北朝鮮のコロナ発生と危機深化(2020/07/29)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2020.07.29)
第17回救う会テレビ
7月28日、第17回救う会テレビを収録しました。西岡力救う会会長が、
「北朝鮮のコロナ発生と危機深化」につき解説しました。
■北朝鮮のコロナ発生と危機深化
みなさんごきげんよう。救う会テレビ、救う会全国協議会会長の西岡力です。
今日は令和2年7月28日午後7時半です。今日連続してやってきた拉致の全貌の
話を一回お休みしまして、「北朝鮮のコロナ発生と危機深化」という題でお話し
したいと思います。
◆北朝鮮がコロナ患者発生を認めた
北朝鮮はこれまでコロナ患者は一人もいないとずっと言ってきたのですけれど
も、突然ですね、開城(ケソン)という地方都市があるのですけれども、そこを
封鎖すると、「致命的で破壊的な災難を招きかねない危険が生じた」と言って、
コロナが発生したことを認めたのですね。
これが7月26日の朝鮮中央通信ですけれども、「コロナ流入で最大非常態勢
に移行した」と言っているのです。
北朝鮮で一番重要な会議は党の政治局会議です。その非常拡大会議を招集した
と。「非常」がついているのですね。初めて私は聞きますけれども、非常拡大会
議。
「世界的な大災難として人類を脅かしている伝染病の流入を徹底的に遮断するた
めの防疫戦が強力に展開されている」。
北朝鮮のニュースを見てるいと、毎日世界でどれくらい蔓延してるのか、何人
発病しているか何人死んだのか流しているのですね。
「我が国はゼロだ」と「我が国は世界一素晴らしい」というニュースを毎日やっ
ているので、この「世界的な大災難」、〈人類を脅かす〉という枕詞を使うので
すけれども、これが展開されている時期に開城市で、悪性ウィルスに感染された
と疑われる越南逃走者が3年ぶりに、不法に分界線を越えて、さらに7月19日
帰京する非常事件が発生した。
◆感染は脱北者の再帰国のせいとし、開城市を封鎖
韓国では「脱北」と言うのですけども、北では南に超えて行った「越南」と言
うのですね。南に逃げた人、でも「その人が戻ってきた」と。
実際に韓国軍が調べたところ、二十代の若者が3年前泳いで軍事境界線を越え
て韓国に来たのですが、7月19日に泳いで北に戻った、ということが確認され
ています。
「専門防疫機関では不法帰京者の上気道分泌物と血液に対する数回の当該検査を
行って悪性ウイルス感染者と疑われる釈然としない結果が出た」。
ここで「疑われる」と言ってるのですね。ただ疑われるだけなのです。
「一時的に彼を徹底的に隔離させ、去る5日間開城市で彼と接触した全ての対象
と開城市経由者を当該部門との連携の下で徹底的に調査、掌握し、検診、隔離措
置を取っている」と明らかにした。ここまではいいと思うのですね。
接触者を隔離するというのは、これは本当だったと。
◆非常拡大会議を緊急招集し体制引き締めに利用
しかし、それだけで疑いが出たからといって非常会議を開くと、朝鮮労働党中
央委員会政治局は、「開城市に致命的で破壊的な災難を招きかねない危険が生じ
た」と。
感染の疑いがある人が一人いたら、「致命的な破壊的な災難が起きるのか」と
思うのですが。それで7月25日に党中央委員会本部庁舎で非常拡大会議を緊急招
集した。
そこで金正恩委員長は去る6か月間、「全国的に各方面での強力な防御的防疫
対策を講じ、全てのルートを閉鎖したことにもかかわらず、わが境内に悪性ウイ
ルスが流入したと見られる」と、危険な事態が発生したことについて指摘し、こ
れに関する報告があった直後である24日午後中に、「開城市を完全封鎖した」
と。
この会議が開かれたのは25日ですけど、その1日前開城市を完全に封鎖し、区
域別、地域別に閉鎖させる先制的な対策を取った。
金正恩委員長は、現在の事態に対処して、「当該地域に非常事態を宣布した」。
この当該地域は開城市だと思いますね。だから開城市を完全に封鎖して非常事態
を宣布した。それだけではなくて国全体の国家非常防疫システムを最大非常体制
に移行させた。そして、特級警報を発令した。
国家全体の非常防疫システムを最大非常体制、「非常」「非常」という言葉が
