救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

「拉致被害者はなぜ生きていると言えるのか」国際セミナーレポート[3](2011/12/29)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2011.12.29)

■「拉致被害者はなぜ生きていると言えるのか」国際セミナーレポート[3]

【第3部】総合討論 どう救出するか

櫻井よしこ これまで第1部、第2部で北朝鮮の内部情報、そして日朝交渉の裏
舞台でどのような思惑があったのかということを初め、韓国の金美英さんや学生
さんに、非常に勇気付けられる報告をいただきました。

 韓国というところは、とんでもない訴訟が起きるところで、どうしてああいう
訴訟が起きるのか理解できないところもあるんですが、そういうことをきっかけ
にしてもっと真実をえぐり出していくことができるのではないかと感じました。

 これからは日本の政治家及びこれまで拉致問題を非常に熱心に、継続して追っ
てきた荒木さんたちを初めとする専門家の方々に、なるべく具体的に、どうやっ
たら拉致被害者を救っていくことができるのか、日本政府、そして私たちは今、
何を課題と考え、その課題をどのように解いていったらいいのかについて話をい
ただきたいと思います。

 これはなかなか難しく、秘密の部分もあるでしょうが、そこをなるべく具体性
を持たせながらお話をいただければと思います。

 まず、民主党の拉致議連事務局長、笠浩史(りゅう ひろふみ)さんからお願
いいたします。

◆「拉致問題の解決なくして国交正常化はない」は当り前

笠浩史(衆議院議員、民主党拉致問題対策本部副本部長)

 皆さん、こんにちは。先ごろ、超党派の拉致議連事務局長であった松原仁先輩
の跡を継いでしっかりと解決に向けて、すなわち政府認定の被害者と特定失踪者
も含めて全員の救出に向けて取組んでいくことを、まずお約束したいと思います。

 皆さんもご心配かと思いますが、最近国会でも北朝鮮との国交を推進する議員
連盟がありますが、拉致議連のことを名指しで非難しています。懸念するのは、
政府はもちろん、我々国会議員は、「拉致問題の解決なくして国交正常化はない」
というのは当り前のことです。

 しかし、一部の議員が、これはわが党にも参加議員がいますが、「国交正常化
した方が拉致問題は早く解決できる」という主張をしています。こうした動きは
我々がしっかりと牽制をしていかなければならないと考えています。

 今週月曜日(12/5)に民主党拉致問題対策本部の役員会を開きました。今日は
本来なら中井本部長がうかがうところ、私が代理で参りました。この中で、昨今
様々な情報、横田めぐみさんの生存情報や韓国からも色々な情報が出てきていま
す。

 これに対して、政府の対策本部から、真相はどうなのかということをうかがっ
たのですが、はっきり言ってまだまだ甘い、調べきれていない。主体的にそうい
うことを進めていくことができるように強く要請しました。

 同時に、(拉致の再調査を約束して破棄した)2008年以来、何の北朝鮮側
の対応がありません。ですから、新たな制裁、圧力を強めていくことを具体的に
検討しなければ、解決への道はないということを確認しました。どういう制裁が
いいのか、皆様方の色々なご意見も伺いながら進めていきたいと思っています。

 また、今アメリカでも拉致についての関心が高まっています。明日、政府主催
のシンポジウムがありますが、先般私も会談させていただいたチャック・ダウン
ズ氏が、今回拉致報告書の日本語版を先日出版しました。ですから、アメリカ政
府・議会に対しても、テロ支援国家のリストに再びしっかり指定するように、日
本政府として働きかけをするように求めていきたいと考えています。

 今日は韓国の方々もおられますが、分かっているだけで14か国もの被害者が
いるということで、連携をどうしていくのかも含めて、北朝鮮に対する国際的な
圧力が必要です。北朝鮮がしっかり解決をしない限り、孤立させていく、国際社
会では生きていけないというような大きなうねりを起こしていかなければならな
いと考えています。

 ともかく拉致問題を風化させてはいけませんし、皆様方の全国での様々な取り
組みに対して、期待に応えていくことができるように、政権政党として頑張って
いきたいと思います。

櫻井 ありがとうございました。日本の問題というのは、日本は拉致問題に関す
る国民世論では最も強い支持がある国だと思います。当初韓国の人たちが日本に
来た時に、「私たちは日本がうらやましい。日本では国民がこんなに拉致問題の
解決を要求し、政治家も超党派の議連で来てくれる。韓国は誰も振り向いてくれ
ない」と言っていたんですが、今やその韓国でも、李明博大統領夫人が写真展に
来たり、野田さんが「拉致問題に解決してください」と言ったら、「いやいや、
韓国でも拉致問題があるんです」と言ったりするようになった。つまり、急速に
変わっています。

 日本を見ると、国民は非常に盛り上がって関心を持って10数年が過ぎ、同じ
ところに止まっているのが問題ではないかと思います。拉致議連の皆さんは、解
決しようということで相当熱心にやってきてくださったことは、ご家族の皆さん
も感謝をしておられますが、なぜ一歩も前に進めないのか。他方、今、笠さんが
ご指摘のように、「国交正常化した方がいい」というようなグループが未だにあ
る。

 対話と圧力、実は圧力と対話なんだということは、私たちはずっと前から言っ
ているわけで、ここまで来たら金正日は早晩倒れるんだから圧力と圧力だ。そし
て水面下で、いざという時には日本国は、北朝鮮の拉致をした人々には、「あな
たがたを罪には問わないから早く拉致被害者の居場所を言いなさい」とか「返し
なさい」とか、そういう情報交換、交渉がなされなければならないと思います。

 これは非常に難しいことで、秘密外交として行うことなので、何を勝手なこと
を言っているんだと言われる嫌いが十分にあることは存じていますが、ならばこ
の点も含めてお考えを述べることができるならお願いできればと思います。

