北はどう動くか、民間団体はどう備えるか?東京連続集会59報告[1](2011/07/08)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2011.07.08-1)
病身の金正日が年3回も訪中して経済支援を求めざるを得ないくらい北朝鮮情
勢は流動的になり、日本に仕掛けを行ってくるような兆候もある。北朝鮮情勢を
把握しながら今後の運動を進めたい。6月29日の「東京連続集会」では、家族会
の近況報告とともに、講師にジャーナリストの惠谷治氏をお招きし、西岡力救う
会会長と対話形式で最新情勢を議論した。以下はその全容である。
■北はどう動くか、民間団体はどう備えるか?東京連続集会59報告
◆誰がいつ、どういうふうに北朝鮮に迫っているのか
飯塚繁雄(田口八重子さん兄、家族会代表)
皆さんこんにちは。大変暑い中、ご苦労様でございます。いつもながらこの問
題に関しまして色々なご支援を頂きましてありがとうございます。
家族の訴えというのは既に何百回もやってまいりましたけれども、やはりその
都度その都度の状況において我々としてはどう考え、どう活動していったらいい
かというものも考え合わせながら頑張ってきたわけでございます。
6月5日に行われた国民大行進は皆様のご協力によって一応盛大には挙行された
ということで、訴えとしてはそれなりの成果が上がったのではないかと思います。
ただ若干、主催者側の不手際(一部にマイクをもちこむなどして勝手な主張をし
た参加者があったことに気づかず制止できなかったこと)もありまして、皆様に
ご迷惑をかけた一面がありました。これについては反省しながら今後につなげた
いと考えています。
政府との懇談、打合せ、面談とか、少しずつではありますがやっております。
皆様ご承知のとおり、先日、拉致対策本部会合があって、本部長である総理から
「生存者の即時帰国に向けた施策、安否不明の拉致被害者に関する真相究明に重
点に取り組みます」という話が一応出ています。総理がさらに指示をされたのは、
「拉致被害者家族等へのきめ細やかな対応」、「北朝鮮側の対応等を考慮しつつ
更なる措置についての検討及び現行法制度の下での厳格な法執行の推進」、「平
成20年8月の日朝合意の履行を含む北朝鮮側による具体的な行動への継続した強
い要求」、「拉致被害者及び北朝鮮情勢に係る情報収集・分析・管理の強化」、
「拉致の可能性を排除できない事案に係る捜査・調査の徹底、及び拉致実行犯に
係る国際捜査を含む捜査等の継続」、「拉致問題の解決に資する内外広報活動の
充実」、「米国、韓国を始めとする関係国等との国際的連携の強化」、「その他
拉致問題の解決に資するあらゆる方策の検討」です。今回6月10日の第5回会合で
は特に強くそういった話が出たと聞いております。
それぞれ細かい内容については具体的に今後出てくると思いますけれども、私
たちとしては、こういったことを聞いて、今までなかなか進まなかった糸口と言
いますか交渉の窓口がどうなっているか。我々は北朝鮮の悪行に対し、今までの
経過も踏まえて、今度こそは強い態度で出なければならないということを皆さん
と合意しているわけです。当然ながら今、北朝鮮に対する制裁を実行しています。
そしてまた北朝鮮の態度が明確に出てこない場合、さらなる制裁ということも考
えておりますし、政府にもその要求をしています。
我々はもちろん、制裁をするというのは本来の目的ではありません。これは北
朝鮮の状況を見ながらの手段であると考えています。当然ながら拉致問題解決の
過程においては協議をしないと何も決まらないということが今鍵になっています。
私も中野大臣に質問をして、例えば北朝鮮との交渉の窓口なり担当なり、そういっ
たことに直接かかわれるような状態になっているのかということも聞きました。
今まさに北朝鮮は日本に交渉を求めてくるような動きも見られますし、いつも日
本が北朝鮮に対して強く要請しているという話は聞きますが、では一体、誰がい
つ、どういうふうにそれを迫っているのかということが全く見えませんので、そ
の辺の確認もしておきました。それなりのピシッとした窓口はあると言っており
ますし、かなりの高官が窓口として使えそうだという話も聞いております。これ
は、具体的に結果が出ないとわかりませんけれども。そういうふうにして、一応
この問題について政府はすっぽかしてはいないようです。何らかの相談、研究を
しながらどうやって進めていこうかという論議はあるようです。
◆今年は何か動きがと期待も
そういう中で、特に外国との連携も一層強めていこうということで、先日、日
米安全保障協議委員会(2+2)会合の中でも再確認されております。「核の拡散、
弾道ミサイル、不法活動及び北朝鮮による拉致の問題を含む人道上の懸念につい
て関連する課題を解決していこう」という合意を得ている。実際、米国側のクリ
ントン国務長官、ゲイツ国防長官と松本外務大臣、北澤防衛大臣が出席して合意
をしているという話を聞きましたし、日米韓の関係でも拉致にかかわる要項につ
いては常日頃協力要請をしてきていますというふうに言っておりますが、その前
提として南北関係の進展の状況を見ていかないと中々一筋縄ではいかないという
判断もあるようです。そういったことを含めて実際に中国とかそういったところ
についても、日本の中国との対等な立場から中国に言わせる、北朝鮮に対して言っ
てくれという話も強く要請しています。まさに今そういったことについては中国
が鍵を握っているという外交情勢ですけれども、そういったことも考え合わせな
がらやっていくということです。
そういうことの中で、いろいろ活動その他を進めていきますが、あらゆる範囲
内で北朝鮮に対して強いジャブを与えていくという意味では、北朝鮮が、近いう
ちに何らかの動きがあるだろうという見方もしているようですし、我々としてい
ろいろな話の中から、今年は何か動きがあるのではないかというふうな期待も持っ
ているところです。
北朝鮮から、交渉相手は日本の元総理の誰々を出してくれという話も来ている
ようですけれども、その辺の詳しい話は後ほど解説があると思いますが、我々と
しては目に見える動きがないとわからないんです。こういう考え方を持っている
とか、こう進めようと思っているとか、そういう話がかなり支配的でありますけ
れども、我々としては結果がほしいだけなんです。
◆全日本人を帰国させる
従って、結果につながる具体的な動きが見えれば、やってくれているな、もう
少しだな、というふうな感じを持つわけですけれども、この問題を取り巻く問題
があまりにも多すぎて、我々は専門家ではありませんので、一被害者家族として、
たくさん問題があるけれども結論的には家族が帰ってきてほしいということをそ
れぞれの家族が全員思っていると思います。いろいろ問題があるとしても、早く
日本人を救出して結果を出してくれという願いは全家族が持っていると思います。
決して自分の家族だけが帰ってくればそれでいいんだというようなことは絶対に
ありませんから。我々が常に言及しているように、認定被害者だけではなくて、
それの数十倍いる被害者、特定失踪者の方々も含めて全被害者を、全日本人を帰
国させるということが最大の目的であり最終的な目的でもあります。すべてこれ
につながるような動きをして頂くということを真剣に考えお願いしているところ
です。
長くなりましたが、そういうことで皆様も注視して頂いて、もしいろいろなご
意見があればまた聞かせて頂きたいと思います。
我々の当面の日程としては、7月10日、11日から訪米します。家族会から私と
増元さん、救う会から島田副会長、議連の方々は平沼会長はじめ7名参加されま
す。向こうに行って何をするのかという話もありますけれども、更なる術として、
できれば北朝鮮に対して再度テロ支援国家指定をして下さいという話も当然入っ
ています。それから具体的な救出についてはアメリカとどういうコンタクトをと
りながら、どういう具体的な行動をしていくのかということも考え合わせながら
我々としてはお願いに行くわけですけれども、議連の先生方は向こうの議員とは
対等な立場で強い意見も言って下さるだろうと思っております。
そういうことで、また暑い夏を迎えながら皆様とともに頑張っていきたいと思
いますので、今後ともよろしくお願いします。
◆中学生が署名に協力、女性・子どもがいると署名が増える
横田滋(横田めぐみさん父、家族会前代表)
皆さん今晩は。全体的なことは飯塚さんがお話になりましたので、私は個人的
なことをお話させて頂きます。私たちの住んでいるマンションには、近隣のマン
ションの方も参加しておられますが、私どもを支援するために「あさがおの会」
という会があります。全国統一の署名活動を今月(6月)11日、12日にしようと
いうことで、各地の救う会にも応援して頂きましたし、私どもも11日に静岡県の
牧之原市に講演に行きましてので、その席で署名活動をしましたし、講演が終わっ
てからも少し手伝いました。
12日は川崎、武蔵小杉、溝の口、新百合ヶ丘の4つの駅前で署名活動をしまし
た。
特に川崎駅では駅前と商店街でやりました。その前に、かわさきFMで1時間位
