緊張する朝鮮半島情勢下での全拉致被害者救出国際セミナー5(2022/12/19)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2022.12.19-2)
■緊張する朝鮮半島情勢下での全拉致被害者救出国際セミナー5
◆議会と世論は拉致に関心
古森 では日本はどうするか。アメリカはバイデン政権だけじゃない。バイデン
政権に反対する議会の強い、強い意見があり、その中には与党の民主党の議員た
ちも入っています。「北朝鮮の人権問題をもっと強く提起していかなければなら
ない」という意見。その大きな意見の中に、「日本人拉致問題は北朝鮮の非道な
人権弾圧の体質を持った政権の特徴の一つだ」というのがあるわけです。
議会の中では非常に強く、非常に細かく拉致問題をフォローしている人がいっ
ぱいいます。明日のシンポジウムでもそういう人が発言します。ここにおられる
古谷先生などもアメリカの議会によく行って、「アメリカ人で北朝鮮に拉致され
たと思われる人を助けるためにこうしましょう、日米連携でこうしましょう」と
いうことをやって、かなりの反響があります。
それから世論があります。マスコミに象徴される世論ですが、日本人拉致問題
というのはどういうわけかブッシュ大統領が横田早紀江さんを非常に尊重してお
り、私もそれをフォローしていたのですが、横田早紀江さんと拓也さんに会った
後は、「大統領をやっているといいことがいっぱいある。日本人の母親が自分の
娘のためにこういうことを言っていた。こんな昼間にビーンとくる話はあまりな
いんだよ。大統領であるからこそ私はこういう話が聞けた」と、こちらが質問も
していないのに、事あるたびに言っていたんです。
こういうことは報道されますから、そういう意味でも日本人拉致問題に関する
認識がかなり高くなっていた。その延長でトランプ大統領も、国連の演説で言っ
てくれたわけですから、かなりの程度本気でなかったら口にしないことです。
日本はどうすべきかですが、アメリカのバイデン政権がちょっと引いたとして
も、引いてない人たちやメディアがあるんです。そういうところにアピールをす
るべきだと思います。民主主義の国ですから国民の声、メディアの意見は大きい
のです。
しかしそれよりもここで改めて考えるべきは、アメリカがもし引くのであれば、
何とか日本自身がイニシアティブをもっと強くして、先ほど松原先生がおっしゃ
いましたが、「朝鮮総連に対して何かできるのではないか」とか、「日本独自で
もっとできることがあるのではないか」ということを、アメリカでちょっとブレー
キがかかったことを機会にして、もう少し我々は真剣に日本自身がやるべきこと
を考えるいいチャンスじゃないかと思います。
◆韓国で政権が代わり米韓軍事演習が復活
全体として、アメリカが日本人拉致問題に関心を向けているという大きな流れ
は変わりません。韓国が日本にとってはよりよい政権になったわけで、よくなかっ
た政権の時代に止めていた米韓の軍事演習をまたもとに戻してやっている。何か
新しいものが突出してきたのは日本にとってもいいことで、結論として金正恩政
権が拉致問題で希望通り動くのは、非常に困った時です。自分たちの存続が危う
い時ですから、何とかそれを脱却するために拉致を認めちゃおうじゃないかとい
う時だから、困らせないといけない。
もう一つは、これはあまりよくない例かもしれませんが、こういうことをすれ
ば自分たちがものすごく得をする。拉致を認めて全員返せば、北朝鮮の金正恩政
権がすごく得をするという状況。これが実際にどういうものなのか私には想像が
つきませんが、とにかく現状で安定した北朝鮮情勢が続いていくと、普通であれ
ば安定した継続はいいことだけれども、日本人拉致問題の解決にとってはよくな
い。
やはり北朝鮮の政権が動揺しなければ拉致の解決には動かない。その同様の要
因を作り得るのはやはり超大国のアメリカで、アメリカの動きに関心を向け続け
ざるを得ない。そんな結論です。
◆北朝鮮が拉致への対応を始めたか
西岡 力(救う会会長)
まず過去を振り返らなければならないと思います。私も古森さんと同じ意見で、
強い圧力をかけた時だけ北朝鮮は動きます。その圧力には2種類あり、まず軍事
的圧力そして経済制裁です。金丸訪朝の時チャンスが1回ありました。そして小
泉訪朝の時もあったのですが、今日は触れません。その次のチャンスは米朝首脳
