救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

国際セミナー報告1(2023/12/18)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2023.12.18)

 家族会・救う会・拉致議連は12月15日、参議院議員会館1階講堂で、「北
朝鮮の最新情勢を知り、全拉致被害者救出への方途を考える国際セミナーを開催
しました。今回は、前日拉致問題担当大臣となったばかりの林芳正官房長官が挨
拶しました。また、拉致議連代表、各党代表がそれぞれ挨拶をしました。
 さらに、最新の北朝鮮情勢について金聖●(王へんに文、キム・ソンミン自由
北韓放送代表、脱北者)氏と元北朝鮮外交官の韓国国会議員太永浩(テ・ヨンホ)
氏に講演をしていただき、それらを踏まえて櫻井よしこさんのコーディネートのもと、家族会
の横田哲也さんと、西岡力・救う会会長が報告しました。

 まず金聖●氏のレポートを掲載します。


■国際セミナー報告1

北朝鮮の対日政策基調?拉致問題解決を中心に

 過去、北朝鮮は日本との関係改善を追求したが、米国の路線に同調する日本政
府の韓半島政策によって、いわゆる日朝関係正常化にゴールインできなかったも
のとみられる。 彼らの行動を見ると、韓国と北朝鮮に対する差別的な外交関係
を選んだ日本政府を批判し続けており、特に在日朝鮮人(朝鮮総連)に対する
「不当な待遇を撤廃しなければならない」という条件などを表明している。

 現在は核とミサイルを先頭にして「軍事強国」の地位を強調し、国際秩序を蹂
躙している。 同時に、核やミサイル、日本人拉致問題のような政治・軍事的要
因をてこに、対北朝鮮制裁の緩和、ひいては国際社会の対北朝鮮支援までを狙っ
ている。

 最近になって安定的な(4代目)世襲体制を構築するために努力を傾けている。

・対内、対外にいわゆる白頭血統の金ジュエの実体を知らせている。

  金正恩氏への政権移譲(世襲)の過程で、金正日総書記が「贈り物」にした
「貨幣改革」のようなイベントが準備されているという内部消息も伝えられてい
る。

 2009年11月30日午前11時から奇襲的に既存の北朝鮮ウォンに対して行った「貨
幣改革」。 具体的に11月30日から12月6日まで旧札100ウォンを新札1ウォンに交
換した。新券へのディノミネーション自体は大きな問題はないが、交換上限など
不合理なルールが北朝鮮社会に相当な衝撃と恐慌をもたらす。住民の間で北朝鮮
の貨幣に対する信頼度が落ち、危機を感じた当局は朴南基計画財政部長に責任を
負わせ、「計画的に国家経済を破綻に導いた」という罪名をかぶせて銃殺した。

 ウクライナ戦争勃発直後の2022年4~5月の間に大量の銃・砲弾と軍服、軍需物
資をロシアに送ったという噂と共にその代価として30~50万トン程度の小麦粉お
よび食糧が入ってくるだろうし、住民に供給するという話があった。

 さらに、中国をはじめとする国際社会から支援される食糧などを備蓄しておき、
2023年10月から全国的な範囲で食糧配給の正常化が実現するという噂が10月が過
ぎた今まで流れている。

  一方、今年9月の金正恩のロシア訪問は、多目的戦闘機や軍事偵察衛星技術移
転などの国防分野に重点を置いたことで、「ロシア産小麦粉」のような経済支援
に期待を寄せていた北朝鮮住民の失望が高まっている。

 2023年5月中旬から中国大連の食糧供給業者を通じてロシア産小麦粉10万トン
が北朝鮮に入った(なお数量は噂であって正確ではない)。現在もこのロシア産
小麦粉が全国の各穀物販売所で販売されている。2kgずつ包装された小麦粉袋に
は2022年5月までという賞味期限が書かれている。大規模な経済支援ではなく賞
味期限が過ぎた、期待値をはるかに下回る小麦粉支援に対する不平と不満が出て
いる状況。

 上記のように当局の理想と住民感情の乖離が増幅している北朝鮮だが、コロナ
以後の経済状況は「比較的よくなっている」ことが客観的な資料と図表などによ
り明らかになった。

