北の手玉に取られる轍を踏むな 福井県立大学教授・島田洋一(2018/05/29)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2018.05.29)
下記は、本日5月29日付の産経新聞「正論」欄に掲載された、救う会島田洋
一副会長の寄稿です。参考情報として発信します。
<参考情報>
■北の手玉に取られる轍を踏むな 福井県立大学教授・島田洋一
≪リビア・モデルを参考にせよ≫
今月初め、ワシントン郊外でロバート・ジョゼフ氏と面談した。今やキーワー
ドとなったリビア・モデル。2003年、そのリビアとの詰めの交渉を米側交渉
団長として担ったのが、国家安全保障会議(NSC)上級部長だったジョゼフ氏
である。当時も今も、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)とは
盟友関係にある。ジョゼフ氏は、自身の交渉を振り返り、次の点を強調した。
「一歩ごとの取引という発想は論外だ。交渉を複雑化させ、スピードを阻害す
るだけでなく、非核化のゴールそのものが遠くにかすんでしまう。早く見返りが
欲しければ早く非核化を完了せよ。数年ではなく数カ月以内。イエスかノーか。
そう迫らねばならない」
見返りについては、「非核化しテロを放棄すれば、当然、国際社会に家族の一
員として受け入れられる」といった一般的約束しか、しなかった。ではリビアの
独裁者カダフィは、なぜアメリカの要求を受け入れたのか。ジョゼフ氏は特に次
の要因が重要だという。
(1)経済制裁が徐々に効果を上げていた(2)核関連の闇取引を米英独伊の
連携によって洋上で阻止し、情報力と機動的対応力を見せつけ、核開発継続が物
理的に困難と思わしめた(3)カダフィへの斬首作戦を示唆し続け、独裁者個人
の恐怖心を高めた?。今後トランプ政権は北朝鮮に対し、核・弾道ミサイルの放
棄とともに拉致問題の解決をも迫っていこう。
≪日本が今後の帰趨に影響与える≫
拉致については細かな交渉をしてもらう必要はない。「盟友・安倍(晋三首相)
が納得する形で解決せよ。安倍氏が『納得できない、駄目だ』という限り、アメ
リカも制裁を解除しない」との立場を鮮明にし、維持してくれれば十分である。
米側の姿勢が硬いと判断すれば、北朝鮮から日本に「対話」を求めてこよう。
核・ミサイル問題であまり強い立場を取ると、北が態度を硬化させ、拉致解決
が遠のくのでは、と懸念する向きもある。
この点、やはりリビア・モデルが参考になる。米英リビア間で核協議が始まっ
たのが、イラク戦争開始直後の03年3月下旬。その1カ月後にまず、リビアが
1988年のパンナム機爆破テロの犠牲者遺族に補償金を支払う旨を表明してい
る。
つまり、核やミサイルより対応しやすい「テロの清算」で「誠意」を見せ、制
裁緩和を得ようとしたわけである。北朝鮮も核・ミサイル放棄で日米が強い立場
を取れば取るほど、日米分断の思惑も込め、より対処しやすい拉致(被害者をか
えせばよいだけ)で動いてくる可能性が高まろう。拉致解決のためにも核・ミサ
イル問題で安易な妥協をしてはならない。
北朝鮮は、米朝首脳会談を友好ショーとして実現させ、その後の「実務者協議」
で制裁解除を勝ち取るシナリオを描いているだろう。かつてクリストファー・ヒ
ル国務次官補をカウンターパートに、譲歩に次ぐ譲歩を受け入れさせた例が、北
にとっての理想型である。その方向で韓国を協力させる作業は着実に進んでいる。
5月27日、文在寅大統領は前日に急遽(きゅうきょ)開かれた南北首脳会談
を受け、米朝が「誤解を払拭」するため「事前対話」を持つよう呼び掛けた。北
を徹底的に「誤解」しているボルトン氏などは外せ、が言外の意味だろう。米国
内にも宥和(ゆうわ)派は多く、強硬派とのせめぎ合いは常に続いている。日本
はその帰趨(きすう)に影響を与えうる存在である。その点、苦い実例が近い過
去にある。
≪安易な妥協が腰砕けを招いた≫
2008年、北朝鮮の「テロ支援国家指定」を解除したいライス国務長官らと
全面反対のチェイニー副大統領らが激しく対立していた。チェイニー氏らの切り
札的論点の一つが、「拉致で進展がない中、日本が納得しない。日米関係が壊れ
る」だった。
ところが6月13日、福田康夫内閣が、北朝鮮の拉致「調査委員会」設置と引
き換えに制裁を緩和したとの声明を発する。「調査」には期限を設けない一方、
「すべての北朝鮮船舶に人道目的での入港を認める」などの日本側措置は即日実
施したという。米強硬派は梯子(はしご)を外された。日本国内でも当然批判の
声が上がり、政府は入港解禁の撤回など再交渉を余儀なくされた。これを北がす
んなり受け入れる。
北の視線は米国内に注がれていた。拉致で進展があったと印象づけられれば、
中身はどうでもよかったのである。日本がさらに強く出ていればさらに譲歩した
だろう。福田政権には大きな構図が見えていなかった。
北の思惑通り、ブッシュ政権は、日朝合意から約2週間後、「テロ指定解除に
向けた手続きの開始」を発表した。日本の安易な妥協が、米国内での宥和派勝利
をも招来したのである。北は同じ事態の再現を狙っていよう。北朝鮮の「態度軟
化」に惑わされ、手玉に取られた福田政権の轍(てつ)を決して踏んではならな
い。(しまだ よういち)
以上
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■安倍首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
[PC]https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html
[携帯]http://form1.kmail.kantei.go.jp/cgi-bin/k/iken/im/goiken.cgi
