最近の米朝関係と拉致問題?東京連続集会2(2022/04/26)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2022.04.26)
■最近の米朝関係と拉致問題
◆バイデン政権発足後対北政策は「不在」と専門家
バイデン政権は発足して1年3か月になりますが、この間の北朝鮮政策は、民
主党寄りの専門家も含めて、「不在」という言い方をしています。なかったとい
うことです。これはワシントンポストの国際問題の専門記者のジョシュ・ロギン
という人です。「バイデン政権は北朝鮮政策を無視できない」と言った。現在ま
で無視してきたということです。
確かにバイデン政権が北朝鮮に関してこういうことを「やった、言った」はな
かった。小さなことで、サイバー攻撃に対する部分的な制裁はしていますが、大
きな動きはほとんどない。このことに関して、超党派の批判が起きているわけで
す。
もう一人、民主主義防衛財団という戦略問題の研究機関で朝鮮問題をずっと追っ
ている、デイビッド・マックスウェルという専門家が書いています。「バイデン
政権の北朝鮮戦略は次の要素が欠けている」として、「実務的な外交」、「戦略
強固な抑止」、「日韓両同盟国との連帯による抑止」、「人権問題の重視」を挙
げています。
アメリカでも、朝鮮半島問題、北朝鮮問題を追っている学者、ジャーナリスト、
元政府高官の中で最も長老とされるドナルド・カークという人がいます。この人
が久しぶりに、「ヒル」という雑誌に長い論文を書いて、バイデン政権の北朝鮮
政策を批判しています。
論文のタイトルは、「北朝鮮への予防攻撃」で、先制攻撃ではなく、向こうが
確実に何かしそうだということを察知した時に、それを押さえるために攻撃する
ものです。今日本で話題になっている「敵基地攻撃」とか「反撃」という言葉に
似ています。
どうやって攻撃するかというと、相手の準備を察知する、と。これには大きな
問題も出てきますが、カークさんの考え方としては、「バイデン政権の北朝鮮へ
のアプローチの中に、軍事的要素が全くない」ということを言っています。その
一例として、「外交交渉も大事だし経済制裁も大事だ。あるいは台湾も大事だが、
どこかに必ず軍事的手段を確保しておかないと北朝鮮は動かない」と言っていま
す。私が色々見ていても、「本当にそうだな」と思います。
先程言った、北朝鮮が「あたふた」する。「大変だ、大変だ」と言ってどたば
た動き始める。今アメリカとの関係においては挑発的なことはやってきても、焦っ
て困ったという感じはただよってこないですよね。
◆北朝鮮が「あたふた」した事例
ところが明らかに焦って、困ったという時点がいくつかあったわけです。私も
長い間この問題をフォローしてきましたが、いくつか挙げてみます。こういう状
態が結局は日本の拉致問題の解決につながり得るという意味をこめて紹介します。
第1は、私が米朝関係を始めた昔のことですが、1994年に「米朝核合意」
がありました。北朝鮮がプルトニウムを使って核兵器開発を進めているようだと
いうことが察知されて、アメリカ側がそれに対応して、北朝鮮もある程度それを
認めて交渉した。
その結果、94年10月に時のクリントン政権、相手は金正日との間で協定を
結んだ。この時は明らかに金正日政権はアメリカの圧力、要請、非難について
「あたふた」と動いた。
後になって判ったのですが、クリントン政権が軍事的攻撃をかなり真剣に検討
していた。この時、「プルトニウムの軍事転用は止める」と。その代わり何をす
るかというと、アメリカ側は、原子力は北朝鮮にとって平和利用でも大切だし、
電力も必要だから、そのための軽水炉を2つ作ると言った。作るための経費はど
こから出るかというと、日本と韓国だとアメリカは言ったのです。
その時、クリントン政権にガルーチという国防次官補がいて、この問題を担当
していた。そして、「日本にはそれなりの政府の仕組みがあるのでそう簡単には
いかない」と言ったら、本人自身から私が聞いた言葉ですが、「心配するな。金
正日政権はもうじき倒れるんだ。軽水炉の建築が始まる前に金正日がいなくなる
から大丈夫だ」と言った。
だからこれはアメリカの北朝鮮政策がいかに揺れ動いてきたかということの例
