拉致問題セミナー報告4(2021/12/20)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2021.12.20-3)
■拉致問題セミナー報告4
■パネルディスカッション
櫻井よしこ(コーディネーター、ジャーナリスト)
これから北朝鮮にどのように対峙していくか、そして国際社会の連携をどう進
めるか、そして何よりも日本ができることを中心に考えていきたいと思います。
まず拓也さんから。いや、哲也さんでした(笑)。お姉さんのめぐみさんを初め、
日本人の多くが拉致されたままになっていて、特定失踪者を含めるとどれだけの
数になるか分からない状況がずっと続いています。私たちは毎年このような会議
をして、「全員一括で取り戻そう」と行ってきました。これから具体的に、さら
に何を強めていったらいいのか、どのようなお気持ちでしょうか。
◆主権侵害、人権蹂躙に怒りを
横田哲也(横田めぐみさん弟、家族会事務局次長)
皆様、こんにちは(拍手)。名前はよく間違われ、母も時に間違えますのでお
気になさらないように(笑)。
昨年もこのセミナーに参加させていただきましたが、この1年何の進展もない
ので、私たち家族というより、北朝鮮にいる人たちに申し訳ないと思っています。
街を歩けばクリスマスモードで、きらびやかなイルミネーションもあり私たちの
心は踊るのですが、その瞬間に、「私の姉は今何をやっているのだろう」と思っ
てしまいます。
もちろん姉だけではなく、多くの日本人拉致被害者は、楽しさとか自由な時間
があるのだろうかということをいつも感じており、おそらくそれがないと思うと、
自分たちが自由にのんきに過ごしていいのだろうかと思います。
今日このセミナーに各党の方々や各地から報告をしてくださいましたが、もち
ろん全国で救う会の方がサポートしてくださっています。それを見てマスコミの
方々が注目してくださることが大事なことだと思います。感謝したいと思います。
国だけが動けばいいのではなく、民間だけが動けばいいというものでもなく、
マスコミの皆様も大きな力を持っていますので、是非このセミナーを取り上げて
いただきたいのと、北朝鮮人権週間について是非社説等で、拉致問題がなぜ重要
なのか、国益とは何なのか、主権とは何なのかを取り上げていただきたき、国民
に周知をはかっていただきたいと思います。
今日、全閣僚がブルーリボンバッジを付けてくださったことは大変嬉しいので
すが、全国会議員にも付けていただきたいと思っています。また北朝鮮人権週間
だけでなく、365日付けていただきたいのが正直な気持ちです。
この盛り上がりや流れが、もし44年前にあったならこんなには拉致されてい
なかったと思いますが、過去よりも今この瞬間から何をすべきかが問われている
と思います。多くの方々からオールジャパンという言葉が出ていましたが、関心
を持ち続けることと、主権が侵害され人権が蹂躙されていることについて怒りを
覚えることが一番大事だと思っています(拍手)。
◆「人権」の概念をもっと広げて解決へ
櫻井 人権ということについて、日本人の私たちが一体どこまで真剣なのかとい
うことが今問われているんですね。もちろん北朝鮮に対してもそうですし、中国
に対しても同じことです。
わが国の国会では、中国のウイグル人弾圧、香港弾圧、その他チベット、モン
ゴル等色々な民族への弾圧について、人権侵害をしているとの非難決議もできま
せんでした。これかららってくれるとは思いますが、中国に対してもできない、
北朝鮮に対しても実際に何もできていない。国民だけがじりじりと焦っている。
とりわけ拉致被害者のご家族の皆様や関係者の皆様はすごく一生懸命にやって
いるわけですが、なぜなのか全国的な波にならない。1500万の署名を集めた
とはいえですね。それが熱エネルギーを持った大きな波にならないことを本当に
残念に思います。
今、人権問題として拉致被害者のことについて私たちは話してしますが、アメ
リカ、ヨーロッパを初めこの人権という項目が非常に重要になってきています。
ですから私たちは従来の人権の概念をもっと広げて、真剣にこのことに取り組ま
なければ拉致も解決できません。人権について日本がものすごく緩い国なんだ。
だからあれだけ多くの国民を拉致されて何十年も経っている。色々とやってはい
