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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

制裁強化と国際連携の圧力で全被害者を救出しよう3(2016/03/09)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2016.03.09)

■制裁強化と国際連携の圧力で全被害者を救出しよう3

西岡 では島田さんから訪米報告の補足をお願いします。

◆スネドン議案の関係者とこれから

島田洋一・救う会副会長(福井県立大学教授)

 訪米報告についての配布資料をご覧ください。デヴィド・スネドンさんは20
04年8月に中国雲南省で失踪した青年で、当時24歳でした。様々の状況証拠
と極秘の情報からして、彼は中国内で脱北者支援をする人権活動家と疑われて北
朝鮮側に拉致されたものと思われます。ついでに、英語教師として使おうと北朝
鮮が考えたかもしれません。

 このスネドンさんの家族は何回も日本に来られて、古屋元大臣に対してもそう
ですが、我々救う会や家族会に対しても、自分たちの息子、兄弟を取り戻したい、
と。拉致問題については日本は知識があり、最も真剣に取り組んでいるから、是
非日本からアメリカに対して働きかけてくれないかという依頼を受けてきました。

 また非常にまじめなご家族なので、私個人としても、何とかスネドンさんを取
り戻したいとの強い思いを持っています。従って、アメリカに当事者意識を持っ
てもらうことが戦略的にも極めて大事なんですが、同時にスネドンさんを日本の
被害者とともに早く解放させなければならないという思いがあって、こういう決
議案を受けて動いているということです。

 今回の訪米についての簡単な補足ですが、面会者リストの中のビリー・ロング
下院議員とダイアナ・デゲット下院議員は、米議会日本研究グループ訪日議員団
として毎年日本を訪れ、外務大臣初め関係者と懇談していますが、両者は共同議
長を務めている民主・共和両党のトップです。いわば親日人脈を通じて賛同者を
増やそうという趣旨で会いました。

 デゲット下院議員は、古屋さんが言われた通り、ナンシ・ペロシ院内総務と大
変親しい関係にある点も重要だと思います。

 24日に会ったクローディア・ロゼット、シャノン・ティエッジの二人は非常
にしっかりしたジャーナリストで、ロゼットさんというのは、国連の不正、欺瞞、
機能不全等を鋭く追及することで国際的に知られています。

 アナン前国連事務総長が、追われるように辞めましたが、あのアナン氏の長男
等が絡んだイラクの石油不正輸出事件を最初に追及したのはロゼットさんで、注
目を浴びているジャーナリストです。

 ティエッジは「ディプロマット」誌編集主幹で外交が専門です。ネット配信も
しています。外国に影響力があります。この二人のインタビューを長い時間に渡っ
て古屋大臣が受けられ、近々記事が出ると思います。これを発信のツールとして
日本政府なども使っていただきたいと思います。

 25日の、ナンシー・ペロシさんは、下院の民主党の院内総務でトップの人で
す。こういう決議案は、民主・共和両党のコンセンサス、両党から賛同者が集まっ
て、「誰も異議ありませんね」、「異議なし」という形で通すのが一番効率的だ
と、何人もの米議会に詳しい人たちが言っていました。

 民主党側の賛同者を増やすと言う意味で大変重要な人です。実際に我々が会っ
たのは黒人の女性の補佐官ですが、「スネドン氏のケースについては既によく知っ
ている」ということで、大いに動いてくれるのではないかという感触を持ちまし
た。

 ポール・ライアン下院議長。46歳で共和党の若手で、前回の大統領選挙で副
大統領候補になった人。今の大統領選でも、共和党はかなり分裂状態ですが、7
月の党大会の段階で誰も過半数を集められない場合、一からの投票になるのです
が、その場合ポール・ライアン氏が共和党の候補としてかつがれるのではないか
と言われている重要人物です。

 これも黒人の男性補佐官に会いました。大変優秀なエネルギッシュな人で、大
いに動いてくれると思います。

 マルコ・ルビオ議員については先ほど古屋元大臣が言われた通りですが、非常
に事務所の反応が早くて、既に(決議案の)共同提案者に名前を連ねています。

 デブ・フィッシャー上院議員は、女性で、デブラを縮めてデブと呼ばれます。
ネブラスカ州の議員です。スネドン家はユタ州とネブラスカ州に大変ゆかりが深
いということで、両州の議員が当初共同提案者になっているんですが、そのうち
の一人です。

