北朝鮮食糧危機の現状と拉致問題?特別集会報告2(2023/06/28)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2023.06.28)
■北朝鮮食糧危機の現状と拉致問題?特別集会報告2
金聖●(キム・ソンミン、王へんに文)
次に●(ベ=なべぶたの下に裴)ガンミン記者に話をしてもらいます。実は私
は北朝鮮にいる間、ずっと軍人でした。ベさんは民間人で、月給で米1キロも買
えない中で、どうやって生きていたのか、何を食べていたのかという体験談を聞
きたいと思います。
◆「苦難の行軍」がもう一度来るのではないかと恐れている
ベ・ガンミン(自由北韓放送記者)
私は2008年2月に、妻と3歳の娘を連れて、このままでは食べて行けない
ということで脱北しました。私は鉄道省の鉄道放送委員をやったり、貿易会社の
指導員をやっていましたが、それでは食べて行けなくなったのです。それで決心
しました。
まず、体験談を話す前に、私も覚悟を持って脱北してきた者として、日本の拉
致被害者のご家族の方が、「親の世代が生きている間に家族を取り戻したい」と
言っておられることに100%同感します。よく気持ちが分かります。そのこと
をまず申し上げたいと思います。
拉致問題について日本では今民間や政府が立ち上がって活動していますが、韓
国にもたくさんの拉致被害者がいるんですが、韓国政府は積極的な活動をしてい
ない状況です。拉致問題は重大な人権侵害ですから世界が、国連が立ち上がって
北朝鮮を屈服させて全拉致被害者を取り戻さなければならないと私は思っていま
す。
北朝鮮はソ連、東欧が健在な時はその支援を受けてそれなりに動けていたので
すが、その崩壊によって食糧事情が悪化しました。1986年、私が中学校に入っ
た時、我が家の食糧事情を見て心が痛くなりました。
86年は「苦難の行軍」の前ですが、その時でも配給の遅配、欠配が多くなり、
このままでは家は飢え死にするだろうと思いました。実は私の両親はもともと平
壌に住んでいたのですが、母方の祖父が朝鮮戦争の時に逃げたということが明ら
かになり、平壌から追放され、両江道の山の中で済むことになり大変苦労しまし
た。
食糧事情が悪くなった時私は中学生でしたが、商売をしなければならないと思っ
て、清津(チョンジン)に行って、水産物を入手して商売をしました。
そして90年代になると事情がより悪くなりました。軍人や警察官も家族の配
給がなくなるという状況になりました。そこで軍人や警察官の家族も商売をする
ようになりました。
例えば、私の中学校の同級生のお父さんは両江道の安全部の副部長、警察で言
うと副所長ですが、貴金属を中国に密輸をする商売をしました。別のお父さんは
安全部の副部長の大佐だったのですが、政治学校(警察学校)の校長をやってい
た人は、弟子たちが軍需工場に行っていて、その軍需工場から金属を盗み出して
中国に密輸していました。
そのように食糧事情が苦しくなったので、3年分の戦争用の備蓄物資まで放出
してしまいました。当時は党の幹部も政治警察の幹部もお腹がすいて出勤できな
いという状況が続出しました。私たちの地域では376部隊という戦争用の備蓄
物資を管理する部隊があったのですが、家に帰ってしまう者、栄養失調で入院す
る者がいて、残った人たちは強盗や泥棒をして何とか部隊を維持しているという
状況でした。
今は、「苦難の行軍」時代がどんなに大変だったのかということを皆さんにお
伝えしましたが、みんな経験していることです。私も実は飢え死にした人を10
0人くらい見ています。なかなかみなさんには伝わらないかもしれませんが、今
もう一度その「苦難の行軍」の時期が来るのではないかと、北朝鮮の住民たち、
あるいは当局も思っています。
この悪夢のような「苦難の行軍」がもう一度来るのではないかという恐れが北
朝鮮で今広がっています。そのことについて「月刊朝鮮」の記者として取材をし
ている、チョン・グァンソン記者に話を聞きたいと思います。
◆「戦争になれば飢え死にはしないのではないか」と戦争を待望
チョン・グァンソン(「月刊朝鮮」記者)
こんにちは。はじめまして。私はチョン・グァンソンです(日本語で)。
私は「苦難の行軍」の後の話をしようと思います。「苦難の行軍」の後、中国
との貿易が活発になって飢え死にする人はいなくなりました。