いっぱい出てくるのですけど、最大非常体制に移行して特級警報を発令した。こ
れおかしいと思いませんか。
先程から言っているように、一人の感染疑い者が出たから致命的な破壊的な災
難がなぜ生まれるのか。そして都市全体をなぜ封鎖しなければいけないのか。そ
して都市全体を封鎖したとしたらそれでいいのに、なぜ国家非常防疫システムの
最大非常体制に移行させて、特級警報を発令しなければいけないのか。
つまりもうすでに何回か申し上げましたけれども、北朝鮮ではコロナは蔓延し
ているのです。特に平壌それから中朝国境地域が多いのですけども。多分開城で
も蔓延し始めたのだと思います。
今まで、「いない、いない」と言っていたわけですから、その防疫体制の失敗
を認めたくないのですけれども、南から直接泳いできた奴がいたと言うことで、
こいつのせいにしてやろうといって、「自分たちは正しかったけれども南の悪辣
な反動どもによって感染した我が国国民が帰ってきたけど、その男が持ち込んだ」
という口実にして、非常体制を宣布したということだと思いますね。
韓国の一部の論者たちは、これを口実にして韓国の文政権に大規模な人道支援
を求めるのではないか、と。「お前たちのせいだ!」としてですね。あるいは
「医療支援を求める、その布石かもしれない」ということを言う人たちがいます。
私もその可能性あると思います。
但しですね、今日お伝えしたいのは、北朝鮮の体制危機が深まっていて、国家
全体に危機だと警報を鳴らして、統制を強めなければならない。そういう理由が
あったのではないか。
全国的にコロナが蔓延しているということだけではなくて、人民を統制しなけ
ればならない背景があったのではないか、というふうに思っているのです。
そのことについてお話ししたいのです。
◆幹部たちの食糧配給を減らした
まず4月から、軍と治安機関の将校の配給は三分の一になりました。人民軍、
人民保安省、これは普通の警察ですね。それから国家保衛省これは政治警察です。
北朝鮮では軍官と言うのですけども将校です。この配給が三分の一になった。
これは本人も家族もそうです。
一人一日コメ600g×30日=18kg、(この三分の一で)6kgしか出ない。今まで
なかったことです。90年代大飢饉起きた時も、この軍や保安省や国家保衛省の将
校、幹部たちの配給を減らすことは無かったのです。そして平壌で配給が止まる
という事態が起きている。
読売新聞の7月2日に、高英煥さんという元外交官出身で、韓国の情報機関国家
情報院傘下の研究所の副院長までやっていた人もかなり情報をたくさん持ってい
る人ですけど、こう言っているのですね。
「平壌中心部に暮らす朝鮮労働党政府軍の幹部の家族に対する米の配給が2月か
ら3月を最後に行われていない」つまり4月から止まったということです。幹部本
人への配給は続いているが、しかしその幹部本人の配給のために戦時の備蓄米
「2号倉庫」の一部を開放しているという情報がある。
「1号倉庫」というのは戦時に軍人が食べるものがある。「2号倉庫」というの
は戦時に民間人に配るための備蓄米用のものですが、戦時用のものを解放してる
ということです。
◆平壌市20区域の内配給しているのは6区域だけに
他にもですね平壌の配給が止まってるという情報はたくさんあったので、実は
自由北韓放送の金聖?さんに一体実態はどうなのだと訊いたところですね、彼は
平壌に情報源を持っていて確認をしてくれて、先週私に情報をくれたのですけど
も、「平壌の中心部の6区域色の付いているのところですね。
中区域、普通江区域、牡丹峰区域、船橋区域、大同江区域、万景台区域はまだ
配給はある。しかしそれ以外の12区域と2郡で4月から配給が止まっている」
平壌にはですね中心部の18区域、(東京都の)23区みたいなものですね、
それと二つの郡がある。20(の地域が)あるわけです。
そのうち中心部の6区域ではまだ配給が続いているが、14区域では止まって
るということです。その6区域でも配給は、「それまでコメが4でトウモロコシ
が6だったのが、4月からコメが3でトウモロコシが7の割合に変わった」と言っ
ていました。
そして6月7日に金正恩が国家的な対策を指示しているのです。政治局会議を開
きましてですね、その議題が平壌市民の生活保障だった。そして金正恩が「国家
