連続集会4-2(2010/06/14)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2010.06.14-2)
22.05.27連続集会3-2
西岡力・救う会会長
■天安号事件と拉致問題2
前号つづき
◆天が嘘をあばいた
天が嘘をあばいた、ということでしょうか。魚雷の後ろ部分が出てきたわけで
す。それもほとんど原型を留めた形で出てきた。韓国の情報当局は能力があって、
北朝鮮が海外に武器を売っていた時のカタログを入手していた。そのカタログに
魚雷の設計図が出ているのです。その設計図と今回出てきた後半部がピタリ一致
する。そしてスクリュー部分に朝鮮語で、「1番」と書いてあった。1は普通の数
字ですが、番は朝鮮語のハングル文字で「ボン」、「イルボン」と読みます。北
朝鮮は、まさかこんな秘密奇襲攻撃のために部品に朝鮮語で数字書く筈がない、
と言っているわけですが、自分たちで部品番号をつけ、まさか見つかる筈がない
と思ってチェックしてなかったのです。彼らにはそういう杜撰なところがありま
す。十分ありうる話です。
韓国のテレビや左翼メディアは、「1番」、「2番」とは北朝鮮では使わない、
「1号」、「2号」と言う。だからあれは北朝鮮のものじゃない、という報道を流
したのですが、脱北者たちが「そんなことはない。我々は朝鮮で1番、2番と使っ
ている」と、ちょっとした論争になっていました。これで事実関係について、少
なくとも北朝鮮製の魚雷で攻撃されたことが完全に証明されてしまい、韓国の親
北野党も、もう「北朝鮮のものではない」と言えなくなってしまった。
そこで彼らは、「北朝鮮の攻撃を誘導した李明博がけしからん」、「太陽政策
をとらなかったから北朝鮮が攻撃をせざるをえなくなってしまった」、つまり
「李明博の対北政策の失敗が魚雷事件の原因なのだ」と言っています。
◆対北心理戦?嘘には真実の情報で
韓国には戦争記念館があります。そこに行って、李明博大統領が北朝鮮を非難
する演説をした。「朝鮮半島情勢が大きく変わった。北朝鮮が攻撃した。これは
許されないことだ」と言い、対北制裁としてでやることをいくつか言いました。
その中の一つが、対北心理戦です。心理戦というのは、北朝鮮に真実の情報を
伝えるということです。北朝鮮は、韓国の太陽政策時代に、「まずそれをやめて
くれ」と言ったのです。ました。韓国が北よりも豊かだという事実を北に伝える
ラジオや38度線での拡声器や、ビラやラジオを風船で撒くということです。2000
年の南北首脳会談の時に、お互いに誹謗中傷することをやめることに合意し、韓
国政府は盧武鉉時代2004年に中断した。そこで、脱北者らが立ち上がって民間で
細々と続けている。実は韓国政府、軍と情報部がずっとやっていたのです。お互
いにやっていました。私が韓国に留学していた頃、ソウル近郊の山に行くと北の
ビラが落ちていました。風向きによっては北から来るんです。南からも、ずいぶ
んビラも送りました。
少し横道にそれますが、我々が支援し、私が番組を持っている自由北朝鮮放送
は短波放送です。北の人がどれだけ短波ラジオを持っているかと思いますよね。
短波は海外のものが聴けるもので、国内のものは聞こえませんから。それが、70
年代、韓国のKCIAが大々的に短波ラジオを北に落としているのです。何十万とい
う数です。それから中国経由で、闇市で売られている。だから聞かれているので
すよ、というのが金聖?さん(自由北朝鮮放送代表)の話でした。「聞いた」と
いう人が結構いますから、それは事実なのです。
金正日が改革開放をしないで軍事優先、韓国や中国から支援をえながら軍事優
先政策を続けなければならないのは、嘘を維持しなければならないからです。嘘
が一番弱いのは、真実が入ってくることです。
特に北朝鮮は1980年代から、韓国が自分たちよりも豊かだということを、絶対
北に入れないようにしていました。縦の比較はさせるけれど横の比較はさせない。
縦の比較は何かというと、日本の植民地時代は、地主は全部日本人だった。朝鮮
人は苦しい暮らしをしていた。金日成将軍様が日本を蹴ちらしたおかげで朝鮮人
が主人公になった。昔に比べたら今はよくなった、という話しです。横の比較を
して、同じ植民地だった韓国の方が、今コメのご飯を腹いっぱい食べているのに、
我々はとうもろこししか食べられないとなると、金日成・金正日の政治は失敗だ
ということになります。だから横の比較はさせないように、80年代から北朝鮮の