 有村治子(はるこ)さんは、自民党で、拉致議連幹事、参議院議員でいらっしゃ
います。宜しくお願いいたします。

◆一部を失って黙っている国民はすべてを失う

有村治子(拉致議連幹事)

 志を同じくする皆様とこの国際セミナーでご一緒できることを大事に思ってい
ます。

 今、目の前に有本さんや横田さんのご両親がおられます。34年前に拉致され
た横田めぐみさんは当時あどけない面影を持った13歳の少女でした。今ここに
おられれば、私の年令より数年上で、私と同じくらいの背格好で、私と同じよう
に子育てをした普通のミドルになっていただろうと思うと、あどけない13歳か
ら、40代までの時間の長さと、ご家族やご関係の方々の、事の深刻さを改めて
胸に刻んで発言させていただきます。

 先ほど、櫻井先生からご指摘がありましたが、日本はうらやましいと韓国の方
がおっしゃったということはありがたいことです。同時に私たちはここで、ちょっ
と志が違うのですが、昨日山岡先生(拉致担当大臣)に対する問責決議を出しま
した。消費者担当でもあります。

 問責決議の1番の理由は、「マルチビジネス」でしたが、1万人のマルチビジ
ネスの会員の方々を前に、彼が大臣になる前に言っていた一言だけでも、私は罷
免に相当すると思います。それは、「自分の秘書がマルチビジネスを積極的にやっ
ているリーダーだ。彼女に拉致をされて私は今日、この1万人の会合でマルチビ
ジネスの皆さんに革命を起こしてもらいたいからここにやってきた」と発言され
ていました。それを予算委員会の理事会で見た時、私は義憤が止まりませんでし
た。

 現に今、拉致をされていて、この瞬間も日本国民が、ご両親やご親戚が返して
くれる、そのために頑張ってくれていると最後の望みをかけている方々が、同胞
がまだ日本の国土に戻らない中で、自分は安全なところに身を置く人たちが「拉
致されてここにいる」ということは、冗談でも言ってはいけないことだと思って
います。

 そういう意味では、この拉致の問題は、単に人権あるいは主権の侵害、専門家
や関係者だけの問題ではなく、国民の世論に裏付けられた外交にしていけるかど
うかというのが、私たちにかかっている次のフェイズ(段階)での大事な懸案だ
と思っています。

 先ほど、笠先生も少し触れられましたが、アメリカのワシントンにあります民
間調査機関、北朝鮮人権委員会のチャック・ダウンズ事務局長が出された今回の
報告書の日本語版がでました。これは第1章のコピーです。私の拉致議連の先輩
の古屋圭司先生から、是非皆様に紹介してほしいというメッセージを携えて参り
ました。

 ここには日本や韓国のみならず、アメリカの大学生であったデイビッド・スネ
ドンさん24歳、北京語・韓国語もできる青年が中国の雲南省で拉致されて連れ
て行かれたのではないかというご両親の調査インタビューが書かれています。こ
れは、私たちにとっての一つのヒントだと思っています。

 主権や人権侵害、あるいは自国民の安全ということを担保するためにコストを
いとわないアメリカと、この拉致の問題で本当に連携できるような糸口をしっか
り活用していくという同盟がしっかりできるよう精一杯頑張っていくという古屋
拉致議連幹事長のメッセージを届けてほしいということでした。

 ドイツの法哲学者エーリングがこういう言葉を残しています。「領土の一部を
失って黙っている国民は領土のすべてを失う危険を負う」。これを置き換えると、
「主権の一部を失って黙っている国民は主権のすべてを失う危険を負う」、「一
部の国民の自由と安全が脅かされて黙っている国民は全国民の自由と安全が脅か
される危険を負う」。このことを私たちは、右だ左だではなく、より多くの国民
に伝えて、外交の裏打ちとなる世論を作っていかなければと思っています。

 その意味で、拉致問題を拉致家族の問題にしない、北方領土を北海道の問題に
しない、竹島を島根県の問題に、尖閣を沖縄県の問題にしない。これは私たち国
民自身の身体の安全と心の安寧を守るために大事な拉致問題だというメッセージ
を、今まで働きかけたことがない方々に伝えていく姿勢、信念を持てるかに係っ
ていると思っています。

 この場にご一緒させていただけることを改めて感謝するとともに、責任の重さ
を痛感いたします。ありがとうございました。

櫻井 どうもありがとうございます。次に公明党拉致問題対策委員会事務局長で、
参議院議員、元外相政務官の浜田昌良(まさよし)さんお願いいたします。公明
党は、どの政党よりも国民の命を大事にするということですから、是非ご決意の
程をお願いいたします。

◆北朝鮮への日本の制裁が効いている

浜田昌良(公明党拉致問題対策委員会事務局長)

 ありがとうございます。私は5年前、安倍内閣の時に外務大臣政務官でした。
朝鮮半島の担当ではなかったんですが、人権問題を担当させていただき、丁度国
連の人権理事会ができる時で、これを扱ってもらおうと、当時人権弁務官であっ
たアルブールさん等と、ジュネーブやタイで拉致の写真展をしようということで、
当時増元さんと行かせていただきました。

 わが党は、今櫻井先生からもご紹介いただきましたが、人権の問題、命の問題、
これは党派を超えて取組むべき問題と思っています。また、先ほど櫻井先生から、
「この問題は圧力が重要」という話がありました。これについては、先ほど第1
部で、元統一戦線部の幹部の方から話がありましたように、アメリカの圧力をど
う使うかということが大きいと思います。

 今、有村先生からもご指摘がありましたが、アメリカ人の方も拉致されている
という事実が分かっています。残念なことに6か国協議の議題から、2005年
に、当時のクリストファー・ヒル(国務次官補)が、外してしまっているという
状況があります。もう一度、単なる作業部会の議題ではなく、6か国協議の議題
にもう一回上げることをアメリカに要求すべきことが第1と思っています。

