緊迫する朝鮮半島情勢下での救出戦略?東京連続集会報告1(2017/05/29)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2017.05.29)
第25回東京連続集会が、平成29年5月25日、東京・文京区民センターで
開催された。以下はその報告である。
米国トランプ政権が北朝鮮の核ミサイル開発を止めさせるため軍事力を含む対
北圧力を強めている中、北朝鮮が新型弾道ミサイル発射実験を連続強行。中朝関
係もかつてない程悪化。韓国では親北文在寅政権が誕生。このような緊迫する情
勢の中で拉致被害者をどうして助けるのかについて西岡力・救う会会長と北朝鮮
核ミサイル問題の第一人者である惠谷治氏(ジャーナリスト)が最新情報を踏ま
えて報告した。
■緊迫する朝鮮半島情勢下での救出戦略
◆米はまず経済制裁、次に中国が圧力をかけるか、かけないなら軍事攻撃か
西岡(救う会会長)
今、北朝鮮の核・ミサイル開発に対して、トランプ政権が「アメリカ本土まで
届く核・ミサイル開発は許さない」というデッドラインを引いたことが第一の要
素です。二番目の要素は、金正恩は、金日成時代からの対南工作戦略である「ア
メリカ本土まで届く核・ミサイル開発をする」という方針を変えていないことで
す。
それで今年の春以降、朝鮮半島で緊張が大変高まっています。但し、4月に、
?デーがいつなのか、アメリカが斬首作戦をするのではないかという報道がたく
さんありましたが、それは早すぎた。
緊張が高まってきたことは事実ですが、まだ軍事攻撃をする段階まではいって
いませんでした。正確に言うと、トランプ政権はまず、「アメリカ本土まで届く
核・ミサイル開発は許さない」というデッドラインを明確にした後、すべての手
段をテーブルの上に置いたと言っています。
その「すべての手段の中には軍事的手段」も含まれています。しかし、軍事的
手段は後ろの方で使うもので、まだやり得る手段が残っている、と。
今トランプ政権は北朝鮮の貿易の約90%の相手先である中国に対して、「対
北経済制裁をかけろ」、あるいは「強めよ」と圧力をかけ、トランプ大統領は
「習近平はいいやつだ」と突然言い出しました。選挙中は「中国は悪い国だ」と
言っていたのに。そして「ロシアはいい国だ」と言っていたのに、今「悪い国だ」
と言っている。「中国はいい国だ」というふうに評価を変えています。
今国連の安保理事会で決められている制裁を、中国がどこまで忠実に守るのか、
それ以上の独自制裁をかけるのか、あるいは国連の安保理事会で追加制裁をする
時拒否権を使わないのかと、中国の動きを半年くらいはトランプ政権は見るので
はないか。
特に中国はこの秋、党大会を控えていますから、そこまでは中国も米国と衝突
を起こしたくないので、アメリカに協力したふりをするするか、本当に協力する
か、そこはまだ分かりません。
◆「中朝関係は今すごく悪い」
中国問題の専門家は、「トランプは習近平にだまされている」と言う人が多い。
「中国はアメリカなんかに協力はしませんよ。協力したふりをしているだけで、
北朝鮮の核を本当にやめさせる気はありませんよ」と言っています。
「例えば北朝鮮のミサイル発射台の車両は中国製だ」、「本気でやめさせる気
はないんだ」というようなことを言っている。
しかし、私が知っている北朝鮮内部に通じる筋は、「中朝関係は今すごく悪い」
と言います。去年1月の北朝鮮の核実験に対して、国連安保理事会が、中国も拒
否権を使わない中で対北制裁を強めました。その前後、金正恩は、「中国は裏切っ
た。上海と北京に核を一発ずつおとしてもいいんだと言った。習近平はそれをよ
く知っている」。
「サンケイ新聞」が報道した、去年3月に北朝鮮内部で幹部に回された講演資
料によると、「中国の裏切りを核の暴風で吹き飛ばせ」と中国を名指しにした文
書が出ています。「サンケイ新聞」はその文書を入手している。
そしてついに今年になって、北朝鮮の「労働新聞」が、「中国」という名前を
出して批判をしました。これは後で惠谷さんにも聞きたいんですが、私の記憶で
は北朝鮮の公式媒体が「中国」という名前を出して批判したのは、文化大革命の
時、紅衛兵の壁新聞で「金日成は修正主義者だ」と出た時に批判したと思います
が、これは紅衛兵に対する批判で、毛沢東も含めた批判ではなかった。
そうなると今回は「中国」という名前を出しての初めての批判ではないか。こ
れまでも内部では批判していましたが、表では「ある大国」とかいって、「中国」