るが、決定的な解決策に至ることなくここまで来てしまっていると思われてしま
います。
これはみんなにとっても不幸ですし、日本国の拉致被害者や関係者にとっても
不幸なだけでなく、人類に対する不幸だと私は思っています。そういう意味で西
岡さんに、一体我々は何をすればいいのか。
先ほどの安倍総理の話を聞きながら私は本当に色々とご苦労下さったことと感
じるのですが、日本国の憲法とか法律とかそういう制限がある中でも、何かでき
ないのかと思いますし、この先憲法や法律に制限があるのならなぜそれを打ち破
るところまで私たちはいくことができないのか。これは日本人全員が考えるべき
課題ですし、日本人全員の責任だと私は感じています。では西岡さんお願いしま
す。
◆来年が勝負だ
西岡 力(救う会会長、モラロジー道徳教育財団教授)
まず嬉しいことから言いますと、先ほどもありましたが、閣議で全閣僚がブルー
リボンバッジを付けてくださいました。これは確認されたことです。実は11月
13日の国民大集会でそういう決議をしたところ、その決議を受けて佐賀県でも
知事と副知事がバッジを買いにきてくださったり、東京都庁でもそういう話があ
りました。
本来ならもっと早くこういうことがあってもよかったかなとも思いますが、や
れることを一歩一歩やっていくしかないのです。しかし、「バッジをみんなで付
けましょう」と言ったら、全国的にそういう動きが出たということは、被害者を
取り戻さなければならないという気持ちはみんな持っているということです。そ
れをどう表したらいいか分からない人たちが全国に多いんだということを感じま
した。
次に北朝鮮内部情勢についてお話しします。皆さんのお手元に私が「産経新聞」
に書いたコラムがありますが、北朝鮮は本当に困っています。それは事実です。
私は、「6重苦」と言っています。そのうち「3重苦」は金正恩委員長自身が認
めています。
去年10月に軍事パレードがあったのですが、そこに金正恩委員長が現れて、
涙を流して演説をしました。その中でこういう一説があります。「今この惑星に、
過酷で長期的な制裁のため、あらゆるものが不足している状況のもとで、非常防
疫も行い(これはコロナ対策のことです)、ひどい自然災害も復旧しなければな
らないという途方もない挑戦と困難に直面している国はわが国だけ」だと言いま
した。
制裁とコロナ防疫、自然災害の3つです。彼らは今まで、「制裁などは効いて
いない」と言っていたのです。「アメリカはずっとわが国に制裁をかけてきた。
それでもわが国は地上の楽園を作ってきた」とずっと言っていたのです。ここで、
「あらゆるものが不足している」と言ったのは、本当に不足しているからですが、
独裁者である金正恩委員長が「あらゆるものが不足している」と言った理由は制
裁です。そしてコロナと自然災害と自分で言ったのです。それが「3重苦」です。
その内の制裁は、拉致と核・ミサイルが理由になっている。
櫻井さんが今、日本の制度の中でできることと、制度を変えてできることと言
いましたが、制裁について言うと、私たちが運動を始めた時は、日本は拉致問題
で、政府の判断で制裁をかける法的根拠を持ってなかったのです。外為法(外国
為替および外国貿易法)という法律があるのですが、貿易を停止することができ
るのは国際的な決議がある時でした。
これは国連の安保理事会の決議があった時には制裁をかけることができた。だ
から例えば南アフリカでアパルトヘイトというひどい人権侵害があった時に、日
本は南アフリカの対して貿易を遮断しました。
しかし、日本の判断で、日本人が拉致されているから制裁をかけるという法的
根拠はなかったのです。それを作ってくれたのが、菅総理たちの議員立法でした。
日本の安全保障を貿易を遮断する理由の中に追加して書き込んだのです。余談で
すが、そこに「人権」を書き込めばいいのです。「人権」でも貿易を遮断できる
ようにすればいいと思っています。
とにかく日本の安全保障が理由でわが国の判断で貿易を遮断することができる
ようになった。しかしすぐは発動しなかった。第一次安倍政権になって、北朝鮮
が核実験をし、ミサイル発射をした。その時、拉致をやりながら核・ミサイルも
やったということで貿易を停止しました。
もう一つ、私たちは新潟に行って、「万景峰号は帰れ!」と何回もやりました。
東京に戻って担当者の説明を聞くと、「開港の原則」というのがあるそうです。