的な対策を強く立てよ」と、そこで指示をしました。
そしてその結果だと思われるのですが、7月にですね金日成の命日があって、
特別配給という形で平壌の(配給が)止まっていた区域に対して25日分あるいは
15日分、これは場所によって違うのかもしれませんけど、配給が出たということ
であります。
これは特別配給ということですから、8月も続くのかどうか分からないし、4、
5、6三ヶ月分出なかった分についての保証はなかった。つまり幹部たちに配給
ができなくなった。
平壌は幹部が住んでいる。これは平壌の地図ですけど、この中心部この6区域
だけ配給があって、以外のところももうちょっと広いわけですけどそこは配給が
止まっている。
◆金正恩はこの頃怒ってばかり、幹部は不満
それからですね金正恩はこの頃ですね。怒ってばかりいるのですね。
7月18日に今度は党の中央軍事委員会という会合があります。軍事部門の党の
最高意思決定機関です。けれどもそこでですね、「人民軍指揮メンバーの政治・
思想生活と軍事活動で提起される一連の問題がある」と言って、「党の思想と要
求に即して人民軍の指揮官、政治活動家に対する党の教育と指導を強める」こと
が決められた。
つまり軍の指導者たちの思想が乱れている、というふうに金正恩は言ったので
すね。しかし、一方将校の配給が三分の一になっているのですから、不満が出ま
すよね。そしたら幹部たちを集めて怒鳴りあげるというわけです。
これは北朝鮮のテレビの画像ですけれども、声は出ないのですけどどんな風に
怒っているかですね、「前ら!何やってるんだ!」と言っているわけですね。手
を振り回して厳しい顔をしています。
怒りまくっているわけです。
※中央軍事委員会で激怒する金正恩 映像
https://www.youtube.com/watch?v=-UurAC-quw0&t=132s
◆金正恩が平壌に総合病院建設を命令、最優先でも病院一つ作れない
これが7月18日にあったのですけども、19日に、次の日ですね、報道があ
りました。これは平壌の総合病院の建設現場に現地指導に行ったということなの
ですけど、これは19日に報道されたので19日にあったかどうかは分からない
のですけど、それ以前にあったのだと思います。
これがその建設現場の写真なのです。3月に突然金正恩が「平壌に総合病院一
つもない!作れ!」と言って10月10日までに完成させろと、突然命令したのです
ね。テープカットしたわけです。
それで一応建物は立っているわけです。しかしここでも金正恩は怒りまくった
のですね。これを見てください。タバコを指の間に挟んでいるのです。タバコを
指の間に挟みながら怒りまくって指導したのです。
その報道ではですね、平壌総合病院建設連合常務というのが出てくるのですね。
「連合常務から具体的な報告を受けた後そして深刻な問題点を厳しく指摘した」
と言うのです。
この「常務」という言葉ですね、日本でいうタスクフォース、特別チームとい
う形でいろんな部署から担当者を集めてきて作るのですけども、特に「連合常務」
となるとですね、国家行事として党と軍と政府から担当者を集めて特別チーム作
るのです。
だから国家行事として最優先で取り組んでいるわけです。最優先で取り組まな
ければ病院一つも作れない国家なのですね。建設連合常務がいまだに建設予算も
まともに立てずに、めくらめっぽうに経済組織活動を行っている。
そして、「各種の『支援活動』を奨励することで、人民にむしろ負担をかけて
いる」と言ったのですね。そして、「このまま放っておけばわが人民のための栄
えある、甲斐のある建設闘争を発起した党の崇高な構想と意図が歪曲されて、党
のイメージに泥を塗りかねない」と言って、そして責任のある活動家を全てすげ
替える。
「お前ら全部クビだ!」と言って、新しいのを連れてこいと、その常務たちを前
にして言ったわけです。
この各種の「支援活動」は何かと言いますと、お金は無いわけです。予算も立
てられないという。外貨が無いから予算を立てられないのです。
つまり病院というのはドンガラはつくれるのです。北朝鮮でもセメントはあり
ますから。鉄筋も入れないで作るので怖いのですけど、しかし病院を作るために
は