ラジオからチューナーがなくなるのです。スイッチだけになる。80年代の半ばま
ではその統制がかなり効いていて北の人たちは自分たちが韓国より豊かだと思っ
ていたのです。
1987年に日本に流れ着いた脱北者の金萬鉄さん一家がいました。清津から船を
盗んで漂流し、敦賀港に来た。彼は金日成宛に「お前は嘘つきだ」という手紙を
自宅に残してきた。金日成は1960年に演説をして、コメのご飯と肉のスープと絹
の服と瓦葺の屋根を約束したが、80年代になっても実現してないじゃないかと非
難した。金日成に「嘘つき」と言ったらもう政治犯です。処刑の覚悟をして逃げ
てきたのですが、「絶対に韓国に行きたくない」と言ったのです。韓国の方が自
分たちより貧しいと本当に思っていた。
ちょっと年配の方は、『ユンボギの日記』という1960年代の日本で翻訳されて
ベストセラーになった、韓国の孤児が書いた本を覚えているでしょう。そこに書
かれているような子どもが空き缶を持って残飯をもらいに行くという姿が韓国だ
と信じていた。1987年の時点でも、そうだと思っていたのです。そして、「脱北
者が韓国に行ったら、目をつぶされて、耳をそがれて、公開処刑される」と本当
に思っていて、だから韓国に行きたくないと言ったのです。
「南の国で農業をやりたい」と種などを持っていたのですが、ブラジルなど多く
の国に打診してもどこでも北朝鮮人の亡命を受け入れてくれるところがないので
す。それで台湾に連れていって、それより前に韓国に亡命してきたミグのパイロッ
トを連れてきて、「私も北のパイロットだ、私も生きている。結婚して豊かに暮
らしている」と説得してソウルに連れて来た。それが1987年です。
◆北で韓国のドラマをたくさん見ている
ところが今は、韓国が豊かだという情報がどんどん入っている。90年代以降隠
れてラジオを聴く人が急激に増えた。盧武鉉政権時代になり韓国側が心理戦をや
めちゃったのですが、それでも中国経由でどんどん情報が入るのです。中国の朝
鮮族のテレビ局があり、そこで「冬のソナタ」など韓国の番組を買っている。中
国の延辺でそういう番組を放送しているのですが、それをCDに焼いて北朝鮮にど
んどん持ち込まれ、北の人たちが今、韓国のドラマをたくさん見ている。
韓国が豊かだということが分かってきて、「なんで我々は同じ朝鮮民族なのに
こんなに貧しいのか。金日成、金正日の統治がおかしいのではないか」という疑
問が広がりつつある。主体思想を否定するキリスト教も広まりつつある。それを
絶対につぶさないと、先軍政治、そして3代目への世襲はできない。北朝鮮が一
番嫌だという、心理戦を再開すると李明博は演説した。
真実を知り始めた住民らの取締りには警察(人民保安省)政治警察(国家安全
保衛部)が必要で、デモや蜂起が起きた時に鎮圧する軍が必要です。それらに優
先して金と力を与えるということが先軍政治の本質です。そのためには一定程度
の外貨が必要なのです。国家予算とは別にある、金正日の個人資金が必要なので
す。スイスの銀行などに40億ドルくらいの金正日の個人資産があるんじゃないか
と言われています。マカオのバンコ・デルタ・アジアという銀行は、その個人資
金のための口座の出し入れのために使われていた。それであそこを金融制裁した
のは非常に効いたわけです。今韓国は人道以外の一切の経済交流をやめるといっ
ています。開城公団が残っているのはちょっと問題だと思いますが、金正日の個
人資金に入るカネの流れが大きく減少することになる。
◆中国がどこまで支えるのか
中国がどれくらい金正日に援助を続けるか。中国も公開の席で北の言っている
でっち上げ説に賛成とは言っていません。自制してくれとは言っていますが、奇
襲攻撃で46人戦死させるようなことを、またいつやるかわからないテロ国家、好
戦国家、好戦政権を支持し続けるかどうか。そういう点でも、援助をもらいなが
ら一定程度緊張を高めようとしてやった金正日の狙いは魚雷の半分が出てきたこ
とによってブーメランのように金正日が一番やってほしくない情報が入るという
こと、外貨源が小さくなるという結果を生んだ。あとは外貨源としては中国しか
ない。中国がどこまで支えるのか。中国も公然と今回の弁護はできなくなってい
る。これが大きな状況だと思います。
ですから金正日政権にとって大変苦しい状況になってきたことはまちがいあり
ません。ただ、一つだけ懸念材料は、韓国の中では左派があり、もう一度太陽政
策みたいなことをやるべきだという勢力が結構いる。大統領の周辺にもそういう
人たちがいる。韓国軍は北の攻撃だと最初から言おうとしたけど、それを消そう