しかし、コロナが蔓延して、中国との国境が閉じた後の2019年くらいから、
また「苦難の行軍が来る」、あるいは「来た」という話が広がり始め、餓死者が
出始めました。
金正恩政権はコロナの後、国境を完全に封鎖して、人の往来、物の往来を遮断
しました。過去には、生活物資、例えば歯磨き粉とか、ボールペン等北朝鮮で国
産できないものは90%以上中国製でした。そういうものが入ってこなくなりま
した。
私が取材したところによると、2021年から北朝鮮の市場で乾電池がなくな
りました。北朝鮮の時計は乾電池を入れるのが多く、時計が止まってしまったと
いう話をたくさん聞きました。
私も北朝鮮で育って脱北したのですが、「苦難の行軍」時代の住民たちは、
「このように飢え死にしていくのだったら、戦争になって戦死したい」という話
をたくさんしていました。
そして最近もまた、「戦争になれば飢え死にはしないのではないか」と、戦争
待望論が広がっています。
金正恩自身も党の会議で、食糧増産を強調し、食糧事情が厳しいことを認めて
います。
◆満足に食べられない核心階層もいる
李シヨン
私は地方で19年生活し、そして平壌で10年生活しました。金正恩時代になっ
て平壌で大規模な建設をたくさんしたので、外から見ると平壌では普通の生活が
できているのではないかというイメージが広がったのではないかと思います。
しかし、今回の困難の結果分かったことは、平壌で普通の生活ができるように
なったのは金正恩政権の政策が成功したからではなく、95年の「苦難の行軍」
時代以降、住民たちが自発的に進めた資本主義経済の結果であったのです。それ
が中朝国境の遮断によってできなくなったので、また餓死者がでているというこ
とだと思います。
コロナの時期も私たちの放送局は情報を伝え、また平壌の情報源から情報を取っ
ていました。彼らが情報を提供してくれるためには、彼らに経済的支援をするこ
とが必要です。
彼らが共通に言うのは、最近は市場に行っても、お金があっても、商品がない
ということです。金正恩はコロナ患者は誰もいないと言っていたのですが、ひど
い風邪で死ぬ人たちがたくさんいました。
そして最近の市場では北朝鮮のお金は使えないのです。コロナ以前に買えた風
邪薬は中国人民元で10元だったのですが、今は中国から入ってこないので10
0元、150元を出しても買えません。
北朝鮮社会を分かりやすく説明すると、金正恩政権とは何の関係も持たないで
自分で食べている人たちがいます。そして満足に食べられている核心階層がいて、
満足に食べられない核心階層もいます。
そして核心権力階層の人でもお腹がすいている人が増えているわけです。外部
から支援は入ってきたら、お腹がすいている一般人民に与えるのか、権力階層に
与えるのかは皆さん方に考えてほしいと思います。
◆農地制度を変えても結果はよくならなかった
ベ・ガンミン 2000年代になってみんな商売をするようになったので、市場
での商売で食べていることを権力層も理解しています。
金正恩が2011年に、3・7制を始めた。農場での収穫物の内、7割を国家
に上納し、3割は耕したものが持つことにしました。それがうまくいかないので、
2014年、15年に6・4制にし、農民が6割を取ることにしました。あるい
は5・5制にしました。
ある所では農業に必要な肥料や資材を国家が提供するという条件で農民が3、
国家が7ということをやりました。
農民たちは自分たちにも取り分が回ってくるだろうと考え、一生懸命働くよう
になりました。
先ほど言い忘れたのですが、共同農場は広いところですが、その中の一つの単
位を分組と言います。5、6世帯が田んぼや畑を耕す制度ですが、その分組を分
解して1家庭で一つの田んぼや畑を耕すようにし、所有権は与えませんが耕作権
を与えるようなこともやりました。
しかし先ほどの3・7制、5・5制、6・4制の基準になる数字が一番採れて
いた時の重量を基準にしたので、土地が悪くなったり、水害になったり、肥料が
なくて作が悪くなっても、基準の収量は取られてしまうので、農民の取り分は多
くならないのです。
そして自分たちで肥料や農薬やビニール等を準備しなければならなくなり、そ
れにお金がかかり、結果として働いてもいい結果にはならなかったのです。
◆政変が起きるか?平壌の特権階層区域で配給がなくなった