という名前は出していませんでした。中朝関係をどう見るかがもう一つの変数で
す。
◆中国の脅し(国境封鎖)で核実験延期か
中朝関係についてもう一つ情報があります。これも後で惠谷さんの意見を聞き
たいと思います。日本のあるメディアが報道しましたが、4月20日に金正恩政
権は中国共産党に対して、「近く核実験をする」と通報した。20日から25日
の間にやるということだった。
それに対して中国共産党側から、「国境封鎖をしますよ」、「アメリカが軍事
攻撃をしても味方になりませんよ」という通報があった。それで延期になった。
ちょうどその頃、核実験場でバレーボールをしている姿が衛星で写され、トラン
プ大統領は、「習近平はよくやっている」と言った。
4月20日に通報したという情報は「情報」です。バレーボールのことや「習
近平はよくやっている」と言ったことは「事実」です。もう一つそれを補強する
材料として、5月の初めに中国のある都市で、北朝鮮の貿易関係者等が集められ
て政治講演会が開かれた。そこで、「中国に対する幻想はもう捨てろ」、「破局
が来ることを覚悟して対策を立てろ」という内容の講演がなされた。
今の流れで言うと、「破局」というのは、中国が国境封鎖をするかもしれない
ということまで想定しているのではないか。中朝関係はかなり悪い。但し、中国
共産党が本当にアメリカと足並みを揃え、国際社会と足並みを揃えて北朝鮮の核
・ミサイル開発をやめさせようとしているかどうかについては、クエスチョンマー
クが付きます。
◆中国の言うことを聞くなら北が核・ミサイルを持ってもいい
私が聞いている話では、中国の目標は核・ミサイル開発をやめさせることでは
なくて、金正恩政権を従わせることです。自分の言うことを聞く金正恩政権であ
れば核・ミサイルを持ってもいい。
私が北朝鮮側から聞いているのでは、核シェアリングをする。中国は自分で、
自分のものは持ちながら、北朝鮮の核については一緒に持ちましょうと。「中国
人技術者を北朝鮮の核施設に入れろ」という要求をして、金正恩は拒否している、
という情報もあります。中朝関係も大変微妙な状況です。
最初の話に戻りますが、アメリカはデッドラインを決めた。北朝鮮はデッドラ
インを守る気は今のところない。アメリカは様々なことを言って、「デッドライ
ンさえ守れば北の体制は認めてやる」、「軍事攻撃もしない」、「体制変換など
しない」という色々なメッセージを出して話し合いをしよう、と。
しかし、「核・ミサイル開発をやめろ」というメッセージは北が認めていない。
まだ今は経済制裁の段階で、中国が本当に協力をしなければアメリカはもう一つ
武器を持っている。これは、世界の貿易取引は基本的にドルで行われていますが、
北朝鮮と取引をしている中国企業、銀行はドル取引を停止するという制裁をかけ
ることができる。
第二次制裁、セカンダリー・サンクションと言いますが、北朝鮮に対する制裁
ではなく、北朝鮮と取引をしている企業に対する制裁をかける準備を、アメリカ
の一部機関がしています。
中国が制裁をしたふりだけしているのであれば、秋に米中が対立してセカンダ
リー・サンクションをやるでしょう。そこまでいっても核開発をやめないのであ
れば、軍事的なオプションも考えるのではないか。
そういう中で拉致被害者をどうやって取り戻すかというのが今日のテーマです。
また後で、今の状況を歴史的にどう見えるのかという話をしたいと思いますが、
まず惠谷さんに配布資料を元に、今北朝鮮のミサイル開発がどこまできているの
か、核開発がどこまできているのか、専門家としてどう見ているかをお願いしま
す。
◆赤化統一のためにアメリカに届く核・ミサイルが必要
惠谷 治(ジャーナリスト)
こんばんは。北朝鮮の核・ミサイル開発は車の両輪のようなものです。どちら
かが欠ければ核の脅威は全く生じません。北朝鮮は三代に渡って核・ミサイル開
発を続けている理由はたった一つです。アメリカに届く核・ミサイルを完成させ
れば北の主導による朝鮮半島統一が可能になるということです。赤化統一という
言い方もしますが、赤化統一のためにアメリカに届く核・ミサイルが必要なんで
す。
核を持てば外貨が稼げるとか、アメリカと交渉可能になるとか色々な解説があ
りますが、それは副次的なもので本質ではありません。
なぜアメリカに届く核・ミサイルが必要なのか。ご存知のように1950年に
朝鮮戦争がありました。その時米軍が仁川逆上陸を行い、中朝国境まで追いこま
