救う会全国協議会

〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
TEL:03-3946-5780 FAX:03-3946-5784 info@sukuukai.jp

北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

流動化する北朝鮮情勢と救出戦略?12/10国際シンポ全記録(2010/12/22)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2010.12.22)


■流動化する北朝鮮情勢と救出戦略?12/10国際シンポ全記録

主催=家族会・救う会・拉致議連
於、東京・永田町・星陵会館

◆金正日体制を背後で支える中国にどのように向き合うか
総合司会=櫻井よしこ・ジャーナリスト

皆様、こんにちは。国際シンポジウムを始めさせていただきます。今日は、
「流動化する北朝鮮情勢と救出戦略」とテーマで行います。韓国からも専門家を
お招きしました。私たちは北朝鮮が非常に急を告げているということを認識し、
有事がいつ起きてもおかしくない状況の中で、拉致被害者たちをどのように助け
出すことができるのか、わが国に連れ戻すことができるのか、を単に観念論では
なく、なるべく具体的に話をすすめていきたいと思っています。

拉致問題というのは、本当に長い間、わが国が抱えている課題です。この課題
にどのように取り組むかということは、日本国が国家であるかどうかということ
を試すことにもなります。

13歳で連れて行かれためぐみさんが今46歳です。23歳で姿を消した恵子さんが
50歳です。ただ単に、ある町のある少女が、ある所のある女学生がいなくなった
ということではなく、ここには北朝鮮の国家主権が関わっている。他国の主権に
よって、わが国の主権が侵されたという、国家としては断じて許すことができな
い案件であるという重大な認識が必要だと思います。

その時に、北朝鮮だけを念頭にこの問題を論じていても、解決はなかなか難し
い。北朝鮮は何ゆえにこんな蛮行を続けながら存続を続けることができるのか。
北朝鮮を助けているのはどういう勢力なのか。紛れもなくそれは中国です。北朝
鮮問題が中国問題であるというのは、そういうことなんです。私たちは、外交に
おいて北朝鮮を念頭におきながらも、その背後で北朝鮮の金正日体制をしっかり
と支え続け、現在も支えている中国にどのように向き合うかということを考えな
ければなりません。

その点において、自民党時代も十分ではありませんでした。安倍さんの時に、
ようやく国家としての取組の形と土台ができました。その後、日本国の取組はま
たもや弱体化し、現政権になってからさらに弱まったと私は感じています。

そういうことも含めて、今日は仙谷さんにもお出でいただきました。お忙しい
中本当によくお時間を作ってくださったと心から感謝します。まず、このシンポ
ジウムが実りあるものになりますように、具体的なものが出てきますように祈り
つつ、まず、家族会代表の飯塚繁雄さんにご挨拶をいただきます。

【主催者挨拶】
◆専任の拉致担当大臣を、見える形の対応を
飯塚繁雄・北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)代表

またこうして皆さんとともにシンポジウムを開いたり、そして集会を何回もやっ
ていただきました。しかしこの間、進展がなくて新しい話ができない状態です。
新しいことと言えば、状況が変わった時に、我々はどうしていこうかという話題、
課題があるわけですが、残念ながらこの問題を担当する内閣の担当大臣が何回も
代わってしまって、私たちが取り付く島もないという感じもしています。

拉致問題は国会の最優先課題、重要課題だと言っていますが、それが形として
はっきり見えてこないのが残念です。そういうことでは、この問題は一刻も早く、
ということは当然ですが、今年こそは、あるいは1年後にはとか、2年間の間に必
ず解決するというはっきりとした姿勢が見えてこないので、私たちとしては、か
なりの焦燥感を抱いております。

そういう意味では、家族は、もちろん当の被害者たちも年々歳をとってきてい
ます。そういうことを考えれば、なにをさておいてもという状態がほしいわけで
すが、なかなかそういったことが目に見えないのです。

今日は、仙谷官房長官がいらっしゃっていますが、できれば兼任ではなく、拉
致問題だけを考える専任の大臣を置いてほしいというのが私たちの思いです。そ
して、当然閣内では連携をとっていただけると思いますが、この問題だけを24時
間考え、実行し、戦略を含む具体的な動きが目に見える形であればという気持ち
です。

