救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

令和5年 拉致被害者救出への展望2(2023/02/01)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2022.02.01)

■令和5年 拉致被害者救出への展望2

◆岸田総理の「時間的制約」は、親世代が元気な内に帰ってくること

 そこにこめられたメッセージは、まず「時間的制約がある」ということと、
「人権問題」という所です。そしてさきほど拓也さんが触れた、「双方に利益が
ある」ことです。まず、「時間的制約」の意味は、私たちは、「親世代の家族会
メンバーが存命な間に、あるいは元気な間に被害者が帰って来なければ解決とは
言えませんよ」と。北朝鮮は日本からの大規模な支援や人道支援を望んでいるの
でしょう。当初から活動していた親の世代は横田早紀江さんと有本明弘さんの2
人になってしまった。だから代表も3代目で、兄弟の世代なわけです。

 めぐみさんが帰ってきたとしても、早紀江さんと抱き合うことができない時期
に帰ってきたら、日本人は、「なぜ早紀江さんが元気な内に返さなかったのか」
となりますよ。そうしたら、「よかったなあ」とはなりませんよ。「北朝鮮はけ
しからん」となりますよ。「そういう世論が盛り上がる中で大規模な支援や人道
支援はできませんよ」。

 拓也さんは、2002年の9月の例を引きましたが、小泉総理は早急に国交正
常かえ押して大規模な経済協力をする」と約束して平壌宣言にサインしたわけで
す。そして拉致問題については、「拉致」という言葉は使いませんでしたが、
「再発防止策を約束した」というようなことしか書いてなかったのです。

 しかし、世論が「拉致は本当だったのだ」と理解し、また「8人死亡」と言っ
ているけれど、その死亡の証拠は何もないじゃないかということが分かって、
「これはおかしいじゃないか。こんなに簡単に国交正常化はできない。拉致問題
が解決するまでは反対だ」と盛り上がったので、止まってしまったのです。同じ
ことが起きますよということで、私たちは「親の世代が元気な間」という言葉を
使ってきましたが、政府が外交や様々なことを考えて作ったのが「時間的制約」
という言葉でした。

 北朝鮮にとっても制約があるのですよということです。彼らがめぐみさんたち
を今かかえているのは、いつか100億ドル、1兆円とも言われている日本の経
済協力はできないということです。

 100億ドルという数字は噂話ではなく、太永浩(テ・ヨンホ)さんという今
韓国の国会議員になった脱北者は、亡命する前は北朝鮮の外交官でした。駐イギ
リス北朝鮮公使だった。その太永浩さんは2002年9月は外務省の外交官とし
て平壌にいた。彼はその時なにがあったのか、本を書いています。

 2002年9月に、午前中のセッションで、小泉・金正日会談が始まる前に外
務省が紙を持ってきて、「5人生存、8人死亡」と伝えた。「赤十字の調査の結
果」という形式で伝えたのですが、午前のセッションで小泉総理は抗議をした。

 金正恩委員長はそれには何も答えなかった。北朝鮮のシナリオは、「拉致問題
は赤十字の調査で終わらせる。首脳会談では取り上げない」というものだった。
ところが昼食の時に、安倍晋三さんが当時官房副長官として小泉総理に同行して
いたのですが、隠しマイクがあることを意識して、「総理、金正日氏が拉致を認
めて謝罪しないのなら平壌宣言にサインしないで帰りましょう」と言った。

 それが金正日氏に伝わった。そして午後のセッションで突然、金正日氏が拉致
を認めて謝罪したのです。それを受けて平壌の外務省では、「大変なことが起き
た。将軍様に謝罪をさせてしまった。誰の責任だ。外務省が責任を取らされるの
ではないか」と騒ぎになった。日朝首脳会談を仕切ったのは北朝鮮の外務省なん
です。だから姜錫柱さん(カン・ソクジュ)という外務副大臣が横に座っていた
のです。

 それまで金丸訪朝などを仕切ったのは、党の統一戦線部で、工作機関でした。
金容淳さんがトップの横に座っていた。小泉訪朝の時は外務省が仕切ったのです。
そこで、首領様に謝罪をさせることが起きてしまった。これは大問題となったそ
うです。

 そうしたら副大臣の姜錫柱が、太永浩さんを含む平壌にいる外交官を集めて、
講演をした。「安心しろ。将軍様が外務省のことを怒っていない。日本の総理大
臣の謝罪を直接取ったことは、大きな成果だ。そして100億ドルが来るんだ」
と言ったそうです。

 100億ドルという金額は太永浩さんが初めて言及したのではなく、10年く
らい前に私たちが12月の北朝鮮人権週間の時にやった国際セミナーで、日本に
招聘した張真晟さん(チャン・ジンソン、亡命者)さんという統一戦線部の元幹
部が東京に来て、「100億ドルという話を聞きました」と話していました。