開港していると船を止めることはできないそうです。それが国際法です。「北朝
鮮とは国交がないじゃないですか」と言っても、「それでも開港しているから」
と言われました。
それも菅前総理たちが議員立法で色々調べたのです。そうしたら、キューバ人
権法というのがあって、今日は古森義久さんが来ておられて教えてもらったので
すが、キューバ人権法というのは、キューバ船籍の船をアメリカが入港させない
と書いてあるのです。そこで菅総理たちが担当者に会って、「じゃあアメリカの
キューバ人権法を知っているのか」とやったわけです。
そして特定失踪者船舶入港禁止法という法律ができたのです。できましたが、
まだかけなかったのです。できるようにするのとかけることは別なんですが、そ
の法律を持っていることをやって、第一次安倍政権の時にかけたわけです。
安倍総理が繰り返し言っていましたが、「制裁はかける時と降ろす時と2回使
える」と。かけていると、向こうが「解除してほしい」と言ってきたら、「それ
ではこれをしなさい」と言える。制裁をかけていると、解除する時のカードにな
る。それは我々の運動の中で、憲法まではいけませんでしたが、法律を改正した
り、新法を作ったりして、それをかけてやってきたわけです。
その制裁も聞いているということです。もちろん我々の制裁だけではないです
が。国連の制裁も効いています。だから金正恩委員長が、「あらゆる物が不足し
ている」と言ったのです。
北朝鮮は共産党が支配する国ですね。労働党と言っていますが。労働党のトッ
プは書記です。書記局というのがあります。共産党の一番偉い人は総書記と言い
ます。金正日も総書記になったのですが、書記が複数います。
その書記の人たちには毎日、卵、牛乳、肉だ度が供給されます。1日供給と言っ
ています。少し下の人は3日供給、さらに下の人は週1回でしたが、その供給が
できなくなった。一番上の書記に対しても満足に供給ができなくなった。それく
らい、「あらゆる物」が不足しているのです。金正恩委員長のファミリーと書記
室はぜいたくな暮らしをしているようですが、党の幹部まではできなくなった。
11月13日、我々が国民大集会をやっていた頃、中朝国境は今電車とトラッ
クが止まっているんですが、列車が1台動いて3人の労働党の幹部が中国に入り、
「最高幹部たちへの物資供給を支援してくれ」と。
それから今年は彼らの経済5か年計画の1年目なのですが、今年の目玉は平壌
に1万戸のアパートを作るということでした。「5年で5万戸作れ」と言って、
起工式に金正恩委員長も出て、大々的な工事を行いました。北朝鮮にはセメント
や砂はあるので、外身は作れます。しかし、中に入れる床や壁紙、洗面台や便器
は工業製品で、基本的に国産できないんです。
中国からの物資が完全に止まったのは去年10月ですが、内側が完成できなく
なった。年末に党の会議があってどうするのか見ものですが、「それを援助して
くれ」と中国に言いに行った。ところが物資の支援と建設資材の支援は中国がO
Kしなかったと聞いています。
本当に困っているんです。政策的に制裁をかけて困らせているんです。その理
由は拉致被害者を返さないことと、国際法に違反して核・ミサイルを開発したこ
とです。明確にそこに「拉致」を入れることができている。
他にも苦しい面があることを書いていますが、そういう中で今すべきことは、
北朝鮮とのコミュニケーションだと思います。繰り返し、「先圧力、後交渉」と
言ってきたのですが、金正恩委員長が、「制裁が効いている」、「困難だ」とい
う所まで圧力が上がっています。次には、その困難から脱出するためにはあなた
たちは何をすべきなのか、日本を初めとする国際社会は何を求めているのか。特
に日本が何を求めているかについて、トップとコミュニケーションすることです。
先程の安倍さんの話にもありましたが、軍事的な圧力と今の制裁の圧力があり、
金正恩委員長はアメリカを選んで話し合いに入ったわけです。「先圧力、後交渉」
という中で、アメリカを選んで始まった交渉が2018年です。しかし、18年、
19年とシンガポール、ハノイで行いましたが、合意には至らなかった。そして
今にらみ合いになっているわけです。
しかし、圧力が効いて話し合いになった。その時に、先ほど安倍総理も言って
いましたが、トランプ大統領の口から安倍総理のメッセージが金正恩に伝わった。