れました。金日成は在日米軍がいなければ勝っていた考えていました。事実そう
です。今度南進をする場合、在韓、在日米軍の動きを止めるために、本土攻撃が
可能であれば南進した時にワシントンに対して、もし在韓、在日米軍を動かすと、
「サンフランシスコ、ニューヨーク、ワシントンが火の海になるぞ」と脅すこと
が可能になるわけです。
それをワシントンが鵜呑みにするわけはありませんが、その脅しに対して数日
議論をする間にソウルを占領、人質にして改めてアメリカと交渉に入るというよ
うなシナリオを考えているようです。ですから、どんなにアメリカが中国を通し
て「核・ミサイル開発をやめろ」と言っても私はやめないと思います。
やめされるにはどうしたらいいかと言うと、一つには核・ミサイルの北朝鮮で
は作れない重要な部品の輸入を止めることです。これは不可能ではないと思いま
す。しかし彼らは何らかのルートで入手し、今も密輸を続けているのではないか
と私は思います。
私の結論は簡単で、北朝鮮の核・ミサイル開発をやめさせるには、今の政権を
つぶすしかないと思います。色々な方法があるとしても、最終的にはつぶすべき
だと思います。
しかしそれには様々なハードルがありますが、新しいトランプ大統領がそうい
う発想えおするのではないかとひそかに期待をしています。
◆アメリカ本土に届く核・ミサイル開発は在日米軍を動かせないため
西岡 各論に入る前に北朝鮮の核・ミサイル開発の戦略的な話をしてくれました
が、そこは私も全く同じ考えです。1950年代に金日成が決めた戦略です。在
日米軍が応援に来る。北朝鮮にとって勝ち目があるのは奇襲しかない。奇襲南進
をする。在韓米軍基地まで壊すことはできるが、すぐ在日米軍が支援に来る。そ
れで第一次朝鮮戦争で勝てなかった。
これは亡くなった黄長燁元書記もそういうことを言っていましたし、李哲数
(リ・チョルス)というミグ機に乗って亡命(1996年)したパイロットも同
じ話をしています。
北朝鮮は最近、ミサイル発射実験をした後、「このミサイルは日本に届くんだ」
と言いながら、在日米軍基地がターゲットだと言っているのは本音そのものだと
いうことです。
この間の専門家の論争の中で、1990年代から北朝鮮の核開発が議論になっ
たわけですが、今回3回目の危機がきていると思います。
日本の専門家の多数は、「北朝鮮は本気で核武装をする気はない」と当初は言っ
ていました。「技術的に無理だ。外交的に使うためにやっている。金を取るため
にやっている」と。
ところがその後、核開発が進んでいることが明らかになると、「自衛のためだ」
と。考えてみると、当初「核開発をする気はない」というのは北朝鮮が言ってい
たことです。核実験をした後北朝鮮は、「自衛のためだ」と言った。そうすると
日本の専門家も「自衛のためだ」と言い始める。
「労働新聞」に書いてあった、と。「核を持っていなかったリビアのカダフィ
やイラクのフセインは殺された。だから我々は持つんだ」と。それをそのまま
「自衛のためだ」と言っていた。
しかし、1950年代から金日成が始めた戦略だということを北朝鮮の人間は
みんな知っているんです。みんなというのは軍事関係者や対南工作関係者です。
そういう点で金正恩政権は簡単にアメリカまで届く核開発をやめることはありえ
ない。
前のオバマ政権と違って、トランプ政権は「戦略的忍耐はしない」と言ってい
る。そして、「アメリカまで届く核・ミサイル開発はさせない」と。忍耐しない
と言っているんですから、任期後半まで待ったりすることはないんです。
今年、来年の間にまずは経済制裁をする。中国にセカンド・サンクションをか
けさせてもやめさせる。それができなければ、すべての手段を使ってでもやめさ
せると言っていることが近づいてくるかもしれない。
こういう大きな枠組みだと思いますがどうですか。
◆射程が1万キロから1万2千キロ、固体燃料、移動式ミサイルに成功
惠谷 そうですね。今の北朝鮮の核・ミサイルがどの程度進んでいるかについて
お話したいと思います。その前に、みなさんもテレビでご覧になったと思います
が、4月15日が北でいう太陽節です。金日成の生誕記念日で、軍事パレードな
どをしました。そのパレードに10種類のミサイルが出ました。そのうちの7種
類が新型です。そのくらい開発に力を入れています。
また配布資料にもありますが、金日成時代のミサイル発射数は15発、金正日
の時が16発です。金正恩になって、今年4月までで76発です。けたが違うわ