とした人たちが李明博大統領周辺にいるのです。韓国の保守派は李明博大統領周
辺の「6人組」がけしからんと、名前を上げて秘書官とか、統一担当補佐官など
を更迭せよと要求しているが実現しない。従って、時間がたって、ほとぼりがさ
めると、もう一回北を援助しようということを李明博政府が言い始めるかもしれ
ない。
南北首脳会談を北朝鮮が李明博大統領に仕掛けてきていたのはまちがいない。
今回の事件で証拠が出なかったらうやむやになって、もしかしたら8月くらいに
南北首脳会談ができたかもしれない。南北首脳会談をやって韓国から援助を取る、
しかし緊張は高める。「陸の宥和と海の緊張」が両方金正日には必要なんです。
しかし、陸でも封鎖になり、そして情報が入ってくることになった、というのが
大きな状況だと思っています。
◆人の往来禁止まで踏み切れるか
そしてこれが拉致問題にどういう影響を与えるのかということを最後に申し上
げます。この場で何回も「拉致被害者救出の3条件」というのを言ってきました
が、第1条件は世論を背景にして日本が拉致被害者救出の体制を作ること、第2条
件は、北朝鮮が日本に接近せざるをえない国内情勢、国際情勢ができること。そ
のチャンスはこれまで2回あった。金丸訪朝の時と小泉訪朝の時、2回とも第2条
件はあったけれども第1条件がきちんとしなかったから中途半端で終わってしまっ
た。
しかし三度目のチャンスが来るのだと言ってきました。その根拠は、金正日政
権が追い込まれていることです。先ほど言いましたように統治基盤がどんどん揺
らいできています。しかし外貨はほしいわけです。去年から民主党政権に対して
激しい政治工作を続けて、5月22日、23日に行われた朝鮮総連の第22回全体大会
で許宗萬が行った報告の中でも依然として「総連は、日本当局が平壌宣言に沿っ
て過去の清算と国交正常化の決断を下すよう、対外活動を組織を挙げて展開し、
日本の報道機関が朝・日国交正常化の早期実現の世論を盛り上げるよう特別に力
を注いでいく。」と公然と述べています。拉致のことには何も触れていないし、
天安のことも何も言っていません。しかし日本側は韓国と足並みを揃えて小さな
ものですけど追加制裁を準備している。送金の限度額の引き下げ、そして手持ち
で持っていく限度額の引き下げです。
それほど意味はないと思いますが、もう一つ注目すべき情報は、今朝鮮総連の
6人だけが自由往来を停止されていますが、それを30人くらいに増やすという案
が出ていると聞く。朝鮮総連の幹部で、今、北朝鮮の国会議員をやっている6人
だけに再入国許可を出さない制裁を加えているがで、もう少し増やすということ
が内部で検討されているようです。それは北にとっては痛いと思います。我々は
全員に出すなと「お金と人を全部止めろ」と求めています。
送金や手持ちの届出額の引き下げは、不許可ではないです。届出すればいいわ
けです。嫌がらせにはなっていますがそれほどは効かない。それよりも総連の幹
部たちが北朝鮮に行けなくなるというのは大きいと思います。そこまで踏み切れ
るかどうかを注目しています。
北朝鮮は日本に活路を求めようという気持ちが未だにあって、工作を仕掛けて
くるでしょうが、日本として韓国とアメリカと足並みを揃えて、北朝鮮の包囲網
を作るという方向に行っていますから、簡単に今の政権が制裁を緩める方向には
いかないと思います。
ただ日本を制裁の輪から外そうとするのであれば、拉致問題で調査を再開する
とか、話し合いをしましょうと言ってくることはありうるかもしれない。客観的
に言うと、北朝鮮が日本を包囲網から離脱させようと何か仕掛けてくるかもしれ
ません。それで拉致について大きな進展があるとも思えないですが、何らかの交
渉がまた始まることはあるかなと見ています。その中で向こうから一定程度情報
が取れたり、一部の人でも帰ってくることができれば進展です。もちろん、それ
で終わりにしないという条件でなければなりません。向こうが苦しくなっていく
から、日本を引き付けるために何かしなければということで部分的進展がありう
るかもしれません。
◆緊急事態に備え被害者救出計画を
そしてもう少し追い込まれてくると、私が言う第3条件で、金正日政権が倒れ
るという事態が現出する。大混乱の中でどうやって助け出すのかということの可
能性も高まってくると思います。既にアメリカのシンクタンクや中国のシンクタ
ンクは、政府系のシンクタンクも含んでですが、倒れた後どういう風にするのか
ということについてシミュレーションをたくさんしています。そして水面下では、
