緊張する朝鮮半島情勢下での全拉致被害者救出国際セミナー4(2022/12/19)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2022.12.19-1)
■緊張する朝鮮半島情勢下での全拉致被害者救出国際セミナー4
西岡 国会議員の先生がまたお見えですのでご紹介させていただきます。
参議院議員の上田清司先生(拍手、以下略)、
内閣府大臣政務官で衆議院議員の中野英幸先生、
衆議院議員の池下卓先生、
衆議院議員の細田健一先生、
参議院議員で国土交通大臣政務官の清水真人先生
櫻井 これから約1時間、横田早紀江さん、古森義久さん、西岡さんの3人でお
話ししていただきたいと思います。拉致問題は何十年も経っています。私たちは
このような集会を何回もしてきました。実際政権は本当に力を尽くしてくれてい
ます。日本は、例えば韓国に比べれば本当に一生懸命にやっている。日本人だけ
でなく、政府も、拉致被害者全員を救い出そうという気持ちでやってきています。
まず、横田早紀江さんにお願いいたします。
◆せめて元気で頑張っているということだけでも分かれば
横田早紀江(横田めぐみさん母)
皆様、こんにちは。今日は本当にありがとうございます。難しすぎて私たちは
全身全霊で、主人も亡くなった方々も、本当に長い年月色々なことをして頑張っ
てきましたが、これだけ頑張ればなんとか解決に向かうだろうと、いつも思いな
がらやってきたわけです。
しかし、「拉致って何ですか」と言う大学生、どうなっているのかなと思って
いましたが、西岡先生とか、島田先生とか、荒木先生とか、本当に多くの方々が
全国に救う会をたくさん作ってくださって、各地救う会に主人と講演に行ったり、
拉致された家族の現実を訴え続けてきました。
たくさんの先生方に助けられ、国民の多くの方が応援してくださり、それは今
日までまだ続いています。ニュースも見ていますが、皆さんの話を聞いたり、ニュー
スを見ますと、普通では考えられないようなリーダーがいて、悪霊じゃないかと
思うくらい国民をないがしろにし、自分だけはもっと取りたい、もっと強くなり
たいと思っている。
最初は何にも分からなかったのですが、多くの方々が理解してくださり、協力
してくださっていることを心から感謝しています。今どうなっているかは分かり
ませんので、お祈りするしかないのですが、心を入れ替えて平和のために働いて
ください、と。
普通の者には情報が全く分からないのですが、どうしているのかなといつも思っ
ています。せめて(被害者)一人ひとりが元気で頑張っているということだけで
も分かれば、少しは心が落ち着くのかなという状態です(拍手)。
櫻井 古森さん、アメリカ政府は捕らわれていた自国民を様々な力と手段で取り
戻してきています。北朝鮮は今追い込まれていますが、現状についてどうお考え
ですか。
◆北朝鮮から引き気味のバイデン政権だが超大国アメリカに働きかけるべき
古森義久(麗澤大学特別教授、産経新聞ワシントン駐在論説委員)
なぜ私がお話しするかですが、アメリカで家族会・救う会の方々が初めて接触
をし、それに私が協力したのは今から21年前の2001年で、非常に寒い2月、
3月でした。
皆さんのミッションが終わり、ささやかな会食をした時に話し合った時のこと
を今もよく覚えています。
改めて注意を喚起したいのですが、その時代は日本で拉致問題なんかないんだ
と、拉致問題があると言っている人間は朝鮮半島と特別の関係を持っている特殊
な人間だと言っていた。そういう議論が強かったのです。
その後、拉致問題はやはりあったんだ、北朝鮮の工作員が日本国民を拉致して
いったんだということが認められた上でも、「それは大した問題ではないんだ。
日本と北朝鮮が国交を結ぶ方がもっと大事だ」ということが、日本政府の中枢か
ら出てきた。そんな時代であったことを改めて想起していただきたい。
ですからこの問題はそもそもの原点である主権国家である日本が、主権を行使
できないということです。日本国民の大多数は、人道主義とか自国民の生命や安
全を本当に気にかけて、何とかしなければいけない。それこそが正義なんだとい
うことを信じているのに、実際にはそうじゃない言論に追随してしまうことが多
かったのです。
こういう背景の中でアメリカとの接触が始まりました。アメリカは、「それは