けです。数もミサイルの種類もびっくりするほどのものを作って実験しています。
アラスカまで届く物はもう完成したと思います。
金正恩は今年1月の新年辞で、「北の大陸間弾道弾の製造は最終段階に至って
いる」と言い、今年中に完成させると予告しました。同時に「宇宙ロケットも発
射する」と言っています。
また宇宙ロケット、これは光明星という人工衛星ですが、2回打ち上げに成功
しています。現在燃え尽きたかも分かりませんが、現在地球を回っています。お
そらく電源の問題、太陽電池の問題や通信機能の問題で地上と通信ができないも
のですから、誰も相手にしないというか忘れ去られています。
この宇宙ロケットはテポドンという米韓軍の名前で、北朝鮮名は銀河3号と光
明星です。テポドン2号というロケットは三段式で専門家の計算によればアメリ
カ西海岸まで届きます。つまり1万キロの射程があります。これは誰が見ても大
陸間弾道弾です。
金正恩は宇宙ロケットをまた打ち上げると言っています。これは人工衛星を打
ち上げたいということですが、テポドンという大陸間弾道弾(ICBM)を既に
所有しているにも関わらず、「大陸間弾道弾の製造は最終段階に至っている」と
言っています。これはどういうことか。
テポドンというのは三段式ですから全長が長い。発射台に固定して発射します。
見られないようにカバーを付けたりして工夫はしていますが、とにかく発射まで
は地上に固定して作業しなければならないので、「今始まっている、こいつら撃
つぞ」ということが何日も前から分かります。
金正恩の頭では、そういう脆弱なものをICBMとは考えていないのではない
かと思います。これは当然の理性的な発想です。では金正恩が考えているICB
Mはどういうものか。
まず射程が1万キロ以上。1万キロがサンフランシスコで、1万2千ならワシ
ントン、ニューヨークに届きます。次に、最新の新型ミサイルが7基登場したと
言いましたが、北朝鮮は固体燃料に今非常に力を入れています。やっとその技術
を獲得しました。
それまではテポドンもそうですが、ほとんどが液体燃料でした。だからICB
Mではないと金正恩は考えているのかもしれません。液体燃料は発射直前に燃料
注入が必要で、固体燃料は常時装てんできますから発射命令が出ればすぐに発射
できる。これが2つ目の金正恩の頭です。
西岡 固体燃料が成功したのは北極星2号ですか。
惠谷 はい、1号と2号です。ムスダンは液体燃料です。そして金正恩の頭にあ
る3つ目のICBMの条件は、発射方法です。テポドンは発射台から発射します
から固定式です。これでは必ず米軍に攻撃を受けるので移動式を考えています。
従って、ミサイルを車両に積んで移動できるものを考えていると思います。
要約すると、射程が1万キロから1万2千キロ、固体燃料、移動式です。
この移動式にはもう一つポイントがあります。テポドン以外はすべて移動式で
すが、火星12号は装輪式で北極星2号は装軌式です。装輪式はタイヤで装軌式
は戦車と同じキャタピラです。これまではほとんどタイヤでした。まだ完成して
いない火星13号は16双輪で、片側にそれぞれ8つのタイヤがあります。
これは後ろのタイヤがハンドルと同じように自動的にコンピュータで動きます
が、この技術がないと16双輪は製造できません。今の北の技術では曲がれない
のです。従って中国から6両輸入してパレードで公開しています。
この技術がないのを自覚して、戦車は設計はロシアですが国産ですから作れま
す。キャタピラで動かすのであればいくらでも作れます。これに乗せればいいと
いう発想です。今年になって初めてこれを完成させ、登場しました。これは自分
たちの能力に応じたすばらしい発想で、正直言って驚きました。これが今後どん
どん出てくるはずです。
ICBMの3つの条件の3番目も、キャタピラ式で解決しました。まだ完成し
ていない火星13号、火星14号はキャタピラ式になると思います。火星13号
はパレードに出ましたが、おそらくドンガラ(中身がない)だけだと思います。
(2につづく)
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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 安倍晋三殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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第25回東京連続集会が、平成29年5月25日、東京・文京区民センターで