金聖● そこで農民は考えるわけです。収穫物を盗むのです。先に収穫してどこ
かに隠して、「これしかなかった」と報告します。それがばれて、責任耕作制と
いう、ある田んぼや畑は家族で耕していいことになっていますが、その後の脱穀
作業は個人にさせないのです。盗ませない。
そして軍に食糧を出す場合、貰う部隊が収穫の日に田んぼや畑を見張りに来ま
す。そういうことが起きたので、結局いくら働いても自分のものにならないので
責任耕作制を嫌うようになります。
階級制度が崩れたというのは事実です。またコロナによって北朝鮮の社会がほ
ぼ壊れたのも事実です。特に西岡先生と自由北韓放送が注目してきたのが、そう
いう中でもかつては配給があった平壌市での配給は今どうなっているか。平壌で
配給が途絶えるようになると社会がもたないだろうということで、それを注目し
てきました。
地方では既に配給は崩壊しているわけですが、平壌では配給があるとなると、
市場では米が高いわけです。月給と同じくらいだ。その米を配給で、安い価格で、
例えば1か月20キロ貰えるとなると、それは大変な特権です。
その特権が平壌市で維持されているのかどうか。コロナが始まった後、色々調
べてみると、平壌市の中でも中区域という特権階層が住んでいる地域は配給があ
る。しかし、その周辺の地域では、平壌市でも配給が止まっているという情報が
あります。
そして去年の11月に出てきた脱北者の話を聞くと、去年平壌の中区域でも配
給が止まったそうです。平壌の中区域に住んでいる人たちは労働党の幹部です。
治安機関や軍の幹部です。その人たちにも配給がなくなったということは、政変
を意味すると思います。
◆軍隊や治安機関も養えなくなれば本当に危機が来る
もちろんそれは長続きしない場合とか、党は党で、治安機関は治安機関でなん
とかして幹部たちに食糧を与えようとするでしょう。しかし、党や治安機関、政
府の幹部の人でさえも、配給に頼らないで商売をしないと生きていけないことに
なると、重大な変化です。
今北朝鮮で国家が食糧の責任を持っているのは軍隊と、民間警察の安全員と政
治警察(保衛部)です。北朝鮮には平地が少なく、国土も狭いのですが、それで
も年間420万トンくらいの穀物を生産しています。それがあれば、軍隊と、民
間警察の安全員と政治警察(保衛部)150万トンくらいはなんとかなると思い
ますが、しかし肥料が入ってこないとどんどん収量が悪くなります。
軍隊や治安機関も養えなくなれば本当に危機が来ると思います。そのような中
でもミサイルを撃っている北朝鮮について、ぺ記者にお願いします。
◆金正恩は住民の飢えた状態を放置している
ペ・ガンミン コロナで北朝鮮がどうなったかということですが、北朝鮮ではも
しもコロナウイルスが入ってしまったら、それに打ち勝つような医療体制があり
ません。そこで完全に国を封鎖したのです。
国境を封鎖してもコロナは入ってしまったのですが、国境を閉鎖した結果、ウ
イルスだけが入ってこなくなったのではなく、物資がすべて入ってこなくなりま
した。
北朝鮮の市場を中心とする経済を回していたのは中国からの密輸品だったので
す。そういうものも全部遮断されてしまった。それで市場の経済がおかしくなっ
た。
しかし、コロナも少し状況がよくなったことで、一部国境を開き物資が入って
きています。しかしそれは主として金正恩一家が消費する贅沢品、そしてミサイ
ルの部品等です。一般住民が消費する物は入ってきていません。
そういう中でもミサイルを発射しています。その費用を食糧に回せば住民が食
べて行けるのが明らかにも関わらず、去年約100発のミサイルを発射しました。
自分たちの飢えた状態を放置しているということです。
◆集団農場制に戻したので北朝鮮の未来は暗い
チョン・グァンソン 先程の責任耕作制ですが、それがうまくいかないことが
分かって、ある農地を金持ちに賃貸させる動きがあります。何を植えてもいいこ
とになります。収穫物さえ出せばあとは自由にしていいということです。
共同農場だった時は、後にとうもろこしを植えなければならないとか、じゃが
芋を植えなければならないとか、あるいは米を作らなければいけないことになっ
ていたわけですが、それを無視して高く売れる物を作るようになっています。ス
イカとか煙草とかピーナッツを植えて、それを市場で売って、その金で米を買っ
