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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

国際セミナー「日朝拉致協議の遅延をどう打開するか」報告8(2014/12/23)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2014.12.23)

■国際セミナー「日朝拉致協議の遅延をどう打開するか」報告8

櫻井 どうもありがとうございました。荒木さんは、いい意味での直情径行で、
すぐ交渉をやめて体制をぶっつぶせとおしゃったわけですが、そのようなことが
起きた場合は、現実に核・ミサイルの危険が生じるという指摘がありました。し
かし、このような中でどうやって遅れている交渉を打ち破っていくのか。そこに
私たちはたどり着きたいわけです。島田さん、最新情報も含め、お願いいたしま
す(拍手)。

◆金正日が拉致を指令という内部文書

島田洋一(救う会副会長、福井県立大学教授)

 拉致問題の解決のために北朝鮮をつぶさなければいけないということは明白で
すが、その点、北朝鮮外交をよく知る一人である金聖●(キム・ソンミン)さん
が、北の中で金正恩除去に向けた動きが高まりつつあるとおっしゃったので、私
としても期待できるかなという気分です。●は王へんに文

 伊藤博文を暗殺した安重根(アン・ジュングン)は、韓国人にとっては独立運
動の英雄かもしれませんが、日本にとってはテロリストです。しかし、金正恩を
除去する人間が出れば、これは日韓両国にとって英雄ですから、その時日韓は歴
史を共有できることに(笑)。

 日韓が歴史を共有するためにも、そういう英雄が出てきてほしいし、日本とし
てもバックアップすべきだと思います。

 さて、張真晟さんも西岡さんも、首領の責任を追及し、首領の権威を傷つける
ことが重要だ、と。そういう姿勢を日本がとれれば、向こうは権威を守るために
動いてくる、と言われました。そうだと思います。

 そこで、先ほど惠谷さんもちょっと触れられましたが、アメリカの「ワシント
ン・タイムズ」という新聞に昨日載った記事を紹介します。書いたのは、ビル・
ガーツです。私も何度も会っていますが、国防総省の中のハードライナーのスポー
クスマンみたいな人です。

 私が過去に国防総省で、リチャード・ローレスという高官に会った時、途中で
ローレス氏が、「ビル・ガーツも呼んでいいか」と言って、ガーツが部屋に入っ
てきました。すると翌日、「ワシントン・タイムズ」が日本人拉致問題を取り上
げたという経緯もありました。

 そういう位置づけの人物ですが、他の記事によると、最近数年内に北朝鮮で作
られた文書を入手した、と。それには、北朝鮮が、労働党何十年史か知りません
が、そういうドキュメントを作る枠組みで作成したレポートです。

 その文書によれば、「金正日自身が、1977年9月29日、及び同年10月
7日の2回にわたって、外国人拉致を調査部に対して指示した。特に、魅力的な
女性に狙いをつけろと。そして身寄りのない人を狙え」という指示を出したと記
事に書かれています。日本政府としても、この記事の信憑性を含めて、きっちり
分析し、戦略的に用いてもらいたいと思います。

◆アメリカは北朝鮮の宣伝戦に利用されない

 張真晟さんが言われたことですが、日本政府は結局、北朝鮮の宣伝戦に利用さ
れた、と。人権問題にまじめに取り組んでいるんだという姿勢を示して、国連で
進んでいる金正恩非難決議、訴追決議を阻止したい、と。

 西岡さんも言われましたが、日本代表団が平壌に行くと、特別調査委員会とい
う英語で書かれた看板を用意して待っていた。アメリカの場合は、クラッパーと
いう情報長官が水面下で派遣して、3人の米国人の解放に成功しました。

 はっきり名前が分かっている人質の解放と拉致被害者の解放は意味が違うんで
すが、しかしアメリカは宣伝戦に利用されないという姿勢を維持したわけで、そ
この一線は守った。

 日本の場合は、代表団を送って、ただで利用されたんです。北朝鮮としては、
ただで利用される国に対して何も出す必要はないということになる。そういうこ
とで、代表団の派遣は、宣伝戦から見て失敗です。

