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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

拉致問題-新政権に望むこと2(2024/10/09)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2024.10.09)

◆「次期自民党総裁、立憲民主党代表に望む」声明2

西岡 今の状況をどう見るかについてお話します。

 お手元に9月11日の家族会・救う会の声明があります。実は、次期自民党総裁、
立憲民主党代表を選ぶ選挙が行われることが明らかになった時、早紀江さんから
電話をいただきました。「何かした方がいいんじゃないでしょうか」と。

 「テレビを見ていても、拉致問題についてほとんど議論がない。絶望するんで
すよ」と言われたんです。「自分の身体に自信がない」、「めぐみちゃんと会え
ないかもしれない」と。

 しかし私は、「私たちは政治運動ではなく国民運動ですから、どの候補がいい
とかどの党がいいという活動は控えなければならない」とお話して、「選ばれた
人にお願いに行くという、今までやってきたことをやりましょう」と言いました。

 電話を切った後、「これでよかったかな」と。あまりにも切迫感がある話を聞
いたので色々考えました。そして拓也代表に連絡をした所、「同じ連絡があった」
ということでした。それで家族会役員と相談して、政治的活動にならない範囲で
自民党総裁の候補者と立憲民主党代表の候補者たちに望むことを話すという記者
会見をしようという決断をしました。

 私たちは27年間、家族会・救う会で運動をしてきましたが、自由民主党と立憲
民主党の代表を選ぶ選挙の前に、会見をしたのは初めてのことでした。そこで誤
解を受けないようにまず声明文をまとめて、家族の方たちには思いをぶつけてい
ただこうという会見をさせていただきました。

 その時作ったペーパーがこれです。拉致問題は著しい主権と人権の侵害だ、だ
から解決は国家の最優先課題だとした上で、最優先課題になったのはいつからか
というと2006年からです。

 1977年に最初の認定被害者が出ましたが、2006年まで残念ながら最優先課題で
なかったということがこの声明の中に含まれています。

 そして2006年、今から約18年前、(第1次安倍政権の時)総理大臣を本部長と
し全閣僚を本部員とする政府拉致問題対策本部が創設され、拉致問題担当大臣を
置き、その下に独自の予算と人員を持つ事務局を設置しました。この時、「最優
先課題」とする体制ができたのです。

 この体制は民主党政権になっても維持されました。しかし、まだ解決はできて
いない。私はこのことを色々なところで言っているのですが、「なぜこんなに長
くかかったのか」と。一番の理由は立ち上がりが遅かったからです。

 問題というのは発生した直後が一番解決しやすいのです。1977年に最初の認定
被害者が拉致され、2006年まで約30年間何も体制がなかった。そして横田めぐみ
さんは拉致されて47年経って還暦を迎えるわけですが、最初の30年に何もなかっ
たのです。

 この30年間の20年後(1997年)に家族会ができた。20年間は家族会の活動もな
かったのです。家族会ができても10年間は対策本部ができていなかった。そして
初代代表の横田滋さん、2代目代表の飯塚繁雄さんら多くが戦いの中で倒れて、
今親の世代が二人になったのです。

 そして岸田政権が、歴代政権の中で初めて、拉致問題について「時間的制約の
ある人権・人道問題」という言葉を使いました。これは家族会のリーダーたちが
次々に倒れていくという状況を踏まえて、本当に時間がないということで、変更
したのです。

 それまでの政権は、「国政の最優先課題である拉致問題」と核・ミサイル問題
を包括的に解決すると繰り返していました。岸田政権も「包括的に解決する」と
言いましたが、その後続けて、拉致問題だけに、「時間的制約」という言葉を付
けました。

 そうしたら北朝鮮から一定の反応がありました。外務次官声明が出たり、金正
恩氏から(能登地震の際の)お見舞いの電報がきたり、金与正副部長が、「岸田
首相が平壌を訪問することはできる」という談話がありました。

 そして今年3月には、「異なるルートで」と限定を付けて、日朝首脳会談をや
りたいと岸田首相からのメッセージが届いた」と、金与正副部長が言いました。

 先ほど、横田代表が言っていたように、「ルートがあってメッセージが届いた」。
表では外交交渉が行われたとの発表がないのに、北朝鮮が「メッセージが届いた」
と言ったのですからルートがあったのです。