て、米で上納するようなことを金持ちがやっています。
完全に資本主義的なことになっているので大問題になって、今年の第7回中央
委員会総会で、責任耕作制を廃止する、社会主義的な集団農場に戻すことを決め
ましたので、北朝鮮の生産はもっと落ちるだろうと思います。北朝鮮の未来は暗
いということです。
◆金正恩政権の終末こそが住民の飢えを解放する
李シオン 最近の内部の消息通によると、コロナの前は努力すれば生きていける
社会だった。女性は家で針仕事をすればいくらか貰える。あるいは男が外に出て
荷物を運んだら料金が貰えた。
今は仕事がない。突然そうなったのは、私の個人的な考えでは金正恩のせいだ
と思います。なぜなら金正恩が国境を遮断したから、住民が作った市場経済が崩
壊したからです。
コロナで金正恩が戦時としたので、兵士たちは毒ガスマスクをつけて24時間
暮らさなければならなくなりました。お腹をすかせて、中国を経由して韓国に脱
北してくる人たちも遮断されています。
コロナの時期に中国に出て、中国の警察に捕まった脱北女性がたくさんいます。
金正恩は彼らを送り返せと言っています。しかし、金正恩は逃亡者たちがウイル
スを持って入ってくることを恐れ、今は受け入れを拒否しているので中国の留置
場にいますが、コロナが落ち着いたら彼らは送り返されます。
その人たちが帰ってまたお腹をすかせた生活をするのか、またウイルスを持っ
てくるのか分かりませんが、皆さんが助けようとしている日本人被害者を送り返
さないのも金正恩のためです。
金正恩政権の終末こそが住民の飢えを解放するのではないかと私は思っていま
す。
(3につづく)
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■岸田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
https://www.kantei.go.jp/jp/iken.html
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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■北朝鮮食糧危機の現状と拉致問題?特別集会報告2
金聖●(キム・ソンミン、王へんに文)
次に●(ベ=なべぶたの下に裴)ガンミン記者に話をしてもらいます。実は私
は北朝鮮にいる間、ずっと軍人でした。ベさんは民間人で、月給で米1キロも買
えない中で、どうやって生きていたのか、何を食べていたのかという体験談を聞
きたいと思います。
◆「苦難の行軍」がもう一度来るのではないかと恐れている
ベ・ガンミン(自由北韓放送記者)
私は2008年2月に、妻と3歳の娘を連れて、このままでは食べて行けない
ということで脱北しました。私は鉄道省の鉄道放送委員をやったり、貿易会社の
指導員をやっていましたが、それでは食べて行けなくなったのです。それで決心
しました。
まず、体験談を話す前に、私も覚悟を持って脱北してきた者として、日本の拉
致被害者のご家族の方が、「親の世代が生きている間に家族を取り戻したい」と
言っておられることに100%同感します。よく気持ちが分かります。そのこと
をまず申し上げたいと思います。
拉致問題について日本では今民間や政府が立ち上がって活動していますが、韓
国にもたくさんの拉致被害者がいるんですが、韓国政府は積極的な活動をしてい
ない状況です。拉致問題は重大な人権侵害ですから世界が、国連が立ち上がって
北朝鮮を屈服させて全拉致被害者を取り戻さなければならないと私は思っていま
す。
北朝鮮はソ連、東欧が健在な時はその支援を受けてそれなりに動けていたので
すが、その崩壊によって食糧事情が悪化しました。1986年、私が中学校に入っ
た時、我が家の食糧事情を見て心が痛くなりました。
86年は「苦難の行軍」の前ですが、その時でも配給の遅配、欠配が多くなり、
このままでは家は飢え死にするだろうと思いました。実は私の両親はもともと平
壌に住んでいたのですが、母方の祖父が朝鮮戦争の時に逃げたということが明ら
かになり、平壌から追放され、両江道の山の中で済むことになり大変苦労しまし
た。
食糧事情が悪くなった時私は中学生でしたが、商売をしなければならないと思っ
