救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

家族会・救う会の新運動方針2(2023/04/05)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2022.04.05)

■家族会・救う会の新運動方針2

◆市場で主食を変えず食糧危機に

 市場で食料を買わないと生きていけないのに、今市場で米ととうもろこしの販
売が禁止されています。不作だけでなく政策の混乱もあり、今の食糧危機がより
深刻化し、治安が悪化しています。

 2月6日に韓国の「聯合ニュース」が、山間部だけではなく、韓国に近い古都
の開城で、「毎日数十人の餓死者が出ている」とのニュースを報道しました。
「情報筋によると、開城では毎日数十人の餓死者が出ている。厳寒も相まって暮
らしが立ち行かず、自殺者も出ている」と。

 「報告を受けた金正恩氏は先月中旬(1月)にようやく幹部を派遣した後、同
市を対象に、『2月から食糧を国低価格の半分で配給すること』と指示した」。
これは2月の指示ですから1月から餓死者が出ていた。「だが混乱が深まったこ
とから先月末に側近を現地に送り、『無償配給』に変更したという」と。

 「北朝鮮メディアが『愛国米の献納運動』に言及することも増えた。農民に献
納を呼び掛けたり、地方や中央機関幹部の穀物献納のニュースを伝えたりしてい
る」、「韓国政府当局は北朝鮮が金正恩氏の指示で昨年末、市場を締め出して穀
物の生産と流通を統制する『新糧穀政策』を打ち出して以降、食糧調達に深刻な
問題が起きていると見ているようだ」。

◆北朝鮮統一部が餓死を認めた

 実は韓国政府も当初は餓死が起きていることを認めていなかったのです。しか
し2月になって、ちょうどこの報道のあたりで、統一部が餓死が起きていること
を認めました。ただ韓国政府は、食糧全体が足りないのではなく、「新糧穀政策」
の失敗と見ていると、国会等では言っています。

 この記事だけでは状況が分からないですね。この記事の中にある3つのキーワー
ドを理解しないと、この記事あるいは北朝鮮で今起きていることが分からないの
で、それを解説します。

 まず「配給」です。開城で「2月から食糧を国低価格の半分で配給すること」
になり、その後「無償配給に変更した」とあります。開城では配給があることを
前提に書かれていますが、1995年以前は主食は配給制でした。市場で主食を
売ってはいけなかったのです。

 ところが、1995年以降配給が止まったのです。止まったと言っても、正月、
金正日の誕生日、金日成の誕生日、お盆には1月のうち1週間分程配給がありま
した。しかしそれでは飢え死にしてしまう。95年から配給が止まって、党に忠
誠心を持って闇市で商売をしない人たち、市場で米を買わない人たちが次々に死
に始めた。

◆1995年?98年に300万人餓死

 私は、韓国に97年に亡命した黄長●(火へんに華、ファン・ジャンヨプ)さ
んという労働党の元幹部に直接会って話を聞いたことがあります。黄さんの亡命
の動機はいくつかありますが、一番大きなものは、「労働者や農民が餓死してい
て、これが社会主義化と思った」ということです。

 95年に黄さんは、どうもおかしいと思って、自分の側近を組織指導部に送っ
た。組織指導部が党の中では一番権力を持っていて、当時も今もそうですが、そ
この人口問題の担当者が96年11月くらいに言ったことですが、「95年に5
0万人死んだ。96年の11月までに100万人死んだ」、と。「このままで行
くと97年も100万人くらい死ぬだろうと党の組織指導部が見ている」という
ことを聞いたそうです。

 その時の餓死は、配給があったのがなくなったからです。95年から98年ま
でに300万人くらい死んでいます。当時ソウルにあったアメリカ大使館が秘密
の電報をワシントンに打っています。「ワシントンタイムズ」という統一教会系
の新聞がありますが、そこの辣腕記者でビル・ゲーツさんというアメリカの軍関
係に強い人ですが、彼が秘密電報を入手して本で公開しました。

 「数百万人の餓死者が出ている」と当時のアメリカは把握していました。中国
のシンクタンクも同じような報告書を出しています。日本では、公開情報では私
が一番早く、「数十万人から百万人の餓死者が出ている」と書きました。