拉致問題について生放送でお話しました。今年の3月まで川崎市の男女共同参画
室の役員だった方が富士見中学校の校長先生に栄転されたわけですが、その校長
先生が中学1年生37、8人の生徒を連れてきて駅前での署名活動に協力して下さい
ました。私たちの経験から、男の大人ばかりだとどうしても警戒されて人が少な
くなるのですけれど、女の方が混ざると大分違います。さらに子供さんがくると
皆さん協力して下さり、非常に沢山の方が協力して下さいました。まだ正式な報
告書はできていませんが、かなり沢山の方から協力して頂きました。
それから、救う会神奈川の川添さんとか、今日も出席して下さっている前仙台
市長の梅原さんたちが各大使館を回って要請書を出しています。私はそのメンバー
には入っていないんですけども、関連のあるようなモンゴルの大使館とか、先般
はロシア大使館に行って参りました。ロシア大使館でも熱心に聴いて下さいまし
て、できるだけ協力するということは約束して下さいました。メンバーはいつも
同じというわけではないらしいんですけれど、特定失踪者の家族の方が出席され
たのですが、大使館の方は日本政府から正式に話を聞いていると思いますけど、
特定失踪者の話を知らない大使館の方が多いということを関係者の方から聞きま
したので、そういう点では、すべての被害者というのであればそちらのほうも政
府が説明してくれればいいんじゃないかと思いました。
一時、震災の関係で延期されていたことがまた復活してきましたので、今月後
半はかなり多かったですし、来月も沢山の日程が入っていますので、これからま
た忙しくなるではないかと思っています。
◆今年の展開に期待するが、政府が早くきちんとした姿勢を作って
横田早紀江(横田めぐみさん母)
皆様今晩は。暑い中を今日もご苦労様でございます。
本当にこんなに長い年月がかかるとは思ってもいなかった拉致問題の解決です
が、本当にいつ解決するのかなー、どうなって行くのだろうっていうか何とも言
えない空しい思いになることがあります。
けれども一つ一つのことを見ていくと、国々の中での問題がそれぞれの国によっ
て変わっていくこと、そしてそれがまた伝播的に他の国の中の解決、日本の中の
あることの解決という風になっていくんだなということがだんだんわかってきま
して、今日の資料の中にありますように、今北朝鮮も対日交渉再開を切望してい
るということです。
これは大分前から新聞報道などで言われておりますけれども、今年は拉致問題
の進展という意味で、展開というか解決になれば一番いいのですけれども、絶好
のチャンスの年になるのではないかなーと半分期待しています。
政府が今何とも言えない状況にありますので、それを受けて立てる態勢が整う
まで向こうは乗ってこないんだろうと思いますので。早く日本政府がきちんとし
た、何と言ったらいいか、大人の感覚から見てもおかしいなと思うほど生ぬるい
感じがするので、大人として、日本人として、きちっとした姿勢ですべてに臨ん
で頂きたいという思いが一番大きくあります。そしてその時に、北朝鮮の願いも
日本の願いもお互いがしっかりと言い、届けあって、間違いのない交渉をできる
のではないかなと思っています。
私たちは、めぐみの13歳のあの制服姿のまま途切れてしまっていますけれども、
本当にどうなっているのかなーという思いでいっぱいです。とにかく自由を与え
てあげたい、早くみんな日本の元の地に戻してあげたい、それだけで今日まで頑
張ってきました。
皆さんが本当に私たちに寄り添って下さって、ここまでずーっと集会とか講演
会とかあらゆる時に、拉致問題を解決しなければだめだという思いでお一人お一
人が私たちにぴったりと寄り添ってきて下さってきたことが日本をここまで変え
てきたのだろうと思っています。震災とか天災とか私たちの考えの及ばないよう
なことが世の中にまだまだ起きてくるかもしれませんし、その時はもう仕方がな
いことだと思いますけれども、私たちがしっかりと見つめて団結して戦い抜くと
いう気持ちだけは持ち続けていきたいと思いますので、どうか大変なことですけ
れども宜しくご支援下さい。ありがとうごどいます。
◆大震災も拉致も、この問題を忘れてはいけない
増元照明(増元るみ子さん弟、家族会事務局長)
皆さんこんばんは。いつもありがとうございます。
先月は大行進をやりました。一部の人が過剰な行動に出たようですが、それを
制し切れなかったこと、整然とやれなかったことは主催者の一人として申し訳な
いと思っています。今後はこのようなことが絶対ないように家族会事務局、救う
会事務局が共に反省して統制のとれたやり方でやっていこうと思います。
皆さんそれぞれ言いたいことがあるでしょうけれども、今回は、議連と救う会、
家族会が主催したデモでしたので、そこに添った形でやっていただければ一番よ
かったのですが、拉致被害者救出のためには国民に強く訴える、そして国民の共
感を得なければいけない。そういう思いが私たちも救う会にもあります。
6月11、12日の全国一斉活動では、私は11日は福島に行きました。福島の駅前
は少し小雨が降っており、通行人は少なかったのですが、それでも通り過ぎてい
く人たちが、「この問題も終わってないよね」と署名をしていただきました。そ
して、「こんな放射能の町によくお出でなさいましたね」と言われまして、福島
の方たちは放射線について危ないという思いを抱いていらっしゃるのかなと感じ
ました。
翌日仙台では繁華街でやりました。人通りは多かったのですが、足を止めて署
名するというのが1%か1.5%くらいでした。その中でも、仙台の若林区とか宮城
野区、それに多賀城市など被災のひどいところの人たちが多く署名をしてくださ
いました。住所を見ますと、そういう地名なので、「どうでしたか」と聞くと、
「だめでした」と言われる方もいらっしゃって、どう言っていいのか分らない署
名活動でした。
ただ、そういう人たちも、この問題を忘れてはいけないという思いを持ってい
ただいているということで、政府がだらしないから皆さん怒りをもってやってい
るのでしょうが、今後の日本の復興のためにも、日本の国のためにも、動いてい
かなければならないと思っています。今年は暑いですから、みなさん気をつけて
動いてください。熱中症で倒れる人が去年の5倍くらいということですから。
5月に、カート・キャンベル国務次官補に会った時、(前の報告では)言い忘
れたんですが、「私たちは自衛隊法の改正を含めて日本でのそういう主張をし、
運動を展開し、拉致被害者救出のために頑張っていきます」と申し上げた。「だ
からアメリカも一緒にやってください」と言ってきました。
アメリカ主導の軍事制裁はうまくいかないと思うんですが、力を発揮するので
も、日本が被害者を救出するために自国の自衛隊というものがあって、しっかり
と被害者を見極めて連れて帰る。邦人保護という点でも、今の憲法上できる筈な
んですが、その中でしっかりとやっていく体制を作ってもらう。これは急に北朝
鮮が崩壊してしまった場合に、準備も何にもなければ間に合わないということを
考えてもらわなければならないんです。
自民党政権の時から自衛隊の活用については救う会も家族会も言ってきたんで
すが、ほとんどやっていないというのが現状のようです。田母神(元自衛隊参謀
長)さんに聞いてもやっていないということです。秘密裏でも、訓練などやって
くれているのかと思っていたのですが、全くやっていないということでしたので、
いざという時にはどうするのでしょう。韓国軍に任せるのか、アメリカ軍に任せ
るのかという話がありますが、彼らは自分の任務で忙しくて、日本人拉致被害者
の救出にどこまで力を割けるのか。それより日本の国の力で被害者を取戻す法整
備をやっていただかなければならないと思っています。
9月までに北朝鮮が調査委員会を立上げ、そして調査をしないということになっ
たら、おそらく10月以降、何らかの行動を取らなければならないと思いますが、
その際は粛々と自分たちの主張を政府に伝えていくという姿勢を貫きたいと思い
ます。今度は政府に強く私たちの意志を伝えていかなければならない。その方法
を救う会と考えながら、皆さんにもご提示し、ご一緒に戦っていただければとあ
りがたいと思います。
健康には気をつけながらお互いに頑張りましょう。ありがとうございました。
◆子どもが母親を取戻すために頑張っているという悲惨な状況
本間勝(田口八重子さん兄)
皆さん今日は暑い中ありがとうございます。私たち来る側も大変ですが、それ
以上に来ていただいた方々は、私たちの思いを聞いてくださり、本当にありがた
く思います。
今日は6月29日です。実は八重子が拉致されたのは今日なんです。東京の高田
馬場で、1歳と3歳の子どもを託児所みたいなところに預けて、夕飯の頃連れて行
かれた。当時、「宮本明」と名乗る在日の工作員が関与していたことが分かって
います。
その人が宮崎まで連れていったと北朝鮮は言っていますが、宮崎かどうかは定
かではない。昭和53(1978)年という年は本当に忘れられない年です。今、地元
の川口市主催で、「拉致問題を考える川口の会」とともに、「拉致されて33年!