 その前に、日本のナイーブな大学教授等を次々に北朝鮮呼んだ。彼らは帰って
きて、「政府代表団をすぐ送らないと日朝協議が切れてしまう」とさかんに言い
ました。それを言えとおそらく北朝鮮に言われたんでしょう。

 北朝鮮は本当に何か進めたい時には、田中均さんがやった外交もそうですが、
向こうの方から秘密にしろと言ってくる筈で、「新聞記者も連れてこい」とか、
「産経新聞も連れてきていいよ」というような時は宣伝戦に利用するつもりだな
と見極めなければいけないと思います。

 拉致が最優先だということを伝えるために派遣したんだ、と後で高官が言って
おられますが、それが名目ならば、安倍首相がカメラの前で、「拉致が最優先だ。
他の分野が進んでも拉致が進まなければ一切出さない」と言うのが、一番彼らに
伝わる方法だと思います。そういう意味で、外務省主導になっていますが、問題
がある外交が行われたと思います。

 約1か月くらい前、NHKの朝の「日曜討論」で日朝協議の問題を取り上げて、
専門家を出してくるんですが、美根慶樹という元外務官僚、インパクトの何もな
い人ですが、以下およそ北朝鮮問題で専門知識を多少とも持っている人間、誰も
専門家とは認めないような融和派の人物を4人並べた。

 北朝鮮はNHKのそういう番組をチェックしている筈ですから、日本は甘いなと
いう印象を北に伝える役割をNHKがしている。荒木さんとか惠谷さん、西岡さん
は絶対に呼ばれない(笑)。西岡さんは「産経新聞」の正論大賞をとりましたか
ら、ますますNHKは敬遠するだろうと思います。

 4人呼ぶんだったら一人くらい今日のメンバーを入れておけば言い訳できるわ
けですが、全員融和派では言われてもしかたがないと思います。

◆外務官僚は指示を換骨奪胎する能力がある

 最近、アメリカのクルストファー・ヒル氏が回顧録を出しまして、私は北朝鮮
に関係するところだけチェックしたんですが、彼の発想をみていると、日本の外
務省にも通じる面があるなと強く感じました。

 彼は最終的に、「(米朝)協議はうまくいかなかったと認めます。しかし、な
ぜうまくいかなかったかというと、北朝鮮側が核施設に関する査察の具体的メカ
ニズムで、アメリカ側が応じられるような案を出さなかったからだ。だからそれ
以上交渉できなくなった。しかし、誰が見ても悪いのは北朝鮮だ。アメリカが一
生懸命努力したというのは分かったからそれは認めたんだ」と。

 それから「韓国人の感情があって米韓関係が非常に悪かったけれども、自分が
ライス国務長官のもとでやった外交によって、韓国人のだれもアメリカが平和を
乱しているとは言えなくなった。その結果、非常に米韓関係がよくなった。20
07年の韓国大統領選挙では、反米の候補は一人も出られなかった。だから総合
的に見れば自分はよくやった」ということを書いています。

 法務省や外務省の人の評価基準は、こういうところに現れていると改めて感じ
たわけですが、それに引きずられてはいけない。

 最後に関連することについて、中国や韓国が慰安婦問題で、我々から見ると、
非常に歪曲した反日的なプロパガンダを国際的に続けている。これに対して安倍
首相は、「これじゃいけない。反論すべきだ」という認識で外務省にも指示して
いる。

 それを受けて外務省が、「分かりました」と、「ジャパンハウス」という予算
をかけて箱モノを作りたいと。反論はというと、「日本は何回も謝りました。ア
ジア女性基金でお金を出しました」と逃げの反論をしている。こういう、指示を
換骨奪胎する能力は、外務官僚の方はすごいものがあると思います。

 私は、安倍首相は、北朝鮮問題で認識はしっかりしておられると思うんですが、
外務省主導に陥らないようにと思います。

 追加制裁についてひとこと。もう追加制裁の手段はないという人もいますが、
色々あります。そういう圧力も考えるべきだと思います(拍手)。

櫻井 どうもありがとうございました。北朝鮮がなぜ交渉を停滞させているかで
はっきりしてきたことは、国連に対する対応が必要だということです。しかし、
支援を取れるのは日本しかないという相せめぎ合う二つの要素の中で、彼らは身
動きがとれなくなっている。