 第2には、笠先生もおっしゃいましたが、テロ国家指定については再指定して
もらうことが重要と思っています。これはアメリカだけにお願いすることではな
く、日本も制裁の問題については北朝鮮への送金全面禁止を考えるべきと思って
います。

 これは効果がないという方もおられますが、私はそうではないと思っています。
先週、ある報道が流れました。これは、北朝鮮が2010年5月に、経済制裁の
一部解除を条件に、拉致被害者の再調査委員会の設置を鳩山政権に打診していた
というものです。真偽は分かりませんが、こういう報道が出るくらいですから、
北朝鮮への日本の制裁が効いているわけですから、制裁はしっかり考えていかな
ければと思っています。

 また、今日、第1部、第2部に参加させていただいて思ったことですが、第1
部で張哲賢さんのお話がありました。その中で、脱北者の生々しい情報をおうか
がいしました。こういう情報が数多く出ることが、北朝鮮を追い込む上で非常に
重要と思います。特に、張さんの発言の中で、「情報の市場化」という話があり
ました。脱北者の方々の情報が数多く流れるようにしていくことですね。日本政
府も調査費がたくさんあるようですから、使ってほしいと思います。

 そういう中で第2部で感じましたのは韓国との連携が重要と思います。先ほど、
金美英さんや学生さんのご努力には敬意を表しますが、この動きを日本と連携す
ることによって、硬い壁ではあるますが、より大きく、違う角度から打ち破るの
ではないかと思いました。やればできると思います。以上、宜しくお願いいたし
ます。以上です。

櫻井 この会場に参議院の谷田川さんも来ておられますので一言ご発言ください。

 よく考えると、北朝鮮の拉致問題は、北朝鮮だけを見ていても決して解決でき
ないんですね。私たちが国民大集会でいつも強調してきたことは、北朝鮮の後ろ
に中国がいるんだと。この中国にどう対処するか、どのようなメッセージを送る
かです。それは単に解決というメッセージだけではなく、北朝鮮が拉致問題を解
決した方が中国のためにもなるんですよということです。それをいかに彼らのた
めに納得させるかです。

 例えば今、中国は強硬な外交政策である種の孤立状態に陥りつつあるわけです
が、こういうことも政治化の方々は見据えながら拉致問題を多角的に捕えていく
必要があるのではないかということ、常に感じています。

 このことでなくてもいいですが、お三方の政治家の方々は、それぞれ心のこもっ
た決意をお聞かせいただきましたが付け加えることがあったらお願いします。

◆北朝鮮人権決議への反対国には日本のODAは供与できないと伝えよ

谷田川元(衆議院議員、民主党)

 私は、11月28日に、北朝鮮による拉致問題特別委員会で質問を致しました。
その中で取り上げたことですが、日本外交の地道な努力の結果、国連の委員会に
おける北朝鮮の人権決議で112か国が賛成しました。北朝鮮による拉致事件の
被害者を即時帰国させ、北朝鮮の人権状況を改善させる決議案ですが、過去最多
の賛成となりました。

 反対が16か国あります。危険も50数か国ありますが、反対の16か国の内、
日本のODAが供与されている国が、何と14か国あります。ロシアと北朝鮮を除
く、中国とかミャンマーとか、エジプト、イランです。北朝鮮の人権決議に反対
する国に、皆さんの税金をなぜ使う必要があるのでしょうか。

 外務省は嫌がりますが、例えばアメリカには、人権の問題がクリアーできない
と援助できないという法律があります。アメリカの場合は議会の力が強いですか
らそういうものが出されています。

 主要援助国で見ますと、ODAの供与について法律的な枠組みを決めているとこ
ろはないようですが、この際、すべての日本の閣僚は、拉致問題は日本の国家主
権の侵害だという言葉を使っています。国家主権の侵害であれば、日本が提案す
る北朝鮮人権決議に対して、反対国には日本のODAは供与できないと、こういう
メッセージをしっかり伝えるべきだと思います。それが中国へのメッセージにも
なると思います。

 外務省の官僚の方々は、ODAには色々な状況がありますといいますが、国連の
決議では賛成、反対、棄権があります。賛成できなくても棄権でいいと言えば、
賛成国がもっと増えると思います。是非このことを超党派で進めていきたいと思
います。

櫻井 家族会の事務局長として、増元さんは色々な思いがあると思います。お願
いいたします。

◆家族の命を金で買うのではなく堂々と取戻してほしい

増元照明(増元るみ子さん弟、家族会事務局長)

 家族会の事務局長というより拉致被害者家族として発言したいと思います。

 先ほど国会議員の先生方もおっしゃいましたが、第1部、第2部を見ていまし
て、まず張哲賢さんの証言ですが、これによって北朝鮮が小泉元総理の訪朝を見
ていたかがよく分かりました。完全になめきっているという感じですね。日本サ
イドの問題を解消させてあげるために会ってやったというスタンスが見えるよう
な証言だったと思います。

 小泉元総理の2回目の訪朝の時も、参議院選挙の苦境を助けてやっているとい
うスタンス。このスタンスを変えない限り、北朝鮮が日本に対し、真摯に拉致問
題を考えることはないでしょう。

 現在もそれが続いているということ、そして日本国民が小泉さんの訪朝を非常
に評価しているということをもう1回くつがえさなければならないのかなと思い
ます。そうしないと、国内ではあの訪朝で拉致問題が開けたと言っておられる方
が大勢いらっしゃるし、自民党の先生方にもおられます。

 しかし、今日の張さんの証言で、それは間違いだということが明らかになった
わけですから、それを国民がもっと知って、やはり違う方法をとらなければ北朝
鮮との交渉はできないということを考えなければならないと思います。