田口八重子さん写真展」というのをやっています。
また、川口は多数の特定失踪者がいます。藤田進さんとか、佐々木悦子さんと
か北朝鮮で目撃情報が出ている人がいます。政府認定されている12件17名という
人たち以上に、たくさんの人が北に連れて行かれている。
写真展に来て、見て、署名をしてくれている人のご意見をうかがいますと、北
朝鮮に再調査してもらうということだけど、北が連れて行ったのだから再調査な
んか意味ないじゃないか」という人もいます。我々も知らない拉致された人が当
然いると思います。調査会のデータで500人近くいますし、千人いるという人も
いる。家族が亡くなって声も出せない人もいる。再調査すれば、とんでもない人
が出てくるかもしれません。それはそれでいいと思います。
北朝鮮は約束したことを実行してほしい。拉致問題を少しでも前進させて生き
ている日本人を取戻すのが主眼ですので、私たちの家族だけが帰ってくればいい
という問題ではありません。皆さんもそう言っていますが、日本人を取戻すこと
で、皆さんが一生懸命支援していただいていると思います。
八重子が拉致をされて、まさか北朝鮮にいるとは思いもしませんでした。写真
展を見ると、小さいときから失踪直前までの写真がありますが、本当に走馬灯の
ように、八重子が育っていった過程、残していった子どもを思い出します。昭和
52年生まれの耕一郎という息子は、兄のもとで立派に成長しましたが、もう今年
で34歳です。その子どもが母親を取戻すために頑張っているという悲惨な私たち
家族です。
子どもも巻き込んで戦っているという現状です。私たちの家族だけではありま
せんが、解決するまでさらに力を貸してください。
今日は暑いところを本当にありがとうございました。
◆北はどう動くか、民間団体はどう備えるか
西岡 最近の北朝鮮情勢を踏まえて、拉致問題で北朝鮮がどう出てくるか、そし
て日本がどう動くのか、さらに、それに対して我々民間の運動はどう備えるのか
という問題意識で今日の会を設定しました。
北朝鮮内部の組織の名前や人の名前など、ちょっと専門的な話になるかもしれ
ません。専門的になりすぎたら少し説明を加えたいと思います。
まず、最近の北朝鮮情勢の動き、特に工作機関の動静についてです。ここは拉
致を行ったところでもあり、被害者を管理しているところでもあります。また被
害者の情報を一番持っているところです。
その工作機関の組織編制が変わったのが2009年2月です。そのことと、金正恩
が登場してきたこととの関係、そしてそれが今北朝鮮の内部でどのようなことが
起きているのかということとも関連しています。そして工作機関を誰がどのよう
な形で握っているのかということが分からないと、来るべき拉致の交渉が始まっ
た時、相手が分からないということになるので少し専門的な話になりますが、そ
ういうことをまず惠谷さんに報告してもらいます。
◆金正日?ロシアへの物乞い
惠谷 工作機関の話の前に、北朝鮮の現状をお話しします。2日後に金正日がウ
ラジオストクに行き、メドベージェフ大統領と会う予定だったのが中止になりま
す。その理由ははっきりしませんが、おそらくロシア側が、会っても経済支援の
話だけなので会う必要はないと断ったのだろうと思います。
しかし、一方で金正日の体調が悪くなったという話もあります。これは近々に
分かると思います。いずれにしろ5月に中国に行った69歳の男が、またロシアに
行くというのは物乞い以外の何物でもないと思います。
西岡 歳を1年ごまかしているので、本当は70歳ですね。
◆見栄えを気にするくらい体力は回復?金正日
惠谷 そう。老体に鞭打って行かなければならないというのが一つの現状です。
逆に考えれば、金正日はまだまだ元気である。これは残念な報告ですが、今年に
なってまたヒールのあるブーツを履くようになった。脳卒中で倒れて以降、足元
がおぼつかないのでヒールをやめてベタ靴で通していました。今年はヒールのあ
るものを履けるほど体力が回復した。見栄えを気にするようになるくらい回復し
たということです。
西岡 私もソウルで、韓国の情報筋から聞いたという話で、「腎臓の透析をして
いるという情報があったけれども、していない。メスを使った手術もしていない」
と。心臓も脳も。「管を入れるカテーテルはやっている。割と元気になってきて
いるようだ」、「それと比例して金正恩に対する後継作業の速度が落ちている」
と聞いています。
◆平壌市も配給ができず面積半減
惠谷 速度が落ちているというか、私の認識では、健康不安の時に金正恩を後継
者に内定して表に出した。正式決定はまだしていません。内外に見せたわけです
から、国内で金正恩の後継体制は徐々に進んでいると見ています。
経済的には大変な状況です。それをはっきり示しているのは平壌市の面積が半
減されたことです。人口的には半分ではない。平壌だけは食糧の配給システムが
何とか機能していたのですが、そのシステムが平壌ですら機能しなくなるので、
その前に面積を半分にし、外れた地域は「配給はもうない、人民が勝手に食え」
という状況になっていることです。これ一つとっても大変なことです。
そして金正日自身が年に3回も中国に行く。そして今度はロシアに行こうとし
ていて、事情はまだ分かりませんが、断られたのではないか。
西岡 面積が半分というのは、中和郡など南側の郊外のようなところを平壌市か
ら外したものです。実は、中和郡に招待所があり、横田めぐみさん、田口八重子
さんも含め、拉致被害者が連れて行かれた後、80年代の初めから86年まで中和郡
の山の中の招待所にいました。そういう招待所もあるような中和郡などが外れま
した。東京で言えば23区は残して三多摩を外したという感じです。
◆工作機関が解体?今後の対日政策は外務省の仕切りか
惠谷 しかし、今後の対日政策を外務省が仕切るというように役所の管轄が明確
になりつつあります。以前は金正日一人が仕切っていました。すべて金正日に通
じるということで、それはそれで分かりやすかったのですが、それがそれぞれで
責任分担が行われつつあるのではないかというのが私の現状認識です。
その一つは先ほど西岡さんが言ったように、工作機関が解体された。それも非
常に重要なことですが、それとは別に北朝鮮の秘密警察である国家安全保衛部が、
権力闘争によって、未確認ではありますが後継者である金正恩が責任者になる、
あるいはなったと言われています。
◆核実験がまだ行われないのは財政的理由か
もう一つ、核・ミサイルの問題があります。核実験というのは2009年に行われ
ました。昨年は次の実験ができるように、核実験場の整備がなされた。縦坑を掘っ
てもういつでも実験ができる状況です。私は春、4月頃には実験があるのではな
いかと思っていましたが、未だにしていない。これは財政的な問題かなという気
もします。
ミサイル実験もあってもおかしくない。彼らは、「2012年は強盛大国の大門を
開く年」と位置づけていますので、今年実験するのではないかと。まあ来年して
もいいのですが。核実験場で縦坑の準備をしたことを見ると、今年実験をしても
いいのになぜしないのか。実験する理由が3つ考えられる。一つは、過去2回の核
実験が、核爆発はしているのですが、設計威力に達していない、つまり失敗した。
だから3回目をやる必要がある。
ひょっとして濃縮ウランの方で製造可能な量を確保している可能性も否定でき
ない。そこで実験を濃縮ウランでやるという可能性も否定できない。
さらに、北の方からアメリカに対して核の小型化が完成したという言い方をし
ています。西岡さんは以前から、既に完成していると言っています。小型化が仮
に成功し、保有しているとしても、それを実験する必要があるだろう。
以上の3つの理由があるにも関わらず、まだ行われていないのは、経済的な理
由だろうと思います。あるいは必要な技術をクリアーしていないということも考
えられます。
北朝鮮は記念日にぶつけてというのではなく、記念日より出前でやります。
2012年が強盛大国の大門を開く年ならば今年秋にやる筈だと思っています。冬は
様々な理由でやりません。
それがまだ行われないというのは大きな問題を抱えているからで、技術的なこ
とか、財政的なことかでしょう。
◆人民軍の物資が闇市に
西岡 今の話で経済が困窮しているということでした。前回話しましたが、上層
部への配給が難しくなってきている。8割の、人によっては9割とも言いますが、
上層部は配給対象です。一般庶民は90年代後半から大飢饉で人口の15%が死んで
以来、配給が止まっています。しかし、自分の才覚で闇市で食べています。闇市
には中国製品と日本、韓国、国際社会からの支援物資が横流しされ出ていた。
私が最近聞いた話では、北朝鮮人民軍の物資が闇市に出回っている。各地の軍
団に対して、「もう中央でめんどうを見せないから自分で食え」という話が行っ
ていて、しょうがないから兵士用の靴、軍靴ですね、そういうのを闇市に出して
コメや食糧に代えているということです。
昔は、米軍の基地があると米軍の物資が流れたりしましたが、そうではなく、