 今配給はそうなっているかというと、基本的に止まっています。餓死者がでな
かったのは、みんな商売で食べていたからです。市場で食料を買って食べている
のです。配給では食べていない。配給を貰える人たちは特権階級です。その配給
も量が多かったりすると、それを貯めています。

 配給があると言っても買うんです。国低価格は当時市場の価格の100分の1
くらいだった。すごい特権です。98年頃以降は、北朝鮮は市場社会になってい
ます。チャンマダン(市場)を最初私は闇市と訳したのですが、それが公認され
てチャンマダンで商売するには場所代を政府に出さなければならなかった。配給
で国民に食べさせることを政府が放棄したんです。

◆市場を中心とする市場経済が黙認されていた

 ところで、「開城で2月から食糧を国低価格の半分で配給することになり、そ
の後無償配給に変更した」という記事ですが、今国営商店の価格が上がっていま
す。餓死者が出ているから配給すると言っても、国営商店ではかなり高い値段だ
からそれでは買えないという騒ぎが起きたから金正恩が「無償にしろ」と言った
という流れですが、今起きている飢餓の背景には、みんなが商売で食べていると
いう状況の中で、「新糧穀政策」が打ち出されたということがあります。

 実はこれまで商売で食べていけていたのですが、これは事実上の市場経済社会
になったことを意味します。「北朝鮮のチャンマダンでは核・ミサイル以外何で
も売っている」と言われていました。食糧は国産のものが多いのですが、それ以
外の工業製品はほとんど中国製だった。中国から安い物が入ってきていた。

 そしてチャンマダンで使われる通貨も中国の人民元でした。「北朝鮮のウォン
で帰るのはネギと豆腐ぐらい」だった。北朝鮮製の工業製品は売ってない。チャ
ンマダンの米の値段をモニタリングしている人たちがいるのですが、だいたい旧
満州地域の米の値段とリンクしていて、北朝鮮で値段が上がると中国から持ち込
まれる。北朝鮮の方が安いと中国に持ち出される。

◆新興富裕層の出現

 そういうことをやる中で、トンジュ(金主)と言われる新興富裕層が出てきて、
一時は経済がうまくいっていました。私は耳を疑ったのですが、トンジュが全国
でガソリンスタンドを経営するようになった。全国でバスが通っていて、そのガ
ソリンスタンドで給油する。だから流通も盛んになってきた。

 それどころか、北朝鮮の鉄道省に賄賂を渡して、鉄道のダイヤの一部を買うよ
うになった。そして中国からディーゼル機関車と客車と貨車を買ってきて、私鉄
を始めた。表向きは鉄道省が走らせたことになっていますが。

 北朝鮮のレールは悪いので時間がかかるのですが、高い値段で安心して乗れる
私鉄が走っている。平壌でもタクシーがいっぱいあるという目撃情報もあり、
「経済制裁は効いているのか」、「北は豊かになっているじゃないか」という話
が一時ありましたが、それを調べると、市場を中心とする市場経済が黙認されて
いたわけです。金正恩委員長は、ある面で評判がよかったのです。

◆市場をつぶすための「新経済政策」

 金正日氏が権力を持っていた時に大規模な餓死が起きたわけです。94年に金
日成が死んで、その次の年から餓死が起きたのですが、チャンマダンについて苦
々しく思っていて、それを2回つぶそうとしたのです。

 2002年の小泉訪朝の直前の7月に「新経済政策」というのを発表して、人
民の給料を100倍にしたのです。今5000ウォンですが、当時は50ウォン
だった。チャンマダンの物価が国営商店の物価の100倍だから給料を100倍
にすれば買えるだろうと思ったのですが、チャンマダンの物価もまた100倍に
上がってしまった。

 そこで次に100分の1にするというデノミをやったのです。そうすると、結
果として同じようにチャンマダンの物価が上がったのです。

◆金正恩の秘密資金で核・ミサイル開発、これに制裁をかけた

 金正恩は権力を取ってからチャンマダンに手を出さなかった。我々を放ってお
いてくれるというので一定の人気があった。しかし、「それが北朝鮮を追い込む
ことになる」と私はずっと言ってきましたし、運動方針にも書いてきましたが、
そのチャンマダン経済とは別に、金正恩の秘密資金、39号室資金があるのです
が、それで幹部たちを食わせ、配給をしているのです。核・ミサイルも開発した。