会談だった。
2016年、17年に北朝鮮は40発の弾道ミサイルを撃ちました。3回核実
験をしました。そうしたらトランプ大統領は金正恩のことを「ロケットマン」と
言って、「斬首作戦」をやりました。金正恩氏個人をターゲットにした軍事作戦
です。
「今金正恩氏がどこにいるか私たちは知っています」と当時言っていました。
どこにいるか分かっているから爆撃機を出したのです。その後金正恩の護衛部隊
である護衛司令部の司令官が処刑されました。護衛司令部の中にアメリカに通信
がつながるスマホが入っていた。
アメリカの情報機関が買収して金正恩がどこにいるか教える位置情報を入れた。
これは終わった話ですから言うんですが、本当に分かっていたんです。それくら
い緊張関係があったから米朝首脳会談になったのです。
しかしその時、古森さんは大きな意味で日本は何もできなかったと言いました
が、集団的自衛権の一部を行使できるように法改正をしました。あの時小野寺防
衛大臣が国会で、「グアムが北朝鮮のミサイルで攻撃される時、存立危機事態を
指定すれば日本のミサイルで北朝鮮のミサイルを打ち落とすことができる」とい
う趣旨の答弁をしました。
もちろんアメリカのミサイルで打ち落とすことはできるんですが、日本がアメ
リカを守るという意思を持っているということが信頼関係の基礎にあるわけです。
それは集団的自衛権の安保法制の改正をやってくださったからできることで、軍
事圧力に一部日本も貢献していたから、次の年トランプ大統領が拉致も議題にあ
げて米朝会談ができたのです。
◆トランプ大統領は日本人拉致問題で金正恩に迫ったが核問題で決裂
そしてトランプ大統領が、そのような軍事的緊張があった後、金正恩に会った
時に、3回拉致問題を出したわけです。先ほどおっしゃったように、私たちは2
001年からずっとアメリカを訪問した結果、ホワイトハウスにも行けて、政権
のかなり地位の高い人たちに、「今米朝関係はどうなっていますか」と、そして
その中でアメリカ政府はこういうことをしていると聞ける関係ができていて、も
う自己紹介などは必要なく、「この1年にあったことを言え」と言われるんです。
ではすり合わせをしようという関係ができていた時に聞いたのですが、トラン
プ政権の時、シンガポールで1回拉致問題の解決を直接金正恩に迫ったのです。
金正恩は話をそらした。そして2019年2月のハノイでの会談で、もう一度1
対1の一番大切な会談でまた拉致の解決を迫った。その時も金正恩は別の話題で
逃げた。
しかし翌日の少人数の会談でもう1回トランプ大統領が出した。その時、「意
味のある回答をしました。しかしその内容は家族には教えられませんが、安倍総
理には全部伝えた」とホワイトハウスで教えてくれました。
それを聞いて、「だから安倍さんは条件なしで日朝首脳会談をやると言い始め
たんだな」と思いました。それまでは拉致問題解決に資すすならばという条件が
ついていました。なかったんです。もう金正恩氏に安倍さんの拉致に関するメッ
セージは到達している。一定の返事があった。そういうことがそこで起きていた
のです。
ただハノイでのトランプ・金正恩会談が、1日目は肯定的反応がある所までいっ
たのですが、2日目は午前中に核問題でトランプ大統領が、「少なくともこれ以
上核を作るな。核基地を全部廃止しろ」と言ったら、金正恩は「分かった」と言っ
て、寧辺の核基地しか出さなかったのです。
しかし、核基地は他にもあるわけです。アメリカのCIAはそれをつかんでいた
のです。トランプ大統領は金正恩に、「我々は1日単位であなたたちのやってい
ることを知っていますよ」と言った。そして「あなたは準備できていませんね」
と言って、ランチの約束をキャンセルして帰った。
金正恩があの時、地下核工場、濃縮ウラニウム工場まで出していたら、安倍訪
朝はあったのではないかと私は思っています。なぜなら古森さんも言いましたが、
北朝鮮は強い圧力がかかった時に動くのですが、動くときには絶対代価を取るん
です。利益を取る。各工場を廃止するならそれに金をかけたのだから金をくれと
言うのです。
トランプ大統領は「出さない」と言った。アメリカの法律上、いくら核を止め
てもあのような独裁政権に簡単に経済協力はできないのです。議会が許さない。
「日本は拉致が解決して国交正常化した後、韓国にやったと同じように経済協力