日本の要求はこれだ、と。そしてそれをすれば日本は「これ」をする、と。
トランプ大統領は北朝鮮に対して「核開発はやめなさい」と言った。「止めた
ら制裁を解除してやる」と言った。しかし、「経済協力はしない」と言ったので
す。安倍総理は、「拉致問題が解決したら北朝鮮に明るい未来がある」と。「日
本は、北朝鮮が韓国と同じように国際社会の一員になるならば、拉致被害者を返
して核・ミサイルをやめるなら国交正常化をしてある程度の経済支援をする」と
いうことを、トランプ大統領の口から金正恩に伝えた。特に拉致について伝えた
わけです。
安倍総理が、「条件なしに会います」と言い始めたのはその時からです。そし
て菅総理も岸田総理もその方針を続けています。コミュニケーションをはかる。
日本がしてほしいことはこれだ、と。
私はこういう席で繰り返し言っているのですが、日本政府の拉致問題解決の定
義は3つです。「全被害者の帰国、真相究明、実行犯の引き渡し」です。その内、
2と3は後でもいい。それも金正恩に伝えてほしい、と。1全被害者の一括帰国
が実現すれば、日本は国交正常化まで行かなくてもできることがある。
日本の制裁は、菅総理たちが作ってくれた法律によって完全禁輸をしています。
すべての貿易を止めています。国際社会は完全禁輸じゃないんです。生活必需品、
食糧、飼料等は売ってもいいんです。そこに隙間がある。
もしも金正恩委員長が岸田総理と会って、全被害者を返すならば、核・ミサイ
ル問題がまだ解決していなくて、国連制裁が解除されていなくても、その隙間の
部分は拉致が理由ですから、その部分が使えるわけです。そのコミュニケーショ
ンをとってほしい。しかし、全被害者でなければならない。一括帰国でなければ
ならない。
先程安倍総理が重要な点をおっしゃいましたが、「北朝鮮は分断しようとして
くる」。実は一番の分断は、2002年の5人とその他を分断したのです。蓮池
さんたちは日本に来る時、「横田さんご両親を平壌に連れてこい」というミッショ
ンを与えられていたと当時効いています。彼らもその駒に使われていたのですが、
横田さんたちを平壌に呼んで、「死んだ」ということを納得させるという作戦計
画があったのです。
これは確認されていませんが、曽我さんを返したのもめぐみさんのことを話す
ことができる人だからです。めぐみさんのことを知っている人が5人帰ってきて、
「めぐみさんは死んだ」と言わせる。そしてみんなに死んだことを納得させよう
とした。
あの時、9月17日に早紀江さんがマイクを取って、「まだ生きていると思っ
ています」と言わなかったら、あるいは9月18日に安倍総理が、私たちが止まっ
ているホテルに来てくれて、「死亡と言われたけれども、確認はしていない」と。
証拠なんかは持ってきていないと教えてくれなかったら、もう「死亡」とされて、
家族会は「遺族会」とされていたんです。思うつぼになりかけていた。そういう
ことをまた北朝鮮は狙ってくるかもしれない。
だから「全被害者の一括帰国でなければだめですよ。死んだなんて言ったのは
我々は嘘だと分かっていますよ。13人しかいない。8人死んで5人返したから
終わりではないですよ。日本政府があと4人入れて17人は知っているんですよ。
あなたたちは嘘をついている。その4人以外にもいることを私たちは分かってい
ますよ。決断しなさい。全員返しなさい」というコミュニケーションをはかるこ
とです。
そのことについて私たちは教えてもらっていません。様々なコミュニケーショ
ンがはかられているのではないか。それは結果を出してから教えてもらえばいい
と思っています。
今はコミュニケーションを取る時で、「先圧力」がうまくいっている。そして
国際連携も、トランプ大統領が拉致のことを言ってくれるまでうまくいっていて、
バイデン政権もそれを引き継いでいる。形はできた。来年が勝負だと思っていま
す。
(5につづく)
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
■岸田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
[PC]https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html