そういうことでは、今、仙谷拉致担当大臣にすべてをお願いするしかないとい
う場面ですが、私たちはどの場面であっても、時の担当大臣、時の総理大臣にお
願いするしかないということも考え合わせ、今後、この問題がいかにしたら解決
するかという具体策をどんどん出していただいて、やってるなということが見え
る情報や対応をお願いしたいと考えています。

今日は、韓国の先生方もお呼びして、拉致問題を取り巻く情勢がどうなってる
のか、しからばそういう情勢を踏まえて日本としてこれからどうしたらいいのか、
我々はどう行動したらいいのか、この辺を見極めながらシンポジウムを進行させ
ていきたいと思っています。

今の現状を見ると、これからも長くなると思います。あまりにも取り巻く問題
が多すぎます。しかし、その中でも、拉致問題を重視していただき、我々もしっ
かり注視して意見も言っていきたいと考えています。今後とも、皆様の御支援を
宜しくお願いいたします。ありがとうございました。


櫻井よしこ
平沼さんは、ずっと長い間この拉致議連の会長として、また有力な政治家とし
て関わってきてくださいました。拉致問題が私たちに教えてくれたことは、これ
は横田早紀江さんがおっしゃったことですが、戦後私たちが忘れてきた国家の役
割というものを拉致問題は多くの日本人に思い出させたのではないか。もちろん
私たちは毎年毎年多くの人たちを集めて拉致の集会をしてきました。今日のシン
ポジウムは集会ではありません。具体的にどのようにして、日本国の力を拉致問
題解決の方向に向けて構築していくかということを考えるためのシンポジウムで
す。その意味で、政治家の役割は最も大きいのだと思います。平沼先生どうぞ宜
しくお願いいたします。


◆関係者の同意を得て議連の会長として北朝鮮と交渉を
平沼赳夫(拉致議連会長)

今日は皆様方ご多忙の中、このシンポジウムにご参集をいただき、主催者の一
人として心からまず御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございま
した。

私は11月1日に、韓国のソウルに行ってきました。今拉致問題は国際的になっ
ていまして、わが国を含め全世界で拉致をされた国が12か国あります。お隣の韓
国は、金大中政権、盧武鉉政権が続きました。両政権とも北に対して太陽政策を
とって、拉致問題は真剣にやってくれなかったわけです。約10年余り、被害者の
皆様は本当に苦労されていたと思います。

ご承知のように、韓国では李明博政権が誕生し状況が大変変わってきました。
11月1日には、韓国の総理に被害者である4か国の皆様が集まり、私も日本の拉致
議連の会長として参加させていただきました。いままでなかったことですが、韓
国の政府内にそれを受け付ける部署ができたわけです。そして、韓国の国会議員
でも前面に出て、この問題を解決しようという会議もさせていただきましたし、
政府の要人とも会談をさせていただきました。

わが日本と、韓国と、拉致の被害にあったタイ、ヨーロッパのルーマニアから
も被害者の家族の方々がこられて、熱心に議論をしました。今日は韓国からも関
係者に来ていただいていますが、本当は韓国の拉致は大変大きな問題で、まず第
1段階は朝鮮動乱の時に8万人とも10万人とも言われる拉致があったわけです。例
えば学校の先生や、会社の技術者や、さらには色々な技能を持った人たち、これ
らの人をみんな北に連れて帰ってしまった。これが第1次の拉致です。

そして朝鮮動乱後、わが国以上の拉致被害者がいる。そういうことで、韓国の
皆様も、新しい政権の下で、一生懸命頑張っておられます。

私は拉致議連の会長をお引受けしてから丸5年になります。最初お受けする時
に、いくつか原則を作りましたが、一つの原則は皆様方の同意をいただいて破っ
てもいいのではないかと思っています。それはどういう原則かというと、北朝鮮
から拉致議連の会長に色々接触があるだろう。しかし家族会、救う会の皆様方も
いらっしゃる。特定失踪者の皆様方もいらっしゃる。仙谷官房長官が来られてお
りますが、内閣府の方々もいるし、外務省もいる。これだけ関係者が多い。最終
的な解決は政府対政府でやらなければいけない。だから北朝鮮からどんな働きか
けがあっても、私は皆様方の了解をいただいた上で北朝鮮と接触をしよう。こう
いう原則を立てました。