ができると言っている。シンゾーは拉致しか言わないぞ」と金正恩に言ったので
す。
◆北朝鮮は苦しくて米朝会談を考えている
だから私は10月23日の国民大集会で、「今年地対空ミサイルも入れると今
年90発以上撃っている。前回は2年間で40発。ただ今年は核実験はまだして
いない。核実験までした時、あるいはアメリカまで届く大陸間弾道ミサイルがほ
ぼ成功しているこの状況でもう一度緊張が高まるのではないか」と話しました。
残念ながら島田洋一救う会副会長や今の古森さんの話でも、アメリカは北朝鮮
が緊張を高めていても今のところ無視している。議会でもほとんど議論がされて
いません。ただ、これから100発以上になったらどうなるのか。
私が北朝鮮から聞いている内部情報では、金正恩がアメリカの軍事力を恐れて
いることは間違いない。しかし本当に経済が苦しくなって、制裁を緩めさせなけ
ればならない。緊張を高めるだけ高めて、逆にバイデン政権を交渉の場に引きず
り出すことを考えている。
そして核保有国であることを認めさせて、軍縮交渉をしたい。できればアメリ
カまで届くものについては凍結するけれども、戦術核は持つというような計画の
ようです。
◆しかしバイデン政権は「戦略的忍耐」で対応
それで残念ながらバイデン政権には「戦略的忍耐」というものがありますので、
民間人の一部とか、この間は軍縮担当の国務省次官と話をしていましたが、「軍
縮交渉をしてもいいではないか。北朝鮮の核は容易に破棄できない」という議論
が出てきている。
だから「戦略的忍耐」を一歩越えて、北朝鮮を一部核保有国として現状を認め
てしまうのではないかという議論があるということは、北朝鮮にとって大変魅力
的なことです。緊張が高まっていくだろうということで、トランプ政権の時に起
きたような緊張の高まりの後の時のように北朝鮮が困って「会いたい」という交
渉の仕方ではなく、アメリカの方が折れて交渉が始まるかもしれない。
そうなるとなかなか難しいと思いますが、しかし北朝鮮も交渉を求めている中
で、北朝鮮も米朝を動かした後、お金は日本から取ろうと思っていますから日朝
を動かすしかない。
もちろん韓国という手もあるんですが、先ほどの金聖?さんの報告にあったよ
うに、韓国の情報がものすごく入ってきていて、韓国が豊かだということをみん
な知っていることが大変な危機になっている。韓国から大規模な支援をもらうと
いうことは、情報も一緒に入ることになるので、それはできない。
今中国は表向きは支えるふりをしていますが、冷たい。この秋金正恩は70万
トンとか100万トンのコメ支援を要求したという情報があるのですが、断られ
た。
◆岸田総理が「時間的制約」を北朝鮮に発した
そういう中で岸田首相は10月23日の国民大集会で、「北朝鮮については、
日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、
不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指しますが」と言いましたが、
ここまでは歴代政権がずっと言ってきたことです。
そして、「とりわけ、拉致被害者御家族も御高齢となる中で、拉致問題は時間
的制約のある人権問題です」と。先ほど松野官房長官も同じことを言いました。
官房長官は「人道問題」とおっしゃいましたが同じことです。
拉致だけについて、「時間的制約」という言葉が入りました。特に、これだけ
ミサイルが撃たれている中でです。櫻井さんが岸田総理に、「こういうことをおっ
しゃいましたよね。その背景は何ですか」と迫ったら、岸田総理は、「被害者家
族に向けた言葉ではなく金正恩委員長に向けた言葉です。北朝鮮は当然私の発言
をチェックしています。どんな文章にするか推敲を重ねました。そして『時間的
制約』という言葉に到達した。拉致が核・ミサイルと並べられることに違和感を
持つ家族が多い。北朝鮮の核・ミサイルは命を危険にさらす脅威です。他方、拉
致は人権問題で恒例となったご家族にとって一国の猶予も許されない『時間的制
約』のある問題なのです。核・ミサイルとは別次元で考えなければならない」と。
別次元という言葉を総理が使っています。そして、「従来のやり方ではなく、
新たなアプローチを考えなければならない。被害者家族からもトップ同士の会談
をしてほしいと聞いています」という言葉が話されています。