北朝鮮人民軍の物資が闇市に流れているという話を「ファクト」として聞きまし
た。
◆人民軍で異例の人事?経済難深刻
また、昨年9月の人事で、総参謀長になったのが李英浩(イ・ヨンホ)で、こ
の人だけ若い人です。金正恩側近と思われていますが、この人事について、北朝
鮮軍を専門としている韓国のある人に聞いたら、「異例の人事」だと言います。
なぜかというと平壌防御司令部出身だということです。北朝鮮人民軍は革命の軍
隊で、平壌防御司令部はボディガードみたいなものでワンランク落ちるというこ
とです。また、これまで総参謀長に平壌防御司令部出身の人はなっていないと。
野戦司令官がなるものですということでした。
ところが野戦司令官は、「それぞれ自分で食え」と、ある面で昔の中国のよう
に軍閥化していて中央の統制がきかなくなっている。金正日としては、自分が信
頼できるのは平壌にいる部隊しかないという状況になっている。つまり上層部も
お金がなくなってきている。
下はもう自分で食べているわけですが、金正日が自由につかえる、いわゆる統
治資金、色々な説がありますが年間5億ドルとか10億ドルが必要です。
端的に言うと、ベンツを買えている。1970年代北朝鮮は貿易をして代金を払わ
なかったのです。日本のお金も踏み倒している。貿易保険が適用されて日本政府
が北朝鮮と貿易したところに、貿易代金の6割とか払いました。それを北から回
収しなければならないがまだ返ってきていない。西側諸国にみなそれがあります。
従ってベンツを売ってくれと言っても現金でしか売らないのです。信用取引はし
ない。それなのに未だに買っているんです。
今国連の安保理事会が贅沢品の北朝鮮への輸出を禁止していますから、ベンツ
を輸出しようとして摘発されたことがありましたが、それは外貨があるからです。
物を買って現金を払わないのに別のところに外貨がある。それが統治資金ですが、
その統治資金の枯渇が始まった。こういう状況の中で金正日が中国に行ったり、
ロシアに行こうとして断られるということが起きてきています。
今の惠谷説によると、核実験の準備はできているのにできなかったのも、もし
かしたら外貨がないという可能性があるということです。
◆金正日の訪中?3つの依頼は失敗
実は、金正日の訪中について、あるところから情報を聞きました。今の話と関
連があるのでここで報告しておきます。今回の訪中がまさに物乞いだったのはそ
の通りですが、具体的に3つのことを頼みに行った。第1は、金正恩後継への支持
取り付け。それは去年からずっと行っているが、中国共産党は内心では三代世襲
は北朝鮮だけでなく、中国の立場としても有害であると判断している。しかし、
表向きは、中国は北朝鮮の内部問題に干渉しないという言い方で、支持という言
葉は与えない。今回も与えなかった。
2番目は武器。これも惠谷さんがそういう情報があると言っていましたが、私
もそう聞きました。北朝鮮の在来式武器はソ連製、今のロシア製が多い。そして
部品が入ってこない。ドルがないともうロシアは売らないからです。そこで中国
から、戦闘機を含めた武器を入れようとした。しかし、今、安保理事会で北朝鮮
に対して軍事に関わるものは禁輸をかけた。禁輸をかけた安保理事会の常任理事
国である中国が現段階で北朝鮮に武器を出したら、国連を敵に廻すことになりま
す。
裏で色々と話をしていたけれども、本来なら昨年の9月か10月に中国から武器
が入る話があったが、中国共産党の中央が止め、ジープやトラックは出した。今
回も、運搬装備とか建設用の重機は出すが、現時点では武器は出せない。世界が
中国を注視している、と言ったそうです。
3つめが現金の支援です。経済支援をしてくれと。中国側は、これまで経済支
援はやるだけのことはやった。これ以上中国から支援をもらおうとするなら、中
国の企業から支援を受けなさい、と。今、鴨緑江の河口で何かやっていますよね。
その時中国側がこう言ったそうです。「中国の企業家は我々政府の命令には従い
ません。だから中国の企業家が好むような環境を作らなければダメですよ。中国
の企業家は、北朝鮮が法律をやたらに変えたりするのを怖がっている。投資促進
のためには、北朝鮮の中でも、中国の企業家に対しては、中国法を適用するよう
に求めた」と。金正日は大変不機嫌で帰っていった、という話を聞きました。
◆2008年12月 金正恩が後継者として登場
惠谷 今の話を聞いていると、10年、20年前、日本企業が中国に進出した際、非
常に不安がっていて、日本の法律を適用してほしいと思っていたと思いますね。
同じことを中国が北朝鮮にやっている。
さて、今日確認して帰っていただきたいのは、配布資料の「2011年前半の北朝
鮮動向」にあります。その中の「金正恩公式登場まで」について少しお話します。
ご存知のように去年の9月に、初めて北朝鮮の報道で名前が出て、しかも漢字や
役職は党中央軍事委員会副委員長と、国内外に紹介されました。
しかし、その後の様々な研究によって、色々分かってきました。金正日は2008
年8月14日に脳卒中で倒れましたが、1か月くらいで相当意識もしっかりしてきた
と思います。そしてリハビリをして、3か月後の2008年11月24日には、彼の独特
の統治スタイルである現地指導を再開しました。現場を動いて、こうしろ、ああ
しろと、それは余計な問題が生じていますが、そのことは別にして、現地指導を
再開しました。つまり身体が動くようになったということです。
その1か月後、2008年12月20日には、金正恩をもう連れて歩いている。そして
2010年9月に内外に紹介されます。つまり、その2年前から金正日は三男を連れて
歩いて、現場では、「尊敬する金正恩大将同志が現地指導された車組立工場 主
体97(2008)年12月20日」というプレートを打ち付けています。そういうことが
その後も何箇所かで確認されています。
つまり、国内での軍部隊や大企業には、後継者として連れ歩いていたのです。
大事なことは、本人も自分が後継者になるという意識の中でやってきています。
◆2009年2月 金正恩が党3号庁舎を改編し、偵察総局を創設
対南工作機関、北朝鮮では「党3号庁舎」と言いますが、これは朝鮮労働党中
央委員会の下に、調査部、連絡部、作戦部、統一戦線部という4つの謀略機関、
工作機関がありました。それを金正恩が後継者として紹介される1年半前の、
2009年2月に、私の推測では金正恩が、自分が後継者になるに当たって、この組
織を変えたい、自分の物にしたいということで党3号庁舎を改編し、偵察総局を
創設しました。
これは、金正日が後継者になって以降、1975年に、権力基盤をどこに置くかと
いった時に、同じ手法を取っています。それと同じことを2009年2月に、金正恩
がやった。金正日の時は、本人はもう34歳で、党中央に入って10年くらい経験を
積んでいました。
しかし、金正恩は軍の大学を出て、軍部隊の体験も多少ありますが、軍人バカ
と言いますか、軍が専門ですから、彼は工作機関を軍の中に引き入れるというや
り方でした。それが、最終的には偵察総局という名前に組織を格上げして、自分
が牛耳るようになった。
党中央軍事委員会の副委員長のポジションしかありませんが、偵察総局の総局
長は、大将である金正恩のワンランク下の上将なので命令を下すことができる。
その組織の工作員が、先年韓国に、脱北者に偽装して黄長●(火へんに華)元書
記を暗殺しに来るという事件もありました。
過去は、朝鮮労働党の組織だったものが、金正恩の登場で、朝鮮人民軍の軍事
組織になったというのは非常に重要なことで、韓国の哨戒艦を撃沈したり、延坪
島を砲撃したことにつながります。
金正恩の登場で、工作機関のやり方も変わりますが、それ以上に、軍主導の工
作、もっと言えば軍事作戦、軍事攻撃がこのところ多くなったのは、明らかに金
正恩の登場と密接な関係があります。ということは、今後もそういうことが出て
くる可能性があります。
さらに、3号庁舎を解体するに当たって、4つの内、2つが軍に入りました。党
連絡部は、元々は韓国の地下組織の構築、あるいは対南工作が主体でしたが、姜
周一(カン・ジュイル)という部長は元々統一戦線部にいて彼が対日工作もやっ
ていました。
西岡 朝鮮総連を担当していましたね。
([2]に続く)
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
■菅首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
[PC]https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html
[携帯]https://www.kantei.go.jp/k/iken/im/goiken_ssl.html?guid=ON
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 菅 直人殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
