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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

韓米軍事演習で金与正副部長が2回談話(2021/08/16)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2021.08.16)

 みなさんごきげんよう。救う会テレビ、救う会全国協議会会長西岡力です。今
日で第41回になります。令和3年8月14日に収録しました。

 今日のタイトルは、「韓米軍事演習で金与正副部長が2回談話」と題してお送
りいたします。

 動画は救う会のホームページに掲載しています。

■韓米軍事演習で金与正副部長が2回談話

◆金与正が「米韓軍事演習を中止せよ」

 最初の談話は8月1日に出たのですが、その前に7月27日に韓国の大統領府
が重大発表があると言って予告したんですね。

 何かなと思って、まさかまた南北首脳会談でもやるのかなと思ったのですね。
そうしたら、北朝鮮との直通の電話ラインが、断絶以来1年1か月ぶりに再度つ
ながったと発表しました。

 昨年6月に金与正副部長が出てきて、すべての連絡はできなくなると言って、
南北共同連絡事務所を爆破したのですが、その時以来つながったとの発表があり
ました。そして韓国では、「北朝鮮が文政権に対して関心を向けてきた」、「南
北関係が多く改善するかもしれない」、「文在寅・金正恩会談もありえるんじゃ
ないか」、との予測がたくさん出たんですね。

 そうしたら、8月1日、金与正副部長が談話を発表しました。「南北連絡ライン
復旧に大きな期待をかけるな」と水をかけたのですね。そして、「これを巡って
今、南朝鮮の内外では自分なりにその意味を拡大して解釈しており、はては北南
首脳会談問題まで世論化しているが、私は時期尚早の軽率な判断だと思う」と。

 そしてですね、この談話の本題は、8月に予定されていた米韓軍事演習だった
わけです。そして、「米韓軍事演習を強行するなら、南北関係は悪化する」と脅
迫しました。「演習の規模縮小ではだめだ、中止せよ」と圧迫してきたわけです。

 その中には、「南北首脳が信頼回復の歩みを再び踏み出すことを願っている」
と、「南北首脳」と言って南の文大統領を持ち上げた部分もありました。「私は
南朝鮮軍と米軍との合同軍事演習が予定通りに強行されうるという気に障ること
を引き続き聞いている。われわれは、合同軍事演習の規模や形式について論じた
ことがない」。つまり縮小したり、形式を変えてもだめなんだ、と。

 そして、「私は確かに、信頼回復の歩みを再び踏み出すことを願う」と、北の
首脳も南の首脳も信頼回復の歩みを再び踏み出すことを願っていると一応持ち上
げています。しかし、「北南首脳の意志を甚だしく毀損させ、北南関係の前途を
いっそう曇らす好ましくない前奏曲になると思う。わが政府と軍隊は、南朝鮮側
が8月に再び敵対的な戦争演習を繰り広げるか、でなければ大勇断を下すかにつ
いて鋭く注視するであろう。希望か、絶望か。選択をわれわれはしない」と言っ
て、「敵対的な戦争演習を繰り広げることはできないとの大英断を下して止めろ」
と言ったのです。

◆政府・与党、74人の与党議員も軍事演習反対

 そうしたらですね、韓国の政府と与党で突然、演習中止の声が多数あがりまし
た。韓国政府の統一部の報道官は、「米韓合同軍事演習は、どのような場合であっ
ても朝鮮半島の軍事的緊張を引き起こすきっかけとなってはならないという立場
だ」と。

 統一部高位関係者は、「もしかしたら北朝鮮に近いと言われてる李仁栄 (イ・
イニョン)長官かもしれませんか、統一部高位関係者が、「南北の連絡チャンネ
ルの復旧がなされ、新型コロナの拡散問題と 米韓協力を通じた対北関与を本格
化させる時点だという理由から、延期が望ましい」と。

「米韓協力を通じた対北関与を本格化させる」ことを統一部は今一生懸命やって
いるんですが、アメリカに対して、「制裁はあるけれども例外として北朝鮮に支
援をさせてくれ」という交渉をしているわけです。そういう中で、「演習は延期
が望ましい」とはっきり言っちゃった。