[携帯]http://form1.kmail.kantei.go.jp/cgi-bin/k/iken/im/goiken.cgi
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
■拉致問題セミナー報告4
■パネルディスカッション
櫻井よしこ(コーディネーター、ジャーナリスト)
これから北朝鮮にどのように対峙していくか、そして国際社会の連携をどう進
めるか、そして何よりも日本ができることを中心に考えていきたいと思います。
まず拓也さんから。いや、哲也さんでした(笑)。お姉さんのめぐみさんを初め、
日本人の多くが拉致されたままになっていて、特定失踪者を含めるとどれだけの
数になるか分からない状況がずっと続いています。私たちは毎年このような会議
をして、「全員一括で取り戻そう」と行ってきました。これから具体的に、さら
に何を強めていったらいいのか、どのようなお気持ちでしょうか。
◆主権侵害、人権蹂躙に怒りを
横田哲也(横田めぐみさん弟、家族会事務局次長)
皆様、こんにちは(拍手)。名前はよく間違われ、母も時に間違えますのでお
気になさらないように(笑)。
昨年もこのセミナーに参加させていただきましたが、この1年何の進展もない
ので、私たち家族というより、北朝鮮にいる人たちに申し訳ないと思っています。
街を歩けばクリスマスモードで、きらびやかなイルミネーションもあり私たちの
心は踊るのですが、その瞬間に、「私の姉は今何をやっているのだろう」と思っ
てしまいます。
もちろん姉だけではなく、多くの日本人拉致被害者は、楽しさとか自由な時間
があるのだろうかということをいつも感じており、おそらくそれがないと思うと、
自分たちが自由にのんきに過ごしていいのだろうかと思います。
今日このセミナーに各党の方々や各地から報告をしてくださいましたが、もち
ろん全国で救う会の方がサポートしてくださっています。それを見てマスコミの
方々が注目してくださることが大事なことだと思います。感謝したいと思います。
国だけが動けばいいのではなく、民間だけが動けばいいというものでもなく、
マスコミの皆様も大きな力を持っていますので、是非このセミナーを取り上げて
いただきたいのと、北朝鮮人権週間について是非社説等で、拉致問題がなぜ重要
なのか、国益とは何なのか、主権とは何なのかを取り上げていただきたき、国民
に周知をはかっていただきたいと思います。
今日、全閣僚がブルーリボンバッジを付けてくださったことは大変嬉しいので
すが、全国会議員にも付けていただきたいと思っています。また北朝鮮人権週間
だけでなく、365日付けていただきたいのが正直な気持ちです。
この盛り上がりや流れが、もし44年前にあったならこんなには拉致されてい
なかったと思いますが、過去よりも今この瞬間から何をすべきかが問われている
と思います。多くの方々からオールジャパンという言葉が出ていましたが、関心
を持ち続けることと、主権が侵害され人権が蹂躙されていることについて怒りを
覚えることが一番大事だと思っています(拍手)。
◆「人権」の概念をもっと広げて解決へ
櫻井 人権ということについて、日本人の私たちが一体どこまで真剣なのかとい
うことが今問われているんですね。もちろん北朝鮮に対してもそうですし、中国
に対しても同じことです。
わが国の国会では、中国のウイグル人弾圧、香港弾圧、その他チベット、モン
ゴル等色々な民族への弾圧について、人権侵害をしているとの非難決議もできま
せんでした。これかららってくれるとは思いますが、中国に対してもできない、
北朝鮮に対しても実際に何もできていない。国民だけがじりじりと焦っている。
とりわけ拉致被害者のご家族の皆様や関係者の皆様はすごく一生懸命にやって
いるわけですが、なぜなのか全国的な波にならない。1500万の署名を集めた
とはいえですね。それが熱エネルギーを持った大きな波にならないことを本当に
残念に思います。
今、人権問題として拉致被害者のことについて私たちは話してしますが、アメ
リカ、ヨーロッパを初めこの人権という項目が非常に重要になってきています。
ですから私たちは従来の人権の概念をもっと広げて、真剣にこのことに取り組ま
なければ拉致も解決できません。人権について日本がものすごく緩い国なんだ。
だからあれだけ多くの国民を拉致されて何十年も経っている。色々とやってはい