米中でもシンクタンクレベルでは話し合いをしています。
韓国と米軍は北朝鮮が大混乱になった時に北進するという軍事作戦計画を作っ
ています。作戦計画5029です。その時日本が被害者救出のために何ができるのか。
その作戦計画で最初に朝鮮半島に上陸する米軍は沖縄にいる海兵隊です。今の日
米関係では、海兵隊に作戦中に日本のためにこういうこともしてもらいたいとい
う話ができる雰囲気であるのかどうか。荒木和博調査会代表たちはこの間、防衛
省に行って長島政務官に、混乱になった時に拉致被害者を救出する作戦を立てて
ほしいと要請しました。私もそれは大変適切な要請だと思っています。個人的に
私も、長島政務官に会ってその話をしたことがあります。
自民党も急変事態への準備をすべきだという提言を、この間、古屋圭司拉致問
題特別委員長が政府に出しました。金正日政権が倒れた時にどう助けるのか、そ
の準備を一方でしながら、向こうが何か仕掛けてきた時に冷静に対処して情報を
取る。被害者全員が安全に帰ってくることなしには日本の制裁は強まり援助がい
かないんだというメッセージを出し続けることです。金正日政権にも、次の政権
候補にも、中国にも、韓国にも、アメリカにも、日本が最低限絶対降りない線は
ここなのだということを言い続けて変化の時を待つ。
◆「海の魚雷に対して空の魚雷(風船ビラ)を」キャンペーンに日本も参加を
今後来るだろう大きな嵐の中で、拉致被害者を返せという旗が風に飛ばされな
いようにしなければならない。今の「天安」の中でも、もしかしたら拉致が軍事
的緊張の中でかすんでしまうこともありうる。そのためにも対北心理戦の中に、
日本人も拉致されていて、日本は拉致問題で怒っているんだと、日本からお金を
貰おうと思うんだったら拉致被害者を安全をかはって全員返さなければならいと
いうことを、ビラやラジオの中に、よりたくさん入れてもらえる方法がないのか
と思っています。ソウルにある自由北朝鮮放送という脱北者がやっているラジオ
局には私の番組がありますし、日本の調査会の「しおけぜ」や政府の「ふるさと
の風」も強化すべきです。
また、韓国の保守派は、大々的に韓国の国内でお金を集めて風船を飛ばす運動
を始めました。「海の魚雷に対して空の魚雷を」というキャンペーンをやってい
ます。1万個くらい風船を飛ばして、「北の空を真っ黒にしてやったら金正日政
権は倒れる」という新聞広告が出ていましたが、その撒かれるビラの中に、日本
人拉致問題や日本人妻問題等、日本に関係する問題も書き込んでもらうようにで
きないのか。その運動に日本からも国民のカンパで参加することができないのか、
ということについて韓国側と協議をしているところです。もしできるようになれ
ば、皆さんの前に出て、国民的な寄付を求めていきたい。
朝鮮半島情勢が大きく揺れ動く中で、拉致問題も含めで全面的解決をしてもら
わなきゃ困る。日本にとっては拉致問題が最優先で解決されなければならない問
題であって、軍事的な緊張がどう高まろうと、このことがおいてけぼりにされる
ことになっては困る、ということを救出運動として言い続けなければいけない、
と思っています。
◆「もう我慢できない。行動したい」?6月10日国民大行進
そのためにも、6月10日のデモでは、こういう状況の中だからこそ、拉致も理
由にして追加制裁をしろと、あるいは本来なら拉致だけを理由にして追加制裁を
しろというのが我々の主張だったのですが、今追加制裁が議論されている中、拉
致も当然理由なのだ、日本人は拉致についてもっと怒っているんだということを、
韓国や国際社会や、日本国内の朝鮮総連にもぶつけることができるかどうか。
世論を背景にして日本政府が全員取り戻すという体制を崩さないようにさせる
というのが我々民間の運動の第一です。その中で、情勢が大きく動こうとする時
にこそ日本は拉致では絶対譲歩しないのだという声を上げなければならないと思っ
ています。是非6月10日に多くの人たちに集まっていただければと思います。こ
のデモは、前の国民大集会の時、家族会の人たち、特に横田早紀江さんなどが、
「もう我慢できない。行動したい」ということで始まったことです。
以上
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■菅首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 菅 直人殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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22.05.27連続集会3-2