トランプ政権の時とは違うというアメリカの変数はありますが、トランプ政権
の時よりも北朝鮮の経済は苦しい。コロナで中朝貿易が完全に遮断されたことも
あり、内部情報にもありましたが、「苦難の行軍の時と同じ」と言われています。
300万人の餓死者が出た時と同じという噂が金正恩にされている状況です。
その中で岸田総理のメッセージは、「親の世代が生きている間です。時間的制
約があるんですよ。時間的制約があることをあなたが理解するなら拉致を別次元
で考えればできることがありますよ」というメッセージを出した。「それは金正
恩氏に向けた言葉でもあります」と岸田総理が言っています。
それを北朝鮮がどう受け止めるかです。これ以上は分からないですが、私に入っ
てきた北朝鮮の内部情報では、「平壌にも報告された。岸田総理がそう言ったこ
とを重く首脳が受け止めている」というものでした。
「但しその場合にも日本からお金を取るのだったら、アメリカと全く話をしな
いでやることはできないから米朝と日朝を順番にやるか、併行して進めるしかな
いと検討している」という内容でした。
しかし、トランプ・安倍の関係とは岸田政権は違いますのでそこを北朝鮮がど
う見るかです。私たちがこの状況をどう見て大きな動きの中に入っていく。それ
と全員返すことを金正恩氏が決断することは別ですので、一番難しい。秘密をた
くさん知っている人をどうするか。「死んだ」人をどうするかということになる
わけですから、大きな動きができた時、どうやって全員を取り戻すかを考えなけ
ればいけない。
しかし、何か起きるのではないか。岸田総理が玉を投げたと私は思っています
(拍手)。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
■岸田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
https://www.kantei.go.jp/jp/iken.html
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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■緊張する朝鮮半島情勢下での全拉致被害者救出国際セミナー5
◆議会と世論は拉致に関心
古森 では日本はどうするか。アメリカはバイデン政権だけじゃない。バイデン
政権に反対する議会の強い、強い意見があり、その中には与党の民主党の議員た
ちも入っています。「北朝鮮の人権問題をもっと強く提起していかなければなら
ない」という意見。その大きな意見の中に、「日本人拉致問題は北朝鮮の非道な
人権弾圧の体質を持った政権の特徴の一つだ」というのがあるわけです。
議会の中では非常に強く、非常に細かく拉致問題をフォローしている人がいっ
ぱいいます。明日のシンポジウムでもそういう人が発言します。ここにおられる
古谷先生などもアメリカの議会によく行って、「アメリカ人で北朝鮮に拉致され
たと思われる人を助けるためにこうしましょう、日米連携でこうしましょう」と
いうことをやって、かなりの反響があります。
それから世論があります。マスコミに象徴される世論ですが、日本人拉致問題
というのはどういうわけかブッシュ大統領が横田早紀江さんを非常に尊重してお
り、私もそれをフォローしていたのですが、横田早紀江さんと拓也さんに会った
後は、「大統領をやっているといいことがいっぱいある。日本人の母親が自分の
娘のためにこういうことを言っていた。こんな昼間にビーンとくる話はあまりな
いんだよ。大統領であるからこそ私はこういう話が聞けた」と、こちらが質問も
していないのに、事あるたびに言っていたんです。
こういうことは報道されますから、そういう意味でも日本人拉致問題に関する
認識がかなり高くなっていた。その延長でトランプ大統領も、国連の演説で言っ
てくれたわけですから、かなりの程度本気でなかったら口にしないことです。
日本はどうすべきかですが、アメリカのバイデン政権がちょっと引いたとして
も、引いてない人たちやメディアがあるんです。そういうところにアピールをす
るべきだと思います。民主主義の国ですから国民の声、メディアの意見は大きい
のです。
しかしそれよりもここで改めて考えるべきは、アメリカがもし引くのであれば、