就任直後から、北朝鮮から拉致議連の平沼赳夫に会いたいという申し出があっ
た。あなたの指定する場所にどこでも行くから来てほしい、と。あなたがフィリ
ピンのマニラと言えば我々もマニラに行く。タイのバンコクだったら、我々もバ
ンコクに行く。内閣府、外務省、家族会・救う会の皆様、議連の皆様はそういう
ことをいっさいご承知ではなかった。だから私は北朝鮮の申し出をその時点で断っ
たわけです。

しかしこれだけ日数が経ち、なかなか解決できないということであれば、皆様
のご同意をいただいて、地の果てでも行って、議連の会長として交渉をさせてい
ただきたい、こう思うようになりました。

横田ご夫妻がいらっしゃいますが、横田めぐみさんが新潟県で拉致されてから
33年も経っているわけです。一向に解決できていない。私は毎日責任を痛感して
います。ですから、原則を破ってでも皆様方の同意をいただいて、そろそろ決然
と行動をしなければならないと思っていますので、皆様方のご同意をなにとぞ宜
しくお願いいたします。

本日はご参加をいただき誠にありがとうございました。


櫻井よしこ
どうも平沼先生ありがとうございました。今日は仙谷さんにいらしていただい
て、先ほど申し上げたように非常に感謝しております。同時に、家族会の皆様方、
そしてこの拉致問題に多大な関心を抱いている多くの人々と思いを共有するつも
りで、いくつか長官にお尋ねをしたいことがあります。

拉致問題に限らず一つの外交交渉を解決するというのは大変な努力がいるわけ
で、簡単でないのは分かります。歴代の政権が足踏みを続けてきたことも事実で
す。しかし今の日本国の拉致問題に対する外交の構えを見ると、本当にやる気が
あるのかどうか疑わざるをえません。

その一つは、大変お忙しいお体で官房長官をお勤めになり、法務大臣をお勤め
になり、拉致担当大臣をお勤めになっておられる。身体がいくつあっても足りな
い状況です。頭が良くて、意欲があって、やる気がある官房長官でいらっしゃい
ますから、すべてをご自分でなさりたいという責任感も重々分かりますが、しか
し法務大臣になられてからも法務省にはほとんど行っておられないと聞いており
ます。どこにいても仕事ができるのは確かですが、この拉致問題のように、国民
の命がかかっている、国民の人生がかかっている、国家として拉致された人間を
どうやって取戻すかという国家としてのあり方の問題も関わっていることについ
て、三役の内の一つとして、国民の目には片手間に見えるような対応でよろしい
のかどうか。

私は本当に、非難のための非難ではなく、国民の一人として心からうかがいた
いと思っています。お出でくださってありがとうございました。ご挨拶をお願い
いたします。

【来賓挨拶】
◆政府としてやれることは何でもやる、そのことを行動に移す
仙谷由人・拉致問題担当大臣(内閣官房長官)

拉致問題担当大臣を務めております。また内閣官房長官の仙谷由人です。本日
は、家族会、救う会、拉致議連主催の国際シンポジウムにお招きをいただきまし
た。政府を代表して、ご挨拶をいたします。

このシンポジウムにはこんなに多くの方々が参加されています。このこと自体
が、拉致問題を解決したいという皆様の強い、熱いお気持ちだと受け止めます。
深く感銘を受け、皆様に改めて感謝したいと思います。

またこのシンポジウムには、飯塚代表や横田ご夫妻を初め、多くの拉致被害者
のご家族がご登壇されています。お子さんや、ご兄弟などを連れさられる、拉致
をされるという、誠に戦後日本ではほとんど想像だにできない人権蹂躙を受け、
既に30年以上という想像を絶する歳月を経ております。政府の責任者として、未
だに拉致問題を解決できないでいることにつき大変申し訳なく、皆様にも遺憾の
意を表したいと存じます。