内部に機械が必要じゃないですか。そしておそらくガラスとかね。内装もしな
くてはいけない。それができないのです。
今観光団地を作っていて、それができないで止まってるわけですよね。元山と
三池淵(の観光団地)で。さ元山と三池淵に行っていた労働力も全部平壌に連れ
てきて工事をやっているのですが、どんがらは作れたけれども、これで金正恩は
満足しなくて、「どうなってるんだよ!10月までうまく行くのか」と言った。
(常務が)「予算がありません」と言うので、「めくらめっぽうやってるのか!」
と言って怒ったわけです。
◆制裁が効いていて、外貨がない
それで実は平壌市民、あるいは全住民に対してですね、一人当たり中国の金で
人民元を出せ、と。金を集めるのに建設の寄付を集めるのですけど、国家事業に
北朝鮮の金ではだめだから、お前ら中国人民元を持ってるのだから、「その隠し
てるのを出せ」と言って集めてるわけです。
それ(人民元)が無い人は、豚を飼育して豚を出すとかね、現物で(寄付を)
取る。自分たちが北の金は価値が無いと認めてるわけですけど、北の金は刷れば
いいわけですけど、それでは資材を買ってこれないわけです。
でもそれで先ほど言ったように、平壌でも配給が止まって食うや食わずなのに
人民元出せとかね。「豚を飼育して出せ」とか言ってくる。それで不満が高まっ
たわけです。
かなりの不満が高まっているということを金正恩は察知して、当然金正恩が決
済しなければ人民からお金を取ったりすることはできないわけです。全て独裁国
家ですので金正恩の決済が必要なのです。
しかし、それを自分が知らなかったと言って、「この常務たちのせいだ、そん
なことやったらダメだ。党のイメージに泥を塗りかねない」と言って不満をなだ
めて、「俺は知らなかったんだ」、「俺が止めたんだ」と。
つまりそれだけ平壌の住民たちの不満が高まってるということを金正恩は意識
して、自分が始めたことにも関わらず、全員交代させたということなのですね。
怒りまくっているわけです。
この背景は、経済制裁が効いていて党の39号室資金外貨が枯渇しているとい
うことです。最近聞いた情報によるとですね、大体独裁政権を維持するためには
年間40億ドルとか50億ドル必要なのですが、去年の春の段階で数億ドルになっ
ていた。それが最近聞いた情報では1億ドルを切っている。
だから金正恩の執務室のリモデリング工事をしたのですが、そのためにも内装
などのため外貨が必要だったのですが、その支払いができなくて、金の延べ棒で
払った。
北は金の延べ棒をたくさん持っていますけど、それで払うような状況になって
いる、ということです。
つまり党の管理している国家予算とは別の統治資金、金正恩の個人資金が枯渇
し始めている。外貨が本当にない。それで不満が高まっている。
だから南から一人逃げてきたのを口実にして、「コロナが流行ってる」、「家
を出るな!」とか言って不満を鎮めようとしているのではないか。
◆核を廃棄、拉致被害者を返さなければ政権がもたなくなる
拉致問題の観点から申し上げますと、「先圧力・後交渉」という戦略の中で
圧力は本当に効いてきたということであります。
金正恩は核は捨てない。「核は自衛のための自分達の成果だ」と今言っていま
すけれども、核を捨てないでもし拉致拉被害者を返さないでいたならば、本当に
政権が持つのかという状況に追い込まれつつあるということが、今回のコロナ発
生を自ら認めたことからも分かってきました。
こちらもつらいですけれども、「先圧力そして全員返しなさい」、「全被害者
の即時一括帰国だ」と。「それがあれば安倍総理が言ってる通り明るい未来があ
る、出口はありますよ」と。
しかしそれをしないなら絶対に制裁を緩めないという今の姿勢を堅持すべき時
だというふうに思っています。
以上北朝鮮のコロナ発生と危機深化と題してお話しいたしました。
ありがとうございました。
以上
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■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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第17回救う会テレビ