日本の問題じゃないか。なぜアメリカの力を借りるんだ」と。これは明確な回答
がありました。
◆アメリカが関わると二国間問題が国際問題に
一つは、アメリカが日本人の拉致問題を受け入れて、意識をしてくれれば、国
際問題になるということなんです。それまでは北朝鮮と日本との二国間の問題で
済まされてきたのが、アメリカを入れれば国際問題になるわけです。
もう一つは、これが一番大きいのですが、北朝鮮という国と対処する時には力
がなければならない。しかし、拉致問題の本質は何なのか。今の我々の認識では、
北朝鮮と日本との間の外交問題で、交渉していい条件を引き出すものだという認
識に、段々されられてしまったことです。
本質は国際的な犯罪なんです。だからこれは法の執行ということで犯罪を犯し
た人間を追求していくべきなのです。これを追求するには力がなければなりませ
ん。これをわが日本は持っていないわけです。対外的な力は持たない。そういう
道を戦後日本は選んだわけです。今になってしまったと思うことはずいぶんある
と思いますが。その力をアメリカは持っている。
その力に関してもう一つ大きいのは、朝鮮民主主義人民共和国という国が力に
よって動く国だということです。分かりやすく言えば軍事力です。軍事力を北朝
鮮がいかに重視しているか。自分たちがよって立つ基盤を支えているのは軍事力
だと。
しかも外に向かってアメリカや韓国に対して、北朝鮮の国威の発揚、あるいは
自分たちが存在していくための国際折衝の時、一番頼りにしているのは軍事力で
す。この軍事力は、わが国は対外的には一切行使しない道を選んでしまった。全
く無力な存在です。
今頃になって「反撃能力」と言っていますが、普通の独立国家なら当然のこと
です。自分に攻撃をしてくるかもしれない国に対して反撃する力を持ってはいけ
ない国是で我々は来たわけですから、これがいかに異端であるかは拉致問題が象
徴している。この問題の欠陥はいくつもあるわけです。
その欠陥を少しでも減らすためにはアメリカという超大国、軍事力を持ってい
る普通の国家を大きくしたのがアメリカですから、そこに力を頼むということで
す。
◆バイデン政権の対北政策はやや引き気味
では今のバイデン政権の対北政策はどうなのか。それによって日本人拉致事件
に対するアメリカの態度に左右されてきます。アメリカはブッシュ政権の頃から、
北朝鮮を「悪の枢軸」と言って、その(圧力の)結果北朝鮮が動いて、日本人拉
致被害者の一部の帰国につながったわけです。
バイデン大統領は拉致被害者家族に会ってくれて人道的な態度を示してくれて
いるんですが、歴代のアメリカが同盟国としてあるいは超大国の道義的な責任が
どこまであるか分かりませんが、少なくともそれを目指す形で拉致問題に貢献し
てくれた経緯を考えると非常に言いにくいことなんですが、今のバイデン政権は、
歴代政権とは少し違います。
前のトランプ政権とはかなり異なる北朝鮮政策を取っています。第一点は、や
はり北朝鮮の非核化というアメリカの歴代政権が、1990年代のカーター政権
やクリントン政権あたりからずっと気にしてきたこの大命題にどううやって取り
組むかですが、バイデン政権はちょっと引いちゃっている面があります。
別の言い方をするとアメリカの対外政策の中における北朝鮮問題の比重を少し
減らしてしまった。当然ですがウクライナ問題があり、中国がアメリカにとって
の最大の安全保障上の懸念対象ですから、これに対して勢力を投入しなければな
らないということで、結果として北朝鮮問題は少し比重を減らしてきたわけです。
2番目のバイデン政権の対北政策の特徴は、軍事という要素が極めて減ってし
まったことです。前のトランプ政権の時は、トランプ大統領自身の言葉で、「本
能と怒り」ということで、「万が一北朝鮮が大変なことをしたら北朝鮮を攻撃し
てその存在をなくしてしまうぞ」ということを堂々と言っています。
今のバイデン政権もつい最近、「もし北朝鮮が核攻撃をかけてきたら北朝鮮と
いう国は消滅する」とは言っていますが、トランプ政権時代は拉致問題も含めて、
北朝鮮がこういうことをするかもしれない、いやしないでほしいとか色々な問題
があったのですが、その都度アメリカ側の対応には必ず軍事オプションが入って
いました。
だから何かあったら最悪の場合アメリカは軍事力を使う、と。これもいくつも
段階があって、単に反応するのではなく、例えばサイバーで攻撃するとか、電磁