拉致問題は、改めて私が申し上げるまでもなく、わが日本国に対する極めて重
大な主権侵害であると私は考えておりますし、さらに被害にあわれたお一人お一
人にとっては、すべての自由を奪われ、すべての未来を奪われる。こんな非道な
ことがあっていいのか、決して許されない、そういう極めて重大な全人格、全人
権に対する侵害であると私も考えています。

本日は韓国からも専門家がお見えになっておられます。先ほどご紹介いただき
ましたが、韓国も拉致の被害者が500名を超えていると伺っています。また朝鮮
戦争の時には北朝鮮が南侵をした際に、10万人に及ぶ人々を連れ帰ったというこ
とも伺っています。

そして皆様方もご存知のように、先月の23日には、韓国延坪島に北朝鮮が突如、
民間人に被害が及ぶことを敢えて冒してまで砲撃を加えるという蛮行に出ました。
今年の3月には、韓国の哨戒艦天安号が真っ二つに爆破されるという事件を起こ
した。それに引続いての挑発、あるいは蛮行です。

このような挑発行為が、わが国を含む北東アジア全体の平和と安全を損なって
いるわけで、私どもは大きな、強い非難を北朝鮮にしなければならないと思いま
す。政府はこうした事態を踏まえながら11月29日に、昨年10月に新たに設置した
本部としては4回目の拉致問題本部会合を開催しました。この場において、全閣
僚出席の下、本部長である菅総理から拉致問題の解決に向けて、北朝鮮に対する
さらなる措置の検討及び厳格な法執行をはかること、そして引続き北朝鮮に対し
て具体的な行動を強く求めること、さらには情報集の分析、管理強化、拉致の疑
いを排除できない事案に対する操作・調査の徹底等8項目からなる指示を出した
ところです。

政府としては、1日でも早い拉致被害者の帰国を実現すべく、やれることは何
でもやるという覚悟で臨んでまいります。

先ほど、平沼赳夫先生から、皆さん方のご同意を得て北朝鮮の然るべき筋とも
会う決意があるという話をこの場でされました。私は今、伺っていまして、平沼
先生とも緊密に連絡をとらせていただいて、正規の外交ルートの他、政府として
やれることは何でもやる、そのことを行動に移す、そのつもりでこの拉致問題担
当大臣を務めたいと考えておりますので、皆様方の政府の取組みに対する変わら
ないご理解とご支援をお願い申し上げます。

重ねて、皆様方のご指導、ご提案をいただいて、政府としてやれることは何で
もやるというつもりで職務に勤めますので、ご支援をお願い申し上げ、私の挨拶
とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。


櫻井よしこ
これから第1部に入ります。

仙谷さんのご挨拶は、どのように申し上げてよいのか分からないような気持ち
でして、何も言いませんが、これからはかなりしっかりしたお話が聞けるのでは
ないかと思います。

まず基調報告から始めます。

今日は韓国から脱北者の方と軍事の専門家のお二方をお招きしています。まず、
脱北者の金聖▲(▲=王ヘンに文、キム・ソンミン)さんに、北朝鮮で何が起き
ているのかについてお話を伺いたいと思います。金聖▲さんは自由北朝鮮放送の
代表です。北朝鮮に向けて、韓国の情勢、日本の情勢、拉致被害者への直接のメッ
セージ等様々なことを伝えておられます。まず金聖▲さん宜しくお願いいたしま
す。私たちにはなじみの深い方です。
(以下通訳は洪●氏=討論にも参加、●=榮の木が火、ホン・ヒョン)

第1部 「流動化する北朝鮮情勢と救出戦略」

【基調報告】
◆金正日・金正恩後継体制を中心に見た最近の北朝鮮

金聖▲・(▲=王ヘンに文)自由北朝鮮放送代表

また皆さんにお会いできて嬉しく思います。今日、事前にお配りしたレジュメ
メールニュース2010.12.13)は、お読みになれば分かるものですので目を通
してください。これから申し上げることは心で聞いてください。

夕べ、横田めぐみさんのお母さんに会いました。「去年お会いした時よりお顔
がよくなりました」と挨拶をしたら、「ああそうですか」ということでした。隣
の飯塚代表が、「あなたにはいい顔に見えたかもしれませんが、我々家族の心の
中はいつも灰でいっぱいです」と言われました。

