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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

参考資料・神奈川県の朝鮮学校調査のずさんさ(2010/12/18)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2010.12.18)

■参考資料・神奈川県の朝鮮学校調査のずさんさ

 昨日、家族会・救う会は「神奈川県の朝鮮学校補助決定に反対する声明」を発表し
た。そこで言及したように、神奈川県は朝鮮学校の教育内容などについて県独自の調
査を行い、「朝鮮学校における教育内容については、日本や国際社会における一般的
認識に沿った教育が実施されることが確認された」という結論を下したが、その調査
のやり方は朝鮮学校の言い分をほぼ無条件に受け入れるずさんなものだった。そのこ
とは、神奈川県が公表している調査結果報告「朝鮮学校の教育内容の確認及び私立学
校検査の結果について」http://www.pref.kanagawa.jp/press/1012/022/index.htmlを
見るとよくわかる。

 ここで、朝鮮学校教科書における拉致問題と大韓機爆破事件に関する問題記述に関
して神奈川県がどの様な調査を実施して「日本や国際社会における一般的認識に沿っ
た教育が実施されることが確認された」という結論を出したのか、その部分を詳しい
解説を付けて参考資料としてお伝えする。

参考資料・神奈川県が問題ないと確認した朝鮮学校の拉致問題わい曲教育内容

神奈川県「朝鮮学校の教育内容の確認及び私立学校検査の結果について」
(平成22年12月15日)

・確認結果の総括

<拉致問題について>
 高級部3年で使用されている「現代朝鮮歴史」の教科書中、拉致問題に関して、日本
や国際社会における一般認識とは異なった記述や誤解を与える表現があった。教科書
の記述内容は次のとおり。

「拉致問題を極大化し、反共和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げること
によって、日本社会には極端な民族排他主義的雰囲気がつくりだされた。」(朝鮮学校
側の翻訳による)

 教科書の記述は上記のとおりであるが、朝鮮学校では、北朝鮮による日本人の拉致
を事実として認め「あってはならないこと」、「許しがたい非人道的な行為」である
と教えており、2002年9月の日朝平壌宣言の中で、朝鮮側が日本人拉致問題について認
め、遺憾の意を表したことについても教えているとしている。
 また、「拉致問題を極大化」したとする記述については、日朝平壌宣言において、
拉致問題が公式に認められて以来、朝鮮学校の生徒をはじめ、在日朝鮮人に対する様々
な嫌がらせが頻発した事態を表現しようとしたものであり、その意図が一般に誤解を
与える表現になっているとの認識を示している。
 教科書の今後の取り扱いに関しては、全国朝鮮高級学校校長会をとおして、教科書
編纂委員会に教科書の見直しを働きかけていくとともに、教科書改訂までの間は、拉
致問題についてしっかりと教えていきたいとしている。

<大韓航空機事件について>
 高級部3年で使用されている「現代朝鮮歴史」の教科書中、大韓航空機事件に関して、
日本や国際社会における一般的認識とは異なった記述や誤解を与える表現があった。
教科書の記述内容は次のとおり。

 「『民政党大統領候補』であるロウテウは、自分の経歴を隠すために『普通の人』
という宣伝を大々的に繰り広げながら、莫大な資金を投入したが『選挙戦』で優勢を
占められなかった。このような環境の中1987年11月に操作した『南朝鮮旅客機失踪事
件』は、ロウテウの『選挙戦』に決定的に有利な影響を与えた。」また、コラムには
『南朝鮮旅客機失踪事件』は、1987年11月28日、イラクのバグダッドを出発し、ソウ
ルを目指した南朝鮮旅客機がタイーミャンマー国境上空で失踪した事件。南朝鮮当局
はこの事件を『北朝鮮工作員、キムヒョンヒ』が起こしたとねつ造し、『反共和国』
騒動を繰り広げ、彼女を第十三代『大統領選挙』の前日に南朝鮮に移送する事によっ
て、ロウテウの『当選』に有利な環境を整えた。」(朝鮮学校側の翻訳による)

 教科書の記述は上記のとおりであるが、朝鮮学校では、大韓航空機事件を教科書の
中で韓国の「ねつ造」と表現したことについて、大韓航空機事件の真相に関して歴史的
な評価の定まっていない部分もあり、韓国においてもいまだに議論されている事案と
している。
 これについては、現在、また今後の扱いとして、日本において報道されている内容
を含め、しっかりと教えていくとしている。
 また、大韓航空機事件に関する教科書の記述については、表現を見直す方向で教科
書編纂委員会に要望していくとしている。