波で攻撃するとか、宇宙の衛星を打ち落とすとか、色々な段階があり、「軍事に
よって北朝鮮の指導部の存在をなくしてしまうぞ」ということを、オプションと
していつも研究していました。それがバイデン政権になってなくなったんです。
それには色々な理由があるのですが。
3番目の特徴は、1、2と連結しているのですが、北朝鮮における人権抑圧問
題です。日本国民の拉致も重大な人権問題ですが、それとは別に北朝鮮の国民が
自分たちの政府によって弾圧されているということを、歴代アメリカの政権はか
なり国政、外交の中心部分として取り上げてきました。それがバイデン政権でちょっ
と減ってしまった。その一例として、北朝鮮人権法というのが2004年からあ
り、その中で北朝鮮専門の大使を任命することがありましたが、バイデン政権は
まだ任命していない。
アメリカでは政権の中でも外でも批判が色々な形で出てくるのですが、それに
対する批判があります。
◆バイデン政権は「戦略的忍耐」を引き継いでいる
この3つの特徴がなぜそうなのかを辿っていくと、1つは、これはいじの悪い
見方かもしれませんが、今のバイデン政権で北朝鮮政策を担当している方々はほ
とんどオバマ政権で同じことをやっていた人たちです。
そうするとオバマ政権の時の北朝鮮政策を一つの言葉で表現すると、「戦略的
忍耐」です。じっと我慢していればその内いいことが起きるよということです。
これはやはり困るんですね。その反発としてトランプ政権は軍事オプション、場
合によっては武力を行使するぞということになっていた。
北朝鮮という国は自分たちが軍事力の効用を深く、深く信用しているだけに、
外から軍事圧力をかけられると非常に深刻に受け止める。だからトランプが乱暴
な言葉で「北朝鮮を攻撃するぞ」と言った時の金正恩の慌て方は、記録に残って
いますが、「とにかくトランプさん会ってください、会ってください」と色々な
形で懇願するようなメッセージをワシントンに送り続けた。
今は全然違いますよね。その背景にはオバマ政権の守りという民主党リベラル
派の、とにかく穏健に、穏健に話し合えば何とかうまくいくんじゃないかという、
日本では非常に人気のある考え方です。しかし、北朝鮮に対しては明らかに通じ
ない。
◆アメリカに中距離ミサイルがないという危機
ですから、トランプ政権の時に増やしていた東アジア関連の国防予算がかなり
減っているわけです。バイデン政権は国防予算を削減しています。中国の態度を
見ると一番分かりやすい。
トランプ政権の時は、軍事面で挑発的だったことはほとんどない。今ばんばん
やっています。バイデンさんを支える人たちは軍事対決が好きじゃない。
その一例は、北朝鮮に届く、中国にも届く射程1500キロくらいの海洋発射
のミサイル、水上の艦艇からでも潜水艦からでも発射できる中距離ミサイル、こ
れは核装備が可能なミサイルですが、これをトランプ政権の時に開発すると決め
たのですが、これをなくしてしまった。
そんなにたいした額じゃないんですが、中距離ミサイルをアメリカはほとんど
持っていないのです。昔のSS20をなくしてしまった。北朝鮮は数百単位で持っ
ている。中国は1000基以上持っている。東アジアにおける中距離ミサイルの
バランスのなさは重大問題で、バイデン政権でも真剣に取り組んではいるんです
が、トランプ政権が中距離ミサイル強化をやろうとすると、バイデン政権がやめ
てしまった。
これにはかなり反発があります。バイデン政権の軍服組のトップがミリーとい
う将軍で、軍人を絵にしたような人ですが、この人が議会の公聴会で、「バイデ
ン大統領は反対したが、我々は中距離ミサイル強化を是非開発してほしい。大統
領の意に反するが申し訳ない」と極めて異例の証言をしました。
軍事力を強くするというテーマ自体が日本では人気がないのですが、アメリカ
のバイデン政権の特徴というのはそういうことなんです。だから今までよりもア
メリカ政府の日本人拉致問題に対する間接的、直的な寄与、協力は減ってきてい
ると認識せざるを得ない。
(5につづく)
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■岸田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
https://www.kantei.go.jp/jp/iken.html