7月28日、第17回救う会テレビを収録しました。西岡力救う会会長が、
「北朝鮮のコロナ発生と危機深化」につき解説しました。
■北朝鮮のコロナ発生と危機深化
みなさんごきげんよう。救う会テレビ、救う会全国協議会会長の西岡力です。
今日は令和2年7月28日午後7時半です。今日連続してやってきた拉致の全貌の
話を一回お休みしまして、「北朝鮮のコロナ発生と危機深化」という題でお話し
したいと思います。
◆北朝鮮がコロナ患者発生を認めた
北朝鮮はこれまでコロナ患者は一人もいないとずっと言ってきたのですけれど
も、突然ですね、開城(ケソン)という地方都市があるのですけれども、そこを
封鎖すると、「致命的で破壊的な災難を招きかねない危険が生じた」と言って、
コロナが発生したことを認めたのですね。
これが7月26日の朝鮮中央通信ですけれども、「コロナ流入で最大非常態勢
に移行した」と言っているのです。
北朝鮮で一番重要な会議は党の政治局会議です。その非常拡大会議を招集した
と。「非常」がついているのですね。初めて私は聞きますけれども、非常拡大会
議。
「世界的な大災難として人類を脅かしている伝染病の流入を徹底的に遮断するた
めの防疫戦が強力に展開されている」。
北朝鮮のニュースを見てるいと、毎日世界でどれくらい蔓延してるのか、何人
発病しているか何人死んだのか流しているのですね。
「我が国はゼロだ」と「我が国は世界一素晴らしい」というニュースを毎日やっ
ているので、この「世界的な大災難」、〈人類を脅かす〉という枕詞を使うので
すけれども、これが展開されている時期に開城市で、悪性ウィルスに感染された
と疑われる越南逃走者が3年ぶりに、不法に分界線を越えて、さらに7月19日
帰京する非常事件が発生した。
◆感染は脱北者の再帰国のせいとし、開城市を封鎖
韓国では「脱北」と言うのですけども、北では南に超えて行った「越南」と言
うのですね。南に逃げた人、でも「その人が戻ってきた」と。
実際に韓国軍が調べたところ、二十代の若者が3年前泳いで軍事境界線を越え
て韓国に来たのですが、7月19日に泳いで北に戻った、ということが確認され
ています。
「専門防疫機関では不法帰京者の上気道分泌物と血液に対する数回の当該検査を
行って悪性ウイルス感染者と疑われる釈然としない結果が出た」。
ここで「疑われる」と言ってるのですね。ただ疑われるだけなのです。
「一時的に彼を徹底的に隔離させ、去る5日間開城市で彼と接触した全ての対象
と開城市経由者を当該部門との連携の下で徹底的に調査、掌握し、検診、隔離措
置を取っている」と明らかにした。ここまではいいと思うのですね。
接触者を隔離するというのは、これは本当だったと。
◆非常拡大会議を緊急招集し体制引き締めに利用
しかし、それだけで疑いが出たからといって非常会議を開くと、朝鮮労働党中
央委員会政治局は、「開城市に致命的で破壊的な災難を招きかねない危険が生じ
た」と。
感染の疑いがある人が一人いたら、「致命的な破壊的な災難が起きるのか」と
思うのですが。それで7月25日に党中央委員会本部庁舎で非常拡大会議を緊急招
集した。
そこで金正恩委員長は去る6か月間、「全国的に各方面での強力な防御的防疫
対策を講じ、全てのルートを閉鎖したことにもかかわらず、わが境内に悪性ウイ
ルスが流入したと見られる」と、危険な事態が発生したことについて指摘し、こ
れに関する報告があった直後である24日午後中に、「開城市を完全封鎖した」
と。
この会議が開かれたのは25日ですけど、その1日前開城市を完全に封鎖し、区
域別、地域別に閉鎖させる先制的な対策を取った。
金正恩委員長は、現在の事態に対処して、「当該地域に非常事態を宣布した」。
この当該地域は開城市だと思いますね。だから開城市を完全に封鎖して非常事態
を宣布した。それだけではなくて国全体の国家非常防疫システムを最大非常体制
に移行させた。そして、特級警報を発令した。
国家全体の非常防疫システムを最大非常体制、「非常」「非常」という言葉が
いっぱい出てくるのですけど、最大非常体制に移行して特級警報を発令した。こ
れおかしいと思いませんか。
先程から言っているように、一人の感染疑い者が出たから致命的な破壊的な災
