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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

東京連続集会128訪米報告と北朝鮮の動きについて2(2024/06/03)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2024.06.03)

◆「新しい運動方針」が理解された

西岡力(救う会会長)

 横田代表が言った言葉と重なるのですが、今回の訪米の第一の目的は、「新し
い運動方針」を説明して、理解を得ることでした。アメリカは、「新しい運動方
針を理解し、そのことを北朝鮮に伝える」ということでした。

 北朝鮮は今もミサイルをどんどん撃っています。特に、「アメリカまで届く大
陸間弾道ミサイルが既に実戦配備された」と彼らは言っていました。

 そういう状況の中で日本が、事実上核・ミサイル問題と拉致問題を切り離して、
人道問題、人権問題として拉致問題を先に解決しようとすることについて、国際
社会が一丸となって圧力をかけている時に、「日本は抜け駆けするのか」という
反応がアメリカ等から出ると、岸田政権も動きにくくなります。

 あるいは平壌が、「アメリカが反対したら結局日本は動けないだろう」と判断
すれば、日本との交渉を躊躇することになる。

◆北朝鮮から見ても、「2002年と今は違う」となる

 2002年に小泉総理が平壌を訪問した時、平壌宣言で、「早期に国交正常化
して、韓国に1965年にしたのと同じように大規模な経済協力をする」と合意
したわけです。

 北朝鮮側は100億ドルの(経済協力)資金が来ると約束を受けたと思ってい
ます。例えば太永浩(テ・ヨンホ)さんという韓国の国会議員で、元北朝鮮の外
交官、イギリス大使館で公使だった人が、2002年には平壌に居ました。

 姜錫柱(カン・ソクチュ)さんという金正日氏の横に座っていた人が、「金正
日氏が謝罪したということで、これはどういうことなんだ」と外交官が動揺して
いるので、外交官全員を集めて、講堂で、講演会をやった。

 姜錫柱氏が「大丈夫だ。日本から100億ドル来るんだ」と言ったのを私は聞
きましたと太永浩さんの本に書いてあります。

 金正日が拉致を認めて、謝罪した。最高指導者が謝罪するというのは北朝鮮に
とっては大変なことですが、5人を返したのにお金は来なかった。彼らの観点で
はそうなります。

 我々からすると、5人を返しても拓也さんが言った通りそれは解決の定義では
ないので解決ではないのですが、彼らからすると大きな譲歩をしたのに、という
ことになる。彼らの総括は、アメリカが強く反対したからです。もちろん彼らは
日本の世論という要素も一定程度理解していしたが、北朝鮮では世論というのは
あまり分からないのです。

 実際アメリカは、北朝鮮が核開発を続けているという証拠を持っていた。今我
々は、「人道支援」と言っていますが、当時は、「国交正常化をして大規模な経
済協力をする」と約束していました。

 「平壌宣言」では北朝鮮は、「核・ミサイルに関する国際的な約束を守ってい
る」と書いた。しかし、アメリカは「守っていない。濃縮ウラニウムを作ってい
る」という情報を持っていた。だから日米関係がぎくしゃくしたわけです。

 そういうこともあり、我々がアメリカに行った時はすごく対応がよかったので
す。しかし、平壌から見ると、「アメリカは、核問題があるからと日本の動きを
止めた」と見えているわけです。

 今回岸田首相が、「時間的制約のある人権問題」と言って、事実上拉致問題を
先に進めるかのような動きをしていることについて、アメリカはどう見ているの
かということを平壌は注視しています。

 岸田首相は、バイデン大統領と首脳会談で会う度に、共同声明などで、「バイ
デン大統領が拉致問題の解決を支持する」という言葉を取っています。そして私
たちは新しい運動方針を説明したのですが、ホワイトハウスや国務省、制裁を担
当する財務省や議員などから、「抜け駆けは困る」というような話はありません
でした。それを平壌に伝えたい。

 2002年に約束したお金が行かなかったのは、「死亡」と言うが、死亡の証
拠は嘘じゃないかということで怒ったからと、「核問題があるのになぜ国交正常
化まで行くのだ」とアメリカが止めたから、と2つあったのです。