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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■緊張する朝鮮半島情勢下での全拉致被害者救出国際セミナー4
西岡 国会議員の先生がまたお見えですのでご紹介させていただきます。
参議院議員の上田清司先生(拍手、以下略)、
内閣府大臣政務官で衆議院議員の中野英幸先生、
衆議院議員の池下卓先生、
衆議院議員の細田健一先生、
参議院議員で国土交通大臣政務官の清水真人先生
櫻井 これから約1時間、横田早紀江さん、古森義久さん、西岡さんの3人でお
話ししていただきたいと思います。拉致問題は何十年も経っています。私たちは
このような集会を何回もしてきました。実際政権は本当に力を尽くしてくれてい
ます。日本は、例えば韓国に比べれば本当に一生懸命にやっている。日本人だけ
でなく、政府も、拉致被害者全員を救い出そうという気持ちでやってきています。
まず、横田早紀江さんにお願いいたします。
◆せめて元気で頑張っているということだけでも分かれば
横田早紀江(横田めぐみさん母)
皆様、こんにちは。今日は本当にありがとうございます。難しすぎて私たちは
全身全霊で、主人も亡くなった方々も、本当に長い年月色々なことをして頑張っ
てきましたが、これだけ頑張ればなんとか解決に向かうだろうと、いつも思いな
がらやってきたわけです。
しかし、「拉致って何ですか」と言う大学生、どうなっているのかなと思って
いましたが、西岡先生とか、島田先生とか、荒木先生とか、本当に多くの方々が
全国に救う会をたくさん作ってくださって、各地救う会に主人と講演に行ったり、
拉致された家族の現実を訴え続けてきました。
たくさんの先生方に助けられ、国民の多くの方が応援してくださり、それは今
日までまだ続いています。ニュースも見ていますが、皆さんの話を聞いたり、ニュー
スを見ますと、普通では考えられないようなリーダーがいて、悪霊じゃないかと
思うくらい国民をないがしろにし、自分だけはもっと取りたい、もっと強くなり
たいと思っている。
最初は何にも分からなかったのですが、多くの方々が理解してくださり、協力
してくださっていることを心から感謝しています。今どうなっているかは分かり
ませんので、お祈りするしかないのですが、心を入れ替えて平和のために働いて
ください、と。
普通の者には情報が全く分からないのですが、どうしているのかなといつも思っ
ています。せめて(被害者)一人ひとりが元気で頑張っているということだけで
も分かれば、少しは心が落ち着くのかなという状態です(拍手)。
櫻井 古森さん、アメリカ政府は捕らわれていた自国民を様々な力と手段で取り
戻してきています。北朝鮮は今追い込まれていますが、現状についてどうお考え
ですか。
◆北朝鮮から引き気味のバイデン政権だが超大国アメリカに働きかけるべき
古森義久(麗澤大学特別教授、産経新聞ワシントン駐在論説委員)
なぜ私がお話しするかですが、アメリカで家族会・救う会の方々が初めて接触
をし、それに私が協力したのは今から21年前の2001年で、非常に寒い2月、
3月でした。
皆さんのミッションが終わり、ささやかな会食をした時に話し合った時のこと
を今もよく覚えています。
改めて注意を喚起したいのですが、その時代は日本で拉致問題なんかないんだ
と、拉致問題があると言っている人間は朝鮮半島と特別の関係を持っている特殊
な人間だと言っていた。そういう議論が強かったのです。
その後、拉致問題はやはりあったんだ、北朝鮮の工作員が日本国民を拉致して
いったんだということが認められた上でも、「それは大した問題ではないんだ。
日本と北朝鮮が国交を結ぶ方がもっと大事だ」ということが、日本政府の中枢か
ら出てきた。そんな時代であったことを改めて想起していただきたい。
ですからこの問題はそもそもの原点である主権国家である日本が、主権を行使
できないということです。日本国民の大多数は、人道主義とか自国民の生命や安
全を本当に気にかけて、何とかしなければいけない。それこそが正義なんだとい
うことを信じているのに、実際にはそうじゃない言論に追随してしまうことが多
かったのです。
こういう背景の中でアメリカとの接触が始まりました。アメリカは、「それは
日本の問題じゃないか。なぜアメリカの力を借りるんだ」と。これは明確な回答