西岡力・救う会会長
■天安号事件と拉致問題2
前号つづき
◆天が嘘をあばいた
天が嘘をあばいた、ということでしょうか。魚雷の後ろ部分が出てきたわけで
す。それもほとんど原型を留めた形で出てきた。韓国の情報当局は能力があって、
北朝鮮が海外に武器を売っていた時のカタログを入手していた。そのカタログに
魚雷の設計図が出ているのです。その設計図と今回出てきた後半部がピタリ一致
する。そしてスクリュー部分に朝鮮語で、「1番」と書いてあった。1は普通の数
字ですが、番は朝鮮語のハングル文字で「ボン」、「イルボン」と読みます。北
朝鮮は、まさかこんな秘密奇襲攻撃のために部品に朝鮮語で数字書く筈がない、
と言っているわけですが、自分たちで部品番号をつけ、まさか見つかる筈がない
と思ってチェックしてなかったのです。彼らにはそういう杜撰なところがありま
す。十分ありうる話です。
韓国のテレビや左翼メディアは、「1番」、「2番」とは北朝鮮では使わない、
「1号」、「2号」と言う。だからあれは北朝鮮のものじゃない、という報道を流
したのですが、脱北者たちが「そんなことはない。我々は朝鮮で1番、2番と使っ
ている」と、ちょっとした論争になっていました。これで事実関係について、少
なくとも北朝鮮製の魚雷で攻撃されたことが完全に証明されてしまい、韓国の親
北野党も、もう「北朝鮮のものではない」と言えなくなってしまった。
そこで彼らは、「北朝鮮の攻撃を誘導した李明博がけしからん」、「太陽政策
をとらなかったから北朝鮮が攻撃をせざるをえなくなってしまった」、つまり
「李明博の対北政策の失敗が魚雷事件の原因なのだ」と言っています。
◆対北心理戦?嘘には真実の情報で
韓国には戦争記念館があります。そこに行って、李明博大統領が北朝鮮を非難
する演説をした。「朝鮮半島情勢が大きく変わった。北朝鮮が攻撃した。これは
許されないことだ」と言い、対北制裁としてでやることをいくつか言いました。
その中の一つが、対北心理戦です。心理戦というのは、北朝鮮に真実の情報を
伝えるということです。北朝鮮は、韓国の太陽政策時代に、「まずそれをやめて
くれ」と言ったのです。ました。韓国が北よりも豊かだという事実を北に伝える
ラジオや38度線での拡声器や、ビラやラジオを風船で撒くということです。2000
年の南北首脳会談の時に、お互いに誹謗中傷することをやめることに合意し、韓
国政府は盧武鉉時代2004年に中断した。そこで、脱北者らが立ち上がって民間で
細々と続けている。実は韓国政府、軍と情報部がずっとやっていたのです。お互
いにやっていました。私が韓国に留学していた頃、ソウル近郊の山に行くと北の
ビラが落ちていました。風向きによっては北から来るんです。南からも、ずいぶ
んビラも送りました。
少し横道にそれますが、我々が支援し、私が番組を持っている自由北朝鮮放送
は短波放送です。北の人がどれだけ短波ラジオを持っているかと思いますよね。
短波は海外のものが聴けるもので、国内のものは聞こえませんから。それが、70
年代、韓国のKCIAが大々的に短波ラジオを北に落としているのです。何十万とい
う数です。それから中国経由で、闇市で売られている。だから聞かれているので
すよ、というのが金聖?さん(自由北朝鮮放送代表)の話でした。「聞いた」と
いう人が結構いますから、それは事実なのです。
金正日が改革開放をしないで軍事優先、韓国や中国から支援をえながら軍事優
先政策を続けなければならないのは、嘘を維持しなければならないからです。嘘
が一番弱いのは、真実が入ってくることです。
特に北朝鮮は1980年代から、韓国が自分たちよりも豊かだということを、絶対
北に入れないようにしていました。縦の比較はさせるけれど横の比較はさせない。
縦の比較は何かというと、日本の植民地時代は、地主は全部日本人だった。朝鮮
人は苦しい暮らしをしていた。金日成将軍様が日本を蹴ちらしたおかげで朝鮮人
が主人公になった。昔に比べたら今はよくなった、という話しです。横の比較を
して、同じ植民地だった韓国の方が、今コメのご飯を腹いっぱい食べているのに、
我々はとうもろこししか食べられないとなると、金日成・金正日の政治は失敗だ
ということになります。だから横の比較はさせないように、80年代から北朝鮮の
ラジオからチューナーがなくなるのです。スイッチだけになる。80年代の半ばま
