救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

拉致問題セミナー報告2(2021/12/15)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2021.12.15)

■拉致問題セミナー報告2

櫻井 元内閣総理大臣の安倍晋三さんがいらしてくださいました。拉致問題につ
いて、どの首相よりも本当に力を入れてくださった方だと思います。家族会の皆
さん方も心の支えにしておられます。どうぞよろしくお願いいたします(拍手)。

◆安倍元総理特別講演

安倍晋三(元内閣総理大臣)

 皆様、こんにちは。多くの皆さんにバッジを付けていただき、国民の意思を示
しておられることは極めて大事なことだと思います。警視総監が初めてバッジを
つけているということがありましたが、大石警視総監は私の秘書官でありました
(拍手)。

◆5人の帰国直後、北朝鮮の核開発が判明

 2002年に小泉総理が北朝鮮を訪問されましたが、その時金正日が対応をし
たわけです。その時拉致を認めたのですが、「5人の被害者が生存している。8
名の方は死亡している」ということでした。そして5人の被害者については、
「北朝鮮でそれぞれ生活をしている。日本にすぐ帰りたいと思っているわけでは
ない」という話でした。

 そこで外務省の担当者が、被害者の方々からお話を伺ったわけですが、当局が
言っていたこととだいたい同じことを伝えてきました。その後帰国し、その後の
経過の中において、北朝鮮が核開発をしていることが明らかになりました。

 そして、ジム・ケリー米国務次官補が訪朝し、北朝鮮側と交渉し、我々はその
報告を秘密裏に受けました。そして北朝鮮についてブリーフィングをしてくれま
した。そして、「明確な証拠を得たので対応しなければならないと考える」と米
国政府から伝えられました。

◆「被害者の子どもたちは学校があるから一緒に返せない」と北朝鮮

 そこで我々は、5人の被害者に戻ってきてもらわなければ米朝がなかなか難し
いことになりますので、総理に対し5人の方々の帰国への働きかけが始まったの
です。その中で、「お子さんたちも連れてきてもらいたい」と話をしたのですが、
北朝鮮側は、「お子さんたちは学校があるので一緒に行くことはできない」と回
答してきました。

 私は、これは嘘だと思いました。北朝鮮のような独裁国家が、国と国とのやり
とりにおいて「一時帰国」と言い、だからお子さんたちを連れていけるわけがな
いということで終わったのです。

◆「一時帰国」から帰国へ

 帰国された後は、日本に留まっていただくことを考えました。外務省は「一時
帰国」で約束をしているので帰ってもらわなければ困るという姿勢でした。子ど
もたちを人質にしているという状況がありましたので、それをどうするかという
ことでしたが、その段階で5人の方々が(日本に留まるという)決断をされ、そ
して2回目の家族の帰国が実現したのです。

◆8名の「死亡の証拠」はでたらめだった

 しかしその後、「8名の方々は亡くなった」と言っていましたが、証拠として
出してきたものは証拠としては全くでたらめなものがたくさんありました。信用
するわけにはいかない。当然、生存していることを前提に交渉することになり、
これは当たり前のことだと思います。政府は今、これを前提にして交渉していま
す。残念ながら今に至るも北朝鮮が態度を変えていません。

 私が総理の時、様々な角度から交渉しましたが結果を出すことができなかった
ことは大変申し訳ないと思っています。トランプ大統領は拉致問題について非常
に熱心に耳を傾けていただきました。これはご承知のとおりです。皆様(家族会)
との面会も長い時間をとってくれました。

◆アメリカが「核・ミサイル問題」重視から拉致も重視へ

 今までのアメリカはプライオリティとして、どうしても核・ミサイル問題に大
きな比重を置いていて、拉致問題は安全保障の問題とは違うというとらえ方が多
かったのですが、例えば米朝の問題を解決していく上において、まずは核・ミサ
イルです。もちろん日本人拉致問題も理解してくれています。日本を支持はして
くれています。3つを一緒に解決するということについては、どちらかと言えば
慎重な姿勢でした。

 ただトランプ大統領は、米朝首脳会談において、私の考えを伝え、我々が何を
要望しているかを北朝鮮に伝え、その要望を解決するようにと要望を伝えてくれ
ました。つまり、どう言ったかと言えば、米国と北朝鮮との問題を解決する上に
おいては核とミサイルの問題の解決だけでは米朝の問題は解決しない。拉致問題
も解決しなければならないんだということが明確に位置付けられたと言ってもい
いと思います。

◆軍事的な圧力が効いて米朝首脳会談へ

 二度に渡るハノイとシンガポールの首脳会談で、明確にそのこと言いました。
残念ながら進展がなかったのはご承知の通りです。それまでは軍事的な圧力もか
けてきたわけですが、それがけっこう効いたのが事実だと思います。効いたから
こそ彼らは米朝会談という新しい展開に持ち込んだと思います。