病身の金正日が年3回も訪中して経済支援を求めざるを得ないくらい北朝鮮情
勢は流動的になり、日本に仕掛けを行ってくるような兆候もある。北朝鮮情勢を
把握しながら今後の運動を進めたい。6月29日の「東京連続集会」では、家族会
の近況報告とともに、講師にジャーナリストの惠谷治氏をお招きし、西岡力救う
会会長と対話形式で最新情勢を議論した。以下はその全容である。
■北はどう動くか、民間団体はどう備えるか?東京連続集会59報告
◆誰がいつ、どういうふうに北朝鮮に迫っているのか
飯塚繁雄(田口八重子さん兄、家族会代表)
皆さんこんにちは。大変暑い中、ご苦労様でございます。いつもながらこの問
題に関しまして色々なご支援を頂きましてありがとうございます。
家族の訴えというのは既に何百回もやってまいりましたけれども、やはりその
都度その都度の状況において我々としてはどう考え、どう活動していったらいい
かというものも考え合わせながら頑張ってきたわけでございます。
6月5日に行われた国民大行進は皆様のご協力によって一応盛大には挙行された
ということで、訴えとしてはそれなりの成果が上がったのではないかと思います。
ただ若干、主催者側の不手際(一部にマイクをもちこむなどして勝手な主張をし
た参加者があったことに気づかず制止できなかったこと)もありまして、皆様に
ご迷惑をかけた一面がありました。これについては反省しながら今後につなげた
いと考えています。
政府との懇談、打合せ、面談とか、少しずつではありますがやっております。
皆様ご承知のとおり、先日、拉致対策本部会合があって、本部長である総理から
「生存者の即時帰国に向けた施策、安否不明の拉致被害者に関する真相究明に重
点に取り組みます」という話が一応出ています。総理がさらに指示をされたのは、
「拉致被害者家族等へのきめ細やかな対応」、「北朝鮮側の対応等を考慮しつつ
更なる措置についての検討及び現行法制度の下での厳格な法執行の推進」、「平
成20年8月の日朝合意の履行を含む北朝鮮側による具体的な行動への継続した強
い要求」、「拉致被害者及び北朝鮮情勢に係る情報収集・分析・管理の強化」、
「拉致の可能性を排除できない事案に係る捜査・調査の徹底、及び拉致実行犯に
係る国際捜査を含む捜査等の継続」、「拉致問題の解決に資する内外広報活動の
充実」、「米国、韓国を始めとする関係国等との国際的連携の強化」、「その他
拉致問題の解決に資するあらゆる方策の検討」です。今回6月10日の第5回会合で
は特に強くそういった話が出たと聞いております。
それぞれ細かい内容については具体的に今後出てくると思いますけれども、私
たちとしては、こういったことを聞いて、今までなかなか進まなかった糸口と言
いますか交渉の窓口がどうなっているか。我々は北朝鮮の悪行に対し、今までの
経過も踏まえて、今度こそは強い態度で出なければならないということを皆さん
と合意しているわけです。当然ながら今、北朝鮮に対する制裁を実行しています。
そしてまた北朝鮮の態度が明確に出てこない場合、さらなる制裁ということも考
えておりますし、政府にもその要求をしています。
我々はもちろん、制裁をするというのは本来の目的ではありません。これは北
朝鮮の状況を見ながらの手段であると考えています。当然ながら拉致問題解決の
過程においては協議をしないと何も決まらないということが今鍵になっています。
私も中野大臣に質問をして、例えば北朝鮮との交渉の窓口なり担当なり、そういっ
たことに直接かかわれるような状態になっているのかということも聞きました。
今まさに北朝鮮は日本に交渉を求めてくるような動きも見られますし、いつも日
本が北朝鮮に対して強く要請しているという話は聞きますが、では一体、誰がい
つ、どういうふうにそれを迫っているのかということが全く見えませんので、そ
の辺の確認もしておきました。それなりのピシッとした窓口はあると言っており
ますし、かなりの高官が窓口として使えそうだという話も聞いております。これ
は、具体的に結果が出ないとわかりませんけれども。そういうふうにして、一応
この問題について政府はすっぽかしてはいないようです。何らかの相談、研究を
しながらどうやって進めていこうかという論議はあるようです。
◆今年は何か動きがと期待も
そういう中で、特に外国との連携も一層強めていこうということで、先日、日
米安全保障協議委員会(2+2)会合の中でも再確認されております。「核の拡散、
弾道ミサイル、不法活動及び北朝鮮による拉致の問題を含む人道上の懸念につい
て関連する課題を解決していこう」という合意を得ている。実際、米国側のクリ
ントン国務長官、ゲイツ国防長官と松本外務大臣、北澤防衛大臣が出席して合意
をしているという話を聞きましたし、日米韓の関係でも拉致にかかわる要項につ
いては常日頃協力要請をしてきていますというふうに言っておりますが、その前
提として南北関係の進展の状況を見ていかないと中々一筋縄ではいかないという
判断もあるようです。そういったことを含めて実際に中国とかそういったところ
についても、日本の中国との対等な立場から中国に言わせる、北朝鮮に対して言っ
てくれという話も強く要請しています。まさに今そういったことについては中国
が鍵を握っているという外交情勢ですけれども、そういったことも考え合わせな
がらやっていくということです。
そういうことの中で、いろいろ活動その他を進めていきますが、あらゆる範囲
内で北朝鮮に対して強いジャブを与えていくという意味では、北朝鮮が、近いう
ちに何らかの動きがあるだろうという見方もしているようですし、我々としてい
ろいろな話の中から、今年は何か動きがあるのではないかというふうな期待も持っ
ているところです。
北朝鮮から、交渉相手は日本の元総理の誰々を出してくれという話も来ている
ようですけれども、その辺の詳しい話は後ほど解説があると思いますが、我々と
しては目に見える動きがないとわからないんです。こういう考え方を持っている
とか、こう進めようと思っているとか、そういう話がかなり支配的でありますけ
れども、我々としては結果がほしいだけなんです。
◆全日本人を帰国させる
従って、結果につながる具体的な動きが見えれば、やってくれているな、もう
少しだな、というふうな感じを持つわけですけれども、この問題を取り巻く問題
があまりにも多すぎて、我々は専門家ではありませんので、一被害者家族として、
たくさん問題があるけれども結論的には家族が帰ってきてほしいということをそ
れぞれの家族が全員思っていると思います。いろいろ問題があるとしても、早く
日本人を救出して結果を出してくれという願いは全家族が持っていると思います。
決して自分の家族だけが帰ってくればそれでいいんだというようなことは絶対に
ありませんから。我々が常に言及しているように、認定被害者だけではなくて、
それの数十倍いる被害者、特定失踪者の方々も含めて全被害者を、全日本人を帰
国させるということが最大の目的であり最終的な目的でもあります。すべてこれ
につながるような動きをして頂くということを真剣に考えお願いしているところ
です。
長くなりましたが、そういうことで皆様も注視して頂いて、もしいろいろなご
意見があればまた聞かせて頂きたいと思います。
我々の当面の日程としては、7月10日、11日から訪米します。家族会から私と
増元さん、救う会から島田副会長、議連の方々は平沼会長はじめ7名参加されま
す。向こうに行って何をするのかという話もありますけれども、更なる術として、
できれば北朝鮮に対して再度テロ支援国家指定をして下さいという話も当然入っ
ています。それから具体的な救出についてはアメリカとどういうコンタクトをと
りながら、どういう具体的な行動をしていくのかということも考え合わせながら
我々としてはお願いに行くわけですけれども、議連の先生方は向こうの議員とは
対等な立場で強い意見も言って下さるだろうと思っております。
そういうことで、また暑い夏を迎えながら皆様とともに頑張っていきたいと思
いますので、今後ともよろしくお願いします。
◆中学生が署名に協力、女性・子どもがいると署名が増える
横田滋(横田めぐみさん父、家族会前代表)
皆さん今晩は。全体的なことは飯塚さんがお話になりましたので、私は個人的
なことをお話させて頂きます。私たちの住んでいるマンションには、近隣のマン
ションの方も参加しておられますが、私どもを支援するために「あさがおの会」
という会があります。全国統一の署名活動を今月(6月)11日、12日にしようと
いうことで、各地の救う会にも応援して頂きましたし、私どもも11日に静岡県の
牧之原市に講演に行きましてので、その席で署名活動をしましたし、講演が終わっ
てからも少し手伝いました。
12日は川崎、武蔵小杉、溝の口、新百合ヶ丘の4つの駅前で署名活動をしまし
た。
特に川崎駅では駅前と商店街でやりました。その前に、かわさきFMで1時間位
拉致問題について生放送でお話しました。今年の3月まで川崎市の男女共同参画