開催された。以下はその報告である。
米国トランプ政権が北朝鮮の核ミサイル開発を止めさせるため軍事力を含む対
北圧力を強めている中、北朝鮮が新型弾道ミサイル発射実験を連続強行。中朝関
係もかつてない程悪化。韓国では親北文在寅政権が誕生。このような緊迫する情
勢の中で拉致被害者をどうして助けるのかについて西岡力・救う会会長と北朝鮮
核ミサイル問題の第一人者である惠谷治氏(ジャーナリスト)が最新情報を踏ま
えて報告した。
■緊迫する朝鮮半島情勢下での救出戦略
◆米はまず経済制裁、次に中国が圧力をかけるか、かけないなら軍事攻撃か
西岡(救う会会長)
今、北朝鮮の核・ミサイル開発に対して、トランプ政権が「アメリカ本土まで
届く核・ミサイル開発は許さない」というデッドラインを引いたことが第一の要
素です。二番目の要素は、金正恩は、金日成時代からの対南工作戦略である「ア
メリカ本土まで届く核・ミサイル開発をする」という方針を変えていないことで
す。
それで今年の春以降、朝鮮半島で緊張が大変高まっています。但し、4月に、
?デーがいつなのか、アメリカが斬首作戦をするのではないかという報道がたく
さんありましたが、それは早すぎた。
緊張が高まってきたことは事実ですが、まだ軍事攻撃をする段階まではいって
いませんでした。正確に言うと、トランプ政権はまず、「アメリカ本土まで届く
核・ミサイル開発は許さない」というデッドラインを明確にした後、すべての手
段をテーブルの上に置いたと言っています。
その「すべての手段の中には軍事的手段」も含まれています。しかし、軍事的
手段は後ろの方で使うもので、まだやり得る手段が残っている、と。
今トランプ政権は北朝鮮の貿易の約90%の相手先である中国に対して、「対
北経済制裁をかけろ」、あるいは「強めよ」と圧力をかけ、トランプ大統領は
「習近平はいいやつだ」と突然言い出しました。選挙中は「中国は悪い国だ」と
言っていたのに。そして「ロシアはいい国だ」と言っていたのに、今「悪い国だ」
と言っている。「中国はいい国だ」というふうに評価を変えています。
今国連の安保理事会で決められている制裁を、中国がどこまで忠実に守るのか、
それ以上の独自制裁をかけるのか、あるいは国連の安保理事会で追加制裁をする
時拒否権を使わないのかと、中国の動きを半年くらいはトランプ政権は見るので
はないか。
特に中国はこの秋、党大会を控えていますから、そこまでは中国も米国と衝突
を起こしたくないので、アメリカに協力したふりをするするか、本当に協力する
か、そこはまだ分かりません。
◆「中朝関係は今すごく悪い」
中国問題の専門家は、「トランプは習近平にだまされている」と言う人が多い。
「中国はアメリカなんかに協力はしませんよ。協力したふりをしているだけで、
北朝鮮の核を本当にやめさせる気はありませんよ」と言っています。
「例えば北朝鮮のミサイル発射台の車両は中国製だ」、「本気でやめさせる気
はないんだ」というようなことを言っている。
しかし、私が知っている北朝鮮内部に通じる筋は、「中朝関係は今すごく悪い」
と言います。去年1月の北朝鮮の核実験に対して、国連安保理事会が、中国も拒
否権を使わない中で対北制裁を強めました。その前後、金正恩は、「中国は裏切っ
た。上海と北京に核を一発ずつおとしてもいいんだと言った。習近平はそれをよ
く知っている」。
「サンケイ新聞」が報道した、去年3月に北朝鮮内部で幹部に回された講演資
料によると、「中国の裏切りを核の暴風で吹き飛ばせ」と中国を名指しにした文
書が出ています。「サンケイ新聞」はその文書を入手している。
そしてついに今年になって、北朝鮮の「労働新聞」が、「中国」という名前を
出して批判をしました。これは後で惠谷さんにも聞きたいんですが、私の記憶で
は北朝鮮の公式媒体が「中国」という名前を出して批判したのは、文化大革命の
時、紅衛兵の壁新聞で「金日成は修正主義者だ」と出た時に批判したと思います
が、これは紅衛兵に対する批判で、毛沢東も含めた批判ではなかった。
そうなると今回は「中国」という名前を出しての初めての批判ではないか。こ
れまでも内部では批判していましたが、表では「ある大国」とかいって、「中国」
という名前は出していませんでした。中朝関係をどう見るかがもう一つの変数で
す。
◆中国の脅し(国境封鎖)で核実験延期か