何とか日本自身がイニシアティブをもっと強くして、先ほど松原先生がおっしゃ
いましたが、「朝鮮総連に対して何かできるのではないか」とか、「日本独自で
もっとできることがあるのではないか」ということを、アメリカでちょっとブレー
キがかかったことを機会にして、もう少し我々は真剣に日本自身がやるべきこと
を考えるいいチャンスじゃないかと思います。
◆韓国で政権が代わり米韓軍事演習が復活
全体として、アメリカが日本人拉致問題に関心を向けているという大きな流れ
は変わりません。韓国が日本にとってはよりよい政権になったわけで、よくなかっ
た政権の時代に止めていた米韓の軍事演習をまたもとに戻してやっている。何か
新しいものが突出してきたのは日本にとってもいいことで、結論として金正恩政
権が拉致問題で希望通り動くのは、非常に困った時です。自分たちの存続が危う
い時ですから、何とかそれを脱却するために拉致を認めちゃおうじゃないかとい
う時だから、困らせないといけない。
もう一つは、これはあまりよくない例かもしれませんが、こういうことをすれ
ば自分たちがものすごく得をする。拉致を認めて全員返せば、北朝鮮の金正恩政
権がすごく得をするという状況。これが実際にどういうものなのか私には想像が
つきませんが、とにかく現状で安定した北朝鮮情勢が続いていくと、普通であれ
ば安定した継続はいいことだけれども、日本人拉致問題の解決にとってはよくな
い。
やはり北朝鮮の政権が動揺しなければ拉致の解決には動かない。その同様の要
因を作り得るのはやはり超大国のアメリカで、アメリカの動きに関心を向け続け
ざるを得ない。そんな結論です。
◆北朝鮮が拉致への対応を始めたか
西岡 力(救う会会長)
まず過去を振り返らなければならないと思います。私も古森さんと同じ意見で、
強い圧力をかけた時だけ北朝鮮は動きます。その圧力には2種類あり、まず軍事
的圧力そして経済制裁です。金丸訪朝の時チャンスが1回ありました。そして小
泉訪朝の時もあったのですが、今日は触れません。その次のチャンスは米朝首脳
会談だった。
2016年、17年に北朝鮮は40発の弾道ミサイルを撃ちました。3回核実
験をしました。そうしたらトランプ大統領は金正恩のことを「ロケットマン」と
言って、「斬首作戦」をやりました。金正恩氏個人をターゲットにした軍事作戦
です。
「今金正恩氏がどこにいるか私たちは知っています」と当時言っていました。
どこにいるか分かっているから爆撃機を出したのです。その後金正恩の護衛部隊
である護衛司令部の司令官が処刑されました。護衛司令部の中にアメリカに通信
がつながるスマホが入っていた。
アメリカの情報機関が買収して金正恩がどこにいるか教える位置情報を入れた。
これは終わった話ですから言うんですが、本当に分かっていたんです。それくら
い緊張関係があったから米朝首脳会談になったのです。
しかしその時、古森さんは大きな意味で日本は何もできなかったと言いました
が、集団的自衛権の一部を行使できるように法改正をしました。あの時小野寺防
衛大臣が国会で、「グアムが北朝鮮のミサイルで攻撃される時、存立危機事態を
指定すれば日本のミサイルで北朝鮮のミサイルを打ち落とすことができる」とい
う趣旨の答弁をしました。
もちろんアメリカのミサイルで打ち落とすことはできるんですが、日本がアメ
リカを守るという意思を持っているということが信頼関係の基礎にあるわけです。
それは集団的自衛権の安保法制の改正をやってくださったからできることで、軍
事圧力に一部日本も貢献していたから、次の年トランプ大統領が拉致も議題にあ
げて米朝会談ができたのです。
◆トランプ大統領は日本人拉致問題で金正恩に迫ったが核問題で決裂
そしてトランプ大統領が、そのような軍事的緊張があった後、金正恩に会った
時に、3回拉致問題を出したわけです。先ほどおっしゃったように、私たちは2
001年からずっとアメリカを訪問した結果、ホワイトハウスにも行けて、政権
のかなり地位の高い人たちに、「今米朝関係はどうなっていますか」と、そして
その中でアメリカ政府はこういうことをしていると聞ける関係ができていて、も
う自己紹介などは必要なく、「この1年にあったことを言え」と言われるんです。
ではすり合わせをしようという関係ができていた時に聞いたのですが、トラン
プ政権の時、シンガポールで1回拉致問題の解決を直接金正恩に迫ったのです。