がありました。
◆アメリカが関わると二国間問題が国際問題に
一つは、アメリカが日本人の拉致問題を受け入れて、意識をしてくれれば、国
際問題になるということなんです。それまでは北朝鮮と日本との二国間の問題で
済まされてきたのが、アメリカを入れれば国際問題になるわけです。
もう一つは、これが一番大きいのですが、北朝鮮という国と対処する時には力
がなければならない。しかし、拉致問題の本質は何なのか。今の我々の認識では、
北朝鮮と日本との間の外交問題で、交渉していい条件を引き出すものだという認
識に、段々されられてしまったことです。
本質は国際的な犯罪なんです。だからこれは法の執行ということで犯罪を犯し
た人間を追求していくべきなのです。これを追求するには力がなければなりませ
ん。これをわが日本は持っていないわけです。対外的な力は持たない。そういう
道を戦後日本は選んだわけです。今になってしまったと思うことはずいぶんある
と思いますが。その力をアメリカは持っている。
その力に関してもう一つ大きいのは、朝鮮民主主義人民共和国という国が力に
よって動く国だということです。分かりやすく言えば軍事力です。軍事力を北朝
鮮がいかに重視しているか。自分たちがよって立つ基盤を支えているのは軍事力
だと。
しかも外に向かってアメリカや韓国に対して、北朝鮮の国威の発揚、あるいは
自分たちが存在していくための国際折衝の時、一番頼りにしているのは軍事力で
す。この軍事力は、わが国は対外的には一切行使しない道を選んでしまった。全
く無力な存在です。
今頃になって「反撃能力」と言っていますが、普通の独立国家なら当然のこと
です。自分に攻撃をしてくるかもしれない国に対して反撃する力を持ってはいけ
ない国是で我々は来たわけですから、これがいかに異端であるかは拉致問題が象
徴している。この問題の欠陥はいくつもあるわけです。
その欠陥を少しでも減らすためにはアメリカという超大国、軍事力を持ってい
る普通の国家を大きくしたのがアメリカですから、そこに力を頼むということで
す。
◆バイデン政権の対北政策はやや引き気味
では今のバイデン政権の対北政策はどうなのか。それによって日本人拉致事件
に対するアメリカの態度に左右されてきます。アメリカはブッシュ政権の頃から、
北朝鮮を「悪の枢軸」と言って、その(圧力の)結果北朝鮮が動いて、日本人拉
致被害者の一部の帰国につながったわけです。
バイデン大統領は拉致被害者家族に会ってくれて人道的な態度を示してくれて
いるんですが、歴代のアメリカが同盟国としてあるいは超大国の道義的な責任が
どこまであるか分かりませんが、少なくともそれを目指す形で拉致問題に貢献し
てくれた経緯を考えると非常に言いにくいことなんですが、今のバイデン政権は、
歴代政権とは少し違います。
前のトランプ政権とはかなり異なる北朝鮮政策を取っています。第一点は、や
はり北朝鮮の非核化というアメリカの歴代政権が、1990年代のカーター政権
やクリントン政権あたりからずっと気にしてきたこの大命題にどううやって取り
組むかですが、バイデン政権はちょっと引いちゃっている面があります。
別の言い方をするとアメリカの対外政策の中における北朝鮮問題の比重を少し
減らしてしまった。当然ですがウクライナ問題があり、中国がアメリカにとって
の最大の安全保障上の懸念対象ですから、これに対して勢力を投入しなければな
らないということで、結果として北朝鮮問題は少し比重を減らしてきたわけです。
2番目のバイデン政権の対北政策の特徴は、軍事という要素が極めて減ってし
まったことです。前のトランプ政権の時は、トランプ大統領自身の言葉で、「本
能と怒り」ということで、「万が一北朝鮮が大変なことをしたら北朝鮮を攻撃し
てその存在をなくしてしまうぞ」ということを堂々と言っています。
今のバイデン政権もつい最近、「もし北朝鮮が核攻撃をかけてきたら北朝鮮と
いう国は消滅する」とは言っていますが、トランプ政権時代は拉致問題も含めて、
北朝鮮がこういうことをするかもしれない、いやしないでほしいとか色々な問題
があったのですが、その都度アメリカ側の対応には必ず軍事オプションが入って
いました。
だから何かあったら最悪の場合アメリカは軍事力を使う、と。これもいくつも
段階があって、単に反応するのではなく、例えばサイバーで攻撃するとか、電磁