証です。しかしこの時金正日政権が「あたふた」したことは間違いない。
第2は、2002年1月の、ブッシュ大統領の一般教書演説です。ここで初め
て「悪の枢軸」という言葉を使ったのです。「イラン、イラク、北朝鮮」が「悪
の枢軸」です。この頃アメリカはイラクのサダム・フセイン政権に軍事攻撃をか
けて、ほぼ崩壊させています。この時の金正日の慌て方はかなり立証されていま
す。
ここで金正日は大きなギャンブルというか、それまでの政策を改めて日本人の
拉致を認めた。そのインセンティブとなったのはアメリカに追い詰められて、も
しかしたら攻撃されるかもしれない。だから日本との関係をよくして、日本から
援助を取り付けてなんとか切り抜けようと、北朝鮮は「あたふた」していたわけ
です。
第3に北朝鮮が明らかに動揺したのは2005年9月のバンコ・デルタ・アジ
アというマカオにある中国系の銀行があり、ここに金正日政権の秘密口座があっ
たのでアメリカが凍結した。2500万ドルの金があり、それが金正日政権にい
くはずだった。この時の「あたふた」ぶりは、軍事力ではなく、経済制裁で、相
手側の最も急所になる所を突くやり方でうまくいった。
この時、アメリカ側で実務をやったのはデイビッド・アッシャーという人です。
拉致問題でワシントンに行かれた方々は接触する機会がありました。ところがそ
の後すぐに、クリストファー・ヒルという拉致問題にはあまり同調してくれなかっ
た国務次官補が出てきて、それまで北朝鮮をテロ支援国家に指定していたのを解
除して、バンコ・デルタ・アジアの凍結もやめてしまった。
第4に、2017年8月のトランプ大統領の「炎と怒り」です。北朝鮮があく
まで長距離ミサイルや核兵器の開発を止めないのであれば、「国家として消滅さ
せる」というようなことを言ったのです。これを「炎と怒り」という言葉で総括
した。北朝鮮が脅威を感じて「あたふた」したのは当然です。
◆軍事力を使えるアメリカに拉致問題救出運動を連帯させる
日本人拉致問題を解決する当事者は日本国であるのは当然のことですが、今の
状態では、日本が戦後押し付けられた、あるいは自ら選んだ戦後の体制によって、
軍事的なことは一切否定しています。
自縄自縛で自国民を救うためにも海外で軍事力を使ってはいけないというとこ
ろまでいている国です。だから軍事力を重視して国威発揚、国家の究極の目的達
成のためには軍事力を使うということを堂々と宣言しているような国に対した時
の無力さというのが当然あります。
だから、どうしても軍事力と言う要素が入る手段が可能なアメリカに頼らざる
を得ない。悲しい戦後日本の宿命みたいなものがあるわけです。その悲しい宿命
の犠牲になっているのが拉致被害者であり、そのご家族の方だと私は思っていま
す。
この問題に取り組んでいくと、北朝鮮との間で外交問題としてなんとか解決し
なければならないことになります。実は拉致問題はそもそも外交問題ではないん
です。国家犯罪なわけで、普通の国際関係であれば法の執行です。
重大な法律違反があり、その違反を法で処罰する、取り締まるというというこ
とです。そのプロセスが拉致問題の解決でなければならないのですが、わが日本
はそういう方向には動けない。北朝鮮に「お願いしますよ」という形になって、
外交交渉という形で進んでいってしまう。
今申し上げたような、アメリカの北朝鮮への影響力は何といっても強いですね。
アメリカ自体が、別に日本に頼まれなくても、アメリカ自信の国益、アメリカ自
信の歴史ということで北朝鮮に対峙している。この厳粛な事実は否定できない。
当然なわけです。
朝鮮戦争にアメリカ軍が介入して北朝鮮と中国軍と戦った。血みどろの凄惨な
戦いをした。韓国は色々な政権が出てきてアメリカが背を向けたり反発したこと
もありましたが、共に血を流したという米韓の連帯感はある。
ですから北朝鮮の脅威を押さえていく。北朝鮮が核兵器を完全に開発してしま
うようなことは何としても防ぐ。これはアメリカの核拡散防止という全世界に対
する姿勢を見ても、アメリカ自体の基本方針となるわけです。何も日本が北朝鮮
に対して厳しくしてくれと言っているからやっているわけではない。
(3につづく)
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■岸田首相にメール・葉書を