 あるいは、朴智元(パク・チウォン)国情院長は国会の秘密会議で、「「対話
とこのような流れが続いていくことで 『北朝鮮の非核化』という大きな目標の
ためには、米韓演習に柔軟に対応することも検討する必要がある」

 国情院長というのは北朝鮮の内部を分析する立場であって、政策を議論する立
場じゃないんですね。その人が、「米韓演習に柔軟に対応する」というのは、つ
まり「北の言っている通り中止しろ」と言うことを言ったわけです。国情院長が
言うことではないとの批判がありました。

 また与党の中では、74人の与党議員、あるいは与党系を併せてですが、演習
反対の立場を公表しました。与党・共に民主党議員(61人)や極左野党・正義
党(6人)、その他不正不動産取引を理由に与党を離れて無所属になった元挺対
協代表の尹美香(ユン・ミヒャン)議員ら74人が、「合同演習はその規模と関
係なく、北朝鮮を対話と交渉の場に呼ぶ上で難関となるのは認めざるを得ない」
という声明を出しました。まさに先程の金与正声明と同じことを言ったわけです。

◆結果は軍事演習大幅縮小

 文在寅大統領は国防大臣に、「いくつかの要素を勘案しながら、米国と慎重に
協議せよ」と指示した。結果として、既に(演習は)始まっています。10日か
ら始まったのですが、大幅に規模を縮小して実施された。既にトランプ政権時代
に、部隊を動かさないコンピュータ上での演習に大幅縮小されていたのですが、
その演習の規模をより縮小しました。

 10日から13日まで、事前演習として局地的挑発やテロを想定した参謀訓練
が行われ、16日から26日まで本演習である戦争を想定した連合指揮所訓練を
防御と反撃の2部に分かれて行いました。

 通常なら陸海空軍と海兵隊から400人から500人の兵力が合同参謀本部に
派遣されてこの演習が行われるのですが、今回は30人だけになった。今年3月
には100名だけで、それではあまりにも少ないというので、今回は当初200
名に増員する予定だったが、むしろ30人に減らされた。

 400人から500人と30人を見ると、「約12分の1の切れ端演習でどう
して北の脅威に立ち向かえというのか」という声が韓国軍の間で出ていると、韓
国の新聞は報道していました。

 まあアメリカの顔を見なくちゃいけない。そして北朝鮮のことも考えなくては
いけないということで、言わせてみると「苦渋の決断」を文政権はしたわけです
けれども、しかしアメリカの立場からすると、こういうふうに言われているんで
すね。「演習をしない同盟関係は楽器を持っていないオーケストラと同じだ」と。

 米軍は演習なしで戦闘行動を行わないといわれている。米韓軍事同盟条約が、
金与正副部長によって大幅に縮小された。また韓国の政府、与党からも「止めろ」
という声が出た。大変な危機に直面していると思います。

 そういう意味で、金与正副部長の1回目の談話は効果を発揮したのですが、し
かしそれではまずい。

◆金与正が「委任により」と2回目の談話で「在韓米軍は撤退せよ」

 8月10日に金与正が2回目の談話を出しました。そして次の日、11日に金
英哲(キム・ヨンチョル)統一戦線部長が談話を出しました。2回目の談話では、
「委任により」とありました。

 副部長というのはかなり低い立場ですが、金英哲統一戦線部長は部長で政治局
委員です。金与正は政治局員でも政治局員候補でもないんですが、しかし「委任
により」と書いてある。最高指導者が私に対南関係、対米関係、対日関係の権限
を委任しているということです。

 去年6月にも、この「委任により」と書いていますが、もう一度出てきた。拉
致の立場からすると、金与正が権限を持っているということが明らかになりまし
た。それが明らかになったという点でも、2回目の「委任により」と書かれた談
話は注目です。そしてこの談話で、「在韓米軍は撤退せよ」と言いました。