て、清津(チョンジン)に行って、水産物を入手して商売をしました。
そして90年代になると事情がより悪くなりました。軍人や警察官も家族の配
給がなくなるという状況になりました。そこで軍人や警察官の家族も商売をする
ようになりました。
例えば、私の中学校の同級生のお父さんは両江道の安全部の副部長、警察で言
うと副所長ですが、貴金属を中国に密輸をする商売をしました。別のお父さんは
安全部の副部長の大佐だったのですが、政治学校(警察学校)の校長をやってい
た人は、弟子たちが軍需工場に行っていて、その軍需工場から金属を盗み出して
中国に密輸していました。
そのように食糧事情が苦しくなったので、3年分の戦争用の備蓄物資まで放出
してしまいました。当時は党の幹部も政治警察の幹部もお腹がすいて出勤できな
いという状況が続出しました。私たちの地域では376部隊という戦争用の備蓄
物資を管理する部隊があったのですが、家に帰ってしまう者、栄養失調で入院す
る者がいて、残った人たちは強盗や泥棒をして何とか部隊を維持しているという
状況でした。
今は、「苦難の行軍」時代がどんなに大変だったのかということを皆さんにお
伝えしましたが、みんな経験していることです。私も実は飢え死にした人を10
0人くらい見ています。なかなかみなさんには伝わらないかもしれませんが、今
もう一度その「苦難の行軍」の時期が来るのではないかと、北朝鮮の住民たち、
あるいは当局も思っています。
この悪夢のような「苦難の行軍」がもう一度来るのではないかという恐れが北
朝鮮で今広がっています。そのことについて「月刊朝鮮」の記者として取材をし
ている、チョン・グァンソン記者に話を聞きたいと思います。
◆「戦争になれば飢え死にはしないのではないか」と戦争を待望
チョン・グァンソン(「月刊朝鮮」記者)
こんにちは。はじめまして。私はチョン・グァンソンです(日本語で)。
私は「苦難の行軍」の後の話をしようと思います。「苦難の行軍」の後、中国
との貿易が活発になって飢え死にする人はいなくなりました。
しかし、コロナが蔓延して、中国との国境が閉じた後の2019年くらいから、
また「苦難の行軍が来る」、あるいは「来た」という話が広がり始め、餓死者が
出始めました。
金正恩政権はコロナの後、国境を完全に封鎖して、人の往来、物の往来を遮断
しました。過去には、生活物資、例えば歯磨き粉とか、ボールペン等北朝鮮で国
産できないものは90%以上中国製でした。そういうものが入ってこなくなりま
した。
私が取材したところによると、2021年から北朝鮮の市場で乾電池がなくな
りました。北朝鮮の時計は乾電池を入れるのが多く、時計が止まってしまったと
いう話をたくさん聞きました。
私も北朝鮮で育って脱北したのですが、「苦難の行軍」時代の住民たちは、
「このように飢え死にしていくのだったら、戦争になって戦死したい」という話
をたくさんしていました。
そして最近もまた、「戦争になれば飢え死にはしないのではないか」と、戦争
待望論が広がっています。
金正恩自身も党の会議で、食糧増産を強調し、食糧事情が厳しいことを認めて
います。
◆満足に食べられない核心階層もいる
李シヨン
私は地方で19年生活し、そして平壌で10年生活しました。金正恩時代になっ
て平壌で大規模な建設をたくさんしたので、外から見ると平壌では普通の生活が
できているのではないかというイメージが広がったのではないかと思います。
しかし、今回の困難の結果分かったことは、平壌で普通の生活ができるように
なったのは金正恩政権の政策が成功したからではなく、95年の「苦難の行軍」
時代以降、住民たちが自発的に進めた資本主義経済の結果であったのです。それ
が中朝国境の遮断によってできなくなったので、また餓死者がでているというこ
とだと思います。
コロナの時期も私たちの放送局は情報を伝え、また平壌の情報源から情報を取っ
ていました。彼らが情報を提供してくれるためには、彼らに経済的支援をするこ
とが必要です。
彼らが共通に言うのは、最近は市場に行っても、お金があっても、商品がない
ということです。金正恩はコロナ患者は誰もいないと言っていたのですが、ひど
い風邪で死ぬ人たちがたくさんいました。
そして最近の市場では北朝鮮のお金は使えないのです。コロナ以前に買えた風