室の役員だった方が富士見中学校の校長先生に栄転されたわけですが、その校長
先生が中学1年生37、8人の生徒を連れてきて駅前での署名活動に協力して下さい
ました。私たちの経験から、男の大人ばかりだとどうしても警戒されて人が少な
くなるのですけれど、女の方が混ざると大分違います。さらに子供さんがくると
皆さん協力して下さり、非常に沢山の方が協力して下さいました。まだ正式な報
告書はできていませんが、かなり沢山の方から協力して頂きました。
それから、救う会神奈川の川添さんとか、今日も出席して下さっている前仙台
市長の梅原さんたちが各大使館を回って要請書を出しています。私はそのメンバー
には入っていないんですけども、関連のあるようなモンゴルの大使館とか、先般
はロシア大使館に行って参りました。ロシア大使館でも熱心に聴いて下さいまし
て、できるだけ協力するということは約束して下さいました。メンバーはいつも
同じというわけではないらしいんですけれど、特定失踪者の家族の方が出席され
たのですが、大使館の方は日本政府から正式に話を聞いていると思いますけど、
特定失踪者の話を知らない大使館の方が多いということを関係者の方から聞きま
したので、そういう点では、すべての被害者というのであればそちらのほうも政
府が説明してくれればいいんじゃないかと思いました。
一時、震災の関係で延期されていたことがまた復活してきましたので、今月後
半はかなり多かったですし、来月も沢山の日程が入っていますので、これからま
た忙しくなるではないかと思っています。
◆今年の展開に期待するが、政府が早くきちんとした姿勢を作って
横田早紀江(横田めぐみさん母)
皆様今晩は。暑い中を今日もご苦労様でございます。
本当にこんなに長い年月がかかるとは思ってもいなかった拉致問題の解決です
が、本当にいつ解決するのかなー、どうなって行くのだろうっていうか何とも言
えない空しい思いになることがあります。
けれども一つ一つのことを見ていくと、国々の中での問題がそれぞれの国によっ
て変わっていくこと、そしてそれがまた伝播的に他の国の中の解決、日本の中の
あることの解決という風になっていくんだなということがだんだんわかってきま
して、今日の資料の中にありますように、今北朝鮮も対日交渉再開を切望してい
るということです。
これは大分前から新聞報道などで言われておりますけれども、今年は拉致問題
の進展という意味で、展開というか解決になれば一番いいのですけれども、絶好
のチャンスの年になるのではないかなーと半分期待しています。
政府が今何とも言えない状況にありますので、それを受けて立てる態勢が整う
まで向こうは乗ってこないんだろうと思いますので。早く日本政府がきちんとし
た、何と言ったらいいか、大人の感覚から見てもおかしいなと思うほど生ぬるい
感じがするので、大人として、日本人として、きちっとした姿勢ですべてに臨ん
で頂きたいという思いが一番大きくあります。そしてその時に、北朝鮮の願いも
日本の願いもお互いがしっかりと言い、届けあって、間違いのない交渉をできる
のではないかなと思っています。
私たちは、めぐみの13歳のあの制服姿のまま途切れてしまっていますけれども、
本当にどうなっているのかなーという思いでいっぱいです。とにかく自由を与え
てあげたい、早くみんな日本の元の地に戻してあげたい、それだけで今日まで頑
張ってきました。
皆さんが本当に私たちに寄り添って下さって、ここまでずーっと集会とか講演
会とかあらゆる時に、拉致問題を解決しなければだめだという思いでお一人お一
人が私たちにぴったりと寄り添ってきて下さってきたことが日本をここまで変え
てきたのだろうと思っています。震災とか天災とか私たちの考えの及ばないよう
なことが世の中にまだまだ起きてくるかもしれませんし、その時はもう仕方がな
いことだと思いますけれども、私たちがしっかりと見つめて団結して戦い抜くと
いう気持ちだけは持ち続けていきたいと思いますので、どうか大変なことですけ
れども宜しくご支援下さい。ありがとうごどいます。
◆大震災も拉致も、この問題を忘れてはいけない
増元照明(増元るみ子さん弟、家族会事務局長)
皆さんこんばんは。いつもありがとうございます。
先月は大行進をやりました。一部の人が過剰な行動に出たようですが、それを
制し切れなかったこと、整然とやれなかったことは主催者の一人として申し訳な
いと思っています。今後はこのようなことが絶対ないように家族会事務局、救う
会事務局が共に反省して統制のとれたやり方でやっていこうと思います。
皆さんそれぞれ言いたいことがあるでしょうけれども、今回は、議連と救う会、
家族会が主催したデモでしたので、そこに添った形でやっていただければ一番よ
かったのですが、拉致被害者救出のためには国民に強く訴える、そして国民の共
感を得なければいけない。そういう思いが私たちも救う会にもあります。
6月11、12日の全国一斉活動では、私は11日は福島に行きました。福島の駅前
は少し小雨が降っており、通行人は少なかったのですが、それでも通り過ぎてい
く人たちが、「この問題も終わってないよね」と署名をしていただきました。そ
して、「こんな放射能の町によくお出でなさいましたね」と言われまして、福島
の方たちは放射線について危ないという思いを抱いていらっしゃるのかなと感じ
ました。
翌日仙台では繁華街でやりました。人通りは多かったのですが、足を止めて署
名するというのが1%か1.5%くらいでした。その中でも、仙台の若林区とか宮城
野区、それに多賀城市など被災のひどいところの人たちが多く署名をしてくださ
いました。住所を見ますと、そういう地名なので、「どうでしたか」と聞くと、
「だめでした」と言われる方もいらっしゃって、どう言っていいのか分らない署
名活動でした。
ただ、そういう人たちも、この問題を忘れてはいけないという思いを持ってい
ただいているということで、政府がだらしないから皆さん怒りをもってやってい
るのでしょうが、今後の日本の復興のためにも、日本の国のためにも、動いてい
かなければならないと思っています。今年は暑いですから、みなさん気をつけて
動いてください。熱中症で倒れる人が去年の5倍くらいということですから。
5月に、カート・キャンベル国務次官補に会った時、(前の報告では)言い忘
れたんですが、「私たちは自衛隊法の改正を含めて日本でのそういう主張をし、
運動を展開し、拉致被害者救出のために頑張っていきます」と申し上げた。「だ
からアメリカも一緒にやってください」と言ってきました。
アメリカ主導の軍事制裁はうまくいかないと思うんですが、力を発揮するので
も、日本が被害者を救出するために自国の自衛隊というものがあって、しっかり
と被害者を見極めて連れて帰る。邦人保護という点でも、今の憲法上できる筈な
んですが、その中でしっかりとやっていく体制を作ってもらう。これは急に北朝
鮮が崩壊してしまった場合に、準備も何にもなければ間に合わないということを
考えてもらわなければならないんです。
自民党政権の時から自衛隊の活用については救う会も家族会も言ってきたんで
すが、ほとんどやっていないというのが現状のようです。田母神(元自衛隊参謀
長)さんに聞いてもやっていないということです。秘密裏でも、訓練などやって
くれているのかと思っていたのですが、全くやっていないということでしたので、
いざという時にはどうするのでしょう。韓国軍に任せるのか、アメリカ軍に任せ
るのかという話がありますが、彼らは自分の任務で忙しくて、日本人拉致被害者
の救出にどこまで力を割けるのか。それより日本の国の力で被害者を取戻す法整
備をやっていただかなければならないと思っています。
9月までに北朝鮮が調査委員会を立上げ、そして調査をしないということになっ
たら、おそらく10月以降、何らかの行動を取らなければならないと思いますが、
その際は粛々と自分たちの主張を政府に伝えていくという姿勢を貫きたいと思い
ます。今度は政府に強く私たちの意志を伝えていかなければならない。その方法
を救う会と考えながら、皆さんにもご提示し、ご一緒に戦っていただければとあ
りがたいと思います。
健康には気をつけながらお互いに頑張りましょう。ありがとうございました。
◆子どもが母親を取戻すために頑張っているという悲惨な状況
本間勝(田口八重子さん兄)
皆さん今日は暑い中ありがとうございます。私たち来る側も大変ですが、それ
以上に来ていただいた方々は、私たちの思いを聞いてくださり、本当にありがた
く思います。
今日は6月29日です。実は八重子が拉致されたのは今日なんです。東京の高田
馬場で、1歳と3歳の子どもを託児所みたいなところに預けて、夕飯の頃連れて行
かれた。当時、「宮本明」と名乗る在日の工作員が関与していたことが分かって
います。
その人が宮崎まで連れていったと北朝鮮は言っていますが、宮崎かどうかは定
かではない。昭和53(1978)年という年は本当に忘れられない年です。今、地元
の川口市主催で、「拉致問題を考える川口の会」とともに、「拉致されて33年!