その瞬間、「ああ私が間違ったな」と思いました。ソウルから来た私に、いつ
も親切にして下さいますが、「金正日に子どもを奪われた人たちの心を、ちょっ
と忘れていたな」と反省しました。

私はこの5年間、拉致問題の解決を少しでも助けたいという気持ちで、我々の
同僚の脱北者たちと一緒に、毎週土曜日、30分ずつ、拉致問題の番組を続けてき
ました。自由北朝鮮放送で代表的な番組は、「西岡の拉致の話」、それから日本
政府が提供する拉致被害者家族の声を入れた「家族の手紙」、その他色々な対談
番組等を放送しています。私たちはこの放送を通じて、家族を失った方々の愛と
希望と信頼を伝えてきたつもりです。それからここにおられる方々の希望と、日
本政府の決意を北の当局に伝えるという姿勢でやってきました。

その過程で、韓国にいる脱北者の同僚から、「私が北であなた方の放送を聞い
た。それで拉致問題の深刻さが分かった。日本政府が北に送ったラジオやCDを自
分は持っている」という話も聞いています。それは日本国民と拉致被害者の家族
の希望を北に出したことに対してのこだまだったと思います。しかし、ここです
べてのことを申し上げると大きな失望感が感じられるかもしれません。

北の当局は日本に対して、いかなる信頼できるような返答もしておりません。
むしろ、日本政府の原則的な北に対する政策を非難し続けています。甚だしくは、
この10月10日に、北の当局は新しい独裁者を後継者として登場させました。金正
恩の登場は、金日成、金正日に続いての独裁体制が変わらないということの宣言
です。拉致問題を含む、反人類的、反歴史的な犯罪を続けるという金正日の挑戦
です。

皆さんご承知のように、今年は西海で韓国の天安艦を撃沈させ、46人を死亡さ
せるという蛮行を行いました。つい最近は大韓民国の領土である延坪島に対して
百数十発の砲撃を加えました。これは韓国だけでなく、世界の正義と平和と良心
に対しての挑戦だと思います。こういうことを通じて、金正恩という北の新しく
登場した独裁者は、自分の祖父、父をしのぐようなやくざ、独裁者だということ
が分かります。

こういう行動を見ると、人間の命を蝿ほども思わず、国際社会の原則と秩序に
対して、テロと砲撃とミサイル等を、韓国、日本だけでなく、国際社会に対して
続けるということが分かります。皆様もよくご存知のように、北は射程4000キロ
の、あるいは6000キロの弾道ミサイルと、核を持っていると自慢しながら、限り
なく日本、韓国を脅しております。

そういう独裁者の金正日らに向けて、拉致被害者の救出など希望のメッセージ
ばかりを送り続けたことが恥ずかしく思えました。同時に我々は、いつ死ぬか分
からない独裁者、それからいつ爆発するか分からない北の時限爆弾のような体制
とともに、我々が生活しているということも自覚しなければなりません。

金正日の死でもたらされる混乱、それから金正恩という後継者、こういう中味
が空っぽの体制と我々は向かい合っているという現実を認識しなければならない
と思います。我々は明日でも北の急変事態が起こりうるということを考えなくて
はなりません。

では急変事態の時、拉致被害者をどのように救出するのか、それからそのよう
な体制にどのように向かい合うべきなのかということを考えるべきだと思います。
金正日政権に対しては、これ以上我々が何かを望んで、お願いするような形のこ
とを続けてはいけないと思います。拉致被害者の家族の皆様、そして被害者の皆
様への我々の愛は、実は金正日に対しての憎悪と同じ言葉だと思います。

我々が拉致被害者を救出するという希望、それから北に対して家族を返してく
れというお願いが、もし北に対する憎悪心や怒りがなければ、金正日は我々の気
持ちと努力をもてあそぶようなことばかりを続けると思います。私は、我々が家
族を愛するからこそ、金正日を憎まなければならないと思います。金正日に対し
ての怒りがすべての長所に、そして日本政府の意思になる時、金正日は屈服する
ようになると思います。
ありがとうございました。