 私が調べた所、今ソウルにいて、2002年9月に平壌にいたかなり高い地位
の人たちが何人もいます。太永浩さん、張真晟さんを含む合計5人が「100億
ドルの話を聞いた」と言っています。日本政府はそれを公式に認めていません。
小泉政権は認めていません。

 安倍さんが総理大臣になって、田中均局長とミスターXとの間で裏交渉があっ
た、と。それが小泉訪朝を準備したのですが、「その交渉の記録を持ってきなさ
い」と総理として言ったわけです。秘密文書も総理なら見れるわけです。そうし
たら直前の2回分の記録がなかった。外務省が公文書を破棄したのか、どこかに
持って行ったのか。残っていなかったのです。

 それで安倍さんが大変怒って、それを「産経新聞」が書きました。多分その2
回の記録の中に「100億ドル」のことが書いてあった可能性が高い。北朝鮮側
からすると、小泉さんは100億ドル約束した。彼らは日本から100億ドル取
れると思った。しかし、それが取れなかったのは拉致問題なんだと思っています。

 その100億ドルを取るためには拉致問題を解決し、この人たちをいつかは返
さなければならない時が来る、と。私が聞いているのでは、待遇はよくしている。
病気で亡くなったりしては人質として使えなくなる。そういうことは聞いていま
す。

 しかし、そういうことを前提として岸田総理の「時間的制約」という言葉を位
置付けると、「日本側は100億ドルを約束したとあなたたちは思っているだろ
うけど、それは無期限ではないですよ」ということになるわけです。いつでも貰
えるわけではない。拉致問題が解決しなければ国交正常化はしないことになるわ
けですが、その「解決」は、親世代が元気な内に帰ってくることなんだ、という
ことです。そういうことを総理が初めて公開の席で発言されたということです。

◆「国家安保戦略」にも「拉致問題は時間的制約のある深刻な人道問題」と

 そしてその後、松野官房長官等みんながこのフレーズで発言しています。今話
題の、去年12月に出た「国家安保戦略」という文書がありますね。日本の安保
政策を大きく転換させたもので、「反撃能力を日本が持つ」ということを書いた
り、「この5年間で防衛力を大規模に増加させる」ということが書いてある文書
です。

 その中にも拉致問題が書いてあります。実は前回の「国家安保戦略」平成25
年版でも拉致問題は書いてありました。しかし、「この問題の解決失くして北朝
鮮との国交正常化はありえない」とだけ書いてあったのですが、今回は「拉致問
題については時間的制約のある深刻な人道問題であり、その解決失くしては北朝
鮮との国交正常化はありえない」とあります。「時間的制約」のあとに、「深刻
な人道問題」だとしています。

 総理の挨拶は挨拶ですが、この「国家安保戦略」は、閣議決定(12月16日)
されています。そして日本の安全保障の最高文書です。これに基づいて少なくと
もあと5年間の基本方針が決まったのです。そこに、「時間的制約のある深刻な
人道問題」と書かれた。「時間的制約」というキ?フレーズを今政府は繰り返し
発信しているのです。

 それは向こうからすると、いつか貰わなければならない100億ドルについて
の日本側の新たな条件に見えますし、そう見えるような言葉使いをしています。

◆核・ミサイルが解決しなくても人道支援は別

 もう一つ、お気づきかもしれませんが、岸田総理は「時間的制約のある人権問
題」とおっしゃったのですが、その後政府は「人道問題」と言っています。少し
変えたのです。「国家安保戦略」でも、「時間的制約のある深刻な人道問題」と
しています。人権問題と人道問題はほぼ似たような概念ですが、「人道」という
言葉に変えています。

 「時間的制約のある」という言葉にも意味がありますが、「人道問題」という
言葉にも意味があります。先ほども言いましたが、日本は国連制裁を守らなけれ
ばならない立場です。核・ミサイルが主たる理由で国連が制裁をかけています。
しかし、「人道支援」は国連制裁の対象ではないんです。

 日本から北朝鮮に出すことができる支援は2種類あります。1つは人道支援で
す。それは国交正常化の前、核・ミサイル問題が解決する前でも出すことが論理
的にはできる。そしてもう一つは「平壌宣言」で約束した、繰り返し政府も言っ
ていた、「拉致、核・ミサイルを一括解決して、諸懸案を一括解決して不幸な過
去を清算して、国交正常化して経済協力をする」と。

 100億ドルというのは、韓国には1965年に5億ドルの経済協力をしたの
です。それの物価スライドで計算すると100億ドル、という人がいます。北朝
鮮からすると、それは貰えるものと思っているわけです。

