国際セミナー報告2(2023/12/18)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2023.12.18-2)
次に西岡力・救う会会長ののレポートを掲載します。
■国際セミナー報告2
基調報告?全被害者救出の3つの方法と岸田政権の救出への取り組みの現状
西岡力(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長)
私たちは「北朝鮮による拉致被害者の即時一括帰国」、この目標のために国民
運動を続けている。どのような方法で実現するのか。3つの方法がある。
◆一つ目の方法・実力による救出
一つ目の方法は「実力による救出」だ。次が交渉による救出で「核開発を阻止
することを目的とした米国の圧力を背景にして日米が連携して行う交渉」が2つ
めの方法だ。そして、「核問題と切り離して日本単独で行う交渉」が3つめの方
法だ。
「実力による救出」を見よう。拉致は明確な主権侵害だから救出作戦は自衛権
の行使だ。ただし、全被害者のリストがいまだなく、何より今どこにいるかにつ
いての情報がない中で、平時の救出作戦は不可能だ。北朝鮮で混乱事態が起きた
り、北朝鮮軍が韓国に全面的な軍事攻撃をしかけたりして、米韓軍が北進するよ
うな事態が発生した場合は別だ。そのときには、自衛隊による救出作戦が決断さ
れうる。米韓軍による救出もこれに含まれる。
◆二つ目の方法・核開発を阻止のための米国の圧力を背景にした交渉
二つ目は「核開発を阻止することを目的とした米国の圧力を背景にして日米が
連携して行う交渉」だ。北朝鮮は強い圧力がかかったときにだけ譲歩する。北朝
鮮の核開発に対する米国の軍事圧力が北朝鮮を動かす大きな力になってきた。こ
れまで何回か米国は北朝鮮への軍事攻撃を検討した。
米国が核問題で軍事攻撃を含む強い圧力をかけ、その結果、北朝鮮が交渉の場
に出てきたとき、交渉のテーブルに核ミサイルだけでなく拉致問題ものせる。核
と拉致が解決しないと軍事攻撃もあり得るが両者が解決すれば制裁を緩め、大規
模な経済支援をすることも可能だという取引を持ちかけることが第2の救出方法
だ。
◆1994年第1次米朝核危機
1994年、米国クリントン政権は北朝鮮の寧辺のプルトニウム生産基地を爆撃す
ることを真剣に検討した。それを察知した金日成が訪朝したカーター元大統領と
会談し、核開発の凍結を約束した。その後、核凍結の見返りに約50億ドル相当の
原発をつくってやることとそれが出来るまで毎年50万トンの重油を提供すること
が決まった。いわゆるジュネーブ合意だ。日本の村山政権は10億ドルの提供を約
束し、実際5億ドルを支出したが、悔しいことに資金提供の条件に拉致被害者救
出を持ち出さなかった。拉致問題が棚上げにされた最悪の交渉だった。
◆2002年小泉訪朝
2001年米国は同時多発テロにあい、2002年1月、ブッシュ大統領は北朝鮮の核
開発を戦争によってでも阻止すると宣言した。いわゆる悪の枢軸演説だ。北朝鮮
はジュネーブ合意を破ってパキスタンから技術をもらって濃縮ウラン製造を極秘
で行っていた。そのことを知ったブッシュ政権は北朝鮮への攻撃を考えた。
軍事圧力の結果、金正日は交渉に出てきた。そのときは米国ではなく日本が相
手に選ばれ、日朝首脳会談が実現した。5人の被害者の救出はこのような枠組み
で実現した。しかし、当時の外務省は拉致被害者救出と核開発阻止を軽視し、国
交正常化を優先した。だから、5人以外の被害者救出は失敗した。
◆トランプ・金正恩会談
3回目のチャンスが2017年の米朝核危機と2018年、19年の米朝首脳会談だった。
トランプ政権も核開発阻止のため軍事圧力をかけた。すると金正恩が交渉に出て
きた。そのときに備えて安倍晋三総理はトランプ大統領に拉致問題の深刻さと日
本はこの問題で絶対に譲歩しないという決意を打ち込んでいた。
トランプ大統領は金正恩との首脳会談でなんと3回も日本人拉致問題を出した。
2018年のシンガポール会談では金正恩はその話しに乗ってこなかった。2019年の
ハノイ会談では、まず冒頭の1対1会談でトランプ大統領は拉致解決を迫ったが、
金正恩は話題を他のことにそらして答えなかった。驚いたことにその後の少人数