櫻井よしこ
金正日への怒りが、わが国政府に本当にあるのかと、今金聖▲さんのお話をう
かがいながら考えました。

次に、許南▼(▼=サンズイに省、ホ・ナムソン)さんにお願い致します。許
博士は陸軍士官学校を卒業し、米国に留学、陸軍士官学校の教授、それから国防
大学の安保問題研究所所長を務められ、盧泰愚権の時、国防担当補佐官を勤め
ました。韓国切っての戦略問題の専門家です。現在、韓国危機管理研究所所長を
務めておられます。


◆北朝鮮情勢激変に備えた韓日安保協力方案
許南▼・韓国危機管理研究所所長

金聖?代表は北からの脱北者ですが、私は北に行ったことはありません。もし
私が北に行ったら、多分この場には来られなかったと思います。それにも関わら
ず、今日私が皆様に北朝鮮に関して申し上げるのは、北を研究する人々は、みん
な同じだと思いますが、実はこの問題は真っ暗な夜にカラスを見るような、そん
な問題です。

今日は東北アジアの情勢について、中国と関連して少し申し上げ、次に北の情
勢を説明し、それから今日私に任された一番大事な部分である、日韓がどのよう
に協力すべきかについてお話ししたいと思います。

東北アジアの情勢を一言で、不安な三重奏だと思います。第1に、中国が軍事
力を強化しながら地域の覇権を求めています。第2に、中国の軍事力の強化に比
べ、アメリカの軍事体制は、過去に比べて非常に低下しています。というのは、
長い景気の低迷と、アフガンやイラクとの戦争の長期化による反戦、厭戦雰囲気
が背景にあります。3番目に、北の体制がますます脆弱化し、それに伴い、対外
的に好戦性が増してきています。

この中でも我々が注意しなければならないのは、中国変数です。インドのネー
ル首相は、彼の自伝書の中で、歴史的に見て統一された中国はいつも隣国の脅威
になったと書いています。ある意味で北朝鮮は今、この地球上で、もしかしたら
唯一の中国の衛星国家になっています。

北朝鮮は天安艦の撃沈、延坪島に対しての砲撃、それから核開発を続けていま
すが、このような挑発で国際社会から孤立すればするほど、中国への依存度が高
まっておりますので、中国は内心そういうふうに北が暴走して孤立する状況を、
自分の衛星国化に利用するという側面があると思います。それで簡単に申し上げ
ると、過去のソ連のように、中国が今この地域で悪の集団の親分になり、北がそ
の行動隊長のようなことをやっていると考えています。

これから北の現状について申し上げます。金正日が仮に2、3年以内に死にます
と、金正恩の後見人の地位をめぐって、北の内部で権力闘争が展開される可能性
が高いと予想します。中国は、北が崩壊するよりは、北が核を持ったまま存続す
ることを選択すると思います。北は生存の最後のあがきとして、生き残るために
大韓民国に対しての挑発を続けると思います。

なぜ北は挑発を続けるのでしょうか。もちろん内部の色々な不満、矛盾を統制
するための側面もあると思います。北は挑発による国際的な非難や孤立、制裁な
どの損失よりは、南に対しての統一戦線次元での利益が大きいために、このよう
な挑発を続けると思います。延坪島砲撃事態で分かったように、戦争を恐れる韓
国国民は相当多いです。北朝鮮は、こういう戦争を恐れる韓国内部の世論をそそ
のかす親北・左翼を政治的に支援し、国際社会の韓半島情勢に対する不安感を刺
激し続けるでしょう。北朝鮮が韓国内の葛藤を激化させれば、韓国の従北勢力は
これを「戦争勢力」と「平和勢力」の葛藤と糊塗し、自分たちが「平和勢力」だと扇動
します。

皮肉にも、北が南に対して挑発をすればするほど、親北勢力が大きくなってい
ます。この現象が、今年(2010)6月2日に韓国で統一地方選挙がありましたが、
その時、親北勢力が勝利した背景になります。

2年後の2012年、韓国では国会議員の総選挙と大統領選挙があります。私が懸
念するのは、2012年の選挙が近づけば近づくほど、北の対南挑発が大きくなる可
能性があり、これを注目すべきだと思います。

