◆対北制裁は解除せず、強化すべきとき
最後に、8月11、12日の日朝協議で何かが出てくるかもしれないが、それ
を見る場合の規準をお話ししたい。政府は、ホームページで「拉致被害者の死亡
を確認できるものは皆無」としている。北朝鮮は「8人死亡」と言っているが、
日本政府は、「死亡したとされる8人について、死亡を証明する客観的な証拠が
全く提示されていない」と言っている。つまり、北が出してきた情報をすべて偽
物だと日本政府が言っているわけだ。また、「真正な死亡診断書が一切存在しな
い」、「被害者の遺骸が一切存在しない」、「死亡に至る状況についての北朝鮮
側説明には不自然かつ曖昧な点が多い」。日本の生命保険会社が、8人のすべて
が20代、30代で、「ガス中毒、交通事故、心臓麻痺、自殺」で死亡する確率
は数百万分の一という数値を出している。その他、よど号ハイジャック犯が拉致
に関与したことを認めていないし、大韓航空機爆破事件も認めていない。横田め
ぐみさんについては、死亡日の変更、「遺骨」の扱い等で曖昧・不自然な点が多
く、元夫と担当医が死亡日についてなぜか共通に間違えている。北朝鮮が入境を
否定、または入境未確認としている4ケースは、捜査の結果、いずれも北朝鮮の
関与が明らか。
田原氏は、これらの日本側の説明に「無理がある」と言っている。こういう世
論を北朝鮮は日本に作ろうとしてきた。「拉致にこだわりすぎ」と言った加藤氏
や、「日本外交は拉致問題に拉致されている」と言った岩國氏が、自民党や民主
党から宥和派議員をあつめて「議連」を作ったのも、北朝鮮が働きかけたものだ。
つまり、田原氏のようなジャーナリストに6時間かけて説得すれば成功したとい
うことだ。加藤氏も岩國氏も訪朝してもらって6時間話せば説得できると思って
いるのだろう。そう金正日に報告している可能性がある。
何が出てくるか分からないが、日本政府は全員生きていることを前提に交渉し
ている。8人について死亡の証拠がないと政府が言っている。そして制裁は効い
ている。効いているから協議に出て、ごましをしようとしている。そのごまかし
を認めず、制裁を解除せずに強化すれば、北朝鮮はもっと苦しくなる。そしてよ
り大きな譲歩を行う可能性がある。
金正日が拉致を認めて6年になるが、6年のうち4年間は交渉がなかった。小
泉首相は制裁をかけず、対話だけだった。だから我々は官邸前で座り込みをやっ
た。政府の中にも色々な意見があり、制裁をかけると話合いができなくなる、と
思っている人もいる。そこで今、全国で、制裁を解除するな、という一斉行動を
やっている。状況を見極めて運動を続けたい。
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●福田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 福田康夫殿
●救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
以下は、平成20年8月9日に開催された「東京連続集会」で、西岡力・救う
会会長代行が講演したもののほぼ全てで、事務局でテープから再録したものであ
る。8月11日、12日の日朝協議を前に、北朝鮮への制裁に反対する人々への
反論を踏まえ、今後の対応についての見解が述べられている。
対北制裁は解除せず、強化すべきとき
◆拉致問題は今も緊急事態、生きているから「対策本部」設置
中山恭子補佐官が担当大臣になった。総理大臣の補佐官の時は、政策を決定す
る立場にはなかった。拉致問題対策本部の事務局長の時は、ラインの中にいたが、
補佐官はラインからははずれた存在だった。今回は、担当大臣になるとともに、
対策本部の副本部長になった。事務局長の時より格が上で、対北朝鮮政策を決定
するときは、中山さんがいないところで決められることはありえないこととなっ