 そして金与正は、「朝鮮半島に平和が訪れるには、米国が南朝鮮に展開した侵
略武力と戦争装備を撤去しなければならない。米軍が南朝鮮に駐屯する限り、朝
鮮半島情勢を周期的に悪化させる禍根は絶対に除去されないであろう」と、公然
と在韓米軍撤退を求めた。駐屯していたらだめだ、撤退させろと。

◆米軍は演習なしに戦闘しない、韓米同盟は重大な危機に直面

 先程言いましたが、韓国の文在寅政権は、北朝鮮という敵に対する軍事演習を
北朝鮮のトップの妹の一言で大幅縮小しました。それでも北朝鮮は演習実施を非
難し、米軍撤退を公然と求めました。

 米軍は演習なしでは戦闘行動を行わないと言われています。同盟条約があって
も米韓演習がこのように縮小され続ければ、米軍は韓国で戦闘ができなくなる。
韓米同盟は重大な危機に直面しています。

◆北朝鮮は今六重苦

 一方もう一つ、拉致の観点で注目されるのは、金与正談話に、バイデン政権か
らの米朝対話メッセージを否定する一節があったことです。「侵略戦争演習をあ
くまでも強行した米国こそ、地域の平和と安定を破壊する張本人であり、現米行
政府が言い立てる『外交的関与』と『前提条件なしの対話』というものは自分ら
の侵略的本心を覆い隠すための偽善にすぎない」。

 安倍政権が言っていた「前提条件なしの対話」を今、バイデン政権も言ってい
ます。それに対して、侵略軍事演習をやったのだから、対話のメッセージは、
「侵略的本心を覆い隠すための偽善」だと断定しました。それも、「委任」によっ
て出されたもので、最高指導者から対米、対日交渉をまかされているということ
です。

 この救う会テレビで何回も言ってきましたけれど、もう北朝鮮は経済制裁と、
そして武漢発のコロナウイルスと、それから去年そして今年も北朝鮮でひどい雨
が降っています。その天災と中朝関係の悪化、そして金正恩氏の健康悪化、そし
て人民と幹部たちの間での金正恩体制への不満の六重苦で追い込まれています。

◆菅政権を対話の相手にする可能性が高まった

 追い込まれた金正恩の残された選択肢はバイデン政権か菅政権との対話だが、
対米を否定したので、菅政権を対話の相手に選ぶ可能性がより高まった。その中
で対話の相手としてバイデン政権か菅政権を選ぶ可能性が高まっていたのですが、
ここで明確にバイデン政権を否定した。ということは菅政権を対話の相手にする
可能性が高まったと言えると私は見ています。

 但し、様々な情報を総合すると、今北朝鮮の金正恩政権は日本の政局を見て、
菅政権の政治的安定度を観察している。日朝が動くとすれば予定されている自民
党総裁選と総選挙の後になるでしょう。順番はどちらが先になるか分かりません
が。

 この2つが少なくとも10月までにあるだろうと言われています。その後にな
るのではないか。菅政権は真剣に拉致問題解決を考えて様々なことをやってきま
した。私も聞いていませんが、様々なメッセージを水面下でも北朝鮮に送ってい
るというふうに私は横から見ていて思っています。

 そして北朝鮮の側は、そのメッセージを否定していない。ただ観察していると
いう状況です。拉致問題は国際政治の問題でもあり、そして日本の政局にも関係
する。もちろん(拉致は)許せない犯罪です。

 様々な要素がたくさん絡まってきている中ではあります。細い道ではあります
が、圧力をかけてそしてまず全被害者を取り戻す。全ての拉致被害者の即時一括
帰国を実現する。先圧力、後交渉の中に入ったと思っていますので、これからも
息を飲むように観察し、そして私たちでできることを続けていきたいと思ってい
ます。

 以上救う会テレビ第41回、「韓米軍事演習で金与正副部長が2回談話」と題
してお送りしました。

 ありがとうございました。

以上



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