では北はいつまで耐えられるでしょうか。私は、早ければ5年以内、遅くとも
10年以内に、北の体制に重大な、意味のある変化、峠が来ると思います。私は歴
史学を勉強しましたが、人類の歴史を見ますと、そもそも一つの国、一つの体制
の崩壊は、外部からの侵略によってというよりは、内部的な矛盾によって自ら崩
壊するのがほとんどだったと思います。

北の経済は、もはや戻れない橋を渡りました。その限界に直面したのを示した
のが、いわゆる貨幣改革の失敗でした。それから今年の天安艦の撃沈や延坪島へ
の砲撃は、それが外に対して現われたあがきだったと思います。こういうことご
とは、北の体制がもはや限界に達したとの反証になります。

ただここで我々が注意しなければならないことは、北が崩壊する時、爆発の破
片が韓国や日本にまで及ばないように、それを警戒して管理することだと思いま
す。つまり、例えば古い建物が、もう建築寿命が終わった建物が崩れる時、間違
うと他の人に被害を及ぼすのと同じです。そういう点から、私は今日、日本と韓
国がこういう状況で緊密に協力することがいかに大事かをみなさんに申し上げた
いと思います。

先ほども少し触れましたが、今東北アジアで展開されている戦いの本質は善と
悪の対決だと思います。人権対反人倫、自由民主対全体主義独裁、まさにこれが、
私が申し上げる善と悪の対決です。韓国と日本は自由民主義と資本主義自由経済
体制を共有する善の陣営だと言えます。もう一方には不良国家である北とこれを
後見する膨張主義的な中国があります。これが悪の陣営です。

中国が韓半島の自由民主主義に反対する理由は明らかです。自分のチンピラと
して前衛隊を勤めている北が崩れなければ、自分たちの緩衝地域が保たれます。
もう一つは韓半島が自由民主主義で統一されれば、中国は自分たちの一党独裁体
制が崩れる危険があるからです。

皆さんご存知のように、韓国は建国以来60年余り、大陸からの共産主義の津波
を防ぐ防波堤の役割を担ってきました。これから我々が、アジア大陸全体を自由
民主主義という善の地域に解放するためには、統一した韓半島がその前哨基地に
ならなければなりません。

同じイデオロギー的DNAを持つ日本が、韓国の韓半島における自由統一を支援
すべき理由はここにあると思います。悪の陣営の行動隊長の北を倒してこそ、そ
の背後の悪の陣営の本丸の中国を倒せるし、それが悪の陣営を倒すことになりま
す。

多くの専門家は北の核問題、それから周辺国に対する挑発の問題を解決するた
めに各論的なアプローチをしています。これは非常に深刻な、死ぬこともある病
気を風邪薬で治せるというのと同じだと思います。北の核の問題、人権問題、周
辺国に対しての安保脅威等一挙に解決できる策があります。それはまさに、北の
今の体制を崩壊させることです。

ここで私が北を崩壊させるというのは、北の2400万近くの人民に対して害を与
えることとは、全然違う話です。これは北の人民ではなく、彼らを抑圧している
金正日一味、それから一握りの悪の勢力を一掃するということです。こういうこ
とを国際政治学ではレジーム・チェンジと言います。金正日一族を除去しなけれ
ば、こういう悪の行動は根本的に解決できません。

もはや韓国と日本の自由民主のための闘士たちは、金正日一族の崩壊を早める
ために立ち上がらなければなりません。今、何が必要でしょうか。我々は今、北
で、特に金正日一族にとって何が痛みになるか、それを見極めて突くべきだと思
います。北の住民を外からの情報に接することができないように情報閉鎖をして
いる態勢を打破しなければなりません。北に対しての放送や、住民に情報を伝え
るビラ等、より活発に攻勢をかけなければなりません。

2番目に、外からの支援、資金等を遮断することです。皆さんもよくご存知の
ように、外の世界からの北への支援の重要な根拠地が日本でした。それが朝鮮総
連です。こういう点から、日本は非常に重要な役割があると思います。北がいか
に悪を行ってきたかを象徴的に示すものは、北で行われる公開処刑です。私は
2006年に、韓国の国防大学の学生を連れて日本に視察に来たのですが、その時日
本のテレビで、北で公開処刑される場面を見て、本当に驚愕しました。当時韓国
は親北の盧武鉉政権時代でしたので、韓国のテレビが北の公開処刑の場面を放送
することは、想像もできませんでした。北のそういう野蛮な暴力、公開処刑のよ
うな蛮行を韓国、日本、アメリカなどが全世界に知らせるべきだと思います。こ
ういう報道は、ある意味で、金正日政権を崩壊させるにおいて爆弾よりはるかに
大きな効果があると思います。