 そういうことを踏まえた上で、今の自民党の総裁選挙と立憲民主党の代表選挙
が行われているということを訴えたわけです。そして、こういう経緯を踏まえて、
新しく総理になる人、第一野党の代表になる人が、(拉致問題を)どうやって解
決するのかという議論をもっとしてほしいというのが私たちの訴えです。

 だから候補者にもっと話してほしい、と。そして3つのことをお願いしました。

1.親の世代の家族が存命のうちに必ず拉致被害者を取り戻すという覚悟を持つ
こと。

 総理になろうとする候補者、第一野党の代表になろうとする候補者にはその覚
悟を絶対持ってほしいということです。

2.拉致被害者救出のシンボルであるブルーリボンを常時着用すること。

3.残された時間が少ないという危機感の中、苦渋の思いで家族会・救う会が出
した運動方針である、「親の世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の一括帰国
が実現するなら、我が国が人道支援を行うことと、わが国がかけている独自制裁
を解除することに反対しない」を重く受け止め、北朝鮮との交渉で活用すること。

「苦渋の思い」については、この場で家族会の方々が何回も話しましたのでご理
解されていると思います。また岸田総理にも直接、「人生を滅茶苦茶にされてい
る(拉致被害者の)家族として、「支援」とか、「解除」というのは、本当は悔
しい。しかし、時間がないのでこういう声明にした、とお話しました。

 その思いをよく受け止めて活用してほしい、と。政治的にならない範囲で私た
ちの思いをぶつけたものです。結果として自民党の総裁選挙は石破さん、立憲民
主党の代表には野田さんが選ばれました。

 自民党の総裁選挙では9人の候補者が出ました。私たちが会見をしたこともあっ
て、その後記者の方々が拉致問題についてかなり質問をしてくださっています。
9人の中には現拉致担当大臣と元大臣もおられ、議論をしてくださったと思って
います。

 この声明の翌日に自民党の総裁選挙が告示されたのですが、候補者9人の内7人
がブルーリボンを付けていました。その二日後に、着けていなかった二人の内の
一人も着け始める状況になりました。

 二日後に着け始めたのが石破茂さんで、その後もずっと付けておられます。総
理になるということは、自動的に拉致問題対策本部長になるわけで、だからこそ
自分として付けようと思われたのだと思いますし、それは大変嬉しいことだと思っ
ています。会見をしてよかったなあと、それを見て思いました。

 第一野党の代表選挙では、泉さんだけが着けており、後の方は着けていません
でした。野田代表は今付けていないと私は理解していますが、着けていただきた
いなあと思っています。

◆所信表明演説で「最重要課題」、「時間的制約」と

 今日、石破総理大臣が所信表明演説をしました。その中で拉致問題について、
このように話されました。

 「拉致被害者やそのご家族が高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題は、
ひとときもゆるがせにできない人道問題、国家主権の侵害であり、政権の最重要
課題です」。

 岸田首相が使った「時間的制約」という言葉を引き継いで使ってくださってい
ます。「時間的制約のある人道・人権問題」という言葉の意味は、「核問題が動
かなくても人道支援はできるのではないか」という呼びかけに応えた言葉遣いに
なっています。これは岸田政権が使い続けた言葉遣いです。それが踏襲されてい
ます。

 そして、「国家主権の侵害」という言葉を政府は色々なところで使ってきまし
たが、それが所信表明演説に入った上で、政権の最重要課題だと言いました。岸
田政権が「時間的制約」という言葉を使い始めてから北朝鮮から反応があったこ
とを踏まえており、大変ありがたいフレーズでした。また、「最重要課題」とい
う言葉も使われ、よかったと思っています。

 その次に石破首相は、「日朝平壌宣言から20年余、残された拉致被害者たちの
ご帰国が実現していないことは痛恨の極みです」。これはこれまでの総理も言っ
てくださったことです。それから22年になってしまったのです。

 さらに、「日朝平壌宣言の原点に立ち返り、すべての拉致被害者の一日も早い
ご帰国を実現するとともに、北朝鮮との諸問題を解決するため、私自身の強い決
意の下で、総力を挙げて取り組んでまいります」。