 この人はかなり早い段階でマルコ・ルビオ上院議員を大統領候補として指示す
るとの声明を出した保守本流の人です。

 マイク・リー上院議員とは本人と会いました。上院側の決議案提出者ですが、
アメリカの保守団体の投票行動の調査では、最も理念的保守として信頼できる議
員のトップになっています。まだ45歳と若いんですが、本格保守のホープで法
律家です。

 デヴィン・ニューネス議員は、アメリカの議会で日本議連ができましたが、そ
の共同議長をしばらく前までやってきた人です。親日人脈の一人で、現在情報特
別委員長。スネドン決議案は上院では外交委員会に付託されていますが、下院で
は外交委員会と情報特別委員会に付託されています。早く処理が終わった方のルー
トで事が進むのだろうと思いますが、その委員長ということで重要人物です。

 スティーブ・シャボット議員も外交委員会に所属していて、常に議員本人が会っ
てくれる人です。亡くなった中川昭一さんとも親しかった方です。親身になって
拉致問題を考えてくれます。

 クリス・スチュアート下院議員は決議案の下院側の提出者ですが、実はスチュ
アート議員の長男が、スネドンさんに、「自分も韓国、中国に留学したい」とい
うことで、先輩としてスネドンさんから色々教えを受けていたという関係もあっ
て、極めて熱心に取り組んでくれています。元空軍のパイロットで、日本に赴任
していたこともあるという方です。

 ベン・サス上院議員は45歳、若手で、ネブラスカ州選出で、共同提案者の一
人です。実は数日前、「仮に共和党大会がトランプ氏を候補として指名しても、
自分はトランプ氏を支持しない」という明確な宣言を、共和党議員として最初に
出した人です。この人も本格的な保守で、注目されている若手の一人です。

 こういう人たちに会ってきたんですが、感触としては、上院下院両方でこの決
議案が通るというのが最も注目度、認知度が高まるし、いいことだと思いますが、
上院の方は対立案件が色々あって、どうなるかかなり不透明です。だから下院の
方でまず通って、上院の方はどうなるか、というようなことになるかも知れませ
んし、全く分かりません。両院が同じペースで進むとは限らない。私の感触では
下院が早く進むのではと思いました。

 例の慰安婦決議案が2007年に通りましたが、これは下院でしか通りません
でした。そういう意味ではどちらかの院を通るだけでも、インパクトはあります
から行方を見守りたいと思っています。

 あと1点だけ言えば、この間保守派の最高裁判事が亡くなって、その後任をど
うするかで民主党・共和党がかなりもめているんですが、上院司法委員会のメン
バーにこのマイク・リー上院議員が入っており、またオリン・ハッチというユタ
州の上院議員、スネドン決議案の共同提案者ですが、この二人が司法委員会に入っ
ています。

 その意味で、マイク・リー上院議員が出した決議案が反発を買う恐れもありま
すが、この辺はどうなるのか全く分かりません。以上です。

西岡 島田さんに聞きたいことがあります。先ほど古屋先生も言及されましたが、
制裁という観点からすると、米上院下院が法律を通し、オバマ大統領がサインし
た新しい北朝鮮制裁強化法ですが、これはどういう法律で、その法律の中に実は
外国人拉致問題が明記されたと聞いているんですが、それについて解説してくだ
さい。

◆新米北朝鮮制裁強化法に拉致解決すれば制裁解除の条項

島田 アメリカでごく最近通り、大統領が署名して成立した北朝鮮制裁強化法は、
ここに原文がありますが、主に中国をターゲットにして、北朝鮮と怪しい取引が
ある金融機関に対し、アメリカの銀行に口座を持たせない。

 すなわち、「北朝鮮と取引を続けたら国際業務はできなくなりますよ」、「北
朝鮮との取引か、アメリカとの取引か、国際取引全般で中国はどっちを選ぶのか」
ということで、そういう制裁を大統領に促すというものです。180日以内に大
統領が発動するかどうか議会に対して返答しなければならない、という制裁項目
が並んでいます。

 注目すべきは、401条と402条です。こういう場合には、制裁を解除し得るとい
うものが6つか挙げてあります。

 1.北朝鮮が偽札造りを止めた時。偽札を作る輪転機を見ている前で破壊する
こと。2.金融取引の透明化。3.類似の国連決議を北朝鮮が遵守した時。4番
目が拉致です。外国人拉致被害者に関して、その状況を明らかにし生存者を本国
に返す措置を北朝鮮がとった時。5.人道支援で物資に関するモニターを北朝鮮
がきちんと受け入れた時。6.強制収容所の状況が改善された時。