中朝関係についてもう一つ情報があります。これも後で惠谷さんの意見を聞き
たいと思います。日本のあるメディアが報道しましたが、4月20日に金正恩政
権は中国共産党に対して、「近く核実験をする」と通報した。20日から25日
の間にやるということだった。
それに対して中国共産党側から、「国境封鎖をしますよ」、「アメリカが軍事
攻撃をしても味方になりませんよ」という通報があった。それで延期になった。
ちょうどその頃、核実験場でバレーボールをしている姿が衛星で写され、トラン
プ大統領は、「習近平はよくやっている」と言った。
4月20日に通報したという情報は「情報」です。バレーボールのことや「習
近平はよくやっている」と言ったことは「事実」です。もう一つそれを補強する
材料として、5月の初めに中国のある都市で、北朝鮮の貿易関係者等が集められ
て政治講演会が開かれた。そこで、「中国に対する幻想はもう捨てろ」、「破局
が来ることを覚悟して対策を立てろ」という内容の講演がなされた。
今の流れで言うと、「破局」というのは、中国が国境封鎖をするかもしれない
ということまで想定しているのではないか。中朝関係はかなり悪い。但し、中国
共産党が本当にアメリカと足並みを揃え、国際社会と足並みを揃えて北朝鮮の核
・ミサイル開発をやめさせようとしているかどうかについては、クエスチョンマー
クが付きます。
◆中国の言うことを聞くなら北が核・ミサイルを持ってもいい
私が聞いている話では、中国の目標は核・ミサイル開発をやめさせることでは
なくて、金正恩政権を従わせることです。自分の言うことを聞く金正恩政権であ
れば核・ミサイルを持ってもいい。
私が北朝鮮側から聞いているのでは、核シェアリングをする。中国は自分で、
自分のものは持ちながら、北朝鮮の核については一緒に持ちましょうと。「中国
人技術者を北朝鮮の核施設に入れろ」という要求をして、金正恩は拒否している、
という情報もあります。中朝関係も大変微妙な状況です。
最初の話に戻りますが、アメリカはデッドラインを決めた。北朝鮮はデッドラ
インを守る気は今のところない。アメリカは様々なことを言って、「デッドライ
ンさえ守れば北の体制は認めてやる」、「軍事攻撃もしない」、「体制変換など
しない」という色々なメッセージを出して話し合いをしよう、と。
しかし、「核・ミサイル開発をやめろ」というメッセージは北が認めていない。
まだ今は経済制裁の段階で、中国が本当に協力をしなければアメリカはもう一つ
武器を持っている。これは、世界の貿易取引は基本的にドルで行われていますが、
北朝鮮と取引をしている中国企業、銀行はドル取引を停止するという制裁をかけ
ることができる。
第二次制裁、セカンダリー・サンクションと言いますが、北朝鮮に対する制裁
ではなく、北朝鮮と取引をしている企業に対する制裁をかける準備を、アメリカ
の一部機関がしています。
中国が制裁をしたふりだけしているのであれば、秋に米中が対立してセカンダ
リー・サンクションをやるでしょう。そこまでいっても核開発をやめないのであ
れば、軍事的なオプションも考えるのではないか。
そういう中で拉致被害者をどうやって取り戻すかというのが今日のテーマです。
また後で、今の状況を歴史的にどう見えるのかという話をしたいと思いますが、
まず惠谷さんに配布資料を元に、今北朝鮮のミサイル開発がどこまできているの
か、核開発がどこまできているのか、専門家としてどう見ているかをお願いしま
す。
◆赤化統一のためにアメリカに届く核・ミサイルが必要
惠谷 治(ジャーナリスト)
こんばんは。北朝鮮の核・ミサイル開発は車の両輪のようなものです。どちら
かが欠ければ核の脅威は全く生じません。北朝鮮は三代に渡って核・ミサイル開
発を続けている理由はたった一つです。アメリカに届く核・ミサイルを完成させ
れば北の主導による朝鮮半島統一が可能になるということです。赤化統一という
言い方もしますが、赤化統一のためにアメリカに届く核・ミサイルが必要なんで
す。
核を持てば外貨が稼げるとか、アメリカと交渉可能になるとか色々な解説があ
りますが、それは副次的なもので本質ではありません。
なぜアメリカに届く核・ミサイルが必要なのか。ご存知のように1950年に
朝鮮戦争がありました。その時米軍が仁川逆上陸を行い、中朝国境まで追いこま
れました。金日成は在日米軍がいなければ勝っていた考えていました。事実そう
です。今度南進をする場合、在韓、在日米軍の動きを止めるために、本土攻撃が