金正恩は話をそらした。そして2019年2月のハノイでの会談で、もう一度1
対1の一番大切な会談でまた拉致の解決を迫った。その時も金正恩は別の話題で
逃げた。
しかし翌日の少人数の会談でもう1回トランプ大統領が出した。その時、「意
味のある回答をしました。しかしその内容は家族には教えられませんが、安倍総
理には全部伝えた」とホワイトハウスで教えてくれました。
それを聞いて、「だから安倍さんは条件なしで日朝首脳会談をやると言い始め
たんだな」と思いました。それまでは拉致問題解決に資すすならばという条件が
ついていました。なかったんです。もう金正恩氏に安倍さんの拉致に関するメッ
セージは到達している。一定の返事があった。そういうことがそこで起きていた
のです。
ただハノイでのトランプ・金正恩会談が、1日目は肯定的反応がある所までいっ
たのですが、2日目は午前中に核問題でトランプ大統領が、「少なくともこれ以
上核を作るな。核基地を全部廃止しろ」と言ったら、金正恩は「分かった」と言っ
て、寧辺の核基地しか出さなかったのです。
しかし、核基地は他にもあるわけです。アメリカのCIAはそれをつかんでいた
のです。トランプ大統領は金正恩に、「我々は1日単位であなたたちのやってい
ることを知っていますよ」と言った。そして「あなたは準備できていませんね」
と言って、ランチの約束をキャンセルして帰った。
金正恩があの時、地下核工場、濃縮ウラニウム工場まで出していたら、安倍訪
朝はあったのではないかと私は思っています。なぜなら古森さんも言いましたが、
北朝鮮は強い圧力がかかった時に動くのですが、動くときには絶対代価を取るん
です。利益を取る。各工場を廃止するならそれに金をかけたのだから金をくれと
言うのです。
トランプ大統領は「出さない」と言った。アメリカの法律上、いくら核を止め
てもあのような独裁政権に簡単に経済協力はできないのです。議会が許さない。
「日本は拉致が解決して国交正常化した後、韓国にやったと同じように経済協力
ができると言っている。シンゾーは拉致しか言わないぞ」と金正恩に言ったので
す。
◆北朝鮮は苦しくて米朝会談を考えている
だから私は10月23日の国民大集会で、「今年地対空ミサイルも入れると今
年90発以上撃っている。前回は2年間で40発。ただ今年は核実験はまだして
いない。核実験までした時、あるいはアメリカまで届く大陸間弾道ミサイルがほ
ぼ成功しているこの状況でもう一度緊張が高まるのではないか」と話しました。
残念ながら島田洋一救う会副会長や今の古森さんの話でも、アメリカは北朝鮮
が緊張を高めていても今のところ無視している。議会でもほとんど議論がされて
いません。ただ、これから100発以上になったらどうなるのか。
私が北朝鮮から聞いている内部情報では、金正恩がアメリカの軍事力を恐れて
いることは間違いない。しかし本当に経済が苦しくなって、制裁を緩めさせなけ
ればならない。緊張を高めるだけ高めて、逆にバイデン政権を交渉の場に引きず
り出すことを考えている。
そして核保有国であることを認めさせて、軍縮交渉をしたい。できればアメリ
カまで届くものについては凍結するけれども、戦術核は持つというような計画の
ようです。
◆しかしバイデン政権は「戦略的忍耐」で対応
それで残念ながらバイデン政権には「戦略的忍耐」というものがありますので、
民間人の一部とか、この間は軍縮担当の国務省次官と話をしていましたが、「軍
縮交渉をしてもいいではないか。北朝鮮の核は容易に破棄できない」という議論
が出てきている。
だから「戦略的忍耐」を一歩越えて、北朝鮮を一部核保有国として現状を認め
てしまうのではないかという議論があるということは、北朝鮮にとって大変魅力
的なことです。緊張が高まっていくだろうということで、トランプ政権の時に起
きたような緊張の高まりの後の時のように北朝鮮が困って「会いたい」という交
渉の仕方ではなく、アメリカの方が折れて交渉が始まるかもしれない。
そうなるとなかなか難しいと思いますが、しかし北朝鮮も交渉を求めている中
で、北朝鮮も米朝を動かした後、お金は日本から取ろうと思っていますから日朝
を動かすしかない。
もちろん韓国という手もあるんですが、先ほどの金聖?さんの報告にあったよ
うに、韓国の情報がものすごく入ってきていて、韓国が豊かだということをみん
な知っていることが大変な危機になっている。韓国から大規模な支援をもらうと