 その世論の中心にいた家族会が今、「全被害者の帰国」という条件と、「親の
世代が生きている間に」という2つの条件を付けていますが、(全員返せば)
「人道支援に反対しない」、「独自制裁解除に反対しない」と言っている。

 そしてアメリカも、「それを支持する」と言っている。この状況を平壌から見
ると、「2002年と今は違うんだ」となるでしょう。2002年に日本が約束
したものを出さなかった2つの条件はなくなっている、と見せることができるの
ではないかと我々なりに考えて総理訪米の直後に訪米しました。

 去年の運動方針を決めた後、岸田総理が「私直轄の高いレベルで協議を進めて
いきたい」と言いました。すると2日後に北朝鮮の外務次官が、
この1年間にあったことを文書にしましたが、「朝日両国が互いに会えない理由
がない」と言った。そういうことも説明して、支持を得て、訪米は成功したとい
うことです。

 最初の日の夜に、山田重夫大使が情報交換を兼ねて夕食会をしてくださったの
ですが、そこで独自制裁解除ということについて、「アメリカの反応はどうです
かねえ」と率直に拓也さんが質問した時に、「独自制裁というのは国際制裁とは
重なっていない。国際制裁を守った上で、それで解決するということならアメリ
カでも一定の理解はある。でもそのことを強調してアドバイスした方がいいです
よ」ということでした。

 私たちだけの努力ではなく、ワシントンでも協力してくださっていたから、こ
ういう結果になったのではないかと思います。そういう点でも大変ありがたかっ
た訪米でした。

 あくまでも私たちがしたというとですが、これだけの政府関係者等が来てくだ
さって、アポ取りをしてくださったり、案内をしてくださった。日本政府は拉致
問題を本当に一生懸命やろうとしている。家族の側に日本政府がいることも、ア
メリカ政府に示せたと思います。今日もその人たちが来てくださったのですが、
大変感謝しています。

◆「ウクライナ戦争が続くと北朝鮮が潤うことになる」

島田洋一(救う会副会長)

 私と西岡さんが一日早くワシントンに言った目的は、トランプ陣営幹部の様々
な意見をじっくり聞こうということでした。

 アメリカファースト研究所(AFPI)を訪問して、2時間半くらい意見交換
しました。ここはトランプ第二次政権をめざして、政策作りをしているシンクタ
ンクです。

 アメリカの人に言わせると、このAFPIとヘリテージ財団の2つが、トラン
プ陣営のシンクタンクです。このAFPIの外交安全保障政策の仕切り役である、
フレッド・フライツという男がいるんですが、以前からの知り合いです。

 5月の半ばに、このAFPIが、「アメリカ第一政策的な外交政策アプローチ」
という本を出しました。その編者をしたのもこのフライツです。私と古森義久さ
んが日本人で一番親しくなってのですが、フライツも元CIAで奥さんもCIA
です。

 奥さんも含めて食事会をしたこともありますし、また彼の息子が日本語をやっ
ているんですが、私と古森さんとカラオケ・スナックに行ったこともあります。

 ビル・ハガディ上院議員は、前駐日大使ですが、トランプ氏の信頼が厚く、ト
ランプ政権が発足した場合、国務長官最有力候補に彼が上がっていると言ってい
ました。これはトランプ陣営の幹部の話ですので重要度の高い情報ではないかと
思います。そうなれば非常にいいことだと思います。

 以前訪米団が行った時に、拉致問題で非常に動いてくれたマシュー・ポッティ
ンジャー氏は、最後は安保副補佐官でした。元海兵隊員でしっかりした人なんで
すが、このポッティンジャー氏は、「トランプの運動から脱落してしまった」と、
フライツ氏等は言っていました。

 2021年1月6日に、議会乱入事件がありました。トランプ政権が終わった
のが1月20日でしたが、ポッティンジャーはその前に慌ただしく辞表を出して
辞めたんです。

 つまり、乱入事件を起こされるようなトランプ氏とは自分は一線を画している
というアピールをするたでした。あと1週間足らずだったのに辞めたのです。こ
ういう動きをするということは忠誠心がないということです。自分だけいい子に
なろうとしたと、トランプ氏周辺から非常に嫌悪された。

