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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

米大統領選挙と拉致問題?東京連続集会報告3(2020/11/26)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2020.11.26)

■米大統領選挙と拉致問題?東京連続集会報告3

◆バイデン政権は再び「スモール・ディール」に戻るか

西岡 いい面と悪い面と両方話してくれましたが、私が懸念するのは、バイデン
政権になると多分、「トランプがやったことは間違っている」という前提で動く
と思います。トランプ大統領も、オバマがやったことは全部間違いとしましたか
ら。

 対北政策で言うと、「トップ会談は間違いだ。積上げ方式でいく」というのは
今も言っていることです。その場合に、トランプのトップ会談方式にはもちろん
危ない部分もありましたが、しかし我々にとって信頼できたのは、「スモール・
ディール」、小さな取引を拒否していたということです。

 核とミサイルと拉致。そのビッグ・ディールをしよう、と。そのためには決定
権を持っているトップと話をしなければならない。積上げ方式ではだめだ、と。
それは北朝鮮のような独裁国家と交渉する時は正しい政策なのですが、そのビッ
グ・ディールの中に拉致問題がきちんとはめ込まれていたので、安心して見てい
ることができたわけです。

 北朝鮮はそうではなく、スモール・ディールで信頼関係を積上げていくのが必
要なんだ、と。いっぺんにすべてのことをやるのではなくて、小さな取引からと
いうことをずっと言ってきました。

 島田さんが、ブッシュ政権の末期も、スモール・ディールに騙されてしまった
わけです。寧辺のプルトニウムを作る原子炉の煙突一つを爆破する、と。原子炉
は空調だったのですが、川がありますから、空気で冷やさなくても水で冷やす方
式に変えることもできるわけで、煙突を爆破しても原子炉が使えなくなるわけで
はないんです。それで「爆破ショー」をした。

 それに対して北朝鮮が一番嫌がっていたマカオの銀行に対する金融制裁を解除
してしまい、我々が「拉致はテロの一環なんだからテロ支援国指定を解除してく
れるな」と言ってきたことも、日本の福田政権も「話し合いを始めたんだから」
という口実で、「拉致はテロだ」と言っていたのにテロ支援国指定を解除してし
まったということがありました。

 でもそれは、北朝鮮が「すべての核をやめる」と言ったわけではなく、寧辺の
プルトニウムを作る施設を壊す、それも壊してなくて煙突だけだったのですが、
それで小さな取引をして段々大きな取引にもっていこうということをやったわけ
です。

 それがスモール・ディールなんですが、そういうことでずっと騙されてきたと
いうことを、実は2017年10月の国連総会で、安倍総理が演説をしました。
首脳に与えられる時間は20分なのですが、国連の演説ですから様々なテーマに
ついて話すのですが、トランプ大統領はその時、「13歳のかわいい少女が拉致
されている」ことに言及したのですが、それ以外のことも言いましたが、安倍総
理は20分全部を北朝鮮問題にしました。「安倍ドクトリン」と言われています。

 そこで、「スモール・ディールでいつも騙されてきた。だから強い圧力を背景
にして、ビッグ・ディールをするしかないんだ」ということを、1994年のい
わゆるジュネーブ合意から始まって、6者協議のこと、そしてライス・ヒルさん
がやったことを全部総理は話して、「こうやって騙されてきた。拉致を棚上げに
したのではなく、核を解決すると思ってやったが結局核開発が進んできた。失敗
したじゃないか。だからスモール・ディールはだめなんだ」という演説をしたわ
けです。

 安倍さんはこの問題については詳しいですから、トランプ大統領もその部分に
納得して、ビッグ・ディールをやろうとしたのだと思いますが、トランプ大統領
のやったことを否定することになると、首脳会談ではなく積上げ方式になる。

 積上げ方式になると「権限が与えられている部分でやりましょう」ということ
になりますから、スモール・ディールになりやすい。アメリカの国務省がスモー
ル・ディールを北朝鮮とやる場合は何を優先するか。

 「日本の問題の拉致は無視するんじゃないので次の課題にしましょう」と、最
初の小さな取引にも入れないことになりかねない。今までもずっとそうだった。
その結果、ライス・ヒルの時に煙突一つ爆破したのですが、その後も核開発を続
け、核実験が続き、大陸間弾道弾の実験もした。

 アメリカの国益に関わる問題でも失敗したのに、もう一度そこに戻るかもしれ
ないという恐れがあります。トランプ大統領に近い人の話によると、トランプ大
統領は、「取引はするがいい取引でなければならない」と言ったそうです。その
辺を説明してください。