の夕食会でもトランプ大統領は拉致問題を出した。そのとき金正恩は、「意味の
ある回答」をしたと私たちはホワイトハウス高官から聞いている。
トランプ大統領は核廃棄をすれば北朝鮮は豊かになれると説得したが、一方で
米国は、制裁解除はするが経済支援は行わないと明言した。核問題が解決すれば
日朝国交正常化が可能になり莫大な経済協力資金が日本から提供されるとトラン
プは金正恩を説得したはずだ。そのとき、拉致問題解決なしに日本は経済支援し
ないから安倍に会えと説得したのではないか。ところが、米朝核交渉が物別れに
終わった。だから、安倍訪朝も実現しなかった。
◆3つめの方法・核問題と切り離して日本単独で行う交渉
今、米国バイデン政権は中国との覇権争い、ウクライナ戦争などで手一杯で北
朝鮮の核問題に力を割いていない。金正恩は核廃棄など全く考えず、むしろ憲法
に核武装を書き込んだ。
そこで私たちは核と拉致を切り離して拉致だけに絞った日朝交渉を提案した。
これが、3つめの「核問題と切り離して日本単独で行う交渉」という救出方法だ。
拉致被害者救出運動を引っ張ってきた親の世代の家族が次々逝去するという切迫
感がその背景にある。
◆家族会・救う会の新運動方針
一方、安倍・トランプが主導した国連の対北経済制裁は効果を上げ、その上コ
ロナウィルスまん延で国境を閉鎖した北朝鮮は深刻な経済難、食糧難に直面して
いる。核問題を理由にかけられた国連制裁は拉致被害者救出が実現しても緩和さ
れない。日本は制裁違反をすることは出来ない。
しかし、制裁に反しない交渉カードがある。人道支援だ。北朝鮮は1990年代後
半に300万人以上が餓死する大飢饉を迎えた。2000年代に入り韓国の金大中、盧
武鉉政権が大規模な食糧支援、肥料支援を行った結果、大量餓死は止まった。今、
また北朝鮮は飢饉が起き始め、人道支援を必要としている。そこで私たちは今年
2月に「親の世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の一括帰国が実現するなら、
我が国が北朝鮮に人道支援を行うことに反対しない」という新運動方針を決めた。
◆岸田政権の新戦略「時間的制約のある人道問題」
岸田文雄政権は以上のような情勢を真剣に検討した上で、昨年10月から拉致被
害者救出のための新しいアプローチをとり始めた。拉致問題を核問題と切り離し
て「時間的制約のある人道問題」と位置づけて、日朝首脳会談実現を北朝鮮に求
めるアプローチだ。
これまで安倍政権も菅義偉政権も表向きは、拉致、核、ミサイルを包括的に解
決して国交正常化を行う、としてきた。
岸田総理は昨年10月の家族会・救う会・拉致議連などが主催した国民大集会で
「拉致問題は時間的制約のある人権問題」と語った。年末に出した安保3文書で
も同じことが明記された。総理はその表現の意味について、拉致問題を核ミサイ
ル問題と別次元で扱うことだと雑誌インタビューで説明した。家族の高齢化が進
む中で、拉致問題を核問題と切り離し、人権・人道問題として扱うと明言したの
だ。
そこには拉致被害者を帰せば同じ人道問題である北朝鮮住民の食糧難に対して
日本が米や肥料などを支援できるというメッセージも含まれていた。あまり知ら
れていないが、この岸田政権の新しい戦略作成では松野博一官房長官が担当大臣
としてリーダーシップを発揮している。
◆北朝鮮の回答「会えない理由はない」
それに対して北朝鮮は日朝が「会えない理由がない」という回答をしてきた。
岸田総理は今年5月27日の国民大集会で「時間的制約のある拉致問題は、ひとと
きもゆるがせにできない人権問題」と表現を強めた上で「首脳会談を早期に実現
すべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と述べた。すると、僅か
2日後の29日、北朝鮮は外務次官の談話を出して「27日、日本の岸田首相があ
る集会で朝日首脳間の関係を築いていくことが大変重要であると発言し、朝日首
脳会談の早期実現のために高位級協議を行おうとする意思を明らかにした」と岸
田発言を引用した上で、「朝日両国が互いに会えない理由がない」と応えた。
北朝鮮が対外メッセージを出すときには、必ず金正恩委員長の決済が必要だ。