た。6月の日朝協議の時は、外務省は緘口令をしいたので、一緒に行った他省庁
の人は、どういう協議が行われたのか分からなかった。帰国後の総理への報告の
際、中山さんは呼ばれておらず、総理が「なぜ中山君はいないのか」という話し
をされたようだ。それで5分くらい遅れて参加した。
対策本部を無視して制裁解除はできない。特定船舶の入港禁止は閣議決定が必
要となっているが、対策本部のメンバーは全大臣が兼務しているし、中山さんも
閣議メンバーになったので、力関係は今までとはかなり変わると期待している。
なぜ「対策本部」が設置されたかというと、緊急事態だからだ。被害者がまだ
生きていて救出を待っていると政府が認識しているから2年前に対策本部を作っ
た。そして今回、担当大臣を官房長官が兼任するというのをやめて、専任の大臣
を置いた。大地震が起きたり大きな台風が来るような緊急事態の時に対策本部は
設置されるものだ。従って拉致問題は外交課題ではなく、救出を必要とする緊急
課題だ。だから担当大臣が置かれた。
◆圧力では解決しないという人たち
一部に、「対策本部が置かれたのに何もできなかったじゃないか」という人た
ちに強く言いたい。28年間対策本部を作ってこなかったことが解決を長引かせ
たのではないか。対策本部ができてたった2年で事態が動き出した。
北朝鮮は、5人と家族を帰して以降、「拉致問題は解決済み」といい続けてい
る。岩波の「世界」7月号では、「制裁をしたから解決が遅れている」と和田春
樹氏や東大の姜尚中氏などが批判している。「対北朝鮮??いまこそ対話に動くと
き」という特集で、「対北政策の転換を」という政策提言をしている。
また、衛藤征士郎という福田さんに近い自民党議員は、「安倍前首相は圧力に
重きを置いたがその成果はほとんどなかったのではないでしょうか」という編集
部の誘導的な質問に対し、「外交とか外交交渉というものはすべて対話です。だ
から、圧力や制裁を、わざわざ目の前に品揃えをして見せる必要はない」と述べ
ている。民主党の岩國哲人氏は、「さまざまな問題を精査して仔細に対応しよう
という姿勢ではありませんでしたね。安倍さんの誤りは、交渉していかなければ
ならない相手に対して、いちいち具体的なことを言っても話にならない政権だ、
という突き放した姿勢があったことです。拉致問題についても「返せ」と「謝れ」
の二言しか言わない。対話で相手を揺さぶるのではなく、圧力で揺さぶろうとし
ましたが、結局成果は出せていない。小泉さんも、名指しこそしませんが、圧力
をかけたら事態が解決すると思っているのはまちがいだ、と述べていました」と
述べている。
さらに、平沢勝栄議員は、「今の日本には制裁を続ければ相手が詫びを入れ、
問題が直ちに解決すると考えている向きもある。制裁は当然だ。しかし、北朝鮮
と諸外国との貿易はここ数年急増している。残念ながら制裁だけを続けても問題
が解決することはないだろう」、「膠着状態を打開するには、経済制裁だけでな
く、柔軟な外交行動も同時に必要となる」とし、問題点として、「政府が北朝鮮
外交で必ずしもフリーハンドを持っていない。現状は、関係者が政府のやり方に
介入し、それが政府の柔軟な外交を縛っている」と述べている。この「関係者は、
家族会、救う会、拉致議連のことと思われるが、元拉致議連の事務局長だった人
そんなことを言っている。この2年間の圧力を否定しようとする人たちが、圧力
をかけても何も変わらなかったと言っている。
◆制裁が効いているから「制裁解除」を要求
しかし、6月以降の北朝鮮の動きを見ると、彼らの主張が間違っていたことが
照明されたと思う。6月11、12日に日朝実務者協議が行われたが、それは彼
らの方が望んで言ってきたことだ。日本は制裁をかけながら、協議にはいつでも
応じるとして、対話と圧力の原則で協議することを否定していなかった。他方、
北朝鮮側は、解決済みの問題で協議をする必要はないとして対話を拒否していた。