◆千回以上の首脳会談ですべて「拉致」に言及

 今後どういう道があるかといえば、これまでの方針通り圧力をかけていく。こ
の圧力は20年前、30年前と比べれば、格段に高いレベルの圧力になっていま
す。例えば石油等燃料の輸入にも制裁をかけています。彼らは瀬取り等で石油を
手に入れようとしていますが、瀬取り対策では日本がリーダーシップを取る形で、
自衛官が出て行って対応しています。日本だけじゃなく、英国、カナダ、米国等
多くの国々が協力して対応しています。

 かつてであれば、こういう軍事的なオペレーションは、海外が先行して日本は
それに付いていく形でしたが、これについては日本が先導して各国もやってくれ
ています。

 拉致問題については、私も総理大臣時代に千回を超える首脳会談を行いました
が、すべて拉致問題について言っており、日本の立場に理解と支持を求めてきま
した。今や、すべての国で共有することができていると思います。そこで世界各
国と交渉しながら圧力を高めているわけです。そしてこの拉致問題は解決しなか
ればならないという状況を作っています。

◆久米裕さん拉致の時逮捕、起訴していれば

 この拉致問題に関する姿勢は、我々はもっともっと早くから、正面から向き合
うできでした。今の姿勢と同じようにです。反省点はたくさんあります。横田早
紀江さんもお見えですが、1977年11月にめぐみさんが拉致されました。そ
の年の9月にも久米裕さんが拉致されました。警察はある意味で実行犯等も分かっ
ていたのですが、残念ながら対応をしなかった。

 もし久米さん拉致の時点で、しっかりと逮捕、起訴していれば、11月以降の
様々な拉致が行われたかどうか。残念ながらつけこまれてしまったのかもしれま
せん。

◆生存者についての情報収集が大事

 そこで今後日本としては、日米でこの問題を共有しながら対応する。そして生
存者についての様々な情報収集に力を入れなければならないと思います。この情
報収集は難しく、特に北朝鮮のような国では特に難しく、ガセネタのようなもの
をつかんでしまうこともありますが、そういうものも含めてより広く情報を集め
る努力をこれからも続けていかなけらばならないと思います。

◆「日本は絶対にあきらめない」という意思を明確に示す

 そして大切なことは、日本は絶対にあきらめないという意思を明確に示してい
くことが大変重要だと思います。残念ながら2002年から長い時間が経過しま
した。その中で、この問題が風化していく、日本人がだんだん興味を失っていく
ことを彼らは待っているわけです。そして日本が態度を変えてくるかもしれない。
国際社会もこの問題を横において交渉できるかもしれないという希望を持ってい
るわけですから、そういう希望は持たせないことです。

 この問題が解決しなければ、北朝鮮と日本との関係だけではなく、北朝鮮と国
際社会の問題も解決しないようにするよう、明確に示していくことが私は重要だ
と思います。

 話せないこともありますが、向こうは色々な変化球を投げてきます。それに惑
わされてはなりません。世論工作はまさに分断です。例えば家族会・救う会と政
府との分断をはかるとか、あるいは国民世論の分断をはかる等、色々な手を使っ
てきます。これからも使うかもしれません。ですから少なくとも政府と家族会・
救う会の皆さんとは密接に連携しながら被害者救出をめざすことが大切です。

 政府が何をやっているかをすべてお話しすることはできないのですが、なるべ
く報告していくことが大切だと思います。私が総理の時は、少人数の方に絞る形
で何をやっているかについてお話しさせていただきました。そういう分断工作に
はまらないように丁寧な努力を続けていくことが大切だと思います。

◆分断工作を何度もしかける北朝鮮

 もう一つは、分断工作で彼らがこれまで何回も使ってきた手があります。「8
名はすでに死んでいる」ということで、盛んにそれを流しながら、この問題で追
及しても無理なんだよと。それを忘れて日朝の国交回復をやらなければいけない、
と。これに惑わされてはならないと思います。

 それは2002年以来、ずっと続いていることで、我々の大きな反省点として
は、平壌で「8名の方が亡くなっている」と聞いて大変なショックを受けたこと
があります。普通はこういう交渉では事前に知らせることですが、行って現場で
知らせるというのは普通ないのです。

 私は正直言って、これをどう判断するべきかを思いました。曽我さんの存在は
誰も知らなかったわけですし。そういう意味では準備が十分できていなかったと
いうことです。

 そして日本に帰ってきて、皆様とお会いした時に、「確証は取っているんです
か」という質問に、「それはありません」とお答えしました。そして彼らが出し
てきた証拠がでたらめでしたし。だから我々はなんとか生存者の情報を取らなけ
ればならないわけです。