るが、決定的な解決策に至ることなくここまで来てしまっていると思われてしま
います。
これはみんなにとっても不幸ですし、日本国の拉致被害者や関係者にとっても
不幸なだけでなく、人類に対する不幸だと私は思っています。そういう意味で西
岡さんに、一体我々は何をすればいいのか。
先ほどの安倍総理の話を聞きながら私は本当に色々とご苦労下さったことと感
じるのですが、日本国の憲法とか法律とかそういう制限がある中でも、何かでき
ないのかと思いますし、この先憲法や法律に制限があるのならなぜそれを打ち破
るところまで私たちはいくことができないのか。これは日本人全員が考えるべき
課題ですし、日本人全員の責任だと私は感じています。では西岡さんお願いしま
す。
◆来年が勝負だ
西岡 力(救う会会長、モラロジー道徳教育財団教授)
まず嬉しいことから言いますと、先ほどもありましたが、閣議で全閣僚がブルー
リボンバッジを付けてくださいました。これは確認されたことです。実は11月
13日の国民大集会でそういう決議をしたところ、その決議を受けて佐賀県でも
知事と副知事がバッジを買いにきてくださったり、東京都庁でもそういう話があ
りました。
本来ならもっと早くこういうことがあってもよかったかなとも思いますが、や
れることを一歩一歩やっていくしかないのです。しかし、「バッジをみんなで付
けましょう」と言ったら、全国的にそういう動きが出たということは、被害者を
取り戻さなければならないという気持ちはみんな持っているということです。そ
れをどう表したらいいか分からない人たちが全国に多いんだということを感じま
した。
次に北朝鮮内部情勢についてお話しします。皆さんのお手元に私が「産経新聞」
に書いたコラムがありますが、北朝鮮は本当に困っています。それは事実です。
私は、「6重苦」と言っています。そのうち「3重苦」は金正恩委員長自身が認
めています。
去年10月に軍事パレードがあったのですが、そこに金正恩委員長が現れて、
涙を流して演説をしました。その中でこういう一説があります。「今この惑星に、
過酷で長期的な制裁のため、あらゆるものが不足している状況のもとで、非常防
疫も行い(これはコロナ対策のことです)、ひどい自然災害も復旧しなければな
らないという途方もない挑戦と困難に直面している国はわが国だけ」だと言いま
した。
制裁とコロナ防疫、自然災害の3つです。彼らは今まで、「制裁などは効いて
いない」と言っていたのです。「アメリカはずっとわが国に制裁をかけてきた。
それでもわが国は地上の楽園を作ってきた」とずっと言っていたのです。ここで、
「あらゆるものが不足している」と言ったのは、本当に不足しているからですが、
独裁者である金正恩委員長が「あらゆるものが不足している」と言った理由は制
裁です。そしてコロナと自然災害と自分で言ったのです。それが「3重苦」です。
その内の制裁は、拉致と核・ミサイルが理由になっている。
櫻井さんが今、日本の制度の中でできることと、制度を変えてできることと言
いましたが、制裁について言うと、私たちが運動を始めた時は、日本は拉致問題
で、政府の判断で制裁をかける法的根拠を持ってなかったのです。外為法(外国
為替および外国貿易法)という法律があるのですが、貿易を停止することができ
るのは国際的な決議がある時でした。
これは国連の安保理事会の決議があった時には制裁をかけることができた。だ
から例えば南アフリカでアパルトヘイトというひどい人権侵害があった時に、日
本は南アフリカの対して貿易を遮断しました。
しかし、日本の判断で、日本人が拉致されているから制裁をかけるという法的
根拠はなかったのです。それを作ってくれたのが、菅総理たちの議員立法でした。
日本の安全保障を貿易を遮断する理由の中に追加して書き込んだのです。余談で
すが、そこに「人権」を書き込めばいいのです。「人権」でも貿易を遮断できる
ようにすればいいと思っています。
とにかく日本の安全保障が理由でわが国の判断で貿易を遮断することができる
ようになった。しかしすぐは発動しなかった。第一次安倍政権になって、北朝鮮
が核実験をし、ミサイル発射をした。その時、拉致をやりながら核・ミサイルも
やったということで貿易を停止しました。
もう一つ、私たちは新潟に行って、「万景峰号は帰れ!」と何回もやりました。