ではその統制がかなり効いていて北の人たちは自分たちが韓国より豊かだと思っ
ていたのです。
1987年に日本に流れ着いた脱北者の金萬鉄さん一家がいました。清津から船を
盗んで漂流し、敦賀港に来た。彼は金日成宛に「お前は嘘つきだ」という手紙を
自宅に残してきた。金日成は1960年に演説をして、コメのご飯と肉のスープと絹
の服と瓦葺の屋根を約束したが、80年代になっても実現してないじゃないかと非
難した。金日成に「嘘つき」と言ったらもう政治犯です。処刑の覚悟をして逃げ
てきたのですが、「絶対に韓国に行きたくない」と言ったのです。韓国の方が自
分たちより貧しいと本当に思っていた。
ちょっと年配の方は、『ユンボギの日記』という1960年代の日本で翻訳されて
ベストセラーになった、韓国の孤児が書いた本を覚えているでしょう。そこに書
かれているような子どもが空き缶を持って残飯をもらいに行くという姿が韓国だ
と信じていた。1987年の時点でも、そうだと思っていたのです。そして、「脱北
者が韓国に行ったら、目をつぶされて、耳をそがれて、公開処刑される」と本当
に思っていて、だから韓国に行きたくないと言ったのです。
「南の国で農業をやりたい」と種などを持っていたのですが、ブラジルなど多く
の国に打診してもどこでも北朝鮮人の亡命を受け入れてくれるところがないので
す。それで台湾に連れていって、それより前に韓国に亡命してきたミグのパイロッ
トを連れてきて、「私も北のパイロットだ、私も生きている。結婚して豊かに暮
らしている」と説得してソウルに連れて来た。それが1987年です。
◆北で韓国のドラマをたくさん見ている
ところが今は、韓国が豊かだという情報がどんどん入っている。90年代以降隠
れてラジオを聴く人が急激に増えた。盧武鉉政権時代になり韓国側が心理戦をや
めちゃったのですが、それでも中国経由でどんどん情報が入るのです。中国の朝
鮮族のテレビ局があり、そこで「冬のソナタ」など韓国の番組を買っている。中
国の延辺でそういう番組を放送しているのですが、それをCDに焼いて北朝鮮にど
んどん持ち込まれ、北の人たちが今、韓国のドラマをたくさん見ている。
韓国が豊かだということが分かってきて、「なんで我々は同じ朝鮮民族なのに
こんなに貧しいのか。金日成、金正日の統治がおかしいのではないか」という疑
問が広がりつつある。主体思想を否定するキリスト教も広まりつつある。それを
絶対につぶさないと、先軍政治、そして3代目への世襲はできない。北朝鮮が一
番嫌だという、心理戦を再開すると李明博は演説した。
真実を知り始めた住民らの取締りには警察(人民保安省)政治警察(国家安全
保衛部)が必要で、デモや蜂起が起きた時に鎮圧する軍が必要です。それらに優
先して金と力を与えるということが先軍政治の本質です。そのためには一定程度
の外貨が必要なのです。国家予算とは別にある、金正日の個人資金が必要なので
す。スイスの銀行などに40億ドルくらいの金正日の個人資産があるんじゃないか
と言われています。マカオのバンコ・デルタ・アジアという銀行は、その個人資
金のための口座の出し入れのために使われていた。それであそこを金融制裁した
のは非常に効いたわけです。今韓国は人道以外の一切の経済交流をやめるといっ
ています。開城公団が残っているのはちょっと問題だと思いますが、金正日の個
人資金に入るカネの流れが大きく減少することになる。
◆中国がどこまで支えるのか
中国がどれくらい金正日に援助を続けるか。中国も公開の席で北の言っている
でっち上げ説に賛成とは言っていません。自制してくれとは言っていますが、奇
襲攻撃で46人戦死させるようなことを、またいつやるかわからないテロ国家、好
戦国家、好戦政権を支持し続けるかどうか。そういう点でも、援助をもらいなが
ら一定程度緊張を高めようとしてやった金正日の狙いは魚雷の半分が出てきたこ
とによってブーメランのように金正日が一番やってほしくない情報が入るという
こと、外貨源が小さくなるという結果を生んだ。あとは外貨源としては中国しか
ない。中国がどこまで支えるのか。中国も公然と今回の弁護はできなくなってい
る。これが大きな状況だと思います。
ですから金正日政権にとって大変苦しい状況になってきたことはまちがいあり
ません。ただ、一つだけ懸念材料は、韓国の中では左派があり、もう一度太陽政
策みたいなことをやるべきだという勢力が結構いる。大統領の周辺にもそういう
人たちがいる。韓国軍は北の攻撃だと最初から言おうとしたけど、それを消そう
