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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

拉致問題の最新情勢と新総理に望むこと4(2021/10/15)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2021.10.15)

■拉致問題の最新情勢と新総理に望むこと4

◆中国から輸入できずまともな紙幣も作れない

 最近の話題ですが、(西岡会長のパソコンを見せながら)ここに「5000」
という数字が書いてありますね。これは9月から北朝鮮で流通し始めた「臨時通
貨」です。朝鮮語でトンピョです。ペラペラの紙です。韓国と日本の一部メディ
アは、過去に10数年前に外貨と交換できる通貨があったので、これがまた発行
されたと書いていますが、それは間違いです。

 内部文書を入手したのですが、それによると北朝鮮の国内で内貨が足りなくなっ
て、事業所が困っているようです。それで発行したと書いています。紙幣を刷れ
ばいいわけですが、「国産の紙を使って国産の材料で刷ったので紙の質が悪くて
使うのに不便だけれども、愛国心を持って大切に扱え。いつもカバンに入れて運
び、汚さないようにしなさい」と書いてあります。すぐ汚れてしまうような臨時
通貨を発行せざるを得なかったのです。

 なぜかというと、中国から紙幣用の紙とインクが輸入できなくなったからです。
外貨が枯渇し始め、紙幣用の紙は高いですからそれが買えなくなった。また、マ
スコミは「去年2月から中朝国境が閉まった」と書いていますが、正確に言うと、
2月から9月までの間は、人の出入りは止めたけど、中国から物は輸入していま
した。去年の10月から中国からの物の輸入も止めたのです。

 今年になっても肥料もほぼ輸入していません。だから今年は不作が頻発するわ
けですが、それで紙も入ってこなくなった。戦争が起きているわけでもないのに、
国内で中央銀行が紙幣を刷れなくなって、ペラペラの紙の臨時通貨を発行した。

 偽札を作りやすいわけです。コンピュータでスキャンすれば。内部資料による
と、「偽札を作るから、ここに透かしが入っているからよく見るように」、「偽
札を発見したら通報するように」と書いてあるのです。ペラペラだから、1対1
で交換してくれるか心配でなかなか市場の商人も受け取らなかったのですが、
「必ず1対1で交換する。破れたらここに持ってきなさい」と書いてある。そし
て実際に偽トンピョが出回っているそうです。

 一国の中央銀行が自分の国の紙幣を刷れなくなっているのです。そこまで制裁
が効いているわけです。中朝国境の貿易を止めているのは自分で自己規制してい
る部分もありますが、とにかく苦しいわけです。

 このトンピョを誰に、どうやって流通させるのかと聞いたら、「事業所の中で
紙幣がなくて回っていけなくなった所に渡したりしている」ということです。あ
と、「最貧困層で、もう飢え死にしそうな家庭に、ただで10万ウォンずつわた
している」と。コロナ心理みたいなものです。

 それが普通の紙幣ではなくペラペラの紙なものですから、市場の商人はなかな
か受け取ってくれないのですが、受け取らないと保衛部に訴えますので、今は一
定程度流通しているらしいです。だから人民のことを少しは心配しているのだな
と思いましたが、ペラペラの紙で、すぐ偽札が作れるようなものしか作れなくなっ
ている。

 それなのに、どうしても分からないのですが、中朝国境を開かないんです。北
京に日本の特派員がいますから、丹東まで行って、「開く」という話があるとい
うニュースがかなり出ています。

 しかし、今も動いていない。船で一定程度貿易はしていますが、中国と陸続き
で鉄道と道路があるのにそちらは閉まったままです。そして紙幣を刷る紙さえ輸
入しないのです。

◆「戦争備蓄米」はほとんど兵士が食べてしまった

 今飢えているのは特に軍人、兵士です。しかし、兵士を栄養失調にさせると、
中隊長に責任を取らせるということもあるので、夜になると、「お腹がすいてい
るだろう。自分のことは自分で解決しろ」と言う。すると、兵士が出て行って強
盗をする。

 6月に党の中央委員会が開かれ、その議題の一つが、「緊迫する食糧事情の解
決について」で、食糧が不足していることを議題で認めたのです。「労働新聞」
はその議題を正しく伝えなかったのですが、後で入手できたテレビの画像で分か
りました。

 そこで金正恩が特別命令を出しました。金正恩が特別命令書を持ってにこにこ
しており、みんなが拍手している写真や映像が出たのですが、それで「食糧問題
を解決する」となったのです。

 中身は発表されませんでしたが、内部情報によると、「2号倉庫」というのが
あるんですね。「2号倉庫」は戦争になった時に人民に食べさせる食糧を備蓄す
る倉庫です。それを放出する。去年もしたし、数年前も放出しました。それだけ
ではなく、軍部隊が持っている「戦争備蓄米」も放出する、と6月に決められま
した。