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 安倍晋三殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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下記は、本日5月29日付の産経新聞「正論」欄に掲載された、救う会島田洋
一副会長の寄稿です。参考情報として発信します。
<参考情報>
■北の手玉に取られる轍を踏むな 福井県立大学教授・島田洋一
≪リビア・モデルを参考にせよ≫
今月初め、ワシントン郊外でロバート・ジョゼフ氏と面談した。今やキーワー
ドとなったリビア・モデル。2003年、そのリビアとの詰めの交渉を米側交渉
団長として担ったのが、国家安全保障会議(NSC)上級部長だったジョゼフ氏
である。当時も今も、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)とは
盟友関係にある。ジョゼフ氏は、自身の交渉を振り返り、次の点を強調した。
「一歩ごとの取引という発想は論外だ。交渉を複雑化させ、スピードを阻害す
るだけでなく、非核化のゴールそのものが遠くにかすんでしまう。早く見返りが
欲しければ早く非核化を完了せよ。数年ではなく数カ月以内。イエスかノーか。
そう迫らねばならない」
見返りについては、「非核化しテロを放棄すれば、当然、国際社会に家族の一
員として受け入れられる」といった一般的約束しか、しなかった。ではリビアの
独裁者カダフィは、なぜアメリカの要求を受け入れたのか。ジョゼフ氏は特に次
の要因が重要だという。
(1)経済制裁が徐々に効果を上げていた(2)核関連の闇取引を米英独伊の
連携によって洋上で阻止し、情報力と機動的対応力を見せつけ、核開発継続が物
理的に困難と思わしめた(3)カダフィへの斬首作戦を示唆し続け、独裁者個人
の恐怖心を高めた?。今後トランプ政権は北朝鮮に対し、核・弾道ミサイルの放
棄とともに拉致問題の解決をも迫っていこう。
≪日本が今後の帰趨に影響与える≫
拉致については細かな交渉をしてもらう必要はない。「盟友・安倍(晋三首相)
が納得する形で解決せよ。安倍氏が『納得できない、駄目だ』という限り、アメ
リカも制裁を解除しない」との立場を鮮明にし、維持してくれれば十分である。
米側の姿勢が硬いと判断すれば、北朝鮮から日本に「対話」を求めてこよう。
核・ミサイル問題であまり強い立場を取ると、北が態度を硬化させ、拉致解決
が遠のくのでは、と懸念する向きもある。
この点、やはりリビア・モデルが参考になる。米英リビア間で核協議が始まっ
たのが、イラク戦争開始直後の03年3月下旬。その1カ月後にまず、リビアが
1988年のパンナム機爆破テロの犠牲者遺族に補償金を支払う旨を表明してい
る。
つまり、核やミサイルより対応しやすい「テロの清算」で「誠意」を見せ、制
裁緩和を得ようとしたわけである。北朝鮮も核・ミサイル放棄で日米が強い立場
を取れば取るほど、日米分断の思惑も込め、より対処しやすい拉致(被害者をか
えせばよいだけ)で動いてくる可能性が高まろう。拉致解決のためにも核・ミサ
イル問題で安易な妥協をしてはならない。
北朝鮮は、米朝首脳会談を友好ショーとして実現させ、その後の「実務者協議」
で制裁解除を勝ち取るシナリオを描いているだろう。かつてクリストファー・ヒ
ル国務次官補をカウンターパートに、譲歩に次ぐ譲歩を受け入れさせた例が、北
にとっての理想型である。その方向で韓国を協力させる作業は着実に進んでいる。
5月27日、文在寅大統領は前日に急遽(きゅうきょ)開かれた南北首脳会談
を受け、米朝が「誤解を払拭」するため「事前対話」を持つよう呼び掛けた。北
を徹底的に「誤解」しているボルトン氏などは外せ、が言外の意味だろう。米国
内にも宥和(ゆうわ)派は多く、強硬派とのせめぎ合いは常に続いている。日本
はその帰趨(きすう)に影響を与えうる存在である。その点、苦い実例が近い過
去にある。
≪安易な妥協が腰砕けを招いた≫
2008年、北朝鮮の「テロ支援国家指定」を解除したいライス国務長官らと
全面反対のチェイニー副大統領らが激しく対立していた。チェイニー氏らの切り
札的論点の一つが、「拉致で進展がない中、日本が納得しない。日米関係が壊れ
る」だった。
ところが6月13日、福田康夫内閣が、北朝鮮の拉致「調査委員会」設置と引
き換えに制裁を緩和したとの声明を発する。「調査」には期限を設けない一方、
「すべての北朝鮮船舶に人道目的での入港を認める」などの日本側措置は即日実
施したという。米強硬派は梯子(はしご)を外された。日本国内でも当然批判の
声が上がり、政府は入港解禁の撤回など再交渉を余儀なくされた。これを北がす
んなり受け入れる。
北の視線は米国内に注がれていた。拉致で進展があったと印象づけられれば、
中身はどうでもよかったのである。日本がさらに強く出ていればさらに譲歩した
だろう。福田政権には大きな構図が見えていなかった。
北の思惑通り、ブッシュ政権は、日朝合意から約2週間後、「テロ指定解除に
向けた手続きの開始」を発表した。日本の安易な妥協が、米国内での宥和派勝利
をも招来したのである。北は同じ事態の再現を狙っていよう。北朝鮮の「態度軟
化」に惑わされ、手玉に取られた福田政権の轍(てつ)を決して踏んではならな
い。(しまだ よういち)
以上
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担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
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