東京に戻って担当者の説明を聞くと、「開港の原則」というのがあるそうです。
開港していると船を止めることはできないそうです。それが国際法です。「北朝
鮮とは国交がないじゃないですか」と言っても、「それでも開港しているから」
と言われました。
それも菅前総理たちが議員立法で色々調べたのです。そうしたら、キューバ人
権法というのがあって、今日は古森義久さんが来ておられて教えてもらったので
すが、キューバ人権法というのは、キューバ船籍の船をアメリカが入港させない
と書いてあるのです。そこで菅総理たちが担当者に会って、「じゃあアメリカの
キューバ人権法を知っているのか」とやったわけです。
そして特定失踪者船舶入港禁止法という法律ができたのです。できましたが、
まだかけなかったのです。できるようにするのとかけることは別なんですが、そ
の法律を持っていることをやって、第一次安倍政権の時にかけたわけです。
安倍総理が繰り返し言っていましたが、「制裁はかける時と降ろす時と2回使
える」と。かけていると、向こうが「解除してほしい」と言ってきたら、「それ
ではこれをしなさい」と言える。制裁をかけていると、解除する時のカードにな
る。それは我々の運動の中で、憲法まではいけませんでしたが、法律を改正した
り、新法を作ったりして、それをかけてやってきたわけです。
その制裁も聞いているということです。もちろん我々の制裁だけではないです
が。国連の制裁も効いています。だから金正恩委員長が、「あらゆる物が不足し
ている」と言ったのです。
北朝鮮は共産党が支配する国ですね。労働党と言っていますが。労働党のトッ
プは書記です。書記局というのがあります。共産党の一番偉い人は総書記と言い
ます。金正日も総書記になったのですが、書記が複数います。
その書記の人たちには毎日、卵、牛乳、肉だ度が供給されます。1日供給と言っ
ています。少し下の人は3日供給、さらに下の人は週1回でしたが、その供給が
できなくなった。一番上の書記に対しても満足に供給ができなくなった。それく
らい、「あらゆる物」が不足しているのです。金正恩委員長のファミリーと書記
室はぜいたくな暮らしをしているようですが、党の幹部まではできなくなった。
11月13日、我々が国民大集会をやっていた頃、中朝国境は今電車とトラッ
クが止まっているんですが、列車が1台動いて3人の労働党の幹部が中国に入り、
「最高幹部たちへの物資供給を支援してくれ」と。
それから今年は彼らの経済5か年計画の1年目なのですが、今年の目玉は平壌
に1万戸のアパートを作るということでした。「5年で5万戸作れ」と言って、
起工式に金正恩委員長も出て、大々的な工事を行いました。北朝鮮にはセメント
や砂はあるので、外身は作れます。しかし、中に入れる床や壁紙、洗面台や便器
は工業製品で、基本的に国産できないんです。
中国からの物資が完全に止まったのは去年10月ですが、内側が完成できなく
なった。年末に党の会議があってどうするのか見ものですが、「それを援助して
くれ」と中国に言いに行った。ところが物資の支援と建設資材の支援は中国がO
Kしなかったと聞いています。
本当に困っているんです。政策的に制裁をかけて困らせているんです。その理
由は拉致被害者を返さないことと、国際法に違反して核・ミサイルを開発したこ
とです。明確にそこに「拉致」を入れることができている。
他にも苦しい面があることを書いていますが、そういう中で今すべきことは、
北朝鮮とのコミュニケーションだと思います。繰り返し、「先圧力、後交渉」と
言ってきたのですが、金正恩委員長が、「制裁が効いている」、「困難だ」とい
う所まで圧力が上がっています。次には、その困難から脱出するためにはあなた
たちは何をすべきなのか、日本を初めとする国際社会は何を求めているのか。特
に日本が何を求めているかについて、トップとコミュニケーションすることです。
先程の安倍さんの話にもありましたが、軍事的な圧力と今の制裁の圧力があり、
金正恩委員長はアメリカを選んで話し合いに入ったわけです。「先圧力、後交渉」
という中で、アメリカを選んで始まった交渉が2018年です。しかし、18年、
19年とシンガポール、ハノイで行いましたが、合意には至らなかった。そして
今にらみ合いになっているわけです。
しかし、圧力が効いて話し合いになった。その時に、先ほど安倍総理も言って