とした人たちが李明博大統領周辺にいるのです。韓国の保守派は李明博大統領周
辺の「6人組」がけしからんと、名前を上げて秘書官とか、統一担当補佐官など
を更迭せよと要求しているが実現しない。従って、時間がたって、ほとぼりがさ
めると、もう一回北を援助しようということを李明博政府が言い始めるかもしれ
ない。
南北首脳会談を北朝鮮が李明博大統領に仕掛けてきていたのはまちがいない。
今回の事件で証拠が出なかったらうやむやになって、もしかしたら8月くらいに
南北首脳会談ができたかもしれない。南北首脳会談をやって韓国から援助を取る、
しかし緊張は高める。「陸の宥和と海の緊張」が両方金正日には必要なんです。
しかし、陸でも封鎖になり、そして情報が入ってくることになった、というのが
大きな状況だと思っています。
◆人の往来禁止まで踏み切れるか
そしてこれが拉致問題にどういう影響を与えるのかということを最後に申し上
げます。この場で何回も「拉致被害者救出の3条件」というのを言ってきました
が、第1条件は世論を背景にして日本が拉致被害者救出の体制を作ること、第2条
件は、北朝鮮が日本に接近せざるをえない国内情勢、国際情勢ができること。そ
のチャンスはこれまで2回あった。金丸訪朝の時と小泉訪朝の時、2回とも第2条
件はあったけれども第1条件がきちんとしなかったから中途半端で終わってしまっ
た。
しかし三度目のチャンスが来るのだと言ってきました。その根拠は、金正日政
権が追い込まれていることです。先ほど言いましたように統治基盤がどんどん揺
らいできています。しかし外貨はほしいわけです。去年から民主党政権に対して
激しい政治工作を続けて、5月22日、23日に行われた朝鮮総連の第22回全体大会
で許宗萬が行った報告の中でも依然として「総連は、日本当局が平壌宣言に沿っ
て過去の清算と国交正常化の決断を下すよう、対外活動を組織を挙げて展開し、
日本の報道機関が朝・日国交正常化の早期実現の世論を盛り上げるよう特別に力
を注いでいく。」と公然と述べています。拉致のことには何も触れていないし、
天安のことも何も言っていません。しかし日本側は韓国と足並みを揃えて小さな
ものですけど追加制裁を準備している。送金の限度額の引き下げ、そして手持ち
で持っていく限度額の引き下げです。
それほど意味はないと思いますが、もう一つ注目すべき情報は、今朝鮮総連の
6人だけが自由往来を停止されていますが、それを30人くらいに増やすという案
が出ていると聞く。朝鮮総連の幹部で、今、北朝鮮の国会議員をやっている6人
だけに再入国許可を出さない制裁を加えているがで、もう少し増やすということ
が内部で検討されているようです。それは北にとっては痛いと思います。我々は
全員に出すなと「お金と人を全部止めろ」と求めています。
送金や手持ちの届出額の引き下げは、不許可ではないです。届出すればいいわ
けです。嫌がらせにはなっていますがそれほどは効かない。それよりも総連の幹
部たちが北朝鮮に行けなくなるというのは大きいと思います。そこまで踏み切れ
るかどうかを注目しています。
北朝鮮は日本に活路を求めようという気持ちが未だにあって、工作を仕掛けて
くるでしょうが、日本として韓国とアメリカと足並みを揃えて、北朝鮮の包囲網
を作るという方向に行っていますから、簡単に今の政権が制裁を緩める方向には
いかないと思います。
ただ日本を制裁の輪から外そうとするのであれば、拉致問題で調査を再開する
とか、話し合いをしましょうと言ってくることはありうるかもしれない。客観的
に言うと、北朝鮮が日本を包囲網から離脱させようと何か仕掛けてくるかもしれ
ません。それで拉致について大きな進展があるとも思えないですが、何らかの交
渉がまた始まることはあるかなと見ています。その中で向こうから一定程度情報
が取れたり、一部の人でも帰ってくることができれば進展です。もちろん、それ
で終わりにしないという条件でなければなりません。向こうが苦しくなっていく
から、日本を引き付けるために何かしなければということで部分的進展がありう
るかもしれません。
◆緊急事態に備え被害者救出計画を
そしてもう少し追い込まれてくると、私が言う第3条件で、金正日政権が倒れ
るという事態が現出する。大混乱の中でどうやって助け出すのかということの可
能性も高まってくると思います。既にアメリカのシンクタンクや中国のシンクタ
ンクは、政府系のシンクタンクも含んでですが、倒れた後どういう風にするのか
ということについてシミュレーションをたくさんしています。そして水面下では、