 ところが6月の終わりに、拡大政治局会議が開かれて、金正恩が怒った顔をし
て演説をした。「国家の重大事件が起きた」と言って、軍の幹部が降格されたの
です。

「国家の重大事件」とは何なのか。コロナが貿易か何かではやってしまったこと
なのかと色々な推測が飛んだのですが、軍用米の倉庫を開けてみたら、ある筈の
米がなかった。食べていたのです。「戦争備蓄米」は金正恩の決済なしには絶対
食べてはいけないのです。ところが飢えているから一部食べてしまった。

 それが発覚すると大変なことになるので、軍の最高幹部の李炳哲(リ・ビョン
チョル)と、朴正天(パク・ジョンチョン)という二人の元帥がいたのですが、
それが自分たちの持っている商社を使って、中国から米を密輸しようとした。

 それが発覚して、「なぜ中国から物を入れるのだ。中国のものは一切入れるな
と言ったじゃないか」と激怒されたのです。李炳哲は軍籍から外され、政治局常
務委員だったのが政治局員でも広報員でもなく、どこかにいなくなってしまった。

 朴正天は元帥から次帥に降格しました。しかし今は、党の政治局常務委員に上
がっています。そういうことがありました。

 その背景には、軍用米さえも手を付けるくらいの厳しい状況があるということ
です。特に兵士たちが飢えている。また降格されたことで軍の中が動揺したそう
です。「二人の元帥は俺たちのためにやったのだ」、「反乱を起こすような政治
犯ではない」、「それなのに処分するのか」という声があったそうです。それで
粛清にはならず、一人は一度降格させたが、また上げたということだそうです。

 拡大政治局会議で、金正恩は怒って、「国家の重大事件が起きた」と言ったの
ですが、最後に組織問題で手を挙げる場面がありました。ところが二人の元帥は
手を挙げなかった。それがテレビの映像に出ています。自分のことの解任決議案
だから手を上げられなかったようです。

 それから一人の政治局員が組織問題になったら空席になった。連れていかれた。
張成沢(チャン・ソンテク)みたいに、その場で逮捕された。そういうことがあ
りました。

◆軍人と党の幹部と平壌市民が飢えている

 これも基本的に食糧難です。外貨がなくて肥料が買えない。中朝国境が閉じら
れていて買えないということが起きている。

 平壌から外交官がどんどん逃げていますよね。その理由はですね、ロシア人と
か東ヨーロッパの人たちは皆パンを食べるのですが、小麦がないからです。北朝
鮮は米とトウモロコシは不足ながらある程度あるのですが、小麦粉がない。

 中国から輸入してきたわけです。あるいは食用油。物がなくて高い上に、高い
お金を出しても外貨ショップにもない。そこで自分たちでパンを焼いて食べてい
たのですが、小麦粉が買えなくなって外交官が逃げ出した。

 90年代後半の、「苦難の行軍」の時期、この言葉は金日成が日本と戦った時
に、日本軍を避けて逃げてきたことについて「苦難の行軍」という言葉を使うの
ですが、それが90年代後半に起きた。その時2,000万人の人口の内300
万人死んだのです。

 それと同じことが起きるということで、金正恩が「苦難の行軍」という言葉を
今年4月から使っています。今回の「苦難の行軍」が前回と違うのは、庶民がそ
れほどばたばたと死んではいない。

 90年代後半では、配給を待っていた300万人が死んだのです。主食は配給
だったのです。それまでは量は少ないし、質が悪くなったけど、飢え死にはしな
かったのです。

 ところが95年以降、配給がほとんど止まって飢え死にが出た。そしてその後
も配給は復活していないのです。それでも生き残っているのはみんな闇市で食べ
ているからです。みんな商売などをやって食べてきたのです。それができる人だ
けが生き残ったのです。

 ところが、90年代の後半に配給が止まった時も、配給があったのは、軍人と
党の幹部と平壌市民でした。今回はその軍人と党の幹部と平壌市民が飢えている
のです。もちろん庶民も中国との貿易が途絶えたので苦しいのですが、庶民は商
売をしてなんとか食べている。食べられなくなったら山に入って焼き畑をやって
いる。

◆治安機関の人間が人民に殺される

 拉致被害者はどうなのかとよく聞かれるのですが、今のことは分からないので
すが、「90年代の後半に300万人が死んだ時食糧事情はどうでしたか」とわ
たしが蓮池薫さんに聞いたことがあります。そしたら、ちゃんと食べていました。