難がなぜ生まれるのか。そして都市全体をなぜ封鎖しなければいけないのか。そ
して都市全体を封鎖したとしたらそれでいいのに、なぜ国家非常防疫システムの
最大非常体制に移行させて、特級警報を発令しなければいけないのか。
つまりもうすでに何回か申し上げましたけれども、北朝鮮ではコロナは蔓延し
ているのです。特に平壌それから中朝国境地域が多いのですけども。多分開城で
も蔓延し始めたのだと思います。
今まで、「いない、いない」と言っていたわけですから、その防疫体制の失敗
を認めたくないのですけれども、南から直接泳いできた奴がいたと言うことで、
こいつのせいにしてやろうといって、「自分たちは正しかったけれども南の悪辣
な反動どもによって感染した我が国国民が帰ってきたけど、その男が持ち込んだ」
という口実にして、非常体制を宣布したということだと思いますね。
韓国の一部の論者たちは、これを口実にして韓国の文政権に大規模な人道支援
を求めるのではないか、と。「お前たちのせいだ!」としてですね。あるいは
「医療支援を求める、その布石かもしれない」ということを言う人たちがいます。
私もその可能性あると思います。
但しですね、今日お伝えしたいのは、北朝鮮の体制危機が深まっていて、国家
全体に危機だと警報を鳴らして、統制を強めなければならない。そういう理由が
あったのではないか。
全国的にコロナが蔓延しているということだけではなくて、人民を統制しなけ
ればならない背景があったのではないか、というふうに思っているのです。
そのことについてお話ししたいのです。
◆幹部たちの食糧配給を減らした
まず4月から、軍と治安機関の将校の配給は三分の一になりました。人民軍、
人民保安省、これは普通の警察ですね。それから国家保衛省これは政治警察です。
北朝鮮では軍官と言うのですけども将校です。この配給が三分の一になった。
これは本人も家族もそうです。
一人一日コメ600g×30日=18kg、(この三分の一で)6kgしか出ない。今まで
なかったことです。90年代大飢饉起きた時も、この軍や保安省や国家保衛省の将
校、幹部たちの配給を減らすことは無かったのです。そして平壌で配給が止まる
という事態が起きている。
読売新聞の7月2日に、高英煥さんという元外交官出身で、韓国の情報機関国家
情報院傘下の研究所の副院長までやっていた人もかなり情報をたくさん持ってい
る人ですけど、こう言っているのですね。
「平壌中心部に暮らす朝鮮労働党政府軍の幹部の家族に対する米の配給が2月か
ら3月を最後に行われていない」つまり4月から止まったということです。幹部本
人への配給は続いているが、しかしその幹部本人の配給のために戦時の備蓄米
「2号倉庫」の一部を開放しているという情報がある。
「1号倉庫」というのは戦時に軍人が食べるものがある。「2号倉庫」というの
は戦時に民間人に配るための備蓄米用のものですが、戦時用のものを解放してる
ということです。
◆平壌市20区域の内配給しているのは6区域だけに
他にもですね平壌の配給が止まってるという情報はたくさんあったので、実は
自由北韓放送の金聖?さんに一体実態はどうなのだと訊いたところですね、彼は
平壌に情報源を持っていて確認をしてくれて、先週私に情報をくれたのですけど
も、「平壌の中心部の6区域色の付いているのところですね。
中区域、普通江区域、牡丹峰区域、船橋区域、大同江区域、万景台区域はまだ
配給はある。しかしそれ以外の12区域と2郡で4月から配給が止まっている」
平壌にはですね中心部の18区域、(東京都の)23区みたいなものですね、
それと二つの郡がある。20(の地域が)あるわけです。
そのうち中心部の6区域ではまだ配給が続いているが、14区域では止まって
るということです。その6区域でも配給は、「それまでコメが4でトウモロコシ
が6だったのが、4月からコメが3でトウモロコシが7の割合に変わった」と言っ
ていました。
そして6月7日に金正恩が国家的な対策を指示しているのです。政治局会議を開
きましてですね、その議題が平壌市民の生活保障だった。そして金正恩が「国家
的な対策を強く立てよ」と、そこで指示をしました。
そしてその結果だと思われるのですが、7月にですね金日成の命日があって、
特別配給という形で平壌の(配給が)止まっていた区域に対して25日分あるいは