いましたが、トランプ大統領の口から安倍総理のメッセージが金正恩に伝わった。
日本の要求はこれだ、と。そしてそれをすれば日本は「これ」をする、と。
トランプ大統領は北朝鮮に対して「核開発はやめなさい」と言った。「止めた
ら制裁を解除してやる」と言った。しかし、「経済協力はしない」と言ったので
す。安倍総理は、「拉致問題が解決したら北朝鮮に明るい未来がある」と。「日
本は、北朝鮮が韓国と同じように国際社会の一員になるならば、拉致被害者を返
して核・ミサイルをやめるなら国交正常化をしてある程度の経済支援をする」と
いうことを、トランプ大統領の口から金正恩に伝えた。特に拉致について伝えた
わけです。
安倍総理が、「条件なしに会います」と言い始めたのはその時からです。そし
て菅総理も岸田総理もその方針を続けています。コミュニケーションをはかる。
日本がしてほしいことはこれだ、と。
私はこういう席で繰り返し言っているのですが、日本政府の拉致問題解決の定
義は3つです。「全被害者の帰国、真相究明、実行犯の引き渡し」です。その内、
2と3は後でもいい。それも金正恩に伝えてほしい、と。1全被害者の一括帰国
が実現すれば、日本は国交正常化まで行かなくてもできることがある。
日本の制裁は、菅総理たちが作ってくれた法律によって完全禁輸をしています。
すべての貿易を止めています。国際社会は完全禁輸じゃないんです。生活必需品、
食糧、飼料等は売ってもいいんです。そこに隙間がある。
もしも金正恩委員長が岸田総理と会って、全被害者を返すならば、核・ミサイ
ル問題がまだ解決していなくて、国連制裁が解除されていなくても、その隙間の
部分は拉致が理由ですから、その部分が使えるわけです。そのコミュニケーショ
ンをとってほしい。しかし、全被害者でなければならない。一括帰国でなければ
ならない。
先程安倍総理が重要な点をおっしゃいましたが、「北朝鮮は分断しようとして
くる」。実は一番の分断は、2002年の5人とその他を分断したのです。蓮池
さんたちは日本に来る時、「横田さんご両親を平壌に連れてこい」というミッショ
ンを与えられていたと当時効いています。彼らもその駒に使われていたのですが、
横田さんたちを平壌に呼んで、「死んだ」ということを納得させるという作戦計
画があったのです。
これは確認されていませんが、曽我さんを返したのもめぐみさんのことを話す
ことができる人だからです。めぐみさんのことを知っている人が5人帰ってきて、
「めぐみさんは死んだ」と言わせる。そしてみんなに死んだことを納得させよう
とした。
あの時、9月17日に早紀江さんがマイクを取って、「まだ生きていると思っ
ています」と言わなかったら、あるいは9月18日に安倍総理が、私たちが止まっ
ているホテルに来てくれて、「死亡と言われたけれども、確認はしていない」と。
証拠なんかは持ってきていないと教えてくれなかったら、もう「死亡」とされて、
家族会は「遺族会」とされていたんです。思うつぼになりかけていた。そういう
ことをまた北朝鮮は狙ってくるかもしれない。
だから「全被害者の一括帰国でなければだめですよ。死んだなんて言ったのは
我々は嘘だと分かっていますよ。13人しかいない。8人死んで5人返したから
終わりではないですよ。日本政府があと4人入れて17人は知っているんですよ。
あなたたちは嘘をついている。その4人以外にもいることを私たちは分かってい
ますよ。決断しなさい。全員返しなさい」というコミュニケーションをはかるこ
とです。
そのことについて私たちは教えてもらっていません。様々なコミュニケーショ
ンがはかられているのではないか。それは結果を出してから教えてもらえばいい
と思っています。
今はコミュニケーションを取る時で、「先圧力」がうまくいっている。そして
国際連携も、トランプ大統領が拉致のことを言ってくれるまでうまくいっていて、
バイデン政権もそれを引き継いでいる。形はできた。来年が勝負だと思っていま
す。
(5につづく)
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発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
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