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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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◆バイデン政権発足後対北政策は「不在」と専門家
バイデン政権は発足して1年3か月になりますが、この間の北朝鮮政策は、民
主党寄りの専門家も含めて、「不在」という言い方をしています。なかったとい
うことです。これはワシントンポストの国際問題の専門記者のジョシュ・ロギン
という人です。「バイデン政権は北朝鮮政策を無視できない」と言った。現在ま
で無視してきたということです。
確かにバイデン政権が北朝鮮に関してこういうことを「やった、言った」はな
かった。小さなことで、サイバー攻撃に対する部分的な制裁はしていますが、大
きな動きはほとんどない。このことに関して、超党派の批判が起きているわけで
す。
もう一人、民主主義防衛財団という戦略問題の研究機関で朝鮮問題をずっと追っ
ている、デイビッド・マックスウェルという専門家が書いています。「バイデン
政権の北朝鮮戦略は次の要素が欠けている」として、「実務的な外交」、「戦略
強固な抑止」、「日韓両同盟国との連帯による抑止」、「人権問題の重視」を挙
げています。
アメリカでも、朝鮮半島問題、北朝鮮問題を追っている学者、ジャーナリスト、
元政府高官の中で最も長老とされるドナルド・カークという人がいます。この人
が久しぶりに、「ヒル」という雑誌に長い論文を書いて、バイデン政権の北朝鮮
政策を批判しています。
論文のタイトルは、「北朝鮮への予防攻撃」で、先制攻撃ではなく、向こうが
確実に何かしそうだということを察知した時に、それを押さえるために攻撃する
ものです。今日本で話題になっている「敵基地攻撃」とか「反撃」という言葉に
似ています。
どうやって攻撃するかというと、相手の準備を察知する、と。これには大きな
問題も出てきますが、カークさんの考え方としては、「バイデン政権の北朝鮮へ
のアプローチの中に、軍事的要素が全くない」ということを言っています。その
一例として、「外交交渉も大事だし経済制裁も大事だ。あるいは台湾も大事だが、
どこかに必ず軍事的手段を確保しておかないと北朝鮮は動かない」と言っていま
す。私が色々見ていても、「本当にそうだな」と思います。
先程言った、北朝鮮が「あたふた」する。「大変だ、大変だ」と言ってどたば
た動き始める。今アメリカとの関係においては挑発的なことはやってきても、焦っ
て困ったという感じはただよってこないですよね。
◆北朝鮮が「あたふた」した事例
ところが明らかに焦って、困ったという時点がいくつかあったわけです。私も
長い間この問題をフォローしてきましたが、いくつか挙げてみます。こういう状
態が結局は日本の拉致問題の解決につながり得るという意味をこめて紹介します。
第1は、私が米朝関係を始めた昔のことですが、1994年に「米朝核合意」
がありました。北朝鮮がプルトニウムを使って核兵器開発を進めているようだと
いうことが察知されて、アメリカ側がそれに対応して、北朝鮮もある程度それを
認めて交渉した。
その結果、94年10月に時のクリントン政権、相手は金正日との間で協定を
結んだ。この時は明らかに金正日政権はアメリカの圧力、要請、非難について
「あたふた」と動いた。
後になって判ったのですが、クリントン政権が軍事的攻撃をかなり真剣に検討
していた。この時、「プルトニウムの軍事転用は止める」と。その代わり何をす
るかというと、アメリカ側は、原子力は北朝鮮にとって平和利用でも大切だし、
電力も必要だから、そのための軽水炉を2つ作ると言った。作るための経費はど
こから出るかというと、日本と韓国だとアメリカは言ったのです。
その時、クリントン政権にガルーチという国防次官補がいて、この問題を担当
していた。そして、「日本にはそれなりの政府の仕組みがあるのでそう簡単には
いかない」と言ったら、本人自身から私が聞いた言葉ですが、「心配するな。金
正日政権はもうじき倒れるんだ。軽水炉の建築が始まる前に金正日がいなくなる
から大丈夫だ」と言った。