 また、先に金を払わなければ金正日との交渉はできないという状況では、我々
は納得できないです。私たちの家族の命を金で買おうとするのかと。それでは帰っ
てきた家族は非常に肩身の狭い思いをします。だから彼らには堂々と帰ってきて
いただきたい。そのためには、日本が国家として堂々と取戻していただきたいん
です。

 このようなことは私たちはできない以上、他に方法を考えなければならない。
それが、圧力で、北朝鮮に動かなければならない情況を作るということなんです。
谷田川先生が国会で質問していただきましたが、先日、ミャンマーを訪問したク
リントン米国務長官が、これは報道だけで事実は分かりませんが、ミャンマー政
府に対して、北朝鮮政府との友好関係を考えろと強く迫ったという話です。

 あ、外交の中で、こんなことができるんだと私は思いました。日本はこれまで
ODA外交です。札束で相手をはたきながらやらせるというのは、潔くないという
思いがあります。しかし、わが国は武力では解決できない。荒木さんはできると
おっしゃるでしょうが、経済力で解決しなければならないという方法は、もっと
真摯に考えなければならないと思います。

 だからミャンマーに対しても、北朝鮮との友好関係を切らなければ、拉致問題
を解決させようとする我々の方策に協力しなければODAを切るよと言っていいん
じゃないでしょうか。それがわが国が、本当に拉致問題を真剣に考え、そして解
決しようとしている姿勢を、国民にも、そして世界にも知らせることだと思いま
す。

 このままでは、国民にも何にもなりません。だから各地に行っても、結局、
「かわいそうよね、どうにかしてよね」という言葉だけで終わってしまう。国民
に見える形で、自分たちの政府は、国民を守るためにこれだけのことをしている
んだという姿勢を見せることがまず必要だし、これまで膠着状態と言われてきま
したが、これは拉致を理由に北朝鮮に対して制裁をかけないからです。

 今までは。核・ミサイルを理由にして制裁をかけました。拉致は付け足された
感じでした。今度は、正真正銘、拉致問題を解決するために追加制裁です。我々
が今求めているのは、朝鮮総連の人たちに再入国許可を出さないようにしようと
いうことですが、これさえもしようとしない。なぜなんでしょう。

 本当に私たちの国が、真剣に国民の命を考え、そして取戻そうとするならば、
どんな手でも使っていただきたいんです。どじょう内閣なら、どじょうのように、
どろどろしたやり方でもいいじゃないですか。それをやっていただけないから、
私たちに不信感が芽生えてきます。

 あと、笠浩史先生がおっしゃったように、国交正常化を推進する議員連盟の衛
藤征士郎副議長が行かれるようですが、2002年に帰国された被害者に、救う
会の西岡会長がお聞きしたことがあります。「もし、あなたたちが帰ってくる前
に国交正常化がぁなされていたら、あなたたちはどうなっていたでしょう」。

 その時彼らが答えたのは、「自分たちは日本に帰ることができなかったでしょ
う。地方に追いやられていたでしょう」ということでした。つまり、国交正常化
では彼らを取戻すことはできないと彼らが言っていたんです。それを知ってか、
知らずにか、衛藤さんが、今回の産経新聞のインタビューで、「それは関係ない。
とにかく国交正常化をするんだ」と。また、拉致議連を批判されましたが、家族
会・救う会にも宣戦布告されましたので、私たちはこういった方々とも戦ってい
かなければならないと思っています。

 そして、今日は韓国からお見えの方々にご協力いただいておりますが、ここに
タイのタマサート大学のワリントン準教授もお出でです。紹介をさせていただき
ます。丁度、3か月間、研究で来日されているというということです。このセミ
ナーにも前に参加していただきました。アノーチャーさんの救出運動に尽力され
ています。こういった方々とも連携しながら、拉致問題を解決していかなければ
ならない。そのためにも、日本が率先して、やるべきことをやっていくことが必
要だと私は思っています。以上です。

櫻井 増元さんは、家族会の事務局長というより拉致被害者家族としてと強調さ
れましたが、今おっしゃったことも心情的な反映を強く感じました。拉致被害者
の家族はもちろん、どんなことをしてでも早く救ってほしいと思っています。政
治家の役割はその思いを色々な形にして、多角的にこれを使っていくことだろう
と思います。

 例えば今、増元さんは、ミャンマーに対するODAをカットすればいいじゃない
かとおっしゃいましたが、今、ミャンマーは新しい政権の下で、民主化への動き
をようやく始めたところに踏み出したところです。アメリカが北朝鮮との関係を
切りなさいと言ったのも、そういう風にしたら援助を増やすよというボールを投
げたわけです。

 そのミャンマーに今わが国が、何かをしない限りODAをカットするよというの
は、ご家族の心情としては120%分かりますし、否定するわけではないですが、
日本国が政治の力と経済の力と軍事の力と、あらゆる力を結集して最も賢く交渉
するためには、感情を心の深いところに持ちながらも、もう一味も二味も、一ひ
ねりも二ひねりもした外交というものをやらないと、だめだと思います。

 荒木さんは長年この運動をしてこられましたし、また政治の動きも見てこられ
ました。荒木さんはどちらかというと、私たちと同じで、ご家族の方々と情感と
いう意味で絆が強いのですが、今日は私たちは、その情感をちょっと抑えて、そ
れを乗り越えたところで巧みな外交力を発揮しなければいけないと思います。そ
の辺についていかがですか。

◆力の裏づけなしの外交力というのはない

荒木和博(特定失踪者問題調査会会長)

 外交力という意味で言いますと、外交力はあくまで軍事力の裏づけがあって外
交力になるわけで、力の裏づけなしの外交力というのはないだろうと思います。
憲法があるからできないと言っているのは、まったく屁理屈にすぎないですね。
どうしても取り返さなければいけないということがあれば、あらゆる手段が使え
ると思います。私は増元さんと違って宥和派ではありませんので、強硬派ですか
ら、いくらでもそれは可能だろうと思います。