協議に応じたのは制裁が効いたからだ。なぜなら、彼らが協議に応じた短期的な
目的は、米国のテロ支援国指定の解除と日本の制裁の一部解除を狙ったというこ
とだ。
日本に要望した制裁の一部解除は、朝鮮総連が要望していた内容とほぼ同じで、
チャーター便の受け入れ、朝鮮総連幹部の再入国許可、万景峰号の入港許可だ。
日本は、「拉致問題は解決済み」ということをやめ、生存者を取り戻すためにつ
ながる調査をすると言ったことを背景に、一部解除の約束をした。
北朝鮮が取りたかったのは制裁の解除であって、日本からの支援ではない。制
裁をかけていなければ日本のカードは支援しかない。99年の村山訪朝団は拉致
問題の調査を言っている。これに対し、北朝鮮はコメの支援を求めた。日本は6
0万トン出した。今北朝鮮が、「再調査」というどうなるか分からないカードを
出して要求しているのは、支援ではなく、制裁の解除だ。制裁をかけているから
制裁がカードになっている。「制裁が効いてない」という人たちが言う通りであ
れば、制裁の解除を要求する必要はない。制裁が、彼らの痛い所を突いているか
ら解除を要求するわけだ。
平沢先生、衛藤先生、岩国先生たちは、「制裁は効かない、対話が必要。だか
ら自分たちが言って交渉する」と言ったが、今回北朝鮮が日朝協議を要請した前
に、議員外交はなされていない。圧力をかけ続けていたから向こうが交渉に応じ
てきたのだ。
◆強硬姿勢こそが対話を生む
米国のテロ支援国指定は、当初から拉致問題が入っていたわけではない。拉致
問題を指定理由に入れさせることができたのは、2004年4月の、国務省の報
告書以降だ。北朝鮮がテロ支援国解除を米国に求めた時は、直前に日朝交渉をす
るようなことをしなかった。それは拉致が指定理由に入っていなかったからだ。
2002年には、テロ支援国指定が解除直前までいったことがある。その時は、
拉致問題についての話し合いは一切なかった。しかし、拉致が理由に入ったから、
拉致で何らかの動きがあるとみせないと解除されないから、今回は動いてきた。
拉致を指定理由に入れるための我々の働きかけが効いたのだ。
だから強硬姿勢は対話を生まないというこの人たちの発言は、すべて間違いだ。
共産国家との交渉は圧力があって初めて交渉になる。彼らは理念などは信用しな
い。力を信じる。交渉に応じなければ制裁を続けるだけだ。我々は、制裁と国際
連携で解決をと言ってきたが、日米の制裁と連携で、拉致を指定理由に入れたか
ら、北朝鮮は今回日朝協議に応じてきた。
対策本部ができてから2年間の政府の政策は膠着しているという人もいるが、
なぜ拉致対策本部を作ったかについて、安倍元総理が、『月刊正論』で公表して
いる。私は、安倍元総理が総理になる前に、どうして拉致問題を解決するかにつ
いて聞いたことがある。「黙って、真綿で首を絞めるように、北朝鮮の首を絞め
ていく。そうすれば彼らは交渉に応じてくる」ということだった。そして彼らの
一番苦しいところを突いたのが今の政策だ。
◆金正日体制維持に必要な外貨に日米が金融制裁
金正日政権にとって一番苦しいところというのは、外貨だ。年間5?10億ド
ルの外貨収入がないと政権がもたない。北朝鮮の貿易統計は、1970年代以降、
毎年5?10億ドルの赤字が続いている。世界の資本主義の常識は、金を払わな
いものにはモノは売らない。破産国家の場合は、現金をもってこないかぎり売っ
てくれない。北朝鮮で、貿易統計に載らない外貨収入があり、それを金正日が掌
握しているから、彼の周辺がぜいたくな暮らしができたり、軍や政治警察が維持
されている。ミサイル実験や核開発もできる。
また、北朝鮮はイラクのような石油がない。イラクは、国連が制裁をかけても、
裏で石油を売り、外貨収入を得ていた。北朝鮮には売るまともなものがない。何
を売るかといえば、偽札だ。そして麻薬・覚醒剤。北朝鮮の覚醒剤は、隠れ家の