 拉致被害者は別の配給体系にあるのです。肉も配給がありました。

 但し、「一番辛かったのは」と彼が言ったのは、「自分たちは特別な所に住ん
でいたので石油ボイラーで暖房していた」と。北朝鮮で石油を燃やすのはぜいた
くですね。石油ボイラーは電気で動かすのです。その電機が止まってしまった。
停電です。「零下20度という時に、オンドルは冷えてほんとうに寒い。家中の
ふとんを持ってきて、着れる服を全部着てがたがた震えていました」と言ってい
ました。

 拉致被害者は特別に管理されていますから、特に日本との交渉で使おうと今思っ
ていますので、物質的なところでの心配はないかもしれませんけれども、もちろ
ん精神的なことは大変だと思います。

 一番上の方はそうですけれど、今、平壌の200万人と、軍人たちが飢えていま
す。地方では、金正恩の指令が出ても言うことを聞かなくなっている。食べるも
のがないのですからね。市場の商人たちは、警察が来て、「これは違反だ」と言
うと、警察も食べないわけにはいかないですから時々没収したりするんですが、
そういうことをすると恨まれて、夜一人で歩いている警察官が闇討ちにあって殺
されるということが結構頻繁に起きています。

 治安機関の人間が殺されるというようなことはちょっと考えられなかった。も
ちろん政治的なことではなくて経済的なというか個人的な恨みですけどね。政治
的な反体制活動が組織的に起きるというのは、この間平壌で大規模なビラ事件が
あったのはありましたけれども。それくらい末端で統制がきかなくなっている。

 それはある面で、核・ミサイル開発を続けて制裁を受けているから起きている
ことです。でも「自力更生で頑張る」と言って、紙が入ってこなければペラペラ
な紙で紙幣を刷るということをやっているわけです。

 もう秋の収穫の季節ですけれども、協同農場の田んぼとか、とうもろこしの畑
に軍人が来て守っているそうです。夜中に盗みに来る奴がいっぱいいる。共同農
場のまず農民たちがまず盗む。自分たちが食べるものを確保しなければいけない
から。でも、この田んぼや畑の収穫物をまず戦争備蓄米に補充しなければいけな
い。金正恩の命令で戦争備蓄米を放出していますから、最優先でこの秋の収穫か
ら補充する。そしたら自分たちの食べるものがなくなる。盗みに来るから兵士が
守っている。でも、農民も食べなくちゃいけないから兵士を買収して、「半分ず
つにしようよ」とか言って盗ったのを渡したりして食べている。そうしないと生
きていけない。

 しかし今年も中国から肥料がほとんど入ってこなかったので、収穫が悪いわけ
です。悪いものを分け合うわけですから、どこかにしわ寄せがいく。それでもい
まだに中朝国境が開かない。

◆しかし核・ミサイル開発はやめない

 大きく言えば、核・ミサイルをやめないで国際制裁を受けていて、そして拉致
被害者を返さないから国際社会から支援が得られないということです。中国が支
援しているのではないかとよく聞かれますけれども、正確な理由はよくわからな
いのですが、とにかく中朝関係が今悪くて、金正恩が中国を警戒して、中国から
人はもちろん物も入れていない。ただミサイルを発射していますから、あのお金
はどこから出ているんだろうということですけれども、ハッキングをずいぶんやっ
ている。仮想通貨とかのハッキングをずいぶんやっている。中国の銀行の仮想通
貨を襲ったというので中朝関係が悪くなっているということもある。

 ただ少し、中朝関係で新しいことは、最近中国が石炭不足なんですね。火力発
電がうまく回らなくなっていて、石炭不足が起きているそうです。中国は、本当
は北朝鮮から石炭を買ってはいけないわけです。国連制裁違反です。しかし今、
船で北朝鮮から石炭が大連や青島などに運ばれている。密輸が起きている。中国
はそれを取り締まりしていない。

 だから一定程度北朝鮮に外貨が入るかもしれないということはあります。もち
ろんアメリカの衛星で見ていて、瀬取りなどを国際的に監視しているわけですけ
れども、夜中にやっているそうです。その利権を金与正と玄松月が争っていると
いう話まである。

 一部そういうことでお金が入るとミサイル開発などに使っているわけです。で
も本当に、治安機関と軍が食べられなくなるというのは、国家を維持するための
機能が維持できなくなるということですね。そういうことが起きているのに手を
打たないでいる。