いうことは、情報も一緒に入ることになるので、それはできない。
今中国は表向きは支えるふりをしていますが、冷たい。この秋金正恩は70万
トンとか100万トンのコメ支援を要求したという情報があるのですが、断られ
た。
◆岸田総理が「時間的制約」を北朝鮮に発した
そういう中で岸田首相は10月23日の国民大集会で、「北朝鮮については、
日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、
不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指しますが」と言いましたが、
ここまでは歴代政権がずっと言ってきたことです。
そして、「とりわけ、拉致被害者御家族も御高齢となる中で、拉致問題は時間
的制約のある人権問題です」と。先ほど松野官房長官も同じことを言いました。
官房長官は「人道問題」とおっしゃいましたが同じことです。
拉致だけについて、「時間的制約」という言葉が入りました。特に、これだけ
ミサイルが撃たれている中でです。櫻井さんが岸田総理に、「こういうことをおっ
しゃいましたよね。その背景は何ですか」と迫ったら、岸田総理は、「被害者家
族に向けた言葉ではなく金正恩委員長に向けた言葉です。北朝鮮は当然私の発言
をチェックしています。どんな文章にするか推敲を重ねました。そして『時間的
制約』という言葉に到達した。拉致が核・ミサイルと並べられることに違和感を
持つ家族が多い。北朝鮮の核・ミサイルは命を危険にさらす脅威です。他方、拉
致は人権問題で恒例となったご家族にとって一国の猶予も許されない『時間的制
約』のある問題なのです。核・ミサイルとは別次元で考えなければならない」と。
別次元という言葉を総理が使っています。そして、「従来のやり方ではなく、
新たなアプローチを考えなければならない。被害者家族からもトップ同士の会談
をしてほしいと聞いています」という言葉が話されています。
トランプ政権の時とは違うというアメリカの変数はありますが、トランプ政権
の時よりも北朝鮮の経済は苦しい。コロナで中朝貿易が完全に遮断されたことも
あり、内部情報にもありましたが、「苦難の行軍の時と同じ」と言われています。
300万人の餓死者が出た時と同じという噂が金正恩にされている状況です。
その中で岸田総理のメッセージは、「親の世代が生きている間です。時間的制
約があるんですよ。時間的制約があることをあなたが理解するなら拉致を別次元
で考えればできることがありますよ」というメッセージを出した。「それは金正
恩氏に向けた言葉でもあります」と岸田総理が言っています。
それを北朝鮮がどう受け止めるかです。これ以上は分からないですが、私に入っ
てきた北朝鮮の内部情報では、「平壌にも報告された。岸田総理がそう言ったこ
とを重く首脳が受け止めている」というものでした。
「但しその場合にも日本からお金を取るのだったら、アメリカと全く話をしな
いでやることはできないから米朝と日朝を順番にやるか、併行して進めるしかな
いと検討している」という内容でした。
しかし、トランプ・安倍の関係とは岸田政権は違いますのでそこを北朝鮮がど
う見るかです。私たちがこの状況をどう見て大きな動きの中に入っていく。それ
と全員返すことを金正恩氏が決断することは別ですので、一番難しい。秘密をた
くさん知っている人をどうするか。「死んだ」人をどうするかということになる
わけですから、大きな動きができた時、どうやって全員を取り戻すかを考えなけ
ればいけない。
しかし、何か起きるのではないか。岸田総理が玉を投げたと私は思っています
(拍手)。
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■岸田首相にメール・葉書を
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下記をクリックして、ご意見を送ってください。
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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
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