救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

最近の北朝鮮情勢と拉致問題?東京連続集会報告2(2015/04/07)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2015.04.07)

■最近の北朝鮮情勢と拉致問題

◆米人拉致の真相究明を果たせと米政府に求める上下両院合同決議を作る動き

島田洋一副会長(福井県立大学教授)

 アメリカに先週の火曜日、3月24日から行ってきました。古屋圭司前拉致問
題担当大臣、塚田一郎自民党議員と3人で行ってきました。古屋さん、塚田さん
は自民党の拉致問題対策本部の本部長と事務局長という立場です。

 残念ながら古屋さんは極めて多忙で1泊しかできなかったので会える人の数も
限られたんですが、初日は主にアメリカ人で拉致疑惑が濃厚なデヴィッド・スネ
ドンさんの家族の出身地であるユタ州の議員を中心に会ってきました。

 現在、ユタ州の議員は、偶然発信力の大きい人が多く、マイク・リー上院議員
はアメリカの保守派がライジング・スターと位置付ける4人の一人に入っていま
す。下院議員は、ユタ州は人口がそれほど多くなくて4人ですが、4人とも共和
党選出で、しかもその内3人は外交問題でよくテレビに出てくる人たちです。

 このユタ州の議員と日本の保守系の議員が連携を深めて拉致問題に取り組むと
いうのは非常にいい展開が期待できるんじゃないかと思って行きました。実際に
いい展開があったと思います。

 1つ日程上残念だったのは、マット・サーモンという下院外交委員会のアジア
太平洋小委員長が入っていたんですが、急遽時間を動かしてくれと、しかしそう
なると古屋さんはもう帰国しなければならないということで会えなかったんです
が、このサーモン委員長は重要ポジションにいる上に、デヴィッド・スネドン氏
と同じブリガム・ヤング大学出身ということでいい話ができる予定だったのです
が、これは今後有力議員の訪米の際に日程が組めればと思っています。

 私は3泊して、北朝鮮問題の専門家や共和党の有力外交ブレーンたちに会って
きました。

 簡単にまとめますと、古屋前大臣から各議員に対しては、自分が拉致問題担当
大臣として、様々なまた部妙な情報に接してきた立場から言って、デヴィッド・
スネドン氏が北朝鮮に拉致された可能性が非常に高い、と。

 これは国務省が及び腰で、中国を怒らせたくない、と。スネドン氏は中国でし
ましたから国務省はそういう発想です。またアメリカ人が拉致されている疑惑が
あるとなれば、国務省は頑張らなければならないが、それは大変だということで
腰が重いわけです。

 しかし、政府が認定するかどうかは別にして、アメリカ人の青年が拉致されて
いるという可能性をアメリカ政治は強く認識しているぞというメッセージを発信
しないと危ない面も出てきますし、また議会から声を上げる。今両院は共和党優
勢ですが、日本でもリベラル派、左翼の人たちは拉致問題については熱心どころ
か足をひっぱる議員が多かったのですが、アメリカの場合もまず保守系の議員が
声を上げる状況が必要であろうと。そういう議論をしてきました。

 アメリカの議員からは、具体的にはデヴィッド・スネドン氏の名前を盛り込ん
で、真相究明を果たせと政府に求めるような上下両院合同決議を作る方向で努力
したいという発言が出ました。これはロブ・ビショップ下院議員の秘書から最初
に出たんですが、マイク・リー上院議員等も「それは大変いい案だ」ということ
で、是非上下両院合同決議を進めたいということでした。

 ちょっと問題になるのは、決議を両院でやる場合、下院の外交委員会が起点に
なるんですが、エド・ロイス外交委員長は慰安婦問題などで完全に韓国寄りです。
実は日本の大使と会って話をした時に、「ロイス氏と日本大使館の関係はどうな
んだ」と聞くと、「最初はどうなることかと思うくらいひどかったけれど、ちょっ
と改善されてきています」とのことで、その程度のようですから、日本大使館が
あまり前面に出ると問題が。

 古屋さんからは、大使館の公使に対して、「あなたが色々動け」という指示を
出しておられましたが、日本大使館が動くと、ロイス氏に関しては逆効果にもな
りかねないというので、救う会が持っているロイス氏と親しいルートとも会って
話をして、プッシュをお願いしてきました。

 どの議員も、3年前にも一度会った人たちなんですが、今回はスネドン事件に
関する認知度が非常に高まっていました。

 国務省にも行ってきましたが、相変わらず、キング北朝鮮人権問題担当大使は
ふにゃふにゃと曖昧な発言しかしない。ソン・キム氏(対北朝鮮政策特別代表)
に関しても、同じような対応でした。それだけに議会から声を上げてもらわなけ
ればいけないという感じを強く持ちました。

 一つ意外だったのは、クリス・スチュワートという共和党の下院議員です。当
選して間もない人ですが、自分の息子がデヴィッド・スネドン氏と親しい友人関
係で、スネドン氏が失踪した時、息子から、「友だちがいなくなった」という話
を聞いていたということでした。そういう個人的なつながりもあるので、上下両
院決議では大いに動きたいということでした。

 このスチュワート氏は元々空軍のパイロットで、単独世界一周の世界最速記録
を作ったという、行動力が周りから評価されているような人で、「この人とも今
後連携していきたい」と古屋さんもおっしゃっていました。