岸田総理の挨拶は27日土曜日の午後2時半近くに行われた。それを北朝鮮側はす
ぐ文字起こしして朝鮮語に翻訳し、金委員長に見せ、談話を出せとの指示を受け
て談話案を作成して、再度決済を受けたはずだ。談話に岸田発言が引用されてい
るから事前に談話案を作っていたとは考えられない。そのプロセスが週末のわず
か1日半で行われた。岸田政権の新しいアプローチ、すなわち3つめの救出方法が
成功する可能性が見えたのだ。
◆様々なルートで接触
その後、7ヶ月近く表向きの動きはない。
私たちは11月26日に今年二回目の国民大集会を開いた。岸田首相はそこで「様
々なルートを通じて様々な働きかけを絶えず行い続けていますが、早期の首脳会
談実現に向け、働きかけを一層強めてまいります」と日朝接触の現状について説
明した。北朝鮮政権中枢につながる様々なルートをすでに持っていて、そこで首
脳会談実現のための働きかけを行っていると話したのだ。
◆待たれる金正恩委員長の決断
複数の情報によると、金正恩政権中枢はいま、国交正常化は核ミサイル問題が
あるので当面は困難だということを前提に、人道支援をまず先にもらうために生
存している拉致被害者を返すことを検討している。
岸田政権と北朝鮮は水面下で接触を重ねていることは間違いない。ただ、表に
その動きがいつ出てくるのかは、まだわからない。
そして北朝鮮は日本の政権の安定度を見ている。拉致問題担当大臣が交代した
という最近の状況を北朝鮮はどう見ているのかはまだ、情報がない。いまこそ拉
致問題は国政の最優先課題だというメッセージを、与野党超えてオールジャパン
でより一層力強く出すべきだ。
(3につづく)
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■岸田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
https://www.kantei.go.jp/jp/iken.html
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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■国際セミナー報告2
基調報告?全被害者救出の3つの方法と岸田政権の救出への取り組みの現状
西岡力(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長)
私たちは「北朝鮮による拉致被害者の即時一括帰国」、この目標のために国民
運動を続けている。どのような方法で実現するのか。3つの方法がある。
◆一つ目の方法・実力による救出
一つ目の方法は「実力による救出」だ。次が交渉による救出で「核開発を阻止
することを目的とした米国の圧力を背景にして日米が連携して行う交渉」が2つ
めの方法だ。そして、「核問題と切り離して日本単独で行う交渉」が3つめの方
法だ。
「実力による救出」を見よう。拉致は明確な主権侵害だから救出作戦は自衛権
の行使だ。ただし、全被害者のリストがいまだなく、何より今どこにいるかにつ
いての情報がない中で、平時の救出作戦は不可能だ。北朝鮮で混乱事態が起きた
り、北朝鮮軍が韓国に全面的な軍事攻撃をしかけたりして、米韓軍が北進するよ
うな事態が発生した場合は別だ。そのときには、自衛隊による救出作戦が決断さ
れうる。米韓軍による救出もこれに含まれる。
◆二つ目の方法・核開発を阻止のための米国の圧力を背景にした交渉
二つ目は「核開発を阻止することを目的とした米国の圧力を背景にして日米が
連携して行う交渉」だ。北朝鮮は強い圧力がかかったときにだけ譲歩する。北朝
鮮の核開発に対する米国の軍事圧力が北朝鮮を動かす大きな力になってきた。こ
れまで何回か米国は北朝鮮への軍事攻撃を検討した。
米国が核問題で軍事攻撃を含む強い圧力をかけ、その結果、北朝鮮が交渉の場
に出てきたとき、交渉のテーブルに核ミサイルだけでなく拉致問題ものせる。核
と拉致が解決しないと軍事攻撃もあり得るが両者が解決すれば制裁を緩め、大規
模な経済支援をすることも可能だという取引を持ちかけることが第2の救出方法
だ。
◆1994年第1次米朝核危機
1994年、米国クリントン政権は北朝鮮の寧辺のプルトニウム生産基地を爆撃す