田口八重子さん写真展」というのをやっています。
また、川口は多数の特定失踪者がいます。藤田進さんとか、佐々木悦子さんと
か北朝鮮で目撃情報が出ている人がいます。政府認定されている12件17名という
人たち以上に、たくさんの人が北に連れて行かれている。
写真展に来て、見て、署名をしてくれている人のご意見をうかがいますと、北
朝鮮に再調査してもらうということだけど、北が連れて行ったのだから再調査な
んか意味ないじゃないか」という人もいます。我々も知らない拉致された人が当
然いると思います。調査会のデータで500人近くいますし、千人いるという人も
いる。家族が亡くなって声も出せない人もいる。再調査すれば、とんでもない人
が出てくるかもしれません。それはそれでいいと思います。
北朝鮮は約束したことを実行してほしい。拉致問題を少しでも前進させて生き
ている日本人を取戻すのが主眼ですので、私たちの家族だけが帰ってくればいい
という問題ではありません。皆さんもそう言っていますが、日本人を取戻すこと
で、皆さんが一生懸命支援していただいていると思います。
八重子が拉致をされて、まさか北朝鮮にいるとは思いもしませんでした。写真
展を見ると、小さいときから失踪直前までの写真がありますが、本当に走馬灯の
ように、八重子が育っていった過程、残していった子どもを思い出します。昭和
52年生まれの耕一郎という息子は、兄のもとで立派に成長しましたが、もう今年
で34歳です。その子どもが母親を取戻すために頑張っているという悲惨な私たち
家族です。
子どもも巻き込んで戦っているという現状です。私たちの家族だけではありま
せんが、解決するまでさらに力を貸してください。
今日は暑いところを本当にありがとうございました。
◆北はどう動くか、民間団体はどう備えるか
西岡 最近の北朝鮮情勢を踏まえて、拉致問題で北朝鮮がどう出てくるか、そし
て日本がどう動くのか、さらに、それに対して我々民間の運動はどう備えるのか
という問題意識で今日の会を設定しました。
北朝鮮内部の組織の名前や人の名前など、ちょっと専門的な話になるかもしれ
ません。専門的になりすぎたら少し説明を加えたいと思います。
まず、最近の北朝鮮情勢の動き、特に工作機関の動静についてです。ここは拉
致を行ったところでもあり、被害者を管理しているところでもあります。また被
害者の情報を一番持っているところです。
その工作機関の組織編制が変わったのが2009年2月です。そのことと、金正恩
が登場してきたこととの関係、そしてそれが今北朝鮮の内部でどのようなことが
起きているのかということとも関連しています。そして工作機関を誰がどのよう
な形で握っているのかということが分からないと、来るべき拉致の交渉が始まっ
た時、相手が分からないということになるので少し専門的な話になりますが、そ
ういうことをまず惠谷さんに報告してもらいます。
◆金正日?ロシアへの物乞い
惠谷 工作機関の話の前に、北朝鮮の現状をお話しします。2日後に金正日がウ
ラジオストクに行き、メドベージェフ大統領と会う予定だったのが中止になりま
す。その理由ははっきりしませんが、おそらくロシア側が、会っても経済支援の
話だけなので会う必要はないと断ったのだろうと思います。
しかし、一方で金正日の体調が悪くなったという話もあります。これは近々に
分かると思います。いずれにしろ5月に中国に行った69歳の男が、またロシアに
行くというのは物乞い以外の何物でもないと思います。
西岡 歳を1年ごまかしているので、本当は70歳ですね。
◆見栄えを気にするくらい体力は回復?金正日
惠谷 そう。老体に鞭打って行かなければならないというのが一つの現状です。
逆に考えれば、金正日はまだまだ元気である。これは残念な報告ですが、今年に
なってまたヒールのあるブーツを履くようになった。脳卒中で倒れて以降、足元
がおぼつかないのでヒールをやめてベタ靴で通していました。今年はヒールのあ
るものを履けるほど体力が回復した。見栄えを気にするようになるくらい回復し
たということです。
西岡 私もソウルで、韓国の情報筋から聞いたという話で、「腎臓の透析をして
いるという情報があったけれども、していない。メスを使った手術もしていない」
と。心臓も脳も。「管を入れるカテーテルはやっている。割と元気になってきて
いるようだ」、「それと比例して金正恩に対する後継作業の速度が落ちている」
と聞いています。
◆平壌市も配給ができず面積半減
惠谷 速度が落ちているというか、私の認識では、健康不安の時に金正恩を後継
者に内定して表に出した。正式決定はまだしていません。内外に見せたわけです
から、国内で金正恩の後継体制は徐々に進んでいると見ています。
経済的には大変な状況です。それをはっきり示しているのは平壌市の面積が半
減されたことです。人口的には半分ではない。平壌だけは食糧の配給システムが
何とか機能していたのですが、そのシステムが平壌ですら機能しなくなるので、
その前に面積を半分にし、外れた地域は「配給はもうない、人民が勝手に食え」
という状況になっていることです。これ一つとっても大変なことです。
そして金正日自身が年に3回も中国に行く。そして今度はロシアに行こうとし
ていて、事情はまだ分かりませんが、断られたのではないか。
西岡 面積が半分というのは、中和郡など南側の郊外のようなところを平壌市か
ら外したものです。実は、中和郡に招待所があり、横田めぐみさん、田口八重子
さんも含め、拉致被害者が連れて行かれた後、80年代の初めから86年まで中和郡
の山の中の招待所にいました。そういう招待所もあるような中和郡などが外れま
した。東京で言えば23区は残して三多摩を外したという感じです。
◆工作機関が解体?今後の対日政策は外務省の仕切りか
惠谷 しかし、今後の対日政策を外務省が仕切るというように役所の管轄が明確
になりつつあります。以前は金正日一人が仕切っていました。すべて金正日に通
じるということで、それはそれで分かりやすかったのですが、それがそれぞれで
責任分担が行われつつあるのではないかというのが私の現状認識です。
その一つは先ほど西岡さんが言ったように、工作機関が解体された。それも非
常に重要なことですが、それとは別に北朝鮮の秘密警察である国家安全保衛部が、
権力闘争によって、未確認ではありますが後継者である金正恩が責任者になる、
あるいはなったと言われています。
◆核実験がまだ行われないのは財政的理由か
もう一つ、核・ミサイルの問題があります。核実験というのは2009年に行われ
ました。昨年は次の実験ができるように、核実験場の整備がなされた。縦坑を掘っ
てもういつでも実験ができる状況です。私は春、4月頃には実験があるのではな
いかと思っていましたが、未だにしていない。これは財政的な問題かなという気
もします。
ミサイル実験もあってもおかしくない。彼らは、「2012年は強盛大国の大門を
開く年」と位置づけていますので、今年実験するのではないかと。まあ来年して
もいいのですが。核実験場で縦坑の準備をしたことを見ると、今年実験をしても
いいのになぜしないのか。実験する理由が3つ考えられる。一つは、過去2回の核
実験が、核爆発はしているのですが、設計威力に達していない、つまり失敗した。
だから3回目をやる必要がある。
ひょっとして濃縮ウランの方で製造可能な量を確保している可能性も否定でき
ない。そこで実験を濃縮ウランでやるという可能性も否定できない。
さらに、北の方からアメリカに対して核の小型化が完成したという言い方をし
ています。西岡さんは以前から、既に完成していると言っています。小型化が仮
に成功し、保有しているとしても、それを実験する必要があるだろう。
以上の3つの理由があるにも関わらず、まだ行われていないのは、経済的な理
由だろうと思います。あるいは必要な技術をクリアーしていないということも考
えられます。
北朝鮮は記念日にぶつけてというのではなく、記念日より出前でやります。
2012年が強盛大国の大門を開く年ならば今年秋にやる筈だと思っています。冬は
様々な理由でやりません。
それがまだ行われないというのは大きな問題を抱えているからで、技術的なこ
とか、財政的なことかでしょう。
◆人民軍の物資が闇市に
西岡 今の話で経済が困窮しているということでした。前回話しましたが、上層
部への配給が難しくなってきている。8割の、人によっては9割とも言いますが、
上層部は配給対象です。一般庶民は90年代後半から大飢饉で人口の15%が死んで
以来、配給が止まっています。しかし、自分の才覚で闇市で食べています。闇市
には中国製品と日本、韓国、国際社会からの支援物資が横流しされ出ていた。
私が最近聞いた話では、北朝鮮人民軍の物資が闇市に出回っている。各地の軍
団に対して、「もう中央でめんどうを見せないから自分で食え」という話が行っ
ていて、しょうがないから兵士用の靴、軍靴ですね、そういうのを闇市に出して
コメや食糧に代えているということです。