 今日のセミナーでお話が出たように、被害者はほとんど生きていると思ってい
るのですが、ここで一言残念なニュースをお伝えしなければいけないのは、先ほ
どメールをいただきまして、この中でご存知の方も多いのではないかと思います
が、前に産経の「正論調査室」におられた大口やすはるさんが昨日亡くなられた
というメールを受けました。癌でしたが、抗癌剤の投与をやめておられたので、
ご本人も覚悟はされていたのですが、来年くらいはのんびりしたいと言われてい
たので、今週の初めにメールで、「では新年会でもやりましょう」とやりとりを
して、「是非楽しみに」というメールを貰っていたところでしたので非常にショッ
クでした。

 今生きているということは、明日生きているということを保証するものではあ
りません。時間には限りがあるものであって、今生きているということは、永遠
に生きているということではない。これは我々ももちろん同様ですが、それをど
うするかという時限付きの覚悟が必要だろうと思います。

 先ほどお話がありました呉吉男(オ・ギルナム)さんのメッセージの中に、
「日本人を二人見た。その内の一人は女性である」ということで、これは先ほど
西岡さんの話にもありましたが、昭和47年の11月に東京で失踪された生島孝
子さんであろうと我々は思っております。

 私もソウルの呉吉男さんの自宅に参りましたし、呉吉男も東京に来られて、生
島さんのお宅にも来ておられます。今日はお姉さんが来ておられますので一言お
話いただきます。

生島馨子(生島孝子さん姉)

 皆様突然で申し訳ありません。特定失踪者の生島孝子の姉で馨子と申します。

 実は、呉先生がちょうど7年前、日本の女性を見かけたとマスコミの方におっ
しゃってくださって、マスコミの方がそれを捨てないで持って帰ってくださいま
した。

 それを荒木さんが半年以上必死に調べてくださって、生島孝子であろうという
ことでした。その当時まだ母が生きていましたが、荒木さんがソウルに行ってく
ださり、私も行って呉先生にお会いして、間違いないようだということでした。

 呉先生は日本にも来られて、日本では拉致問題が非常に盛り上がっていました
ので、拉致問題の解決に協力したいといって来られました。ところが、特定失踪
者ですから、テレビでこの前放送されたのですが、私の運動は、救う会のような
ものがありませんし、呉先生の思いとは裏腹で、その場だけで終わってしまいま
した。

 ちょうど7年経って、先生が命をかけて証言してくださったのに、何も日本で
できず、非常に残念に思っていました。今回、韓国で盛り上がっていることをう
かがいまして、ある種の安堵感を覚えました。呉先生の救出活動が大きくなって
くれることを望んでいます。

 そして今日、ご病気で来られなかったということが非常に残念ですが、お元気
でいてほしいと思っています。そのことが、妹の証言をしてくださった先生に、
お元気でという言葉しか返せませんが、皆さんこういう事実を是非知ってほしい
と思います。

 拉致問題を一言で片付けないで、色々なことがあるということを、もっと関心
を持っていただきたいと思います。ありがとうございました。

荒木 実は今日、呉先生がお見えであったら、生島さんに会っていただく以外に、
是非一つお聞きしたいと思ったことがありました。呉先生に対して日本政府が、
生島さんのことについて情報を聞いているのかということです。また確認をして
みたいと思います。そういう情報があってもおそらくまともに確認はしていない
んだろうと。確認しないで物が分かる筈はありません。

 私は何度も言っていますが、拉致問題の半分以上は日本国内の問題であろうと
思っています。拉致被害者の数を増やしたくないという政府の方針があるからこ
ういうことになっているわけで、これは許しがたい問題で、ここを何とかしてぶ
ち破ることが、外交問題以上に重要かなという気がしています。

 先ほど、張哲賢さんの話の中で2つ、気になったことがありました。1つは子
どもをスパイにするために拉致をしているというこいとですが、これは同様の話
を「守る会」の前代表の萩原遼さんがしています。これは関係者の証言で、子ど
もの拉致被害者を管理するような場所があって、そこで働いていたという人の話
です。

 昔、安明進氏が「月刊朝鮮」に書いたものを「現代コリア」で翻訳したのです
が、金正日政治軍事大学で子どもスパイを教育していたということを述べていて、
我々特定失踪者のリストでも、張哲賢さんの話とは若干時期がずれますが、80
年代に子どもがいなくなっているケースが何件かあります。89年の松岡伸矢く
ん等何人かおられます。あるいはそういう可能性も当然ありえるのではないかと
思います。これはもっとちゃんと調べなければいけないことだろうと思います。

 もう一つ、「二度目は先払いしなければだめだ」という言い方をしておられま
したが、だとしたら、平成16年の5月、第2次小泉訪朝はいったい何だったの
だろう、何か先払いしたものがあったに違いないと思います。

 ちなみに、あの小泉訪朝の2か月前に起きるのが山本美保さんに関わる、DNA
データ偽造疑惑事件で、これは我々は明らかに、政府の手による拉致問題つぶし
だろうと思っています。不作為どころではなく、隠蔽です。その隠蔽の関係者が
今、参議院にもいますし、対策本部にも、警察庁の幹部にも、バンコクの大使館
にもいます。

 この問題を放置しておいて拉致問題を解決できるというようなことは、私はな
いと思っています。では一体どうするかということですが、先ほど洪さんのお話
の中に少しありましたが、問題の解決は皆様お分かりの通りです。

 うちの大学の学生は、先ほどの金美英さんの学生ほどちゃんとした学生はいま
せんが、授業の質問の中で、「金正日を暗殺する人間は誰かいないのですか」と
いうのがありまして、「君の健闘を祈る」と言って返したのですが、それが一番
早い話です。