次に、韓国と日本の安保分野、例えば国防、外交、情報等そのような関係者た
ちがより緊密に交流し、協力する必要があると思います。こういうことを通じて、
いずれ韓国が自由民主主義体制で統一されると、その時は地域内の覇権追及勢力
を、韓国と日本の協力体制で牽制することができますし、仮に今言われているい
わゆるG2体制、アメリカと中国が二国間で全て決めるような状況になる時にも、
韓国と日本の協力は、この地域での地域覇権の阻止のための共同戦線を可能にす
る土台になると思います。

結論的に、我々が今戦っているこの戦いの本質は、善と悪の対決であることを
忘れてはならないと思います。

それから私はこの問題の専門家ではありませんが、北を解放する過程で、北に
拉致された人々を救出するためにどういうことができるのか、私の個人的な考え
を申し上げます。

夕べ、めぐみさんのお母さん、それから飯塚繁雄家族会代表たちと夕食をとり
ながら、簡単に私の考えを申し上げました。60年前の朝鮮戦争の時、私は4歳足
らずでしたが、北の軍隊によって父が殺されたという経験があります。半年前に
初めての初孫を見ました。私に孫ができても、60年前に父を失った時の悲しさを
今も覚えていることを改めて感じました。そういうことで、家族を失ったという
ことがどういうことなのか、私なりに分かっています。

恐らく、北に拉致された人々は今、北で特別に管理されていると思います。多
分、北は北が崩壊する時、彼らの犯罪を隠すために、拉致した人々を抹殺する準
備をしていると思います。しかし、例えば拉致された人々を抹殺するような組織
の中でも、中間やその下の人たちは、上の人たちとは違って、自分たちも生きた
いという気持ちがあると思います。つまり、そのように金正日の命令によって犯
罪を犯す立場の人間たちの中でも、中間や実務者に対して、放送やビラを通して、
あなた方が罪のない拉致被害者を処刑から救うとあなた方も報われるというメッ
セージを強く発信し続けることもいい方法だと思います。

もちろん韓国にも北に拉致された人がたくさんいます。韓国と日本の両国の当
局が、こういう情報等を共同で管理できるような実務的な対策、組織を作ること
も有効な方法だと思います。こういう活動においてはもちろん、金聖▲代表のよ
うな脱北者の活動を支援することが重要ですし、韓国政府だけでなく、日韓の
NGO等が、彼らを参加させて彼らを支援する活動が大事だと思います。
ありがとうございました。

つづく




★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
■菅首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
[PC]https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html
[携帯]https://www.kantei.go.jp/k/iken/im/goiken_ssl.html?guid=ON

葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 菅 直人殿

■救う会全国協議会ニュース

発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
  
■ サイト内検索 ■


■ メールニュース ■
2024/12/23
国際セミナー報告5
2024/12/20
国際セミナー報告4
2024/12/20
国際セミナー報告3
2024/12/18
国際セミナー報告2
2024/12/16
国際セミナー報告1

■過去のメールニュース■

  ■ 2024年
  ■ 2023年
  ■ 2022年
  ■ 2021年
  ■ 2020年
  ■ 2019年
  ■ 2018年
  ■ 2017年
  ■ 2016年
  ■ 2015年
  ■ 2014年
  ■ 2013年
  ■ 2012年
  ■ 2011年
  ■ 2010年
  ■ 2009年
  ■ 2008年
  ■ 2007年
  ■ 2006年
  ■ 2005年
  ■ 2004年
  ■ 2003年
  ■ 2002年
  ■ 2001年
  ■ 2000年
  ■ 1999年
■あなたにも出来る救出運動■
あなたにもできること

 ■ 映画「めぐみ」 ■ 

映画「めぐみ」

■ 書 籍 ■