 全部において改善が見られたら制裁を緩和するとの書き方ではないので、6つ
の内のどれかについて状況の改善が見られた場合、あるいは国務省が改善したと
言えば制裁緩和が可能になります。

 日本としては、他の何が動こうが拉致問題が動かない限り制裁を緩和すべきで
ないというプレッシャーをアメリカにかけなければいけないし、逆に拉致問題で
北朝鮮が進展を見せれば、金融制裁の緩和もできるんだよという言い方もできる
でしょう。

 続く項目では、制裁を完全に解除できる場合の例が書いてあり、アメリカ人拉
致被害者に関する状況説明、解放も含めて拉致問題が解決される場合には全面解
除も可能という書き方になっています。

 要するに、この制裁強化法を緩めるとか解除するに当たっては、拉致が重要な
要素になっていますし、拉致の要素の重要度をさらに増すために、日本政府が様
々な形で働きかけていく必要があると思います。

◆アメリカの法律に「拉致」という言葉が入ったのは大きな成果

西岡 私はこれを聞いて大変驚きました。アメリカの法案なのに、外国人拉致被
害者の状況を報告し帰国させることが、制裁を緩める条件に明記されているとい
うことです。

 「アメリカ人を含む」は完全解除のところに書いてあって、緩めるところでは
外国人拉致被害者が書いてある。アメリカというのは、世界の警察官だったとか、
今はやめるとか言っていますが、テロ支援国指定制度もそうですが、世界中の国
でこの国がテロ支援国だとアメリカが決める。国連と関係なく国務省が決めて、
議会に報告すると制裁をかける。

 ある面で一方的なところもあるんですが、自国の法律を解除する条件に、北朝
鮮国内の政治犯収容所の状況とか、外国人拉致のことも入っている。我々が初め
てアメリカで拉致を訴えたのは2000年で、小泉訪朝の2年前ですが、16年
経って、これは古屋先生のように何回も我々が行って、「やってください」と頼
んでないんですよね。

 ワシントンの大使館がどのくらいロビーをしたか分かりませんが、とにかく法
案に入り、これが上下両院で可決されて大統領もサインした。「制裁と国際連携
の圧力で北朝鮮を拉致被害者を返す実質的な交渉の場に引き出す」という運動方
針を立てているわけですが、先ほど言ったように、今回の安保理事会の決議では
「拉致」という言葉は残念ながら入らなかった。しかし、アメリカの法律には
「拉致」という言葉が入っている。

 「外国人拉致」には日本人拉致も含まれる。これは対外的働きかけの大きな成
果だし、古屋先生が完全解除の所で、アメリカ人拉致と入っているのはスネドン
さんしかないので、アメリカ議会に対して議員外交で働きかけたことが、「アメ
リカ人だけのことでいいのか」として入ったとすれば、決議は上程されただけで
可決されていませんが、大きな成果があったと言えるのではないか。

 もちろん6つの条件の中で、「北朝鮮が人道支援のモニタリングを受け入れた
場合」というのは一番やりやすいことで、モニタリングを受け入れたふりくらい
は彼らはいつでもしますので、これが改善したとして金融制裁が緩んでしまうか
もしれません。

 そういう心配もありますが、逆に拉致が明記されているというのは大きなこと
で、国連の決議を遵守する、つまり核・ミサイル開発を止めることは彼らには相
当むつかしい。憲法に核保有国と書いているんですから。政治犯収容所の改善も
大変むつかしい。そういう点で今回核・ミサイルで制裁が強まりましたが、少な
くとも日本とアメリカの制裁は拉致が理由に明記されるところまできた。

 もちろん今島田さんの解説にあったとおり、この法律が通ったから金融制裁が
かかるわけではなく、大統領に金融制裁をかけるようにうながすという法律です
から、まだオバマ大統領は金融制裁をかけていません。180日以内に、かける
かどうかを議会に報告しなければならない。半年です。

 このことについても、「かけるべきだ」と、是非日本政府は外交努力をしてほ
しいと思いますし、特に拉致が理由に入っていることについて、日米関係の友好
の印だと感謝し、拉致を理由に金融制裁をかけてほしいという外交をしてもらい
たいと強く願います。