 大切なことは、政府も家族会も、そし国民も一体となって、「被害者を返せ!」
と強く言い続けることで、最も大事なことだと思います。

◆岸田総理もいい対応をしてくれると確信

 岸田総理も、安倍政権において外務大臣を4年以上やりましたので、北朝鮮と
どういう交渉をしたかはよく知っています。これまでずっとストックホルム合意
はだめだと、岸田総理は言っています。その時どういう対応をしてきたかも彼は
知っています。アメリカとも連携していい対応をしてくれると確信しています。

◆バイデン政権高官がブルーリボンを付けて

 いよいよ、みんなでブルーリボンを付ける週間がスタートしました。なるべく
多くの方にブルーリボンを付けていただき、国民の意思を示していただければと
思っています。

 米国もバイデン政権に代わったわけですが、ブリンケン国務長官も、サリバン
大統領補佐官も、家族会と面会の時ブルーリボンバッジを付けていただき、意思
を強く示していただきました。この点はご安心いただきたいと思います。

 今日はこういう形で集会がもたれ、改めて拉致問題とは何なのかということが
しっかり再確認できたことは本当によかったと思います。

◆飛行機ハイジャックにおける日独の対応

 1977年の話になりますが、この年の9月にダッカで日航機がテロリストに
ハイジャックされました。その時、収監されている仲間を釈放する要求がなされ
ました。当時の日本政府は、福田総理が「人名は地球より重い」と言って解放す
る取引きに応じました。これは世界中から非難なさました。またその年の11月
に同じことが起こり、西ドイツのルフトハンザ機がハイジャックされました。そ
れに対して西ドイツは特殊部隊を送り込んで、犯人を射殺して人質を解放しまし
た。

 両国とも敗戦国ですが、その対応が異なり、世界は西ドイツを称賛し、日本を
非難しました。非難をするのは簡単ですが、あの時の日本に他に道があったか。
警察力を行使、あるいは軍事力を行使して奪還するための法律も整備されていま
せんでしたし、実行部隊もなかった。「人名は地球より重い」と言って、要求を
のむしかなかったのです。

 そして両国の違いが鮮明になりました。西ドイツは法律を変え、国軍も作りま
した。当時は米ソ対立があり、強い必要性がありました。日本は脅威に気づかな
い日々を送ってきたため、そういう結果につながったと思います。北朝鮮はこの
時の日本の対応を見ていたのかもしれないと思います。

 我々は決して日本人に手を出させない、そういう国になっていかなければなら
ないと思っています。今日本もかなり変わりつつあります。しかし、拉致問題に
は責任をもって取り組んでいきたいと思います。これからも一国会議員として努
力していきたいと思います(拍手)。

松本 孟(松本京子さん兄)

 安倍総理に質問があります。5名の方がお帰りになった時に、「一時帰国」で
したが、これは今はないんですか。

◆国が責任を持って「一時帰国」から帰国へ

安倍総理 これは日本で大変な議論になったのですが、5名の方々は人間ですか
ら、物じゃないのですから、日本に来たらあとは本人の意思です。日本人ですか
ら。そして5名の方々を守るのが国の責任です。

 外務省の方が5人に聞いた時、「北朝鮮に帰りたい」と言っています。それは
本人の意思ではないのです。マスコミの方がおられるので詳しくは言えませんが、
帰ってきた5名の方々が北朝鮮の当局とどういうやり取りをしたかということも
我々は知っていましたが、北朝鮮の意思に逆らって物事を言える立場ではなかっ
たのです。

 そして我々が判断したのは5人の人たちが「残りたい」と言ったからではなく、
国の判断として残ってもらうことにしました。そうしないとお子さんたちに被害
が及ぶのではないかと考えたからです。「一時帰国」の約束だからとして本人た
ちが北朝鮮に行っていたら、二度と日本の土は踏めなかっただろうと思います。

 5人の方が、「残る」という判断をされた以上、あとは国が責任を持って皆さ
んに残っていただくという判断をしたわけです。これは約束をたがえたというこ
とではなく、もともと拉致をされた方々の希望で「一時帰国」だったということ
です。しかし実際は全然違ったわけです。

 あの時は一時的ですが、私も、「約束を破って5人を返さないのはおかしいじゃ
ないか」とマスコミから非難をされましたよ。

櫻井 総理どうもありがとうございました(拍手)。今の安倍総理のお話の中で、
いくつか非常に重要で新しい情報があったと思います。それは後で西岡さんたち
を中心に分析をしていただき、皆様方と共有したいと思います。

(3につづく)




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