 トランプ氏が国連総会での演説で、横田めぐみさんの名前を出して、アピール
してくれたことがありましたが、あれは数日前に我々がポッティンジャーに会っ
て、彼に打ち込んだ情報を原稿に入れてくれた、と聞いています。

 トランプ政権になった場合とバイデン政権になった場合、明らかな大きな違い
は、対ロシア・ウクライナ戦争への対応ですね。バイデン氏は反対勢力から言わ
せると、「出口戦略がないままにずるずるとウクライナに対する兵器などの支援
を続けている」と。

 一方トランプ氏は、「自分が大統領に当選したら、つまり今年の11月直後に、
ロシア・ウクライナの停戦に向けて調停に動き出す」と言っています。これは、
先ほどのフライツ等政策作りの人たちはみんなはっきり、「停戦に向けて動き出
す」と言っています。

 理想としては、侵略したロシアをウクライナから安全に追い出すことですが、
現実にはそれができない。ロシアは軍事大国ですし、兵士になる人は、世界人口
と比べても圧倒的にロシアの方が多い。核兵器も持っています。

 従ってプーチン氏が、ウクライナから追い出されるような状態は、徹底的に抵
抗する。

 ポイントは、ウクライナ戦争が続くということは、北朝鮮問題で、我々に悪影
響が及びます。そこを説明するために、国務省等での重要ポイントを紹介します
と、私から国務省の幹部やNSCの人たちにも質問したのですが、「バイデン政
権は繰り返し、食糧支援、人道支援くらいは出してやるから交渉のテーブルに着
け」と。

 言葉を変えると、「交渉のテーブルに北朝鮮が着いたら人道支援を出してもい
い」というオファーを出しているが、北朝鮮が全く応じてこない。「応じてこな
い理由は何か。どう分析していますか」と聞いたところ、整理すればバイデン政
権の幹部は二つの理由を挙げていたと思います。

 一つは、トランプ氏がやった米朝首脳会談の2回目、ハノイでの会談で、端的
に言うと、金正恩は、「ごく一部の核施設を廃棄することで全面的な制裁解除を
得ようと虫のいい提案をトランプが受けるだろう」と高をくくっていたところ、
はねつけられて、わざわざハノイまで行ったのに何の成果もなく帰ることになっ
た。だから安易に米朝交渉はできない。ということです。

 二番目の理由は、ロシア・ウクライナ戦争が続く限り、ロシアとしては質の悪
い不発弾であっても北朝鮮の兵器・弾薬がほしいので、かなりの兵器・弾薬がロ
シアに渡っています。さらにロシアから北朝鮮に様々な物資も渡っています。

 つまり、ロシア・ウクライナ戦争が続く限り、北朝鮮はロシアから色々な物資
を取れる。端的に言うと、北朝鮮が潤うことになる。だから北朝鮮はあの戦争が
続くことを望んでいる。だから、あの戦争が続く限り北朝鮮はなかなか交渉に応
じないだろう。つまり、日本やアメリカから物資が取れなくても、ロシアから取
れる、と。

 トランプ陣営はそういう状態を念頭に、「やはりロシア・ウクライナ戦争を早
く停戦に持ち込んだ方が、全体状況にとってもいい」という判断をしています。
トランプ氏の側近は、ロシアに対して、「攻撃を止めろ。止めないならウクライ
ナに対して攻撃的な兵器をどんどん提供する。そのための予算はアメリカ議会を
通っているとプーチンにプレッシャーをかける」と。

 その意味でフライツ氏が面白いことを言っていましたが、共和党下院でトラン
プ支持者たちが、「ウクライナに対する軍事支援に反対だ、という立場を取りま
したが、自分はそれは違うと思っている」とフライツ氏は言っていました。

 やはりウクライナに対して武器の支援が何年かに渡っている。総額で605億
ドルです。その予算が通ったことは、トランプにとって対プーチン交渉のカード
になる。その予算は既に通っていると言えるからです。

 あの予算が通ったのは停戦をめざす立場からいいことだとフライツ氏は言って
いました。

 今アメリカで問題になっていますが、ハイマース等最新の兵器システムをウク
ライナに提供することによって、台湾防衛の在庫が減っている。そうなると、習
近平氏の侵略を誘発しかねない。