◆トランプ氏は、「グッド・ディール以外持ってくるな」、対中はさらに厳しく

島田 トランプ氏も北朝鮮の核問題に詳しいわけではないのですが、核問題に一
番詳しいジョン・ボルトン氏を起用したり、今は反トランプの方に行ってしまい
ましたが、ボルトンの副官的な人でフレッド・フライツ(国家安全保障会議事務
局長)という人がいました。

 トランプ氏は、「なんでもディールしていいわけではない。グッド・ディール
以外は持ってくるな」と常々言っていたということです。対中に関しては、「グ
レイト・ディール」でないとだめなんですね。北朝鮮よりはさらにきつい要求を
出していたみたいです。

◆金正恩は寧辺の核施設のみ放棄でアメリカに勝てると思い込んでいた

西岡 「グッド・ディール」という場合に、核で失敗してはだめだということな
んですね。我々は、去年の2月のハノイでの2度目の米朝首脳会談の時、実はちょっ
と心配していたんです。

 シンガポールでは何も決まっていないのに、金正恩が「核はやめる」と言った
だけで、具体的なことは何も決まっていなかったのですが、「金正恩はいい奴だ」
と言い始めたので。但し制裁は絶対に緩めなかったのでそこは評価できた。

 金正恩は、「シンガポールでトランプを騙せた。勝利だ」と言って、「ハノイ
に行って帰ってきたら制裁は緩んで経済がよくなる。核を持ったのでアメリカが
白旗を上げたのだ」みたいな政治学習をして、出発の時から北朝鮮でテレビで大
々的に報道して、列車ででかけたわけです。勝つと思っていたわけです。

 玄松月(ヒョン・ソンウォル)という、いつも金正恩が出てくると椅子を引い
ている女性がいますが、彼女は歌手で歌劇団の団長です。彼女も一緒にハノイに
行ったのですが、それは、「ハノイで金正恩がアメリカの大統領に会って勝利し
た」というオペラを作ることになっていて、そのために一緒に行ったというので
す。それくらい勝ったと思っていたのです。

 ところがトランプ大統領は「拉致」を出して、そして何よりも2日目の交渉で、
金正恩は、寧辺のプルトニウムを作る原子炉、これは1986年に臨界している
古いもので、今北朝鮮の核の主流はプルトニウムではなく濃縮ウラニウムになっ
ていて、工場が地下にいくつかあります。

 それを隠しておいて、「寧辺のプルトニウムを作る原子炉だけを廃棄します」
と彼は言ったわけです。煙突を爆破したものです。「その代わり制裁はほとんど
全部解除してくれ」と。トランプは騙されるだろうと彼は思っていたわけです。

 トランプ大統領はにやっと笑って、「もっとあるでしょう」と。その「もっと」
ですが、この間「ワシントン・ポスト」の記者が、「5つある」と言ったと本に
書きました。5つが正しいかどうか分かりませんが、「もっとあるでしょう」と
言った。それは濃縮ウラニウム工場です。

 濃縮ウラニウムの生産には原子炉はいらない。ウラニウムを遠心分離機にかけ
てどんどん回していけば純度が上がって核爆発物質になるんです。遠心分離機の
技術は一定程度難しくて、北朝鮮は持っていなかったのですが、パキスタンから
技術を持ってきた。原子炉と違って地下に作れます。電気さえあればいい。どこ
にあるか分からないわけです。だから金正恩は、「アメリカは分かっていないだ
ろう」と思って来たのだと思います。

 ところがトランプ大統領は、知っているとしていくつかの話をしたと思います。
金正恩は慌てて、「なぜトランプが知っているのか」と思ったわけです。そして
譲歩しなかった。第2案を金正恩は持ってきていなかった。それでトランプ大統
領は、「あなたは準備ができていませんね」と言って、昼ご飯もキャンセルして
帰っちゃった。

 「ビッグ・ディール」でトランプ大統領の所に情報が全部集まっていて、トッ
プ会談をやって、「濃縮ウラニウム施設まで廃棄させなければだめだ」と考えた。
少なくともこれ以上、(核の)数が増えることを止める。その次に、「持ってい
る核を出しなさい」となる。

 でも本当の「ビッグ・ディール」かというと、核施設全部と持っている核を全
部いっぺんに出せということですが、そこまでは無理としても、「今作っている
ものは全部止めろ。そうしない限り制裁は緩めない」、というのがトランプ大統
領のラインだったのですが、トランプさんがやったことを否定する時に、小さな
交渉の方に持っていく可能性がある。その場合にまた拉致が棚上げされてしまう
のではないかという危機感があります。

◆バイデン政権になっても今の状況が続けば日本にとって悪くない

 ただ、先ほど島田さんが言ったように、バイデン政権になったら福祉を重視す
ることになると思います。ばらまきをたくさんしますから軍事費は削られるとい
うことですが、トランプ大統領は、「北朝鮮が完全に核廃棄をしてもお金は出さ
ない」と言ったのです。