 韓国開発研究院(KDI)が9月27日に発刊した『北朝鮮経済レビュー 2023年上半
期中朝貿易決算』によると、2023年上半期の対中輸入額は9億2395万ドルで前年
同期の3億362万ドル対比204.3%増加した。 輸出額は1億3509万ドルで、前年同期
の3605万ドル比274.7%増。

 注目すべきは、北朝鮮全体の貿易に占める中国の割合が2021年95.6%から2022
年96.7%に上昇したことで、金正恩が権力を握って以降の対中依存度が最高値を
記録しているという事実だ。

 また、コロナ以前の2018年、2019年は、2017年に3回にわたって加えられた国
連制裁のために輸出が大幅に減少し、深刻な外貨不足現象が発生する。制裁以前
は概ね年間30億ドル規模の輸出をしていたが、2018年には3億ドルまで減少し、
輸出で稼いだ外貨の90%を失った。 この状況は2023年にも変わらず、その結果、
労働党39号室の外貨も枯渇している。

 過去には麻薬、偽造紙幣、タバコなど不法な方法で外貨を集め、最近になって
サイバーテロによる仮想通貨奪取で不足している外貨を稼いでいる。一方、すべ
ての北朝鮮住民に割り当てられた1人当たり1.2ドルの「忠誠の外貨稼ぎ」が機能
しなくなると、「金日成、金正日基金事業」という別の外貨稼ぎ手段を作り、工
場、企業所、協同農場別に外貨稼ぎ課題を割り当て、集金している。

◆金日成、金正日基金に関する布告文
○機構定員数が50名以下の場合
内貨5,000?6,000万ウォン、外貨5,000?6,000US$以上の時
?工場、企業所、協同農場(農牧場)名義でおこなう場合等級にしたがって規定
された寄付額に準じて寄付証書を授与する
○特級工場、企業所、協同農場(農牧場)
内貨5億ウォン、外貨5万US$以上の時
○1級工場、企業所、協同農場(農牧場)
内貨2億ウォン、外貨2万US$以上の時
○2級工場、企業所、協同農場(農牧場)
内貨1億ウォン、外貨1万US$以上の時
○3級工場、企業所、協同農場(農牧場)
内貨8,000万ウォン、外貨8,000US$以上の時
○4級工場、企業所、協同農場(農牧場)
内貨7,000万ウォン、外貨7,000US$以上の時
○5級工場、企業所、協同農場(農牧場)
内貨6,000万ウォン、外貨6,000US$以上の時
○6級工場、企業所、協同農場(農牧場)
内貨5,000万ウォン、外貨5,000US$以上の時

  一方、韓国の対外経済政策研究院は「今年の北朝鮮貿易の主要イシュー」と
して△貿易拡大および△産業生産正常化の試み△小麦貿易再開△春の農業準備お
よび自然災害への備えと農業品目の輸入拡大△ロシアを含む国際社会の対北朝鮮
支援(交易)再開などを挙げた。

 それと共に「北朝鮮がエンデミックに転換して対中輸入が増えたとはいえ、ま
だ産業生産を回復し経済発展をしていると判断することは難しく、やっと『持ち
こたえ』をする水準」であることを指摘する。 また「輸入増加にもかかわらず
産業生産正常化速度が遅く(対北朝鮮制裁措置などにより)電子製品と生産設備な
ど核心製品の輸入は不可能で産業生産正常化の限界が明確だ」と説明した。

 北朝鮮の「食糧難」に関しては「破局」は免れたものの、需給環境は依然とし
て良くないという分析が出ている。

 最近、韓国農村経済研究院は『パンデミック前後の北朝鮮農業および農政の変
化と展望』という報告書を通じて「2022年初めは北朝鮮農業と食糧需給に『警戒
信号』が多かった時期で、経済制裁と新型コロナウイルス封鎖の否定的効果は以
前に比べて一層累積していただろう」と分析し「北朝鮮が食糧需給と生産におい
て破局は迎えてはいないものと見られる」と分析した。