 我々がターゲットにしてこなかったのに入ったというのは望外のことですが、
嬉しかったです。

 ちなみにテロ支援国指定が解除されたということがありました。あれは200
8年でした。実はテロ支援国指定の理由に最初拉致は入ってなかったんです。北
朝鮮がテロ支援国だという理由は、よど号ハイジャッカーをかくまっていること
と、大韓航空機テロをやったり、ラングーンテロをやったということが国務省の
資料に明記されていたんです。

 当時金大中政権とクリントン政権が北朝鮮に対して宥和的な姿勢を見せて、ア
ジア開発銀行から多額の資金を融資するという動きがあったんです。その時、ア
メリカの議会調査局が、「拉致も理由になりうる」という報告書を出したんです。

 その時、「拉致は現在進行形だとも考えられる。イランがアメリカの外交官を
抑留していた時はそれが終わるまでテロが終わっていないとの解釈をした。拉致
についてもそのような理解が可能だ」という議会調査局の報告書があり、200
0年に我々が訪米する時、実は古森義久さんがそれを送ってくれたんです。

 私はそれを一生懸命読んで、「拉致もテロだ」と。拉致が理由に書き込まれた
ら、アメリカはテロ支援国指定を解除できない。そうすると北朝鮮にアジア開発
銀行からお金が行かないという点で彼らが嫌がることができると思って、アピー
ルをし始め、2003年に訪米した時に、アーミテージ国務副長官が、「もちろ
ん拉致も理由に入ります」と口頭で言ってくれて、その次の年から報告書に「拉
致も理由」と書かれました。

 そして、「拉致が解決するまでアメリカはテロ指定を解除すべきでない」とい
う下院決議まで通っていたわけです。しかし、ブッシュ政権の末期に北朝鮮にだ
まされて、「核開発は止めます」という口約束にだまされて解除したら、核実験
が起きたということがありました。

 今回は、法律に書いた。アメリカが制裁する法律に「拉致」を書き、解除の理
由に書いた。これはつまり、制裁の理由になるわけです。拉致が明記された。は
やり、言わないとだめだけど、言うと少しずつですが理解は深まるのではないか。

 2000年に行った時は議員にほとんど会えず議員の補佐官に会ったり、国務
省でも課長にも会えなくてその下の人に会ったりしていましたが、言い続けると
拉致が重大な問題だということが分かり、法律にも書き込まれた。

 日本政府は今独自制裁をして、その理由に「拉致も入っている」と言いました
が、我々は拉致だけを理由に制裁を強めてくださいと言ってきましたが、今の所
それはかなわなかったわけです。

 しかし、アメリカは、自国民が拉致されているということは政府としてまだ認
定していないにも関わらず、法律に、制裁をかけた場合、「外国人被害者が帰国
するまで制裁を緩めてはならない条件の一つ」と書いたということです。

 これは本来ならワシントンから、この法案が通った時とか、大きくニュースに
なってもおかしくないことなのに、なぜワシントンの日本人記者たちは気づかな
いのかなと思います。

 我々は運動方針を決める合同会議で、島田副会長からそれを初めて聞いたんで
すが、ワシントンはこの法律についてどう言っていますか。

島田 共和党の方は、基本的にオバマ氏が早く実施すべきだということ、そして
中国側が安保理制裁決議でちょっと譲ってきたから、この中国の銀行をターゲッ
トにしての英再発動をやめようというような取引に使ってはいけない、と言って
います。でもオバマ政権は懸念した方向に今行きつつあると思います。

 また、こういう場合に一旦課した制裁を緩和できるということで6つ挙げたと
言いましたが、その緩和も「1年を限度として緩和できる」と書いてあります。
一端緩和しても、1年経って何ら改善が見られなかったら、制裁が元に戻るとい
うことです。初めから期限を決めて緩和する。このあたりも法律の技術面で参考
にすべきだと思います。

西岡 ストックホルム合意の時は3つの制裁を解除して、ほぼ1年で結果が出る
と官房長官などが繰り返し言っていましたが、1年経っても元に戻さなかった。
それは期限が明記されてなかったからですね。我々は期限を切ってくれと言いま
したが。この法律は期限を切っているところが大変示唆する所が多いと思います。

 この後、配布資料に基づき、家族会・救う会の運動方針についてお話させてい
ただきます。

(4につづく)

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