 その前に、「人道支援は別ですよ」という言葉が、「時間的制約のある人道問
題」という言葉にも込められている、と私は解釈しています。人道問題である拉
致問題が解決するなら、あるいは人道問題である拉致被害者が家族と会えるなら、
日本も人道支援をしてもいい。

◆真相究明、実行犯の引き渡しは後でいい

 ここでですね、日本政府の拉致問題の解決の定義をもう一度頭に浮かべてくだ
さい。第一次安倍政権の時に、政府は拉致問題の解決の定義をこう決めました。
3つあります。1)認定の有無に関わらずすべての拉致被害者の安全確保と帰国、
2)真相究明、3)実行犯の引き渡し、です。

 この3つが実行されて初めて「解決」と言えるのです。解決して初めて国交正
常化ができるというのが、今まで日本政府が言っていたことです。私たちはその
内、2)と3)は後でもいいと思っています。人道支援の実施に関しては、2)
と3)はつけなくてもいい。

 先ほど言ったように、日本から北朝鮮に行える支援は2種類あります。人道支
援と国交正常化の後の大規模な経済協力です。国交正常化は拉致問題の解決が条
件ですから1)2)3)が解決しなければならない。しかし、「目の前の時間的
制約のある人道問題」は何かというと、40年以上被害者が日本に帰れないでい
るということです。

 人質を取って犯人が立てこもった時、その問題の解決は人質を無事に取り戻し、
犯人を逮捕するということです。でも犯人逮捕を先にはしないんです。人質の安
全確保で犯人と交渉するわけです。食料がほしいと言えば出したりするわけです。
ある時には逃走用の車を準備して渡して、人質を取り返したりするんです。

 同じ側面が拉致問題にもあるわけです。まず第一にしなければならないのは、
今生きて日本からの助けを待っているすべての被害者を、一日も早く取り戻すこ
とです。その後、真相究明、実行犯の引き渡しです。

 なぜ第一次安倍政権が「実行犯の引き渡し」と言ったのか。「犯人」とは言わ
なかった。「犯人」と言うと命令者も入ります。命令したのは金正日だった。金
正日政権の時に、「金正日を捕まえるぞ」と言っても交渉にはならないから、言
葉も一つひとつよく考えているなと思います。本来なら彼は命令者ですから責任
があるのです。

 しかし、人質事件の時に、「お前は死刑だぞ」とは言わないんです。「人質に
手を触れるなよ」と言います。そして「条件は何だ」と聞くわけです。まずは被
害者の安全を確保することが絶対に必要なことです。だから1)は「安全確保と
帰国」なんです。

 しかしそこでちゃんと、「認定の有無に関わらず」という言葉が入っています。
認定していない人も助けるというのが日本政府の方針なんです。私たちも、1)
2)3)の内、1)を最優先にしてほしいと思っています。そして1)が実現す
るのであれば、人道支援をすることに反対しない。そういう整理をしたいと思っ
ています。

 それが繰り返し拓也さんたちが言ってきた、「日本は今すぐできることと解決
しなければできないことの2つがある。できることを使って北朝鮮と相互の利益
をはかってほしい」ということです。そういう言葉使いが初めて岸田総理の発言
に入りました。安倍さんも言わなかった。内心何を考えていたかは別ですが、公
式に国民大集会で言う。それだけでなく、「国家安保戦略」にも書き込んで、今
強いメッセージを北朝鮮に発信しているのです。

 「原稿を読んで挨拶に力がなかった」と批判する人もいましたが、一言間違え
たら大変なことになるメッセージで、慎重に文章を作っていますから、私みたい
な民間人が思い付きで話すのではないので、練りに練った文章をちゃんと読んだ
ということです。

 だから繰り返し出てくるわけです。「国家安保戦略」にも「時間的制約のある
深刻な人道問題」と書いているのにニュースになっていないんです。どこも報道
していない。私だけが、「わーすごい」と思って、12月22日の救う会のメー
ルニュースに書きましたが、これは岸田政権が拉致問題を最優先課題にしている
ということとつながるのです。

 「国家安保戦略」では、国民大集会の時と同じ表現で、しかも「深刻な」と形
容詞を付けた。戦略的発信をずっとしているなと見ています。

◆岸田メッセージは北朝鮮に届いている

 そしてこのメッセージは北朝鮮に届いています。私たちの集会は絶対北朝鮮が
見ていますし、私が聞いたところでは、朝鮮総連関係者がそれを見て平壌に伝え
たそうです。私もラインがないわけではないので、すぐ朝鮮語に翻訳して、岸田
さんの動画も付けて、本当に言ったのだぞということを平壌に伝えてくれと頼み
ました。様々なルートで伝わっていると聞いています。

(3につづく)


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■岸田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿

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