米中でもシンクタンクレベルでは話し合いをしています。
韓国と米軍は北朝鮮が大混乱になった時に北進するという軍事作戦計画を作っ
ています。作戦計画5029です。その時日本が被害者救出のために何ができるのか。
その作戦計画で最初に朝鮮半島に上陸する米軍は沖縄にいる海兵隊です。今の日
米関係では、海兵隊に作戦中に日本のためにこういうこともしてもらいたいとい
う話ができる雰囲気であるのかどうか。荒木和博調査会代表たちはこの間、防衛
省に行って長島政務官に、混乱になった時に拉致被害者を救出する作戦を立てて
ほしいと要請しました。私もそれは大変適切な要請だと思っています。個人的に
私も、長島政務官に会ってその話をしたことがあります。
自民党も急変事態への準備をすべきだという提言を、この間、古屋圭司拉致問
題特別委員長が政府に出しました。金正日政権が倒れた時にどう助けるのか、そ
の準備を一方でしながら、向こうが何か仕掛けてきた時に冷静に対処して情報を
取る。被害者全員が安全に帰ってくることなしには日本の制裁は強まり援助がい
かないんだというメッセージを出し続けることです。金正日政権にも、次の政権
候補にも、中国にも、韓国にも、アメリカにも、日本が最低限絶対降りない線は
ここなのだということを言い続けて変化の時を待つ。
◆「海の魚雷に対して空の魚雷(風船ビラ)を」キャンペーンに日本も参加を
今後来るだろう大きな嵐の中で、拉致被害者を返せという旗が風に飛ばされな
いようにしなければならない。今の「天安」の中でも、もしかしたら拉致が軍事
的緊張の中でかすんでしまうこともありうる。そのためにも対北心理戦の中に、
日本人も拉致されていて、日本は拉致問題で怒っているんだと、日本からお金を
貰おうと思うんだったら拉致被害者を安全をかはって全員返さなければならいと
いうことを、ビラやラジオの中に、よりたくさん入れてもらえる方法がないのか
と思っています。ソウルにある自由北朝鮮放送という脱北者がやっているラジオ
局には私の番組がありますし、日本の調査会の「しおけぜ」や政府の「ふるさと
の風」も強化すべきです。
また、韓国の保守派は、大々的に韓国の国内でお金を集めて風船を飛ばす運動
を始めました。「海の魚雷に対して空の魚雷を」というキャンペーンをやってい
ます。1万個くらい風船を飛ばして、「北の空を真っ黒にしてやったら金正日政
権は倒れる」という新聞広告が出ていましたが、その撒かれるビラの中に、日本
人拉致問題や日本人妻問題等、日本に関係する問題も書き込んでもらうようにで
きないのか。その運動に日本からも国民のカンパで参加することができないのか、
ということについて韓国側と協議をしているところです。もしできるようになれ
ば、皆さんの前に出て、国民的な寄付を求めていきたい。
朝鮮半島情勢が大きく揺れ動く中で、拉致問題も含めで全面的解決をしてもら
わなきゃ困る。日本にとっては拉致問題が最優先で解決されなければならない問
題であって、軍事的な緊張がどう高まろうと、このことがおいてけぼりにされる
ことになっては困る、ということを救出運動として言い続けなければいけない、
と思っています。
◆「もう我慢できない。行動したい」?6月10日国民大行進
そのためにも、6月10日のデモでは、こういう状況の中だからこそ、拉致も理
由にして追加制裁をしろと、あるいは本来なら拉致だけを理由にして追加制裁を
しろというのが我々の主張だったのですが、今追加制裁が議論されている中、拉
致も当然理由なのだ、日本人は拉致についてもっと怒っているんだということを、
韓国や国際社会や、日本国内の朝鮮総連にもぶつけることができるかどうか。
世論を背景にして日本政府が全員取り戻すという体制を崩さないようにさせる
というのが我々民間の運動の第一です。その中で、情勢が大きく動こうとする時
にこそ日本は拉致では絶対譲歩しないのだという声を上げなければならないと思っ
ています。是非6月10日に多くの人たちに集まっていただければと思います。こ
のデモは、前の国民大集会の時、家族会の人たち、特に横田早紀江さんなどが、
「もう我慢できない。行動したい」ということで始まったことです。
以上
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■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
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