 待っていれば日とはどんどん死んでいきます。もう少し単純な解決が私はあっ
てもいいのではないかと思います。とはいえ、国会議員の先生方や政府の関係者
の方々が、「金正日を暗殺する」という訳にはいかないと思いますので、これは
民間団体がやることでして、私もそのために一生懸命自衛隊で銃の訓練をやって
いるわけです。

櫻井 荒木さん、殺さなくてもまもなく寿命が尽きますので、あまり具体的に心
配しなくても。その後のことをむしろ考えるべきだと思います。

荒木 その後もそうですが、やはり畳の上で死なせたくないという思いがありま
す。今、北朝鮮の中はガタガタですから、韓国のKCIAがもう少ししっかりしてい
れば、今頃片付いているのではないかと思います。

 結局、収容所の問題も、申淑子さん母娘の問題も、日本人拉致被害者の問題も、
戦うことでしかないということに尽きるのではないかと思います。

 最後に、有村先生の話の中で、問責の話が出ましたが、どうせ辞めるのなら早
い内に辞めてもらう方がいいと思います。あの人が大臣を続ける理由は、もう何
もないわけです。それが進展の第一歩ではないかと思っています。

櫻井 どうもありがとうございました。次に島田さんにお願いします。


◆中国人も朝鮮族を中心に180人くらい拉致されている

島田洋一(救う会副会長、福井県立大学教授)

 先ほど谷田川議員が、北朝鮮非難決議に賛成しない国にはODAを止めるべきだ
という当然の主張をされましたが、国に対してだけでなく、例えば国連開発計画
等の国連機関が、北朝鮮に毎年お金を出しています。この国連開発計画に対して
日本は出資金を出していますし、毎年この事務総長が日本に来てもっと増額して
くれと言っています。

 その場で、増額どころか北朝鮮に金を出している以上、来年から日本は分担金
を出しませんよ、というようなことを言わなければいけない。だから、国連も経
済制裁の対象だと私は以前から言っています。これはアメリカあたりでは当り前
の考えです。つい最近、ユニセフでアメリカのパレスチナ問題に反する決議でア
メリカの政策理念に反する決議が行われたと言った。決議の内容については色々
な意見があるでしょうが、アメリカはそれに対して分担金ストップという対応を
した。

 自国の政策理念に反する決議を国連機関がやれば、そこにはお金を出さないと
いうことは、アメリカは当り前のようにやっていますので、日本も当然やるべき
だと思います。

 櫻井さんも触れられた中国の問題ですが、「そこに愛はない」という話もあり
ました。世界の愛をつぶしている中心地は北京ですが、この中国にどう対処する
かですが、中国にも拉致被害者が多数います。日韓が共同歩調をとれるようになっ
てきたという話ですが、中国にも共同歩調をとらせないといけない。

 私が以前、外務省の中国を担当している幹部からオフレコで聞いた話では、あ
まり具体的には言えませんが、「中国の当局者から得た情報では、中国人も朝鮮
族を中心に180人くらい拉致されている」ということです。

 その家族の間で、「何で胡錦濤はだまっているんだ。自国民が北朝鮮に拉致さ
れているのにどうして嬉しそうに金正日と抱き合って、握手しているんだ」とい
う圧力が高まりつつあるということです。これがまさに我々が突くべきポイント
で、中国もインターネット社会になってきていますから、どんどん中国のインター
ネット社会に、「あなたがたの国民も拉致されていると、中国人が拉致されてい
ると言う情報をどんどん入れなければならない。

 大変興味深い話を、数日前、日本政府のある幹部から聞いたのですが、在北京
の日本大使館のホームページに、「日本外交の課題」として色々なことが載って
いるが、「日本人拉致問題」という所だけは、クリックしてもどこにも飛ばない
ように中国がしているというのです。インターネットを操作しているということ
です。他の所はクリックすれば中国語で検索できます。拉致問題だけブロックし
ているということです。

 中国は、拉致問題を中国人に知らせるとまずいという意識で攻撃をしかけてき
ています。だから我々もどんどんインターネットの世界で攻撃をしかけなければ
いけない。

 次にミャンマーの問題ですが、最近ミャンマーは中国の共同開発をやったダム
について、ミャンマー側が、「これは中国だけが得をしてミャンマー側にはむし
ろ害がある」としてキャンセルしました。中国がかんかんに怒って、中国の色々
な、英語等のメディアを見ていると、ミャンマーのある人がいっぱい書いていま
すが、そういう時を狙ってヒラリー・クリントンがミャンマーに行って、「ミャ
ンマーにも援助しますよ」と中国にくさびを打つような動きをしている。

 これは、日本の首相だったら、中国がミャンマーに苛々しているのでミャンマー
訪問の予定を取りやめるという方に動いたんじゃないかと思いますが、アメリカ
は、このタイミングだから行こうと。

 ミャンマーとODAの関係については、北朝鮮と取り引きしたら止めますよとい
う方法と、もう一つは逆に、北朝鮮との関係を切れば切るほどODAの供与を増や
しますよという方法も経済的圧力を使えるわけです。私は、北との関係を切りな
さい。その後日本は援助しますよ、でいいと思います。現にほとんど援助してい
ないわけですから。

 最後に、アメリカ人の拉致問題ですが、この問題を取り上げているチャック・
ダウンズ氏は10年来の付き合いですが、彼から直接聞いている話では、アメリ
カの議員にこの疑惑問題の話をしても関心がないといいます。というのは、まさ
か北朝鮮がアメリカ人を拉致する筈がない、アメリカを怒らせれば大変なことに
なると分かっている筈だからアメリカ人はやらないだろうという意識があるそう
です。

 ところが実際には、例えば2001年に、アメリカの偵察機に中国の飛行機が
ぶつかってきたりとか、これは中国の問題ですが、北朝鮮もこれまでに拘束した
アメリカ人を拷問したりとか色々やっています。だからアメリカ人だからやられ
ないということはない。