ようなところで作るのではなく、国営工場で作るので純度が高い。加えて、かつ
ては朝鮮総連が送った資金、韓国が送った資金がある。金大中は2000年に、
4億5千万ドルの現金を北に渡している。韓国の裁判所が事実と認めたが、「統
治行為」として訴追されなかった。この資金は北朝鮮の国家収入には入らず、金
正日の収入になる。今、韓国に亡命している、金正日の一つの銀行に勤めていた
人は、「その内1億ドルは自分が管理していた」と証言している。6・11銀行
と言うが、6月11日に入金されたからだということだ。
このような資金を止めるために、アメリカは金融制裁をかけ、日本は朝鮮総連
の違法資金に制裁を課した。それが効いたから北朝鮮が動き始めた。特にアメリ
カの金融制裁は大変効いたので、原子炉を止め、核兵器をやめるという「ショー」
をやった。拉致対策本部ができて2年たち、交渉が始まったという本質を見忘れ
てはならないと思う。だから我々は、制裁を安易に解除するなと言っている。北
朝鮮も制裁は苦しい。だから何とかしてくれと言ってくる。それは制裁が効いて
いるということだ。再調査の約束をしたというだけで外務省が安易に制裁を解除
しようとするのは、制裁が効いていることに自信感がないからだ。金正日政権の
外貨依存という一番の弱点をちゃんと認識しているのかどうかだ。
◆最優先課題は、被害者を取り戻すこと
事態は動き出した、北朝鮮はなるべく少ない譲歩で制裁の解除を取り付けたい。
そのために、米国務省と密接な関係を作り、核問題を先に進めて日米分断をはかっ
た。そして昨年2月の6者協議で、核問題を3段階で解決するとした。それが決
まった時、日本は歓迎したが、拉致を棚上げにして拉致が置き去りにされた。し
かも、エネルギー支援を求められた。アメリカを使って、中国や韓国にそういう
ことを(日本も支援をと)言わせようというのが金正日の作戦だったが、日本は、
拉致問題の解決がない限りエネルギー支援には応じられないことを、6者協議の
中で認めさせた。
そして核申告の第1段階が終わり、今第2段階が終わるかどうかというところ
に来ている。そこで米国は、「テロ」支援国指定だから、核よりも拉致に重みが
あるカードなのに、これを核に利用した。アメリカはなんとか成果を出そうと視
野が狭くなった。しかし、アメリカの意見も色々で、北朝鮮が申告したあとも、
財務省は「金融制裁はまだ終わっていない」と言った。そして国防総省は、未だ
に北朝鮮に対する「5030心理作戦」を続けている。国務省は、「話せば分か
る」という路線に入ってしまったが、財務省や米軍が圧力をかけ続けていること
も事実だ。
日本はどうするか。ここで絶対に圧力をゆるめてはならない。なぜ拉致対策本
部があり、担当大臣がいるかといえば、政府は拉致被害者が生存していると考え
ているからだ。早急に解決しなければならないことは被害者を取り戻すことだ。
拉致問題の解決とは、被害者の帰国、真相解明、実行犯の引渡しの3つで安倍政
権の時の6項目の中に書かれている。その中で、最優先課題は、被害者を取り戻
すことだ。そこに全精力を注ぐべきで、だからこそ対策本部があるのだ。そして、
このことについては妥協の余地がない。完全解決の見通しが立たないのに、一部
でも制裁を解除することはあってはならない。
真相解明、実行犯の引渡しは、国交正常化と並行協議ということもありえるし、
その中で制裁の一部解除もありえるが、被害者を取り戻すことが最優先課題だ。
家族会でも、うちの子どもや兄弟だけが帰ってくればよい、という立場はとらな
いことを決めている。名前の分からない人も含めて全員の帰国を求めている。そ
れには妥協の余地がない。
◆北朝鮮に拉致の申告をさせ検証する
北朝鮮がそれをすれば日本も妥協の余地があるという交渉をする時期が来たと
いうことだ。では全被害者を取り戻すというのはどういうことか。核問題では、
北朝鮮のすべての核を廃棄することを目標にしているが何発持っているかは未だ