 ウクライナ戦争でロシアが領土を奪ったまま終わることになると、習近平氏が、
「じゃあ俺は台湾を取ってやろうと勇気づけられるのではないか」、という議論
があるのですが、そうなると北朝鮮に連動して、何らかの動きを起こすかもしれ
ない。そういうことをトランプ陣営の幹部は言っていました。

 そして別のポイントですが、ニコラス・エバーシュタッド氏(AEI「アメリ
カン・エンタープライズ公共政策研究所」上級研究員)に別の質問をしたのです
が、アメリカと北朝鮮の間で行われるのはセカンド・トラック、1.5トラック
と呼ばれる民間人が政府の意向を受けて北朝鮮と交渉する。公式の米朝協議は様
々な事情から北朝鮮はやりたくない。

 そこで要求を伝えるために、民間人が協議する。このセカンド・トラックのメ
ンバーに必ず入っていたのが、エバーシュタッド氏で、過去にどういう交渉をし
たか聞いてきました。

 「現在セカンド・トラックの交渉があるのか」と聞いたところ、「一切ない」
と言っていました。「ロシア・ウクライナ戦争が続いている限りロシアから物資
が色々取れる。この状況があるので、アメリカだけでなく、日本との交渉でも切
羽詰まった必要性を感じない理由になっているのではないか」と。

 私個人の意見ですが、ロシアとウクライナは、ウクライナに勝ってほしいけれ
ども、現実的な力関係から見て、戦線膠着したところで朝鮮戦争方式、冷戦にもっ
ていくのが、北朝鮮問題、拉致問題を考えてもいいのではないかと思います。

 リチャード・アーミテージ氏(元国務副長官)は、完全に反トランプです。拉
致問題ではずっと協力関係を作ることができた人で、我々にとってはありがたい
人ですが、あまりにも反トランプにこだわり過ぎです。

 共和党はトランプ支持でいこうとまとまっている中で、アーミテージ氏は共和
党の中でごく少数派になりつつあると思っています。日本の政治家がワシントン
に行くと、「アーミテージさんの言うことは正しい」という感覚で、話を聞いて
帰ってくる人が多いのですが、政府関係者の方もそう分析していると思います。

 アーミテージ氏の位置に関しては、念頭に置いておく必要があると思います。

 最後にデビッド・スネドン氏、2004年に中国の雲南省で失踪した人ですが、
アメリカの上下両院が、「スネドン氏の失踪は北朝鮮による拉致の可能性が高い
という観点から真相究明をしていくべき」との決議を通しています。

 そのことで色々質問したのですが、結論を言えば、アメリカ政府においてこの
問題の真相究明を真剣にやろうという動きは見られないのが現状です。その理由
は、彼は中国で失踪して、中国は、「スネドン氏は雲南省でトレッキングをして
いる時に崖から落ちで死んだのだろう」と結論を出しています。

 そうではなく、脱北者支援者の一人と誤解して、北朝鮮の工作員が、中国政府
の誰かがスネドン氏を解放する際に場所と時間を教えて、金銭的な報酬と引き換
えに北朝鮮に渡したのではないか。これはチャック・ダウンズ氏等が状況証拠を
元にそう主張しているのです。

 ダウンズ氏に改めて聞いたのですが、「動いてない」と。「CIAも政府も動
こうとしない」と。それは北朝鮮だけでなく、中国政府もそう言っているという
覚悟で相手にしなければならない。

 またトランプ政権になって、貿易戦争が悪化して、トランプ氏が全面的に中国
を締め上げる指示を出した時に、このスネドン氏の問題も取り上げることになる
可能性はあるということです。

 スネドン氏の失踪究明決議を上院でやってくれた人物は、マルコ・ルビオ氏で
ユタ州選出の上院議員です。彼はトランプ氏との関係がすごくいい。

 下院で決議をやってくれた人はユタ州選出のクリス・スチュアート議員でした
が、残念ながら既に引退しました。だから下院においてこの問題の拠点を作れれ
ばいいなと思っている所です。

(3につづく)




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首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿

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