「平壌宣言」という言葉が入っていることに様々な議論があることは承知してい
ますが、「平壌宣言」は安倍総理も、菅総理も、岸田総理も言及してきたことで
す。

 北朝鮮はああいう国ですから、最高指導者がサインしたことは大変重視します。
「平壌宣言」では、「国交正常化をした後に大規模な経済協力をする」と書かれ
ています。北朝鮮にとってはそれがほしいものであることは間違いありません。

 私たちは、国交正常化の後の経済協力に反対するものではありません。韓国に
対してやったことですから、法制上できるのであればそれはしてもいいと思って
います。

 では正常化とは何か。日本人の被害者が一人でも抑留されていたら正常化には
ならないと思っています。

 石破総理は、「北朝鮮との諸問題を解決する」と言っていますが、もちろん核
問題も解決しなければならない。そして国交正常化になる。その後に経済協力の
話が出てくると思いますが、しかし拉致問題だけには「時間的制約」という言葉
が付けられていました。

 2006年に作られた、「最重要課題」という枠組みと、岸田政権が新しく北朝鮮
に向けて使った、「時間的制約のある人道問題」、この2つが入っているという
ことを、私は評価しています。

 そして拓也さんが言った「連絡事務所」、そして「合同調査委員会」という言
葉は入っていません。石破総理は、選挙公約では、「連絡事務所」に言及しまし
たが、自民党総裁になった後は使っていません。拓也代表に(総理から)電話が
あった時も、それは総理から出た言葉ではないということを確認しました。

 逆にこちらから「言ってもいいですか」と了解を取った上で、「家族会・救う
会は反対です」と、私たちの基本的な立場を伝えたということです。

◆石破総理からの電話

 実は石破新総理とは古い付き合いで、石破総理からの電話でも、「初めまして」
ではなく、「ご無沙汰しています」から始まりました。私は、「2002年9月17日
に、『8人死亡』と言われた時、家族会が涙の記者会見をした時に、石破総理は
拉致議連の会長として、横田滋さんの隣に座っていましたよね。あの時の姿が忘
れられません」と言いました。

「その石破総理がめぐみさんたちを取り戻したら、こんな嬉しいことはありませ
ん」と。そうしたら総理は、総理の発言はあまり引用してはならないのですが、
多分大丈夫だと思うので、「私もあの時のことは忘れられない」という趣旨の話
をされました。

 あの会見は本当に感動的な会見だったことを皆さんもご承知だと思いますが、
早紀江さんが後ろからマイクを取って、「私はまだ信じません」と言った会見を
現場で聞いておられたということは、やはり他の人とは違うのではないかと思い
ます。それを是非思い出してほしい、と思って言いました。

 そして私は、「これまでやってきた積み上げを理解してほしい、その上で総理
が取り組んでほしい」という趣旨のこと言いました。

 また、「官房長官が拉致問題担当大臣として留任したことがよかったと思いま
す。これまでの取組みについて林官房長官に聞いてください」と言いました。

 それについては、「よく分かりました」という趣旨のご返事があり、そして最
後に、「西岡先生の意見も聞きながら進めます」と、お世辞かもしれませんが、
そういうお話もありました。

 何か私たちを説得するために電話をかけてきたのではなかった。新任の挨拶を
されたということでした。逆に私たちの方が、何とか考えてほしいと思って言っ
たところです。

 私たちは、どの政権がいいという立場ではありませんが、解決としての方策と
して、「連絡事務所」、「合同調査委員会」の設置には反対だということは、ど
の政権に対しても言おうと思っているところです。

 繰り返しになりますが、連絡事務所を作っても何もできない。拓也さんも言い
ましたが、分かりやすい例で言うと、今世界のかなりの国では平壌に大使館があ
ります。大使館なら外交官特権がありますが、連絡事務所ではないんです。

 あるヨーロッパの大きな国の北朝鮮大使が東京に来て、家族会・救う会に会い
たいと言って会ったことがあります。「平壌に行っても何も分からない。東京に
来て専門家に会って、北朝鮮で何が起きているかをチェックする」と。そういう
状況になるのが連絡事務所です。

 拉致問題の解決のために何かできるかと言えば、それはできないのです。でも、
「日朝が大使館を置くくらいに関係がよくなった」というメッセージが国際社会
に発せられてしまう。

 私たちは国際社会に対して、「ひどい人権侵害が行われている」と言っている
のに、日本は態度を改めたというふうに映ってしまう点からも賛成できないとい
うことです。

(3につづく)




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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 石破茂殿

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