に分からない。そこで申告をさせる。それを検証することになっている。拉致問
題でも、まず、被害者をすべて返すという約束をさせる。そして北朝鮮が申告を
する。それについてこちらが検証し、必要があれば現場にも行って調査する。検
証が終わるまでは「全員帰国」とは認めない。これがすべてだという説明責任は
北朝鮮側にある。
イラクの核問題査察に関する安保理決議にこういう条項が入っている。イラク
の核技術者を家族とともに国外に出してインタビューを受けさせる。それをしな
い限り本当の査察とはいえない。そういう決議をしている。日本も同じように、
すべての関係者を家族とともに外国に出させ、インタビューする。それをさせな
いというなら、すべて解決とは認められないようにすべきだ。これは無理なこと
でも何でもない。安保理決議でもやっていることだ。人質がとられていることは
緊急事態だ。そのことを言い続けるべきだと思う。
では、北朝鮮はどう出てくるか。彼らが何らかの対応を迫られるところに追い
込まれているのは事実だ。アメリカも、8月11日の指定解除は先送りした。指
定理由になっているよど号犯もまだ北にいる。拉致問題にはまだ何の変化もない。
ブッシュは福田に、「何も起こっていないのか」と聞いたが、何も起こっていな
い。
◆宋日昊に説得された田原総一郎氏
これから動きが出てくるが、それがどういうものなのか全く分からない。先ほ
ど引用した「世界」では、田原総一郎氏がこう述べている。
北朝鮮をめぐる世界情勢が大きく変わりつつある中で、日本との関係だけが凍
りついて、置き去りにされているという感じが強い。
去年の11月17日に、私は北朝鮮を取材して朝日新聞にこのように記した。
私は平壌で宋日昊と約6時間話した。宋日昊は、姜錫柱第一外務次官を経て金
正日につながっている人物である。日本語も達者だ。宋日昊は、「小泉首相が訪
朝した時、金正日総書記は、拉致や工作船などのことを謝罪し、5人の生存と8
人の死亡という事実を明らかにした。金正日総書記が偽りを表明する必要性は全
くなく、誠意を込めて事実を話した」のだと説明した。
さらに問い詰めると、「8人は死亡、四人は北朝鮮に入国していない。それ以
外の調査は、日本側から依頼されていない。だから環境が整い、新たに依頼され
れば調査する用意がある」と明言した。北朝鮮側が、「新たに調査する」と表明
したのは初めてである。
横田めぐみさんの遺骨とされる骨についても、北朝鮮側は本物だと主張し、日
本側は偽物だと主張している。そして英国の権威ある『ネイチャー』のインタビュー
では、鑑定した当事者が、結果は確定的ではないと答えている。そして当事者は、
メディアの取材に一切応じない。そこで私が宋日昊に、「第三国、例えば鑑定技
術が進んでいる米国で再鑑定してはどうか」と問うと、「日本が同意するならば
賛成だ」と答えた。
あえて記す。宋日昊の説明には不自然だと感じられるところはない。どちらか
といえば、北朝鮮側が「死亡した」と発表した8人を「生きている」と主張して
いる日本側の方に無理があるのではないか。それに、日本側が調査を依頼してい
ない人々の中には生存者がいる、とこれは交渉にあたった外務省の当事者から直
接聞いた。
私は、いつまでも頑迷にフィクションの部分にこだわって圧力一辺倒を続ける
のではなく、現実的な交渉をすすめるべきだと思うが、最近得た情報では、どう
やら日朝間の非公式の交渉は始まっているようである。
宋日昊と6時間話して、彼の言うことは説得力があった、ということだ。日本
側の主張に無理がある、と公然と書いている。6時間の説得は成功している。
「頑迷にフィクションの部分にこだわって圧力一辺倒を続けるのではなく」とい
うのは、生きていることにこだわるな、ということだ。これは本当に許せない。
6時間、宋日昊と話す中で、死亡に関する具体的な証拠があったのか。増元る