 その39号室資金を枯渇させることができれば政権は持たなくなる。日本から
多額の送金がされていました。1990年代の初め内閣調査室の調べで年間20
00億円程度の送金がされていました。これは私が内閣調査室の幹部から直接聞
きました。

 そういうことを絶対に止めさせなければならないと安倍さんに何回も話しまし
た。第一次安倍政権になって、拉致問題対策本部ができて、拉致問題に関する6
項目方針というのができました。今8項目になっています。

 その中に「厳格な法執行」というのがあります。不法な朝鮮総連の送金を止め
るという意味です。なぜそんなに多額の送金ができたかというと、脱税があった
り長銀信用組合の不正融資があったりしたのです。これを安倍政権の時に止めて、
今日本からの送金はありません。まずこれを止めた。

 実は金大中政権以降、韓国から多額の金や物が行っていた。それで39号室資
金が一定程度確保され、党は人民の生活の面倒を見なくなり、人民は自分たちで
市場で食べていた。

 そこことが分かって、我々は人権を理由に制裁をかけろと言ってきたのですが、
今国連の安保理事会は核・ミサイルを主たる理由として制裁をかけています。特
に2016年、17年に北朝鮮が40発の弾道ミサイルを撃ち、3回の核実験を
した時、大変厳しい制裁がかけられました。

 安倍さんがトランプさんを説得して、北朝鮮は制裁が効く、39号室資金を枯
渇させることができると説得したことも一つの背景としてありました。国連の制
裁がかかるまでは、北朝鮮は年間40億ドルくらい輸出していましたが、制裁後
は輸出が4億ドルにまでなりました。90%の外貨が無くなったのです。

 国連制裁は北朝鮮から「買ってはいけないリスト」を作りました。北朝鮮の輸
出で多かったのは石炭や鉄鉱石等の鉱産物と水産物、背広などの加工衣料品でし
たが、これらは今輸出できなくなっています。もちろん日本は北朝鮮との輸出入
を完全に停止しています。

◆コロナで中朝国境が遮断、商品が入らなくなった

 国際社会で制裁がかかって、39号室資金が枯渇し始めた。そしてコロナが起
きて、中朝国境が遮断されました。その結果、チャンマダンで売られる物がすご
く減った。中国から工業製品が入ってこなくなった。それを転売して商売してい
た人たちができなくなった。

 北朝鮮では収穫後の秋は市場の主食の値段が安い。お金を持っている人たちは
この時たくさん買って、6月、7月の一番値段が高い時期に出して、差額をもう
けていた。トンジュと言われる人たちもやっていた。中産層の人たちは少なくと
も自分たちが食べる分を一番安い時に1年分買っていた。一番貧乏な人はそれが
できなくて、その時、その時にもうけたお金で市場で買って食べていた。

 今チャンマダンで商売ができなくなったからその時、その時の商売をやってい
た人たちが、日銭をかせげない。そういう人たちが飢えている。

 一方、党の39号室資金が完全に枯渇しました。去年の他しか1月に面白いこ
とがあったのですが、平壌から中朝国境の新義州で金の延べ棒を積んだトラック
がいた。平壌から高速道路で運んだのですが、北朝鮮の高速道路はコンクリート
がすぐはがれたりして危ないんです。そしてあまりにもコンクリートがはがれて
いるので、一部区間で全部取ってしまった。土の道路です。そこを走っていた時
に、金の延べ棒はひもで結んであったようですが、ガタンガタンと揺れて、幌に
当たって穴が開いてしまった。延べ棒が落ちた。「拾った人間は党に提出するよ
うに」との布告文が出た。

 その布告文は私も持っているのですが、一体何のために金の延べ棒を中国に送
ろうとしたのか。北朝鮮がミサイルを発射する時に、移動式発射台が出てきまし
たね。大きなタイヤのトラックでミサイルを運んでいる。北朝鮮ではタイヤは国
産できない。あのタイヤを中国から密輸するためですが、現金がなくて金の延べ
棒で払おうとした。