 日本の議員や日本の政府関係者から、拉致問題に一番関心を持って調べている
日本がアメリカ人の疑惑に関心を持っていますよと言ってくれるだけで、アメリ
カの議員も、日本から言われて知らなかったでは恥ずかしいですから、すぐにス
タッフに、こういうことを調べろという話になるので、あの問題に関心を持って
いるという一言でいいから、是非日本側から言ってもらいたいとチャック・ダウ
ンズ氏は言っています。そういうことも議員の先生方にお願いしたいと思います。
以上です。

櫻井 アメリカの拉致されている可能性が極めて強いスネドンさんですが、彼は
モルモン教徒です。モルモン教徒の方はものすごい結束力が強くて、議会にも強
い影響力を持っているわけです。ですから、もしアメリカの議員の皆さんにこの
ことを目覚めさせて、「アメリカの国民が拉致されて何年にもなるんですよ」と。
しかも、拉致された場所が中国なんです。中国政府は問合せに対して、「その人
はもう存在していません」という報告です。

 ですから、この辺をきちんと説明することによってアメリカを拉致の方にひき
つけることができる、むしろアメリカが前面に立つことができる場面も出てくる
のではないかと思います。いずれにしても、今色々な方々がおっしゃったこと、
それを政治が受け止めてどのように活動するかということが非常に大事になりま
す。

 笠さんは今政権与党で、拉致議連事務局長という非常に重要なお立場で、私は
笠さんのこともよく存じ上げていますが、非常にこの問題に熱心です。具体的に
自分はこう思う、こうしたらいいということがありましたらお話を伺いたいと思
います。

笠浩史 先ほど私が報告を忘れ、谷田川さんが言及したODAの問題、まさに櫻井
先生がおっしゃったように、私は、シリアとかイランにはODAを減らしていくと
いう対応でもいいでしょうが、ミャンマーは民主化を進めていこうとしています
のでアメリカを我々がバックアップする。アメリガが北との関係をミャンマーに
迫っているわけですから、共同戦線をはりながら、民主化をやるかどうかで対中
関係が全く違ってきますので、そういう大きな観点からのしたたかな外交をやっ
ていかなければいけないと思っています。

 私は与党でも政府の状況は分かりませんが、今日は自民、公明の先生、またこ
の問題について共に取組んでいる先生がたくさんおられるわけですが、担当大臣
がコロコロ変わっているわけです。こういうことは私も与党の一員として責任を
感じています。できれば私は松原仁さんのような方が副大臣として、長く、2年、
3年はやらないと、警察庁や外務省から情報を取らないといけない。それが1年
で変わったら、結局官僚任せになってしまうのです。

 どの党が政権をとっても、然るべき人物を、本当にこの問題に取組む政治化を
政府の中で長く仕事をしてもらうこと、これは党派を超えてご理解をいただけれ
ばありがたいと思います。

櫻井 有村さんどうですか。

有村治子 ここにいらっしゃる民主党の先生方は、同志であるということを前提
にしながらですが、民主党の議員さんがかっこいいことをおっしゃいました。し
かし私は2つのことを申し上げたいと思います。

 外交問題はすぐれて国内問題であります。国内問題はすぐれて外交問題になり
ます。そういう意味では、私たち自由民主党は高校無償化に反対の立場を取って
いますが、少なくとも北朝鮮に関連する国内の高級学校に対する無償化は直ちに
やめていただきたい。これは明確に申し上げたいと思います。文部科学大臣にお
つかいされていた笠先生も、菅さんが辞めた最後のその日に、なぜこれを解除し
て国民の血税を入れなければいけないのか。なぜ最後の時に、これで保守派がみ
んな怒ると分かっているのにも関わらずやったのか。それ以上のなにか大きなネ
タがあるためにリスクを賭してでも北朝鮮の高級学校にお金を入れる、その意図
を読まなければいけないと思います。

 政治の発言や言動には、必ずといっていいほど意図があります。その意図を理
解せずして私たちは前に進めることはできないと思っています。その意味では、
アメリカのテロ支援国家指定解除は、改めて指定してもらわなければならないの
は全く同感ですが、なぜアメリカが日本を怒らせるようなことをしてまで指定解
除をせざるをえなかったのかというところまで見ていけば、軍事的にも政治的に
も経済的にも大国となった中国と戦わずして、どうやって日本の繁栄と安全を守
るかを考えていかなければいけない。

 そういう意味では私はTPPにはそもそも慎重ですが、数少ないTPPのメリッ
トの一つとして、なぜTPPに関して日本の動向を中国があれほどにまで牽制す
るのか、あれほどにまで彼らはナーバスになっているのかというのは、まさにア
メリカを機軸として環太平洋でこの地域の安全を担保していこうということを明
確にして、中国にも透明化をはかり、中国の繁栄がみんなの安全とプラスになる
ようにしていく枠組みだという、数少ないメリットをなぜ野田さんが国民に伝え
ないのかということを疑問に思っています。

 そういう意味では、実務と政治力あるいは外交力、それから自衛力という意味
で、自民党にもおかしな人がいっぱいいて、民主党にも笠先生のようにいい人も
いっぱいいますが、毅然とした態度を示すならまず隗より始めよで、北朝鮮が関
係する高級学校の無償化問題です。

 それから主権ということは、国民自身で国のあり方を決められる権利の最たる
もので、どう出入国管理をするか、誰を自国内のテリトリーに入れるか、誰を国
外に退去させるかということが大事な主権の行使ですので、国内の北朝鮮に塩を
送っている人たちの中枢にいる人たち、政権にいる人たちもしっかりとウォッチ
していかなければならないと思っています。以上です。

櫻井 浜田先生いかがでしょうか。

浜田昌良 この問題については、笠先生、有村先生ともしっかり連携しながら取
組みたいと思っています。そのためには政治がしっかりメッセージを出さなけれ
ばいけないし、外務省の動きもしっかり監視しなければいけないと思いました。