邪薬は中国人民元で10元だったのですが、今は中国から入ってこないので10
0元、150元を出しても買えません。
北朝鮮社会を分かりやすく説明すると、金正恩政権とは何の関係も持たないで
自分で食べている人たちがいます。そして満足に食べられている核心階層がいて、
満足に食べられない核心階層もいます。
そして核心権力階層の人でもお腹がすいている人が増えているわけです。外部
から支援は入ってきたら、お腹がすいている一般人民に与えるのか、権力階層に
与えるのかは皆さん方に考えてほしいと思います。
◆農地制度を変えても結果はよくならなかった
ベ・ガンミン 2000年代になってみんな商売をするようになったので、市場
での商売で食べていることを権力層も理解しています。
金正恩が2011年に、3・7制を始めた。農場での収穫物の内、7割を国家
に上納し、3割は耕したものが持つことにしました。それがうまくいかないので、
2014年、15年に6・4制にし、農民が6割を取ることにしました。あるい
は5・5制にしました。
ある所では農業に必要な肥料や資材を国家が提供するという条件で農民が3、
国家が7ということをやりました。
農民たちは自分たちにも取り分が回ってくるだろうと考え、一生懸命働くよう
になりました。
先ほど言い忘れたのですが、共同農場は広いところですが、その中の一つの単
位を分組と言います。5、6世帯が田んぼや畑を耕す制度ですが、その分組を分
解して1家庭で一つの田んぼや畑を耕すようにし、所有権は与えませんが耕作権
を与えるようなこともやりました。
しかし先ほどの3・7制、5・5制、6・4制の基準になる数字が一番採れて
いた時の重量を基準にしたので、土地が悪くなったり、水害になったり、肥料が
なくて作が悪くなっても、基準の収量は取られてしまうので、農民の取り分は多
くならないのです。
そして自分たちで肥料や農薬やビニール等を準備しなければならなくなり、そ
れにお金がかかり、結果として働いてもいい結果にはならなかったのです。
◆政変が起きるか?平壌の特権階層区域で配給がなくなった
金聖● そこで農民は考えるわけです。収穫物を盗むのです。先に収穫してどこ
かに隠して、「これしかなかった」と報告します。それがばれて、責任耕作制と
いう、ある田んぼや畑は家族で耕していいことになっていますが、その後の脱穀
作業は個人にさせないのです。盗ませない。
そして軍に食糧を出す場合、貰う部隊が収穫の日に田んぼや畑を見張りに来ま
す。そういうことが起きたので、結局いくら働いても自分のものにならないので
責任耕作制を嫌うようになります。
階級制度が崩れたというのは事実です。またコロナによって北朝鮮の社会がほ
ぼ壊れたのも事実です。特に西岡先生と自由北韓放送が注目してきたのが、そう
いう中でもかつては配給があった平壌市での配給は今どうなっているか。平壌で
配給が途絶えるようになると社会がもたないだろうということで、それを注目し
てきました。
地方では既に配給は崩壊しているわけですが、平壌では配給があるとなると、
市場では米が高いわけです。月給と同じくらいだ。その米を配給で、安い価格で、
例えば1か月20キロ貰えるとなると、それは大変な特権です。
その特権が平壌市で維持されているのかどうか。コロナが始まった後、色々調
べてみると、平壌市の中でも中区域という特権階層が住んでいる地域は配給があ
る。しかし、その周辺の地域では、平壌市でも配給が止まっているという情報が
あります。
そして去年の11月に出てきた脱北者の話を聞くと、去年平壌の中区域でも配
給が止まったそうです。平壌の中区域に住んでいる人たちは労働党の幹部です。
治安機関や軍の幹部です。その人たちにも配給がなくなったということは、政変
を意味すると思います。
◆軍隊や治安機関も養えなくなれば本当に危機が来る
もちろんそれは長続きしない場合とか、党は党で、治安機関は治安機関でなん
とかして幹部たちに食糧を与えようとするでしょう。しかし、党や治安機関、政
府の幹部の人でさえも、配給に頼らないで商売をしないと生きていけないことに
なると、重大な変化です。
今北朝鮮で国家が食糧の責任を持っているのは軍隊と、民間警察の安全員と政
治警察(保衛部)です。北朝鮮には平地が少なく、国土も狭いのですが、それで
も年間420万トンくらいの穀物を生産しています。それがあれば、軍隊と、民