 でも北朝鮮は、核廃棄をする時に、「これまで開発してきた費用をどうしてく
れるんだ」と絶対言います。トランプ大統領は、「シンゾー(安倍晋三)が出す
と言っている」と言いました。日本と韓国に出させるということだと思います。
これは間違いない。

 そして安倍総理は、「拉致問題が解決すれば明るい未来がある」と、その頃言
い始めたのです。それは、韓国にしたように、核問題と拉致問題、国際社会が制
裁をかけるようなことを全部解決した後、国交正常化をして経済協力すると言い
続けています。

 それは多分、バイデン政権になっても、アメリカがお金を出して北朝鮮の核を
やめさせるわけではない。スモール・ディールの場合でも絶対北朝鮮はお金を求
めてきますから、スモール・ディールをして、お金を出して、核開発が進んでし
まうことはバイデンにとって失敗ですし、トランプ側から共和党から、「結局失
敗したじゃないか」と言われますから、それなら今のように制裁をかけていて、
北朝鮮が譲歩するのを待つという今の状況が続く。今の状況が続くことは日本に
とって悪くない。

 我々にとって一番注意しなければならないのは、拉致が動かないのに制裁が緩
むことです。「先圧力、後交渉」という時に、菅総理が平壌に行く前に、一部で
も制裁が緩むような状況になれば、向こうは一息ついてしまって、こちらに寄っ
てこなくなる。そこが勝負です。

 アメリカもそうです。トランプ共和党は負けましたが、上院では多分過半数が
維持できるでしょうし、議会もあるし世論もあります。アメリカまで届く北朝鮮
の核・ミサイルが完成直前まできたことは間違いない。その大部分の責任はオバ
マ政権の8年の時にある。

 起きてしまったことですが、もう一度バイデンになって、本当に北朝鮮がアメ
リカまで届く核・ミサイルを作ってしまったら、それはバイデンの大きなダメー
ジになりますから、そういうことをトランプあるいは共和党側は言うでしょう。

 従って安易に譲歩した時のマイナスもあるので、制裁を維持することができる
かどうかということが勝負だと思っています。

◆米国務省は交渉を長引かせ、予算増加、注目度集めを狙いがち

島田 少し付け加えると、トランプ氏の場合は金正恩とベタベタとして、「我々
は恋に落ちた」とか言っていて、そこだけ見ると、「何を考えているんだ」とな
る。

西岡 ツイッターで、「板門店で会おう」と言ったりですね。

島田 ところが、こちらはいつでも席を立てるんだという姿勢を一貫させていま
す。1回目のシンガポール会談の時も、直前に北朝鮮が揺さぶりのため、ペンス
副大統領に対して暴言をはいた。そうしたらトランプが即座に、「じゃあキャン
セルだ」と言いました。そうしたら北朝鮮が慌てて、「そういわずに」とすり寄っ
てきた。

 2回目については先ほど西岡さんが言いましたが、「もうランチの予定はキャ
ンセルして帰るぞ」とやりました。そうやられているにも関わらず、3回目の板
門店で会った時には、トランプ氏が直前にツイッターで、「金正恩、お前も出て
来いよ」と呼び掛けて、金正恩がいそいそと出てきているんです。

 だからペースは常にアメリカ側が握ってやっていた。トランプ氏の場合、「批
判されたら10倍返し」というのが、彼の著書にも何度も書いてある通り彼の哲
学なのです。だからにこにこと笑っていても、相手が馬鹿にしたり、裏切るよう
な行動を取ると、豹変してぼろくそに言っていることを金正恩も分かっているか
ら、変なことはできないと。

 バイデン氏の場合、金正恩が「悪党だ」と言っている限りはいいんですが、い
ざ実務者協議ではじけた時に結局国務省にまかせると思います。国務省はとにか
く交渉を切りたくない。交渉が続けば予算も増えるし、自分たちの注目度も高まっ
て、後々高給でシンクタンクに移ることもできると考える。

 そこが北朝鮮が付け入る隙になってしまうわけで、北朝鮮は常に、「そういう
ことを言うのだったら協議を打ち切る」と。そうすると国務省は、即座に譲歩を
考えるという組織的な体質があり、とにかく交渉を切りたくない、続けたいと交
渉のための交渉に走り勝ちです。

 しかも、スーザン・ライスでは、ずるずると協議の枠を維持するためだけにア
メリカ側が譲っていくことが起こりかねない。実際通商協議が始まった時でも日
本は最高度に警戒していて、常に釘を刺しておかなければならないということで
した。

(4につづく)

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