昔は、米軍の基地があると米軍の物資が流れたりしましたが、そうではなく、
北朝鮮人民軍の物資が闇市に流れているという話を「ファクト」として聞きまし
た。
◆人民軍で異例の人事?経済難深刻
また、昨年9月の人事で、総参謀長になったのが李英浩(イ・ヨンホ)で、こ
の人だけ若い人です。金正恩側近と思われていますが、この人事について、北朝
鮮軍を専門としている韓国のある人に聞いたら、「異例の人事」だと言います。
なぜかというと平壌防御司令部出身だということです。北朝鮮人民軍は革命の軍
隊で、平壌防御司令部はボディガードみたいなものでワンランク落ちるというこ
とです。また、これまで総参謀長に平壌防御司令部出身の人はなっていないと。
野戦司令官がなるものですということでした。
ところが野戦司令官は、「それぞれ自分で食え」と、ある面で昔の中国のよう
に軍閥化していて中央の統制がきかなくなっている。金正日としては、自分が信
頼できるのは平壌にいる部隊しかないという状況になっている。つまり上層部も
お金がなくなってきている。
下はもう自分で食べているわけですが、金正日が自由につかえる、いわゆる統
治資金、色々な説がありますが年間5億ドルとか10億ドルが必要です。
端的に言うと、ベンツを買えている。1970年代北朝鮮は貿易をして代金を払わ
なかったのです。日本のお金も踏み倒している。貿易保険が適用されて日本政府
が北朝鮮と貿易したところに、貿易代金の6割とか払いました。それを北から回
収しなければならないがまだ返ってきていない。西側諸国にみなそれがあります。
従ってベンツを売ってくれと言っても現金でしか売らないのです。信用取引はし
ない。それなのに未だに買っているんです。
今国連の安保理事会が贅沢品の北朝鮮への輸出を禁止していますから、ベンツ
を輸出しようとして摘発されたことがありましたが、それは外貨があるからです。
物を買って現金を払わないのに別のところに外貨がある。それが統治資金ですが、
その統治資金の枯渇が始まった。こういう状況の中で金正日が中国に行ったり、
ロシアに行こうとして断られるということが起きてきています。
今の惠谷説によると、核実験の準備はできているのにできなかったのも、もし
かしたら外貨がないという可能性があるということです。
◆金正日の訪中?3つの依頼は失敗
実は、金正日の訪中について、あるところから情報を聞きました。今の話と関
連があるのでここで報告しておきます。今回の訪中がまさに物乞いだったのはそ
の通りですが、具体的に3つのことを頼みに行った。第1は、金正恩後継への支持
取り付け。それは去年からずっと行っているが、中国共産党は内心では三代世襲
は北朝鮮だけでなく、中国の立場としても有害であると判断している。しかし、
表向きは、中国は北朝鮮の内部問題に干渉しないという言い方で、支持という言
葉は与えない。今回も与えなかった。
2番目は武器。これも惠谷さんがそういう情報があると言っていましたが、私
もそう聞きました。北朝鮮の在来式武器はソ連製、今のロシア製が多い。そして
部品が入ってこない。ドルがないともうロシアは売らないからです。そこで中国
から、戦闘機を含めた武器を入れようとした。しかし、今、安保理事会で北朝鮮
に対して軍事に関わるものは禁輸をかけた。禁輸をかけた安保理事会の常任理事
国である中国が現段階で北朝鮮に武器を出したら、国連を敵に廻すことになりま
す。
裏で色々と話をしていたけれども、本来なら昨年の9月か10月に中国から武器
が入る話があったが、中国共産党の中央が止め、ジープやトラックは出した。今
回も、運搬装備とか建設用の重機は出すが、現時点では武器は出せない。世界が
中国を注視している、と言ったそうです。
3つめが現金の支援です。経済支援をしてくれと。中国側は、これまで経済支
援はやるだけのことはやった。これ以上中国から支援をもらおうとするなら、中
国の企業から支援を受けなさい、と。今、鴨緑江の河口で何かやっていますよね。
その時中国側がこう言ったそうです。「中国の企業家は我々政府の命令には従い
ません。だから中国の企業家が好むような環境を作らなければダメですよ。中国
の企業家は、北朝鮮が法律をやたらに変えたりするのを怖がっている。投資促進
のためには、北朝鮮の中でも、中国の企業家に対しては、中国法を適用するよう
に求めた」と。金正日は大変不機嫌で帰っていった、という話を聞きました。
◆2008年12月 金正恩が後継者として登場
惠谷 今の話を聞いていると、10年、20年前、日本企業が中国に進出した際、非
常に不安がっていて、日本の法律を適用してほしいと思っていたと思いますね。
同じことを中国が北朝鮮にやっている。
さて、今日確認して帰っていただきたいのは、配布資料の「2011年前半の北朝
鮮動向」にあります。その中の「金正恩公式登場まで」について少しお話します。
ご存知のように去年の9月に、初めて北朝鮮の報道で名前が出て、しかも漢字や
役職は党中央軍事委員会副委員長と、国内外に紹介されました。
しかし、その後の様々な研究によって、色々分かってきました。金正日は2008
年8月14日に脳卒中で倒れましたが、1か月くらいで相当意識もしっかりしてきた
と思います。そしてリハビリをして、3か月後の2008年11月24日には、彼の独特
の統治スタイルである現地指導を再開しました。現場を動いて、こうしろ、ああ
しろと、それは余計な問題が生じていますが、そのことは別にして、現地指導を
再開しました。つまり身体が動くようになったということです。
その1か月後、2008年12月20日には、金正恩をもう連れて歩いている。そして
2010年9月に内外に紹介されます。つまり、その2年前から金正日は三男を連れて
歩いて、現場では、「尊敬する金正恩大将同志が現地指導された車組立工場 主
体97(2008)年12月20日」というプレートを打ち付けています。そういうことが
その後も何箇所かで確認されています。
つまり、国内での軍部隊や大企業には、後継者として連れ歩いていたのです。
大事なことは、本人も自分が後継者になるという意識の中でやってきています。
◆2009年2月 金正恩が党3号庁舎を改編し、偵察総局を創設
対南工作機関、北朝鮮では「党3号庁舎」と言いますが、これは朝鮮労働党中
央委員会の下に、調査部、連絡部、作戦部、統一戦線部という4つの謀略機関、
工作機関がありました。それを金正恩が後継者として紹介される1年半前の、
2009年2月に、私の推測では金正恩が、自分が後継者になるに当たって、この組
織を変えたい、自分の物にしたいということで党3号庁舎を改編し、偵察総局を
創設しました。
これは、金正日が後継者になって以降、1975年に、権力基盤をどこに置くかと
いった時に、同じ手法を取っています。それと同じことを2009年2月に、金正恩
がやった。金正日の時は、本人はもう34歳で、党中央に入って10年くらい経験を
積んでいました。
しかし、金正恩は軍の大学を出て、軍部隊の体験も多少ありますが、軍人バカ
と言いますか、軍が専門ですから、彼は工作機関を軍の中に引き入れるというや
り方でした。それが、最終的には偵察総局という名前に組織を格上げして、自分
が牛耳るようになった。
党中央軍事委員会の副委員長のポジションしかありませんが、偵察総局の総局
長は、大将である金正恩のワンランク下の上将なので命令を下すことができる。
その組織の工作員が、先年韓国に、脱北者に偽装して黄長●(火へんに華)元書
記を暗殺しに来るという事件もありました。
過去は、朝鮮労働党の組織だったものが、金正恩の登場で、朝鮮人民軍の軍事
組織になったというのは非常に重要なことで、韓国の哨戒艦を撃沈したり、延坪
島を砲撃したことにつながります。
金正恩の登場で、工作機関のやり方も変わりますが、それ以上に、軍主導の工
作、もっと言えば軍事作戦、軍事攻撃がこのところ多くなったのは、明らかに金
正恩の登場と密接な関係があります。ということは、今後もそういうことが出て
くる可能性があります。
さらに、3号庁舎を解体するに当たって、4つの内、2つが軍に入りました。党
連絡部は、元々は韓国の地下組織の構築、あるいは対南工作が主体でしたが、姜
周一(カン・ジュイル)という部長は元々統一戦線部にいて彼が対日工作もやっ
ていました。
西岡 朝鮮総連を担当していましたね。
([2]に続く)
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■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
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担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
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