間警察の安全員と政治警察(保衛部)150万トンくらいはなんとかなると思い
ますが、しかし肥料が入ってこないとどんどん収量が悪くなります。
軍隊や治安機関も養えなくなれば本当に危機が来ると思います。そのような中
でもミサイルを撃っている北朝鮮について、ぺ記者にお願いします。
◆金正恩は住民の飢えた状態を放置している
ペ・ガンミン コロナで北朝鮮がどうなったかということですが、北朝鮮ではも
しもコロナウイルスが入ってしまったら、それに打ち勝つような医療体制があり
ません。そこで完全に国を封鎖したのです。
国境を封鎖してもコロナは入ってしまったのですが、国境を閉鎖した結果、ウ
イルスだけが入ってこなくなったのではなく、物資がすべて入ってこなくなりま
した。
北朝鮮の市場を中心とする経済を回していたのは中国からの密輸品だったので
す。そういうものも全部遮断されてしまった。それで市場の経済がおかしくなっ
た。
しかし、コロナも少し状況がよくなったことで、一部国境を開き物資が入って
きています。しかしそれは主として金正恩一家が消費する贅沢品、そしてミサイ
ルの部品等です。一般住民が消費する物は入ってきていません。
そういう中でもミサイルを発射しています。その費用を食糧に回せば住民が食
べて行けるのが明らかにも関わらず、去年約100発のミサイルを発射しました。
自分たちの飢えた状態を放置しているということです。
◆集団農場制に戻したので北朝鮮の未来は暗い
チョン・グァンソン 先程の責任耕作制ですが、それがうまくいかないことが
分かって、ある農地を金持ちに賃貸させる動きがあります。何を植えてもいいこ
とになります。収穫物さえ出せばあとは自由にしていいということです。
共同農場だった時は、後にとうもろこしを植えなければならないとか、じゃが
芋を植えなければならないとか、あるいは米を作らなければいけないことになっ
ていたわけですが、それを無視して高く売れる物を作るようになっています。ス
イカとか煙草とかピーナッツを植えて、それを市場で売って、その金で米を買っ
て、米で上納するようなことを金持ちがやっています。
完全に資本主義的なことになっているので大問題になって、今年の第7回中央
委員会総会で、責任耕作制を廃止する、社会主義的な集団農場に戻すことを決め
ましたので、北朝鮮の生産はもっと落ちるだろうと思います。北朝鮮の未来は暗
いということです。
◆金正恩政権の終末こそが住民の飢えを解放する
李シオン 最近の内部の消息通によると、コロナの前は努力すれば生きていける
社会だった。女性は家で針仕事をすればいくらか貰える。あるいは男が外に出て
荷物を運んだら料金が貰えた。
今は仕事がない。突然そうなったのは、私の個人的な考えでは金正恩のせいだ
と思います。なぜなら金正恩が国境を遮断したから、住民が作った市場経済が崩
壊したからです。
コロナで金正恩が戦時としたので、兵士たちは毒ガスマスクをつけて24時間
暮らさなければならなくなりました。お腹をすかせて、中国を経由して韓国に脱
北してくる人たちも遮断されています。
コロナの時期に中国に出て、中国の警察に捕まった脱北女性がたくさんいます。
金正恩は彼らを送り返せと言っています。しかし、金正恩は逃亡者たちがウイル
スを持って入ってくることを恐れ、今は受け入れを拒否しているので中国の留置
場にいますが、コロナが落ち着いたら彼らは送り返されます。
その人たちが帰ってまたお腹をすかせた生活をするのか、またウイルスを持っ
てくるのか分かりませんが、皆さんが助けようとしている日本人被害者を送り返
さないのも金正恩のためです。
金正恩政権の終末こそが住民の飢えを解放するのではないかと私は思っていま
す。
(3につづく)
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■岸田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
https://www.kantei.go.jp/jp/iken.html
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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