 それと共に「食糧生産は前年に比べて3.8%減少し、今年の需給環境は悪化せざ
るを得ず、食糧輸入が生産減少分だけ十分に増加しなければ、今年の食糧供給は
絶対的に減少せざるを得ない」と展望した。 したがって、「北朝鮮の食糧問題
は『不足』から『危機』にさらに深刻化する可能性がある」と展望した。

 実際、北朝鮮の食糧生産量は90年代の苦難の行軍[300万人以上が餓死した大
飢饉]以後450万トンから500万トンの間を行き来し、いわゆる苦難の行軍時期に
は380万トンまで急落、これまで500万トン以上を生産したことはないという。
関連して韓国政府は2022年に北韓の食糧生産量を451万トンと推算して発表し、
先月30日に「今年も北韓の食糧生産量は『例年と同じ水準』」と発表した。

 過去に比べて22年は大きな自然災害がなかったと北朝鮮農民も話している。し
かし、肥料やトラクターをはじめとする農資材不足で土壌が乾きつつあることに
対する不満が広がっている。また、家族単位の分組管理制と生産物の自律的処分
が可能だという独立採算制を口実に、全国的な範囲で「家族単位の盗み」が行わ
れるという。

 余裕を持って見積もって、あるいは朝鮮中央テレビが11月13日に報じたように、
「昨年に比べて1.3倍がよかった」としても、北朝鮮の今年の食糧総生産額は500
万トンに満たないものと把握され、中国からの輸入(今年第3四半期18万トン、
第4四半期20万トン)を通じて、従来の食糧供給体系をかろうじて維持している
とみられる。既存の食糧供給体制は知られているとおり、軍人と保衛員、安全員、
党の中央機関、 政府幹部のみが該当する。

 このような場合、苦難の行軍時期以後「配給を全く受けられず市場に頼って生
活しなければならない一般住民の不満」はより一層広がり、ひいては「体制に対
する脅威に拡大する可能性」を排除できない。

 現実がこうであるにもかかわらず、偵察衛星の発射と核とミサイルで国際社会
に脅威を与えている北朝鮮の無謀さと独裁性はいくら強調しても過言ではない。
同時に無謀さと独裁性に頼って満足を示している金正恩を取り扱う絶好の機会が
今かもしれないということに注目する必要がある。

 改めて、北朝鮮が追求する対日関係の核心が何かに戻ってみれば、「日本との
国交正常化が金正恩体制の安定および強固化に向けた国家経済再生に役立つ」と
判断する可能性が高いとみられる。 過去の期間、日朝交渉時に北朝鮮が植民地
賠償、財産請求権などを粘り強く主張したのが証拠だ。

 いわゆる物価上昇率を考慮するとして財産請求権形式で100億ドル程度の賠償
金を要求した事実もあったという点を勘案すれば、やはり北朝鮮の対日関係焦点
は「莫大な植民地補償金」にあると見なければならない。経済が厳しくなり民心
が離反するほど、日本に対する金正恩氏の「愛憎」は増加せざるを得ない。

 結論的に北朝鮮の経済規模や当面の経済的危機状況を考慮すると、「拉致被害
者全員の帰国を前提とした、それに相応する人道的支援」の規模と環境が整えば、
北朝鮮の反応は過去と異なる可能性があると判断される。

 特に、金ジュエ氏を通じてもう一度世襲体制を強調し、住民の不満を買ってい
る金正恩、そのような住民の不満をなだめなければならない金正恩にとって、日
本からの人道支援は北朝鮮が経験している食糧難、経済難などを解決する突破口
になるものと予想される。

 最後に今回の発表資料は、「拉致問題を核・ミサイル問題と分離させ、人道レ
ベルでアプローチすべきだ」とする家族会・救う会の立場を理解し、それに基づ
いて作成した資料であることを明らかにします。あわせて皆さんの心情を理解す
るので、私と自由北韓放送は国際的テロと外国人拉致まで日常的に行う北韓の独
裁体制と最後まで戦い、それが究極的に皆さんと共に行く道だと申し上げます。

 ありがとうございます(拍手)。

(2につづく)

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