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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

<参考情報>南北の「笑み」を「歴史的」と呼ぶな(2018/05/02)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2018.05.02)

 下記は、島田洋一副会長が、「産経新聞」正論欄に投稿した4月30日付の記
事です。参考情報として送ります。

■南北の「笑み」を「歴史的」と呼ぶな

 4月27日の南北首脳会談を「歴史的」と呼ぶのは、歴史を知らない人々だろ
う。トランプ米政権は大統領以下、「過去25年間の過ちは繰り返さない」と強
調してきた。その起点となったのが1991年12月31日の「南北非核化宣言」
である。

 そこには、使用済み核燃料再処理やウラン濃縮の禁止などの具体的項目が曲が
りなりにも盛り込まれていた。これに北が違反したことが、その後の核危機をも
たらしたわけだが、「核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認」し
ただけの「板門店宣言」には具体性が一切ない。

≪「リビア・モデル」を追求せよ≫

 時計の針を25年以上戻し、しかも無意味なまでに内容を薄めたのが今回の南
北合意だった。韓国の文在寅大統領が満面の笑みで金正恩朝鮮労働党委員長を抱
擁し、酒杯を交わしている間も、北における核・化学・生物兵器の増産や、収容
所での凄惨(せいさん)な虐待は続いている。見据えねばならない現実はもちろ
んそちらである。

 今後カギになるのはアメリカの対応だろう。「完全かつ検証可能で不可逆的な
非核化」の実例がリビア・モデルである。2003年3月、イラク戦争の開始と
同時に、リビアは米英に大量破壊兵器を放棄する意向を伝えた。軍事的圧力と制
裁の効果であった。その年12月には合意が成立する。リビア方式の特徴は以下
のようにまとめられる。

 (1)米英の対外情報機関(米中央情報局=CIAと英国秘密情報部=MI6)
が、交渉および廃棄の第1段階を担った。すなわち、交渉継続が自己目的化しや
すい国務省や、動きが鈍い国際機関は関与させなかった。

 (2)合意の1カ月後(04年1月)には、米軍機と艦船による廃棄対象物資
の海外搬出が始まり、3月にはほぼ完了している。合意から実施までのスピード
が速い。

 (3)核のみならず化学兵器、中距離ミサイルも廃棄対象となった。

 (4)疑惑施設の査察要求にリビアが即時全面的に応じた。「完全かつ不可逆
的な」廃棄か否かは物理的には証明困難で、査察に対する「素直度」で判断する
しかない。リビアは「合格」であった。

 (5)テロの清算も同時に行われた。具体的には1988年のパンナム機爆破
事件(死者270人。うち米国人190人、英国人43人)の犠牲者遺族に対し、
リビアが27億ドルの補償金を支払った。

 (6)リビアへの「見返り」は、核・ミサイルの廃棄完了後に提供された。す
なわち金融制裁と航空機往来禁止解除が2004年9月、テロ支援国指定の解除
が06年6月である。韓国政府高官が、「リビアの場合も段階ごとに米国の補償
があった」と北朝鮮を援護する発言をしているが、事実に反する。

≪拉致解決こそテロ放棄の核心だ≫

 北朝鮮側は、米朝首脳会談をできるだけ曖昧に終わらせ、「実務者協議」に持
ち込んで半歩ごとに譲歩を勝ち取るシナリオを描いていよう。それを許さず、制
裁の実効性確保と「決裂すれば軍事オプション」という姿勢を日米中心に維持で
きるかが重要となる。

 リビア方式の追求は、アメリカ以上に日本にとって意味が大きい。まず、中距
離ミサイルの廃棄が合意に含まれる必要がある。さらにテロの清算が同時に行わ
れねばならない。何より拉致問題の解決がそれに当たる。

 北朝鮮による外国人拉致は、身分の盗用や教育係の確保など国家的なテロ・破
壊工作の一環である。単なる誘拐ではない。そして他人になりすました工作員の
最大のターゲットは米軍基地である。日本が特にアメリカに共同対処を呼び掛け
る根拠がここにある。

 北が工作員をすべて引き揚げれば、彼らの顔を知る拉致被害者を全員解放でき
る。解放しないのは、工作員を潜入させ続けているためと見る他ない。「完全か
つ検証可能なテロ放棄」の核心が、まさに拉致の解決だといえる。

≪日本は制約の下で全力を尽くせ≫

 なおリビアのケースでは、イギリスとイスラエルが、アメリカを補佐して重要
な役割を果たしている。まず対外情報機関が各種の成果をあげた。例えばパキス
タンのカーン博士による核拡散ネットワークの無力化は、ジュネーブ滞在中の同
氏の部屋にイスラエル対外特務機関(モサド)の要員が入り、各種書類を撮影し
たことで突破口が開けた。パンナム機爆破事件ではCIAとMI6が緊密に連携
してリビアを追い詰めている。

 またイギリスは、イラク戦争にアメリカに次ぐ兵力(開戦時4万5000人)
を送るなど、リビアに対してもアメリカとともに、場合によっては単独でも攻撃
してきかねない“怖さ”を持った存在であった。

 この点、対外情報機関を持たず、いまだ専守防衛を掲げる日本は、アメリカに
とっても北朝鮮にとっても、残念ながらリビア・モデルにおけるイギリスほどの
重みを有しない。大きなハンディと言わざるを得ないが、拉致被害者の救出に政
府は与えられた条件の下で、全力を尽くさねばならない。(福井県立大学教授・
島田洋一 しまだよういち)

以上


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