 一番いいのは、核・ミサイルをやめて中国式の改革開放をやることですけれど、
それをやらないわけです。やらないと決めているわけですね、金正恩は。

 じゃあ、まとまったお金をどう取るかという中で日本の存在を考えるわけです。

 核をやめることと拉致被害者を返すことと、どちらが彼らにとって困難なのか
といったら、それは拉致被害者を返すことの方が容易であることは間違いありま
せん。

 逆に、何回かアメリカに行ったとき、アーミテージ元国務副長官と会うと、ア
メリカは、「核が優先だと言うけど、アメリカにとっても拉致は大切だ」と。アー
ミテージさんが言うのには、「拉致と核を比べたら拉致の方が容易なのに、拉致
被害者も返さない国が核について本当のことを言うはずないじゃないか。だから、
まずは拉致被害者を返させて本当のことを言うかどうか見ない限り、北朝鮮を信
用できないんだ。そのためにも拉致優先でいいんだ」とアーミテージさんはおっ
しゃっています。

 強い圧力がかかっていて、出口が本当にないような状況であることは間違いな
い。小泉訪朝の時と似ているような強い圧力がかかっているわけです。それが小
康状態に見えますけども、それはアメリカがアメリカまで届く核・ミサイル、つ
まり弾頭の再突入技術の検証に手を付けない限り経済制裁で締め上げるという方
針をとっている。日本もそれに賛成している。

 我々にとって幸いなことに、中朝関係もあまり良くない。中国が支援している
様子が見えない。北朝鮮が中国との交易を断っているという状況の中で日本は、
「無条件で話し合いをしましょう。支援をする準備はある。しかし全員を返しな
さい」と言ってるんです。一部の制裁を今緩める時ではなくて、この枠組みをど
うやって被害者全員救出に生かせるか知恵を絞るべき時だと思います。

 トップは代りましたけれども自民党政権であることは間違いなくて、党の中に
もこの活動をずっとやってきた人たちもいるし、今回の岸田政権ができる時は安
倍元総理の影響力もあってできたわけですから、一定の安倍さんの影響力もある
し、拉致対策本部というずっとこのことをやっているところができて15年ぐら
い経って、そこを中心にして拉致だけのことを考えた政策をやって下さっている
ということは私たちに有利なんです。

◆今は拉致対策本部もあり世論もある

 繰り返し言っていますけれども、2002年には拉致対策本部はなかった。で、
北朝鮮追い込まれた。その前、金丸訪朝の時も、さっき言った核問題で戦争直前
まで行くプロセスだった。その時も日本に北朝鮮がアプローチしてきたわけです。
そのときは拉致対策本部がなかったどころか家族会、救う会もなくて、拉致に関
する世論がなかった。今回は北朝鮮が追い込まれているという状況があって、そ
して拉致対策本部ができて15年経っていて、北朝鮮人権法もあって、我々も運
動をしているという状況になっている。日本の総力を挙げて被害者を助けるとい
う形ができているわけです。

 そこで、ほぼ初めて北朝鮮が追い込まれるという状況が、安倍政権とトランプ
政権との間での核をめぐる戦争直前までの2017年の緊張から、それが解けた
ように見えていますけれども解決はしていないわけです。制裁は効いている。つ
いに中央銀行が臨時紙幣を発行するまでになったという状況を、繰り返しになり
ますがどうやって利用するかということをぜひ岸田新政権に期待したいと思って
います。まだまだ最後の勝負の決着はついていない。

◆必ず道は開ける

 そして、さきほど拓也さんがおっしゃいましたけれども、一番苦しいのは向こ
うにいる人たちなので、私たちができないことについて一喜一憂していてもしょ
うがない。菅総理がお辞めになると聞いて私も呆然としましたけども、それは我
々にできることではないので、今こうやって新しい政権ができて、最優先で、最
重要課題として取り組むと言って下さっているわけですから、これが与えられた
条件なので、与えられた条件の中でどうやって知恵を絞って、苦しい思いをして
いる被害者のことを思って、こちらが諦めることはできない。本当にできる限り
の人知を絞って被害者を一日でも早く取り戻す。そのために今一定程度できてい
る形を崩すようなことがないように。

 繰り返し言っていますけれども、膠着状態だというけど、膠着状態の後には、
大きく言うと今まで築いてきた陣地がある。今までのやり方が失敗だから制裁を
緩めましょうという人たちは、この大きなことがわかっていない。圧力がかかっ
ている。その圧力を緩めたらお終いなので、圧力をかけるためにも努力をしてき
たのです。だから圧力を緩めない、そして首脳会談を求める、時間稼ぎの合同調
査委員会には乗らない、アメリカの理解を得るというさっき言った四つのことを、
菅政権がやってくれたことを続けてほしいと岸田政権にもお願いしたいと思って
います。そしたら必ず道は開けると私は思っています。

以上です(拍手)。




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