 そういう中で、金正恩はだんだん体力的にもおかしくなり、指導力も低下して、
何が起こるか分からないという状況が報告されました。

 最後に、私たちはもうすぐ選挙を迎えます。おそらく自民党が圧勝することに
なるだろうと思います。安倍さんの求心力、指導力は今までより強くなっていく
はずです。

 その安倍政権は何をすべきか。これは政府の中枢部から出たことばですが、
「これまでの外務省のやり方は間違っている。軌道修正をしている」ということ
を聞きましたが、軌道修正をするのであれば具体的に何をすべきなのか。安倍政
権は何をすべきかということを含めて皆さんからご提言をいただきたいと思いま
す。

◆ガーツ記者のレポートは、我々が持っている知識とすべて矛盾しない

西岡 一つは情報だと思います。島田さんが報告してくれたガーツ記者のレポー
トは、今の情報だけですが、私は信憑性が高いと思っています。「調査部に77
年9月29日と10月7日に拉致を命令した」。

 そして、「魅力的な女性」、「身寄りのない人」、また、「本人を工作員とし
て使うというプロジェクトもあり、教官として使うこともあった」と書いてある
んですが、これは我々が、惠谷さんと一緒に、世界規模の拉致について何回もこ
こでも発表しましたが、探って北朝鮮内容と一致します。

 松本京子さんの拉致が10月21日で、10月7日より後になります。松本さ
んから、「若い女性」あるいはアベックの拉致が始まるんです。久米裕さん(9
月19日拉致)は前からあった古い形の背乗り型の拉致です。

 新しい拉致は松本さんからで、それをやったのは調査部です。調査部の一人と
作戦部の戦闘員三人というパターンでの拉致が始まったのは松本さんからで、当
初本人を工作員にするという話があったというのは地村富貴恵さんが証言してい
ます。地村さんと田口八重子さんに、「お前たちは工作員になれ」、「金正日政
治軍事大学に入れ」と言われた。

 めぐみさんについても、最初は本人を工作員にしようとしたのではないかとい
う話を金賢姫(キム・ヒョンヒ)さんがしています。「レバノンから拉致された
4人の女性は、スパイキャンプに入れられて、工作員になる訓練を受けた」と言っ
ています。これらのことがみんないまの記事と合います。

 「ここ数年の間に労働党の歴史の文書を作った」。実はこれも張真晟さんの本
を見ると分かるんです。金日成が死んだ時、労働党は「金日成実録」を作ろうと
したんです。そして張真晟さんは色々なものを見ている。

 今度は金正日が死んだので、「金正日実録」を作ろうとしているのではないか。
その過程で過去のドキュメントを探してきて、拉致工作が成功したと書いている。
これがもし手に入れば、安保理事会に出してもらいたい。

 我々は間接的な証言から、「金正日が現地化の指令を出し、そのため拉致した」
と繰り返し言ってきましたが、ついに文書が出てきたのか。文書自体を見ないと
分かりませんが、文書の内容と我々が持っている知識、すべてのことが矛盾しな
いのです。これは起爆剤になるかもしれない。

◆12人に関する勝負で情報をうまく使ってほしい

 そして私が安倍政権に求めたいことですが、2006年に(拉致問題)対策本
部ができましたが、対策本部ができて日朝が動くのは初めてです。それまでは、
金丸訪朝の時、小泉訪朝の時は対策本部はありませんでした。情報部門は、それ
ぞれの機関にはありましたが、拉致で情報を集めてくるということがなく勝負を
して、負けました。

 2006年以降は、対策本部があり、担当大臣がいて、事務局長やそれぞれの
人たちがいる。それで今勝負しているんです。私が一つだけストックホルム合意
を評価するのは、12人について北朝鮮が結果を出すということを書いたことで
す。第1分科会がそうです。

 それ(12人の情報)がこれから勝負になる。これからというより、これまで
やってきたこと、第一次安倍政権以降、安倍さんが対策本部を通じてやってきた
情報収集、戦略が試されていると思います。

 勝ってもらわなければいけない戦いだと私は思っていて、あきらめきれないと
思っているので、私たちのコマ(情報)もなるべく大切に使っていただきたいと
思っています。以上です(拍手)。

(9につづく)


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