可能であれば南進した時にワシントンに対して、もし在韓、在日米軍を動かすと、
「サンフランシスコ、ニューヨーク、ワシントンが火の海になるぞ」と脅すこと
が可能になるわけです。
それをワシントンが鵜呑みにするわけはありませんが、その脅しに対して数日
議論をする間にソウルを占領、人質にして改めてアメリカと交渉に入るというよ
うなシナリオを考えているようです。ですから、どんなにアメリカが中国を通し
て「核・ミサイル開発をやめろ」と言っても私はやめないと思います。
やめされるにはどうしたらいいかと言うと、一つには核・ミサイルの北朝鮮で
は作れない重要な部品の輸入を止めることです。これは不可能ではないと思いま
す。しかし彼らは何らかのルートで入手し、今も密輸を続けているのではないか
と私は思います。
私の結論は簡単で、北朝鮮の核・ミサイル開発をやめさせるには、今の政権を
つぶすしかないと思います。色々な方法があるとしても、最終的にはつぶすべき
だと思います。
しかしそれには様々なハードルがありますが、新しいトランプ大統領がそうい
う発想えおするのではないかとひそかに期待をしています。
◆アメリカ本土に届く核・ミサイル開発は在日米軍を動かせないため
西岡 各論に入る前に北朝鮮の核・ミサイル開発の戦略的な話をしてくれました
が、そこは私も全く同じ考えです。1950年代に金日成が決めた戦略です。在
日米軍が応援に来る。北朝鮮にとって勝ち目があるのは奇襲しかない。奇襲南進
をする。在韓米軍基地まで壊すことはできるが、すぐ在日米軍が支援に来る。そ
れで第一次朝鮮戦争で勝てなかった。
これは亡くなった黄長燁元書記もそういうことを言っていましたし、李哲数
(リ・チョルス)というミグ機に乗って亡命(1996年)したパイロットも同
じ話をしています。
北朝鮮は最近、ミサイル発射実験をした後、「このミサイルは日本に届くんだ」
と言いながら、在日米軍基地がターゲットだと言っているのは本音そのものだと
いうことです。
この間の専門家の論争の中で、1990年代から北朝鮮の核開発が議論になっ
たわけですが、今回3回目の危機がきていると思います。
日本の専門家の多数は、「北朝鮮は本気で核武装をする気はない」と当初は言っ
ていました。「技術的に無理だ。外交的に使うためにやっている。金を取るため
にやっている」と。
ところがその後、核開発が進んでいることが明らかになると、「自衛のためだ」
と。考えてみると、当初「核開発をする気はない」というのは北朝鮮が言ってい
たことです。核実験をした後北朝鮮は、「自衛のためだ」と言った。そうすると
日本の専門家も「自衛のためだ」と言い始める。
「労働新聞」に書いてあった、と。「核を持っていなかったリビアのカダフィ
やイラクのフセインは殺された。だから我々は持つんだ」と。それをそのまま
「自衛のためだ」と言っていた。
しかし、1950年代から金日成が始めた戦略だということを北朝鮮の人間は
みんな知っているんです。みんなというのは軍事関係者や対南工作関係者です。
そういう点で金正恩政権は簡単にアメリカまで届く核開発をやめることはありえ
ない。
前のオバマ政権と違って、トランプ政権は「戦略的忍耐はしない」と言ってい
る。そして、「アメリカまで届く核・ミサイル開発はさせない」と。忍耐しない
と言っているんですから、任期後半まで待ったりすることはないんです。
今年、来年の間にまずは経済制裁をする。中国にセカンド・サンクションをか
けさせてもやめさせる。それができなければ、すべての手段を使ってでもやめさ
せると言っていることが近づいてくるかもしれない。
こういう大きな枠組みだと思いますがどうですか。
◆射程が1万キロから1万2千キロ、固体燃料、移動式ミサイルに成功
惠谷 そうですね。今の北朝鮮の核・ミサイルがどの程度進んでいるかについて
お話したいと思います。その前に、みなさんもテレビでご覧になったと思います
が、4月15日が北でいう太陽節です。金日成の生誕記念日で、軍事パレードな
どをしました。そのパレードに10種類のミサイルが出ました。そのうちの7種
類が新型です。そのくらい開発に力を入れています。
また配布資料にもありますが、金日成時代のミサイル発射数は15発、金正日
の時が16発です。金正恩になって、今年4月までで76発です。けたが違うわ
けです。数もミサイルの種類もびっくりするほどのものを作って実験しています。
アラスカまで届く物はもう完成したと思います。