15日分、これは場所によって違うのかもしれませんけど、配給が出たということ
であります。
これは特別配給ということですから、8月も続くのかどうか分からないし、4、
5、6三ヶ月分出なかった分についての保証はなかった。つまり幹部たちに配給
ができなくなった。
平壌は幹部が住んでいる。これは平壌の地図ですけど、この中心部この6区域
だけ配給があって、以外のところももうちょっと広いわけですけどそこは配給が
止まっている。
◆金正恩はこの頃怒ってばかり、幹部は不満
それからですね金正恩はこの頃ですね。怒ってばかりいるのですね。
7月18日に今度は党の中央軍事委員会という会合があります。軍事部門の党の
最高意思決定機関です。けれどもそこでですね、「人民軍指揮メンバーの政治・
思想生活と軍事活動で提起される一連の問題がある」と言って、「党の思想と要
求に即して人民軍の指揮官、政治活動家に対する党の教育と指導を強める」こと
が決められた。
つまり軍の指導者たちの思想が乱れている、というふうに金正恩は言ったので
すね。しかし、一方将校の配給が三分の一になっているのですから、不満が出ま
すよね。そしたら幹部たちを集めて怒鳴りあげるというわけです。
これは北朝鮮のテレビの画像ですけれども、声は出ないのですけどどんな風に
怒っているかですね、「前ら!何やってるんだ!」と言っているわけですね。手
を振り回して厳しい顔をしています。
怒りまくっているわけです。
※中央軍事委員会で激怒する金正恩 映像
https://www.youtube.com/watch?v=-UurAC-quw0&t=132s
◆金正恩が平壌に総合病院建設を命令、最優先でも病院一つ作れない
これが7月18日にあったのですけども、19日に、次の日ですね、報道があ
りました。これは平壌の総合病院の建設現場に現地指導に行ったということなの
ですけど、これは19日に報道されたので19日にあったかどうかは分からない
のですけど、それ以前にあったのだと思います。
これがその建設現場の写真なのです。3月に突然金正恩が「平壌に総合病院一
つもない!作れ!」と言って10月10日までに完成させろと、突然命令したのです
ね。テープカットしたわけです。
それで一応建物は立っているわけです。しかしここでも金正恩は怒りまくった
のですね。これを見てください。タバコを指の間に挟んでいるのです。タバコを
指の間に挟みながら怒りまくって指導したのです。
その報道ではですね、平壌総合病院建設連合常務というのが出てくるのですね。
「連合常務から具体的な報告を受けた後そして深刻な問題点を厳しく指摘した」
と言うのです。
この「常務」という言葉ですね、日本でいうタスクフォース、特別チームとい
う形でいろんな部署から担当者を集めてきて作るのですけども、特に「連合常務」
となるとですね、国家行事として党と軍と政府から担当者を集めて特別チーム作
るのです。
だから国家行事として最優先で取り組んでいるわけです。最優先で取り組まな
ければ病院一つも作れない国家なのですね。建設連合常務がいまだに建設予算も
まともに立てずに、めくらめっぽうに経済組織活動を行っている。
そして、「各種の『支援活動』を奨励することで、人民にむしろ負担をかけて
いる」と言ったのですね。そして、「このまま放っておけばわが人民のための栄
えある、甲斐のある建設闘争を発起した党の崇高な構想と意図が歪曲されて、党
のイメージに泥を塗りかねない」と言って、そして責任のある活動家を全てすげ
替える。
「お前ら全部クビだ!」と言って、新しいのを連れてこいと、その常務たちを前
にして言ったわけです。
この各種の「支援活動」は何かと言いますと、お金は無いわけです。予算も立
てられないという。外貨が無いから予算を立てられないのです。
つまり病院というのはドンガラはつくれるのです。北朝鮮でもセメントはあり
ますから。鉄筋も入れないで作るので怖いのですけど、しかし病院を作るために
は
内部に機械が必要じゃないですか。そしておそらくガラスとかね。内装もしな
くてはいけない。それができないのです。
今観光団地を作っていて、それができないで止まってるわけですよね。元山と
三池淵(の観光団地)で。さ元山と三池淵に行っていた労働力も全部平壌に連れ