 あの「移動式発射台を200機作れ」という命令が出たそうです。片側11輪
だったり、9輪だったりしますが、予備も含めて1万個のタイヤを買わなければ
ならない。しかし、お金がない。金の延べ棒で払おうとしたら落ちちゃったとい
う話だったのですが、そこで分かったのは本当にお金がないということです。

 ハッキングで、去年日本円で2000億円くらい盗んだと発表されています。
国連の制裁委員会も、アメリカも発表しましたが、最近聞いたら、「盗んだこと
は盗んだが現金化できていない」と。仮想通貨だから見張られているわけです。
どこかで現金化したら分かってしまう。

 それどころか最近聞いたのでは、これは「産経新聞」も書いていましたが、半
分の日本円で1000億円くらいについて、アメリカはハッキング仕返したそう
です。取られちゃった。「そういうことができるんですか」と聞いたんですが、
できるんです。とにかく現金化できていない。アメリカは「20億ドルも盗んだ」
ということばかり出しています。「お金があるはずなのになぜ食糧をくれないん
だ」という不満が高まるようにしているのではないかと、私は推測しています。

◆米の全量を国営商店で流通させれば正常化すると考えた「新糧穀政策」

 そういう中で「新糧穀政策」というのを打ち出したのですが、調べて見ると昨
年9月25日に、労働党の政治局会議で決まったのですが、穀物の買い上げと流
通を取り締まる政策です。「党と国家の糧穀政策執行を阻害する現象との闘争が
強調された」そうです。

 取締を厳しくするのと同時に、協同農場から買い上げる価格と配給時に支払う
国定価格を引き上げた。しかし、全体の量が足りないのだから、少しくらい買い
上げ価格を引き上げたところで、配給ルートに乗る量が確保されるわけではない。

 中朝国境が閉鎖され、肥料やビニールなどの資材の輸入が途絶えている中、干
ばつと集中豪雨の被害も重なり、昨年秋のコメとトウモロコシの収穫は大変不作
だった。去年の秋、国家保衛省は、食糧を現物で貰うのではなく農場に行って取っ
てこいという仕組みですが、行ってみたら必要量の6割しか確保できなかった。

 韓国農村振興庁は、2022年の北朝鮮の食糧収穫量は451万トンで前年に比べ約3.
8%減少したと発表していますが、もっとひどいのではないかと思います。

 そういう情報を聞いた金正恩は、「保衛部の食糧や軍の食糧を確保できないの
に、なぜチャンマダンには食糧があるんだ。横流しされているんじゃないか」と。
実際に横流ししているんです。地方の幹部になったらみんな賄賂が集まって、そ
れで食べている。そこで、「横流しを徹底的に取り締まれ」という命令を出した。

 北朝鮮は賄賂社会ですから、権力を持っていると賄賂が集まるんです。金正恩
はそれを分かっているのかいないのか分かりませんが、「取り締まれ」と言った。

 一方農民たちも隠すんです。価格が上がったと言っても、生産量が下がってい
ます。軍が来る、保衛部が来る。だから来る前に、夜中に穀物を盗んで埋めてお
くとか。最近聞いたのでは、韓国製のゴム手袋が人気だそうです。「なぜですか」
と聞いたら、北朝鮮のゴム手袋はすぐ破れるけど、韓国製はいい」と。「何をす
るんですか」と聞いたら、「稲刈り前に夜中に稲穂を手でしごいて米を盗む」そ
うです。

 みんなが自分の食べる物を確保しようとする。あるいは横流しをして収益をは
かろうとする。だから「チャンマダンに主食があるのはおかしい」として、主食
の販売を禁止したのです。

 そして国家の買取価格をかなり上げて、国営商店で売る価格も上げて、そちら
で全量流通させれば、チャンマダンにあるものを正常化させれば流通がうまくい
くのではないか。そうしたら保衛部や幹部にも必要な量を確保できるのではない
かと考えたようですが、みんな自分の身は自部で守らないと生きていけませんか
ら、党を信じて党に全部買い上げさせて配給を待つなんてことはしないわけです。

 米屋は隠れて商売をしています。色々な所に米を隠して売っているそうです。
もちろん金持ちは一定程度確保していますが、それが見つかると没収されてしま
います。

(3につづく)



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