波で攻撃するとか、宇宙の衛星を打ち落とすとか、色々な段階があり、「軍事に
よって北朝鮮の指導部の存在をなくしてしまうぞ」ということを、オプションと
していつも研究していました。それがバイデン政権になってなくなったんです。
それには色々な理由があるのですが。
3番目の特徴は、1、2と連結しているのですが、北朝鮮における人権抑圧問
題です。日本国民の拉致も重大な人権問題ですが、それとは別に北朝鮮の国民が
自分たちの政府によって弾圧されているということを、歴代アメリカの政権はか
なり国政、外交の中心部分として取り上げてきました。それがバイデン政権でちょっ
と減ってしまった。その一例として、北朝鮮人権法というのが2004年からあ
り、その中で北朝鮮専門の大使を任命することがありましたが、バイデン政権は
まだ任命していない。
アメリカでは政権の中でも外でも批判が色々な形で出てくるのですが、それに
対する批判があります。
◆バイデン政権は「戦略的忍耐」を引き継いでいる
この3つの特徴がなぜそうなのかを辿っていくと、1つは、これはいじの悪い
見方かもしれませんが、今のバイデン政権で北朝鮮政策を担当している方々はほ
とんどオバマ政権で同じことをやっていた人たちです。
そうするとオバマ政権の時の北朝鮮政策を一つの言葉で表現すると、「戦略的
忍耐」です。じっと我慢していればその内いいことが起きるよということです。
これはやはり困るんですね。その反発としてトランプ政権は軍事オプション、場
合によっては武力を行使するぞということになっていた。
北朝鮮という国は自分たちが軍事力の効用を深く、深く信用しているだけに、
外から軍事圧力をかけられると非常に深刻に受け止める。だからトランプが乱暴
な言葉で「北朝鮮を攻撃するぞ」と言った時の金正恩の慌て方は、記録に残って
いますが、「とにかくトランプさん会ってください、会ってください」と色々な
形で懇願するようなメッセージをワシントンに送り続けた。
今は全然違いますよね。その背景にはオバマ政権の守りという民主党リベラル
派の、とにかく穏健に、穏健に話し合えば何とかうまくいくんじゃないかという、
日本では非常に人気のある考え方です。しかし、北朝鮮に対しては明らかに通じ
ない。
◆アメリカに中距離ミサイルがないという危機
ですから、トランプ政権の時に増やしていた東アジア関連の国防予算がかなり
減っているわけです。バイデン政権は国防予算を削減しています。中国の態度を
見ると一番分かりやすい。
トランプ政権の時は、軍事面で挑発的だったことはほとんどない。今ばんばん
やっています。バイデンさんを支える人たちは軍事対決が好きじゃない。
その一例は、北朝鮮に届く、中国にも届く射程1500キロくらいの海洋発射
のミサイル、水上の艦艇からでも潜水艦からでも発射できる中距離ミサイル、こ
れは核装備が可能なミサイルですが、これをトランプ政権の時に開発すると決め
たのですが、これをなくしてしまった。
そんなにたいした額じゃないんですが、中距離ミサイルをアメリカはほとんど
持っていないのです。昔のSS20をなくしてしまった。北朝鮮は数百単位で持っ
ている。中国は1000基以上持っている。東アジアにおける中距離ミサイルの
バランスのなさは重大問題で、バイデン政権でも真剣に取り組んではいるんです
が、トランプ政権が中距離ミサイル強化をやろうとすると、バイデン政権がやめ
てしまった。
これにはかなり反発があります。バイデン政権の軍服組のトップがミリーとい
う将軍で、軍人を絵にしたような人ですが、この人が議会の公聴会で、「バイデ
ン大統領は反対したが、我々は中距離ミサイル強化を是非開発してほしい。大統
領の意に反するが申し訳ない」と極めて異例の証言をしました。
軍事力を強くするというテーマ自体が日本では人気がないのですが、アメリカ
のバイデン政権の特徴というのはそういうことなんです。だから今までよりもア
メリカ政府の日本人拉致問題に対する間接的、直的な寄与、協力は減ってきてい
ると認識せざるを得ない。
(5につづく)
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■岸田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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