み子さんが死亡したという具体的な証拠があるのなら、増元照明さんのところに
来て話すべきだ。家族は生存を信じている。それは死亡の証拠がないからだ。田
原氏は、「生きていると主張している日本側の方に無理がある」と言っている。
6時間の面会で、客観的な証拠があったのかどうか。明らかにする義務がある。
少なくとも家族には伝える義務がある。田原氏は先月の「朝まで生テレビ」の番
組に増元さんを呼んだが、一言もそういう発言をしていない。北朝鮮高官のただ
の話だけで死んだというのは、被害者救出を妨げる重大な人権侵害であり、内通
行為だ。私も「朝まで」に呼ばれたが、田原氏が司会なら出ないと答えた。「死
亡」という人が司会の番組で公平な議論ができるとは思えない。
◆対北制裁は解除せず、強化すべきとき
最後に、8月11、12日の日朝協議で何かが出てくるかもしれないが、それ
を見る場合の規準をお話ししたい。政府は、ホームページで「拉致被害者の死亡
を確認できるものは皆無」としている。北朝鮮は「8人死亡」と言っているが、
日本政府は、「死亡したとされる8人について、死亡を証明する客観的な証拠が
全く提示されていない」と言っている。つまり、北が出してきた情報をすべて偽
物だと日本政府が言っているわけだ。また、「真正な死亡診断書が一切存在しな
い」、「被害者の遺骸が一切存在しない」、「死亡に至る状況についての北朝鮮
側説明には不自然かつ曖昧な点が多い」。日本の生命保険会社が、8人のすべて
が20代、30代で、「ガス中毒、交通事故、心臓麻痺、自殺」で死亡する確率
は数百万分の一という数値を出している。その他、よど号ハイジャック犯が拉致
に関与したことを認めていないし、大韓航空機爆破事件も認めていない。横田め
ぐみさんについては、死亡日の変更、「遺骨」の扱い等で曖昧・不自然な点が多
く、元夫と担当医が死亡日についてなぜか共通に間違えている。北朝鮮が入境を
否定、または入境未確認としている4ケースは、捜査の結果、いずれも北朝鮮の
関与が明らか。
田原氏は、これらの日本側の説明に「無理がある」と言っている。こういう世
論を北朝鮮は日本に作ろうとしてきた。「拉致にこだわりすぎ」と言った加藤氏
や、「日本外交は拉致問題に拉致されている」と言った岩國氏が、自民党や民主
党から宥和派議員をあつめて「議連」を作ったのも、北朝鮮が働きかけたものだ。
つまり、田原氏のようなジャーナリストに6時間かけて説得すれば成功したとい
うことだ。加藤氏も岩國氏も訪朝してもらって6時間話せば説得できると思って
いるのだろう。そう金正日に報告している可能性がある。
何が出てくるか分からないが、日本政府は全員生きていることを前提に交渉し
ている。8人について死亡の証拠がないと政府が言っている。そして制裁は効い
ている。効いているから協議に出て、ごましをしようとしている。そのごまかし
を認めず、制裁を解除せずに強化すれば、北朝鮮はもっと苦しくなる。そしてよ
り大きな譲歩を行う可能性がある。
金正日が拉致を認めて6年になるが、6年のうち4年間は交渉がなかった。小
泉首相は制裁をかけず、対話だけだった。だから我々は官邸前で座り込みをやっ
た。政府の中にも色々な意見があり、制裁をかけると話合いができなくなる、と
思っている人もいる。そこで今、全国で、制裁を解除するな、という一斉行動を
やっている。状況を見極めて運動を続けたい。
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●福田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 福田康夫殿
●救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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