金正恩は今年1月の新年辞で、「北の大陸間弾道弾の製造は最終段階に至って
いる」と言い、今年中に完成させると予告しました。同時に「宇宙ロケットも発
射する」と言っています。
また宇宙ロケット、これは光明星という人工衛星ですが、2回打ち上げに成功
しています。現在燃え尽きたかも分かりませんが、現在地球を回っています。お
そらく電源の問題、太陽電池の問題や通信機能の問題で地上と通信ができないも
のですから、誰も相手にしないというか忘れ去られています。
この宇宙ロケットはテポドンという米韓軍の名前で、北朝鮮名は銀河3号と光
明星です。テポドン2号というロケットは三段式で専門家の計算によればアメリ
カ西海岸まで届きます。つまり1万キロの射程があります。これは誰が見ても大
陸間弾道弾です。
金正恩は宇宙ロケットをまた打ち上げると言っています。これは人工衛星を打
ち上げたいということですが、テポドンという大陸間弾道弾(ICBM)を既に
所有しているにも関わらず、「大陸間弾道弾の製造は最終段階に至っている」と
言っています。これはどういうことか。
テポドンというのは三段式ですから全長が長い。発射台に固定して発射します。
見られないようにカバーを付けたりして工夫はしていますが、とにかく発射まで
は地上に固定して作業しなければならないので、「今始まっている、こいつら撃
つぞ」ということが何日も前から分かります。
金正恩の頭では、そういう脆弱なものをICBMとは考えていないのではない
かと思います。これは当然の理性的な発想です。では金正恩が考えているICB
Mはどういうものか。
まず射程が1万キロ以上。1万キロがサンフランシスコで、1万2千ならワシ
ントン、ニューヨークに届きます。次に、最新の新型ミサイルが7基登場したと
言いましたが、北朝鮮は固体燃料に今非常に力を入れています。やっとその技術
を獲得しました。
それまではテポドンもそうですが、ほとんどが液体燃料でした。だからICB
Mではないと金正恩は考えているのかもしれません。液体燃料は発射直前に燃料
注入が必要で、固体燃料は常時装てんできますから発射命令が出ればすぐに発射
できる。これが2つ目の金正恩の頭です。
西岡 固体燃料が成功したのは北極星2号ですか。
惠谷 はい、1号と2号です。ムスダンは液体燃料です。そして金正恩の頭にあ
る3つ目のICBMの条件は、発射方法です。テポドンは発射台から発射します
から固定式です。これでは必ず米軍に攻撃を受けるので移動式を考えています。
従って、ミサイルを車両に積んで移動できるものを考えていると思います。
要約すると、射程が1万キロから1万2千キロ、固体燃料、移動式です。
この移動式にはもう一つポイントがあります。テポドン以外はすべて移動式で
すが、火星12号は装輪式で北極星2号は装軌式です。装輪式はタイヤで装軌式
は戦車と同じキャタピラです。これまではほとんどタイヤでした。まだ完成して
いない火星13号は16双輪で、片側にそれぞれ8つのタイヤがあります。
これは後ろのタイヤがハンドルと同じように自動的にコンピュータで動きます
が、この技術がないと16双輪は製造できません。今の北の技術では曲がれない
のです。従って中国から6両輸入してパレードで公開しています。
この技術がないのを自覚して、戦車は設計はロシアですが国産ですから作れま
す。キャタピラで動かすのであればいくらでも作れます。これに乗せればいいと
いう発想です。今年になって初めてこれを完成させ、登場しました。これは自分
たちの能力に応じたすばらしい発想で、正直言って驚きました。これが今後どん
どん出てくるはずです。
ICBMの3つの条件の3番目も、キャタピラ式で解決しました。まだ完成し
ていない火星13号、火星14号はキャタピラ式になると思います。火星13号
はパレードに出ましたが、おそらくドンガラ(中身がない)だけだと思います。
(2につづく)
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■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
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担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
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