西岡力・解説

 上で見たとおり、神奈川県の調査では従来から家族会・救う会が指摘してきたよう
に、拉致問題と大韓機爆破事件についての教科書記述に問題があることを認めている。

 すなわち、「高級部3年で使用されている『現代朝鮮歴史』の教科書中、拉致問題に
関して、日本や国際社会における一般認識とは異なった記述や誤解を与える表現があっ
た」「高級部3年で使用されている『現代朝鮮歴史』の教科書中、大韓航空機事件に関
して、日本や国際社会における一般的認識とは異なった記述や誤解を与える表現があっ
た」とされている。
 朝鮮学校は神奈川県に対して、「(拉致問題に関して)全国朝鮮高級学校校長会をと
おして、教科書編纂委員会に教科書の見直しを働きかけていく」「(大韓機爆破事件に
関して)表現を見直す方向で教科書編纂委員会に要望していく」として、当面はこの記
述のある教科書を使いつづけることを堂々と表明し、また将来における記述改訂につ
いても「働きかける」「要望する」などとしか述べず確約しなかった。
 そして、「教科書改訂までの間は、拉致問題についてしっかりと教えていきたい」
「(大韓機爆破事件に関して)日本において報道されている内容を含め、しっかりと教
えていく」とやはり抽象的な口約束だけを行った。
 本来なら、このような記述がいつから教科書に書かれており、それがいままで問題
視されなかった理由は何か、この記述を即時に削除するか塗りつぶす用意はあるかな
どを調査の中で糺すべきだった。だが、神奈川県は以上のようないい加減な弁明を受
け入れて「日本や国際社会における一般的認識に沿った教育が実施されることが確認
された」という結論を下してしまった。

 また、報告書の内容を詳しく検討すると、神奈川県の調査がいかにずさんなもので
あったかを証明する訳文の扱いのおかしさが判明した。すなわち、朝鮮学校は拉致問
題に関する教科書記述から問題部分を削除した訳文を神奈川県に提出し、神奈川県も
調査の過程でそれを問題とせず受け入れている。その結果、朝鮮学校側の一方的弁解
が正当化されているのだ。神奈川県は訳文操作を通じた朝鮮学校のごまかしに加担し
たと言わざるを得ない。以下、詳しく指摘しておく。

 神奈川県は調査報告書にいて、拉致問題に関する教科書の記述を朝鮮学校の訳文を
使い以下のように引用している。

「拉致問題を極大化し、反共和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げること
によって、日本社会には極端な民族排他主義的雰囲気がつくりだされた。」(朝鮮学校
側の翻訳による)

 しかし、教科書朝鮮語原文では、この部分の前に「2002年9月、朝日平壌宣言発表以
後、日本当局は」という部分がある。朝鮮学校は訳文でその部分を意図的に削除して
いる。また、教科書朝鮮語原文では「拉致問題」という語に二重カギ《 》が付けら
れているが朝鮮学校訳文ではそれが省かれている。
 確認のため、朝鮮語原文から西岡が直訳したものをここに掲げておく。
「2002年9月、朝日平壌宣言発表以後、日本当局は《拉致問題》を極大化し、反共和国、
反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げることによって日本社会には極端な民族排
他主義的雰囲気が造成されていった」

 神奈川県は意図的な削除を含む朝鮮学校訳文を調査の過程で問題とせず、無条件で
報告書に掲載した。そのため、以下に指摘するような教科書記述の重大な問題性が隠
蔽されてしまった。報告書によると調査には朝鮮語の通訳翻訳が可能な神奈川県職員
が参加している。それなのに、朝鮮学校の訳文の重大な欠陥を全く指摘していない。
朝鮮学校の説明を検証なく一方的に受け入れた神奈川県の調査のずさんさが、ここに
端的に表れている。

 教科書朝鮮語原文は、日本当局が主語となっている。「《拉致問題》を極大化し、
反共和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げ(た)」主体が日本当局だと書い
ているのだ。ここでいう「日本当局」とは、広い意味でとれば政府だけでなく神奈川
県を含む地方自治体も含まれる。しかし、神奈川県の報告書では、主語を省くことに
よりだれがそのようなことを行ったのか不明確な表現とされてしまい、記述の問題性
が分からなくされている。
 朝鮮学校はこの記述について「在日朝鮮人に対する様々な嫌がらせが頻発した事態
を表現しようとしたもの」と弁解しているが、そうだとすると「日本当局」が嫌がら
せを行ったと主張しているということになる。神奈川県は、主語を省く訳文をそのま
ま採用してそのようなでたらめな弁解をそのまま受け入れている。

 また、教科書原文で拉致問題という語に《 》がつけられていることは、「いわゆ
る」「言うところの」などというニアンスが含まれ、拉致を事実だと認めない表現だ。
彼らの《 》の用法は、たとえば、同じ教科書の中で韓国の歴代政権について言及す
るとき、必ず政権という語に《 》を付けていることからよく分かる。すなわち、韓
国という国家と政権を認めていないことを示すために《 》をつけているのだ。とこ
ろが、神奈川県は朝鮮学校が提出した拉致問題という語につけられた《 》を省いた
訳文をやはり問題とせず、そのまま受け入れて、ここでも教科書記述の問題性の追及
を放棄している。

 最後に、大韓機爆破事件に関する部分の問題点を指摘しておく。神奈川県は報告書
で「<大韓航空機事件について>」という見出しを付けている。爆破という語を落とし
ているのだ。この表現では、わが国政府と国連安保理事会が北朝鮮によるテロと断定
して国際社会が制裁をかけた事件について、北朝鮮の犯行ではないという北朝鮮側の
主張にも配慮するかの印象がある。朝鮮学校は「大韓航空機事件の真相に関して歴史
的な評価の定まっていない」などと強弁しているが、それに対して神奈川県としてテ
ロに反対する立場からのきちんとした反論がなされていないことも、調査の問題点で
ある。



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