だからこれはアメリカの北朝鮮政策がいかに揺れ動いてきたかということの例
証です。しかしこの時金正日政権が「あたふた」したことは間違いない。
第2は、2002年1月の、ブッシュ大統領の一般教書演説です。ここで初め
て「悪の枢軸」という言葉を使ったのです。「イラン、イラク、北朝鮮」が「悪
の枢軸」です。この頃アメリカはイラクのサダム・フセイン政権に軍事攻撃をか
けて、ほぼ崩壊させています。この時の金正日の慌て方はかなり立証されていま
す。
ここで金正日は大きなギャンブルというか、それまでの政策を改めて日本人の
拉致を認めた。そのインセンティブとなったのはアメリカに追い詰められて、も
しかしたら攻撃されるかもしれない。だから日本との関係をよくして、日本から
援助を取り付けてなんとか切り抜けようと、北朝鮮は「あたふた」していたわけ
です。
第3に北朝鮮が明らかに動揺したのは2005年9月のバンコ・デルタ・アジ
アというマカオにある中国系の銀行があり、ここに金正日政権の秘密口座があっ
たのでアメリカが凍結した。2500万ドルの金があり、それが金正日政権にい
くはずだった。この時の「あたふた」ぶりは、軍事力ではなく、経済制裁で、相
手側の最も急所になる所を突くやり方でうまくいった。
この時、アメリカ側で実務をやったのはデイビッド・アッシャーという人です。
拉致問題でワシントンに行かれた方々は接触する機会がありました。ところがそ
の後すぐに、クリストファー・ヒルという拉致問題にはあまり同調してくれなかっ
た国務次官補が出てきて、それまで北朝鮮をテロ支援国家に指定していたのを解
除して、バンコ・デルタ・アジアの凍結もやめてしまった。
第4に、2017年8月のトランプ大統領の「炎と怒り」です。北朝鮮があく
まで長距離ミサイルや核兵器の開発を止めないのであれば、「国家として消滅さ
せる」というようなことを言ったのです。これを「炎と怒り」という言葉で総括
した。北朝鮮が脅威を感じて「あたふた」したのは当然です。
◆軍事力を使えるアメリカに拉致問題救出運動を連帯させる
日本人拉致問題を解決する当事者は日本国であるのは当然のことですが、今の
状態では、日本が戦後押し付けられた、あるいは自ら選んだ戦後の体制によって、
軍事的なことは一切否定しています。
自縄自縛で自国民を救うためにも海外で軍事力を使ってはいけないというとこ
ろまでいている国です。だから軍事力を重視して国威発揚、国家の究極の目的達
成のためには軍事力を使うということを堂々と宣言しているような国に対した時
の無力さというのが当然あります。
だから、どうしても軍事力と言う要素が入る手段が可能なアメリカに頼らざる
を得ない。悲しい戦後日本の宿命みたいなものがあるわけです。その悲しい宿命
の犠牲になっているのが拉致被害者であり、そのご家族の方だと私は思っていま
す。
この問題に取り組んでいくと、北朝鮮との間で外交問題としてなんとか解決し
なければならないことになります。実は拉致問題はそもそも外交問題ではないん
です。国家犯罪なわけで、普通の国際関係であれば法の執行です。
重大な法律違反があり、その違反を法で処罰する、取り締まるというというこ
とです。そのプロセスが拉致問題の解決でなければならないのですが、わが日本
はそういう方向には動けない。北朝鮮に「お願いしますよ」という形になって、
外交交渉という形で進んでいってしまう。
今申し上げたような、アメリカの北朝鮮への影響力は何といっても強いですね。
アメリカ自体が、別に日本に頼まれなくても、アメリカ自信の国益、アメリカ自
信の歴史ということで北朝鮮に対峙している。この厳粛な事実は否定できない。
当然なわけです。
朝鮮戦争にアメリカ軍が介入して北朝鮮と中国軍と戦った。血みどろの凄惨な
戦いをした。韓国は色々な政権が出てきてアメリカが背を向けたり反発したこと
もありましたが、共に血を流したという米韓の連帯感はある。
ですから北朝鮮の脅威を押さえていく。北朝鮮が核兵器を完全に開発してしま
うようなことは何としても防ぐ。これはアメリカの核拡散防止という全世界に対
する姿勢を見ても、アメリカ自体の基本方針となるわけです。何も日本が北朝鮮
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