てきて工事をやっているのですが、どんがらは作れたけれども、これで金正恩は
満足しなくて、「どうなってるんだよ!10月までうまく行くのか」と言った。
(常務が)「予算がありません」と言うので、「めくらめっぽうやってるのか!」
と言って怒ったわけです。
◆制裁が効いていて、外貨がない
それで実は平壌市民、あるいは全住民に対してですね、一人当たり中国の金で
人民元を出せ、と。金を集めるのに建設の寄付を集めるのですけど、国家事業に
北朝鮮の金ではだめだから、お前ら中国人民元を持ってるのだから、「その隠し
てるのを出せ」と言って集めてるわけです。
それ(人民元)が無い人は、豚を飼育して豚を出すとかね、現物で(寄付を)
取る。自分たちが北の金は価値が無いと認めてるわけですけど、北の金は刷れば
いいわけですけど、それでは資材を買ってこれないわけです。
でもそれで先ほど言ったように、平壌でも配給が止まって食うや食わずなのに
人民元出せとかね。「豚を飼育して出せ」とか言ってくる。それで不満が高まっ
たわけです。
かなりの不満が高まっているということを金正恩は察知して、当然金正恩が決
済しなければ人民からお金を取ったりすることはできないわけです。全て独裁国
家ですので金正恩の決済が必要なのです。
しかし、それを自分が知らなかったと言って、「この常務たちのせいだ、そん
なことやったらダメだ。党のイメージに泥を塗りかねない」と言って不満をなだ
めて、「俺は知らなかったんだ」、「俺が止めたんだ」と。
つまりそれだけ平壌の住民たちの不満が高まってるということを金正恩は意識
して、自分が始めたことにも関わらず、全員交代させたということなのですね。
怒りまくっているわけです。
この背景は、経済制裁が効いていて党の39号室資金外貨が枯渇しているとい
うことです。最近聞いた情報によるとですね、大体独裁政権を維持するためには
年間40億ドルとか50億ドル必要なのですが、去年の春の段階で数億ドルになっ
ていた。それが最近聞いた情報では1億ドルを切っている。
だから金正恩の執務室のリモデリング工事をしたのですが、そのためにも内装
などのため外貨が必要だったのですが、その支払いができなくて、金の延べ棒で
払った。
北は金の延べ棒をたくさん持っていますけど、それで払うような状況になって
いる、ということです。
つまり党の管理している国家予算とは別の統治資金、金正恩の個人資金が枯渇
し始めている。外貨が本当にない。それで不満が高まっている。
だから南から一人逃げてきたのを口実にして、「コロナが流行ってる」、「家
を出るな!」とか言って不満を鎮めようとしているのではないか。
◆核を廃棄、拉致被害者を返さなければ政権がもたなくなる
拉致問題の観点から申し上げますと、「先圧力・後交渉」という戦略の中で
圧力は本当に効いてきたということであります。
金正恩は核は捨てない。「核は自衛のための自分達の成果だ」と今言っていま
すけれども、核を捨てないでもし拉致拉被害者を返さないでいたならば、本当に
政権が持つのかという状況に追い込まれつつあるということが、今回のコロナ発
生を自ら認めたことからも分かってきました。
こちらもつらいですけれども、「先圧力そして全員返しなさい」、「全被害者
の即時一括帰国だ」と。「それがあれば安倍総理が言ってる通り明るい未来があ
る、出口はありますよ」と。
しかしそれをしないなら絶対に制裁を緩めないという今の姿勢を堅持すべき時
だというふうに思っています。
以上北朝鮮のコロナ発生と危機深化と題してお話しいたしました。
ありがとうございました。
以上
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発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
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担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
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