ることを真剣に検討した。それを察知した金日成が訪朝したカーター元大統領と
会談し、核開発の凍結を約束した。その後、核凍結の見返りに約50億ドル相当の
原発をつくってやることとそれが出来るまで毎年50万トンの重油を提供すること
が決まった。いわゆるジュネーブ合意だ。日本の村山政権は10億ドルの提供を約
束し、実際5億ドルを支出したが、悔しいことに資金提供の条件に拉致被害者救
出を持ち出さなかった。拉致問題が棚上げにされた最悪の交渉だった。
◆2002年小泉訪朝
2001年米国は同時多発テロにあい、2002年1月、ブッシュ大統領は北朝鮮の核
開発を戦争によってでも阻止すると宣言した。いわゆる悪の枢軸演説だ。北朝鮮
はジュネーブ合意を破ってパキスタンから技術をもらって濃縮ウラン製造を極秘
で行っていた。そのことを知ったブッシュ政権は北朝鮮への攻撃を考えた。
軍事圧力の結果、金正日は交渉に出てきた。そのときは米国ではなく日本が相
手に選ばれ、日朝首脳会談が実現した。5人の被害者の救出はこのような枠組み
で実現した。しかし、当時の外務省は拉致被害者救出と核開発阻止を軽視し、国
交正常化を優先した。だから、5人以外の被害者救出は失敗した。
◆トランプ・金正恩会談
3回目のチャンスが2017年の米朝核危機と2018年、19年の米朝首脳会談だった。
トランプ政権も核開発阻止のため軍事圧力をかけた。すると金正恩が交渉に出て
きた。そのときに備えて安倍晋三総理はトランプ大統領に拉致問題の深刻さと日
本はこの問題で絶対に譲歩しないという決意を打ち込んでいた。
トランプ大統領は金正恩との首脳会談でなんと3回も日本人拉致問題を出した。
2018年のシンガポール会談では金正恩はその話しに乗ってこなかった。2019年の
ハノイ会談では、まず冒頭の1対1会談でトランプ大統領は拉致解決を迫ったが、
金正恩は話題を他のことにそらして答えなかった。驚いたことにその後の少人数
の夕食会でもトランプ大統領は拉致問題を出した。そのとき金正恩は、「意味の
ある回答」をしたと私たちはホワイトハウス高官から聞いている。
トランプ大統領は核廃棄をすれば北朝鮮は豊かになれると説得したが、一方で
米国は、制裁解除はするが経済支援は行わないと明言した。核問題が解決すれば
日朝国交正常化が可能になり莫大な経済協力資金が日本から提供されるとトラン
プは金正恩を説得したはずだ。そのとき、拉致問題解決なしに日本は経済支援し
ないから安倍に会えと説得したのではないか。ところが、米朝核交渉が物別れに
終わった。だから、安倍訪朝も実現しなかった。
◆3つめの方法・核問題と切り離して日本単独で行う交渉
今、米国バイデン政権は中国との覇権争い、ウクライナ戦争などで手一杯で北
朝鮮の核問題に力を割いていない。金正恩は核廃棄など全く考えず、むしろ憲法
に核武装を書き込んだ。
そこで私たちは核と拉致を切り離して拉致だけに絞った日朝交渉を提案した。
これが、3つめの「核問題と切り離して日本単独で行う交渉」という救出方法だ。
拉致被害者救出運動を引っ張ってきた親の世代の家族が次々逝去するという切迫
感がその背景にある。
◆家族会・救う会の新運動方針
一方、安倍・トランプが主導した国連の対北経済制裁は効果を上げ、その上コ
ロナウィルスまん延で国境を閉鎖した北朝鮮は深刻な経済難、食糧難に直面して
いる。核問題を理由にかけられた国連制裁は拉致被害者救出が実現しても緩和さ
れない。日本は制裁違反をすることは出来ない。
しかし、制裁に反しない交渉カードがある。人道支援だ。北朝鮮は1990年代後
半に300万人以上が餓死する大飢饉を迎えた。2000年代に入り韓国の金大中、盧
武鉉政権が大規模な食糧支援、肥料支援を行った結果、大量餓死は止まった。今、
また北朝鮮は飢饉が起き始め、人道支援を必要としている。そこで私たちは今年
2月に「親の世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の一括帰国が実現するなら、
我が国が北朝鮮に人道支援を行うことに反対しない」という新運動方針を決めた。
◆岸田政権の新戦略「時間的制約のある人道問題」
岸田文雄政権は以上のような情勢を真剣に検討した上で、昨年10月から拉致被