 特に先ほど、勝手に動いているという話がありましたが、そのためにも拉致担
当大臣も長年できる人を選んでいただきたい。最近中国で、日本の公館における
脱北者保護の問題で色々なやりとりがあったのではないかという説が流れていま
すが、この件については、昨日参議院の拉致特の決議では、閉会中でも開いて議
論すべきだという議論をしました。拉致担当大臣がいなくても、外務大臣だけで
もいいからと。外務省への国会の関与をしっかりこの問題は解決できないと思い
ます。あるがとうございました。

◆この10年で被害者が死亡していたらどなたが責任をとっていただけるのか

増元照明 先ほど言いそびれたのですが、金美英さんがおっしゃったことですが、
韓国で「統営の娘」救出運動を妨害する人たちは、申淑子氏母娘が拉致されたと
いう事実を否認しています。我々の運動もそうでした。当初、救出運動を妨害す
る人たちによって否認されました。北朝鮮がそんなことをする筈がない、と。

 そう言った方たちが国会議員の中にも有識者の中にも大勢いました。そして今
現在も、「被害者は死んでいる」と、詐欺師にだまされている有識者が国内でい
ますし、国会議員までいます。こういう人たちが謝罪をするような状況を作って
いかなければならない。

 そうしなければ国民の意識も変わらないし、私たちが今年掲げている、「生き
ているのになぜ助けられない!」というスローガン、これは東日本大震災を目の
当たりにして、72時間の猶予しかないということで10万人の自衛隊が投入さ
れました。「生きているのになぜ助けられない!」。私たちの家族は30数年間、
北朝鮮という瓦礫の下で生きて救出を待っているんです。その救出の時間をなぜ
区切らないんだろうという思いが強いんです。

 西岡さんが表を示されました。めぐみさんが47歳で一番若く、ほとんどの方
が50代後半から70代、80代です。人の命には限りがあるということを国会
議員の先生方にも意識していただきたい。総理にも意識していただきたい。金正
日が拉致を認めてから10年。この間にもし被害者が病気や怪我で亡くなってい
たら、どなたが責任をとっていただけるんでしょうか、ということを突きつけて
いかなければならないし、私たちの運動を妨害する人たちも対峙していかなけれ
ばならないと思っています。

荒木和博 先ほど国内問題と言ったことについて、去年我々は調査会として4回
の現地調査をやり、増元さんにも来ていただいたり、市川さんご夫妻もご一緒し
ていただきましたが、あの時びっくりしたのは、家族会の人にすらまともに説明
をしていなかったことです。

 特定失踪者のご家族はともかく、家族会の人は認定しているんだからちゃんと
説明していると思っていたら、実はまともな説明をほとんどしていなかった。

 市川さんと増元さんが最後に写した岩の上でとった写真、その岩さえ警察は間
違えていました。そして、その時の写真はすぐに公開されているものであっても、
ご家族に渡すことはできないということで、非常にとんちんかんな話をしていま
した。改めて、この問題は本当に隠されてきたんだなと思っています。1回ひっ
くり返さなければいけないと思います。

 我々は、来年1月、千葉から始めて、また全国で調査を行いますが、改めて、
今まで何がなされていなかったのか、あるいはどういう隠蔽がされていたのかと
いうことを暴いていかなければいけないと思っています。

 それが本当に分かった時に、これだけ日本という国は危険だったのだ、それに
対して何もしてこなかったのだということを分かることになる。それがつまりは
自分たちの身を守ることに、また今拉致をされている人は助けなければいけない
ということにつながると確信しています。

島田洋一 今日、張哲賢さんが、「日本も核武装すると言うべき」とおっしゃい
ました。「そのことによって中国が北を押さえなければいけないと本気になって
くれるだろう」と。これは洪先生も以前から、「日本及び韓国は核武装宣言して
対抗すべき」とおっしゃっていますが、中国の場合は日本の状況を真剣に見てい
ますから、本気でないとはっきり見抜かれています。何人かの政治家や民間の人
間が核武装を考えなければいけないと言っても、これは少数意見だということを
中国側が見切っているのが現実だと思います。

 従って、核武装云々の話をする人がいるというのは大事だと思いますが、現実
には、敵地攻撃力、要するに北朝鮮のミサイルが発射状態になった場合に、そこ
を戦闘機や巡航ミサイルで事前につぶせるということです。

 北京も射程におさめた敵地攻撃力を整備することは、自民党なども案は作りな
がら結局最終段階で、例えば麻生さんがつぶしたとか、民主党でも党内で賛成論
がありながら結局うやむやにしている。憲法上は、相手が完全にミサイルを発射
する態勢を整えていた場合、そこを攻撃しても何ら憲法違反ではないということ
になっているわけですから、敵地攻撃力の整備を是非やってもらいたいと政治家
の方に要請したいと思います。

西岡力 これからどうするかについて家族会の役員の人たちと今議論をしていま
す。来年の9月になると、金正日が拉致を認めて10年です。認めて10年たっ
ても、5人以外助けられないということにならないように頑張らなければいけま
せんが、9月が来たら日本全国で地鳴りがなるような怒りの声を上げなければな
らないと思って、様々なことを企画しています。

 東京で大集会をやるとか、総理大臣も各党党首も全部来ていただくような集会
をしなければだめなんじゃないかと思っているということです。

櫻井 来年の9月で10年、そこで大集会をやるというのは、それまでに片付け
ておかなければならないことですね。今日のセッションで色々なご意見がでまし
た。

 私は、張哲賢さんの今日のレポートは大変重要だったと思います。政治家の皆
さんがもしお聞きになっていないようでしたら、あとで必ず翻訳を手に入れて読
んでいただきたいと思います。

 小泉さん、安倍さんたちが訪朝した時、「5人を返します」という時に、拉致
問題について謝らないという午前中の会議の後、控室での会話を全部北朝鮮が盗
  
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