◆「北朝鮮とアメリカ政府との間に実質的な対話は現在全くない」

 あと北朝鮮問題専門家にも色々会ってきました。ヘリテージ財団にブルース・
クリングナーという専門家がいますが、彼が強調していたのは、「北朝鮮に対す
る制裁はまだまだやれる余地がたくさんある。実際彼が細かくリストアップする
と、イランやジンバブエのような国に対してアメリカがやっている制裁よりも、
北朝鮮に行っている制裁のレベルは弱い。だから金融制裁を中心にもっと圧力を
かけないといけない」ということでした。

 その直後に国務省に行って、ソン・キム対北朝鮮政策特別代表とボブ・キング
北朝鮮人権担当大使の二人に会いました。彼らは、全く逆で、「北朝鮮というの
は世界で最も厳しい制裁を課せられている国だ」と強調していました。「だから
追加制裁の余地はないし、再び北朝鮮をテロ支援国に指定しても効果がない」と
言っていました。

 「逆の意見もありますよ」と言うと、「北朝鮮はイラン等とは違って国際的な
金融システムから完全にはずれているので、システム上制裁しようと思っても効
かない」と言っていました。

 今ガンになっている一つはバンク・オブ・チャイナ、中国の4番目の規模の銀
行です。ここは前から北朝鮮との怪しい関係が言われていました。

 バンコ・デルタ・アジアに制裁をした時も、これは直接担当した人から聞いた
ことですが、バンコ・デルタ・アジアとバンク・オブ・チャイナの2つに制裁を
かけたいという案を上にあげたところ、財務長官などから「バンク・オブ・チャ
イナを制裁するとはね返りがなり大きいからバンコ・デルタ・アジアだけにして、
バンク・オブ・チャイナについては意識しているよというメッセージを発するく
らいにしろ」ということだったとのことです。

 だから中国の4番目の銀行に制裁発動できるかどうか。これはアメリカだけで
なく、日本政治の意思も試される問題だと思いますが、そこをやれば、バンコ・
デルタ・アジアの場合も特定の金融機関に対する制裁自体が極めて大きかったと
いうよりも、見せしめ効果が大きかったのですから、他の銀行に対して北朝鮮と
取引したら同じことをやられるよというメッセージ、つまり各金融機関にアメリ
カがおどしをかけたんです。

 それを考えると、バンク・オブ・チャイナにある程度の制裁をかけて、バンク
・オブ・チャイナですらアメリカはやるんだ、あなたのところも北朝鮮と取引を
したら大変なことになるよ、ということで、バンコ・デルタ・アジアの時よりもっ
と大きな効果が期待できると僕らは思いますが、クリングナー氏は、「全くそう
思う」と言っていました。

 ビクター・チャという元NSC(国家安全保障会議)の日本朝鮮部長にも会いま
した。北朝鮮問題の専門家としてよくメディアに出てくる人です。彼は最近、
CSIS(戦略国際問題研究所)というシンクタンクにいるんですが、国連の特別報
告者を3人も呼んで、大きな北朝鮮人権問題のシンポジウムをつい最近やりまし
たが、北朝鮮側から、「中止しないと爆破する」という脅しをかなり受けた。

 やはりこの人権問題、特に金正恩の個人名を取り上げることが国連の場でも出
てきているので、北朝鮮も非常に神経質になっています。人権問題が極めて大き
な武器になるとビクター・チャ氏は言っていました。

 彼が言ったことで面白かったのは、金正恩に関しては、「労働新聞などで写真
が非常に見にくく写っている」と。つまり、威厳を損なうような写真が出るとい
うことです。「これは金正日時代にはなかったことなので、金正恩の周囲が金正
恩に対して牽制とか勝手なことをしていると、地位がどうなるか分からないよと
いうメッセージかも分からない」と言っていました。

 彼は北朝鮮問題では、現在の政府が何をやっているか非常に詳しく知っている
人ですが、「北朝鮮とアメリカ政府との間に実質的な対話は現在全くない」とい
うことです。「オバマ政権はイラン問題、そして中東のテロ問題やキューバ問題
等に忙殺されて、北朝鮮問題に積極的に取り組もうという姿勢がない」と。

 実際に交渉すれば、イラン問題を見ていても、オバマ政権はどんどん譲る方向
に行くでしょうから、交渉がないというのは消極的な意味で、まだましかなと思
います。早く共和党政権になってほしいのですが、まだ2年近く先になるのが問
題です。

 最後に、アリソン・フッカーというNSCの日本部長に会い、朝鮮部長も同席し
ていました。フッカー氏は国務省で北朝鮮の核問題の情報収集に当たってきた人
で、北朝鮮が核兵器の小型化とミサイル搭載に成功しているのかを聞いたところ、
「アメリカ情報部において統一見解は現在ない。色々な意見がある。しかし、北
朝鮮が成功したという可能性をにらんで対応策を考えておかないといけない」と
いう官僚的答弁をしていました。ともかく統一見解はないとはっきり言っていま
した。

 今回色々な人に会いましたが、期待できるのはやはり共和党系の議員やシンク
タンク、有力ブレーンで、連携を強めていくしかないということを感じました。
以上です(拍手)。

(3につづく)

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