害者救出のための新しいアプローチをとり始めた。拉致問題を核問題と切り離し
て「時間的制約のある人道問題」と位置づけて、日朝首脳会談実現を北朝鮮に求
めるアプローチだ。
これまで安倍政権も菅義偉政権も表向きは、拉致、核、ミサイルを包括的に解
決して国交正常化を行う、としてきた。
岸田総理は昨年10月の家族会・救う会・拉致議連などが主催した国民大集会で
「拉致問題は時間的制約のある人権問題」と語った。年末に出した安保3文書で
も同じことが明記された。総理はその表現の意味について、拉致問題を核ミサイ
ル問題と別次元で扱うことだと雑誌インタビューで説明した。家族の高齢化が進
む中で、拉致問題を核問題と切り離し、人権・人道問題として扱うと明言したの
だ。
そこには拉致被害者を帰せば同じ人道問題である北朝鮮住民の食糧難に対して
日本が米や肥料などを支援できるというメッセージも含まれていた。あまり知ら
れていないが、この岸田政権の新しい戦略作成では松野博一官房長官が担当大臣
としてリーダーシップを発揮している。
◆北朝鮮の回答「会えない理由はない」
それに対して北朝鮮は日朝が「会えない理由がない」という回答をしてきた。
岸田総理は今年5月27日の国民大集会で「時間的制約のある拉致問題は、ひとと
きもゆるがせにできない人権問題」と表現を強めた上で「首脳会談を早期に実現
すべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と述べた。すると、僅か
2日後の29日、北朝鮮は外務次官の談話を出して「27日、日本の岸田首相があ
る集会で朝日首脳間の関係を築いていくことが大変重要であると発言し、朝日首
脳会談の早期実現のために高位級協議を行おうとする意思を明らかにした」と岸
田発言を引用した上で、「朝日両国が互いに会えない理由がない」と応えた。
北朝鮮が対外メッセージを出すときには、必ず金正恩委員長の決済が必要だ。
岸田総理の挨拶は27日土曜日の午後2時半近くに行われた。それを北朝鮮側はす
ぐ文字起こしして朝鮮語に翻訳し、金委員長に見せ、談話を出せとの指示を受け
て談話案を作成して、再度決済を受けたはずだ。談話に岸田発言が引用されてい
るから事前に談話案を作っていたとは考えられない。そのプロセスが週末のわず
か1日半で行われた。岸田政権の新しいアプローチ、すなわち3つめの救出方法が
成功する可能性が見えたのだ。
◆様々なルートで接触
その後、7ヶ月近く表向きの動きはない。
私たちは11月26日に今年二回目の国民大集会を開いた。岸田首相はそこで「様
々なルートを通じて様々な働きかけを絶えず行い続けていますが、早期の首脳会
談実現に向け、働きかけを一層強めてまいります」と日朝接触の現状について説
明した。北朝鮮政権中枢につながる様々なルートをすでに持っていて、そこで首
脳会談実現のための働きかけを行っていると話したのだ。
◆待たれる金正恩委員長の決断
複数の情報によると、金正恩政権中枢はいま、国交正常化は核ミサイル問題が
あるので当面は困難だということを前提に、人道支援をまず先にもらうために生
存している拉致被害者を返すことを検討している。
岸田政権と北朝鮮は水面下で接触を重ねていることは間違いない。ただ、表に
その動きがいつ出てくるのかは、まだわからない。
そして北朝鮮は日本の政権の安定度を見ている。拉致問題担当大臣が交代した
という最近の状況を北朝鮮はどう見ているのかはまだ、情報がない。いまこそ拉
致問題は国政の最優先課題だというメッセージを、与野党超えてオールジャパン
でより一層力強く出すべきだ。
(3につづく)
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首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿
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TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
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