救う会全国協議会

〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
TEL:03-3946-5780 FAX:03-3946-5784 info@sukuukai.jp

北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

国際セミナー報告4(2024/12/20)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2024.12.20-2)


■基調講演2

◆拉致問題解決へのアメリカの重み

古森義久(麗澤大学特別教授)

 私は、家族会、救う会の方々が最初にアメリカと接触をした際に、それまで私
はかなりの期間ワシントンにいて、北朝鮮問題にも関心を持っていたこともあり、
黒幕として橋渡しをさせていただきました。

 その後もワシントンを拠点として北朝鮮問題、特に米朝関係をフォローしてき
たという立場で報告させていただきます。

 まず、来年1月20日に、2期目のドナルド・トランプ大統領が登場しますが、こ
れがわが日本の拉致問題にどういう影響を与えるかを考えました。

 結論を先に申し上げますと、多分明るい光を投げかけるだろうと想像できます。
多分とか、何々だろうとかの控えめな表現の理由は、当然ながら日本人拉致問題
というのは主権国家であるわが日本が自立、自律の精神で、当事国としてやらな
ければならないというのが根本の理由です。

 もう一つは、北朝鮮という国家は、今でも何が起きるか分からないという不確
定要因が非常に大きいことです。

 北朝鮮は、「日本人拉致問題は既に解決済み」と主張しています。ですからこ
の主張を変えなければ、拉致問題の解決は実現できない。この主張を変えるには
どうしたらいいか。

 一つは、北朝鮮が現状安定のままでは変わらない。苦境に陥る、あるいは困っ
てしまうという場合には、この主張を変える可能性がある。あるいはそれほど困
らなくても、日本との関係を変えることが北朝鮮にとって非常に大きな利益にな
るという判断を下す場合です。

 北朝鮮の主張を変えるという作業は、日本国としては能力がほとんどない。こ
れまでも悲しい歴史が示している通りです。しかし、アメリカにはその能力がか
なりある。

 北朝鮮当局による拉致というのはそもそも国家犯罪です。ですから本来はその
国家犯罪を取り締まるべき法的な執行、つまり警察行動を行うべきところです。
それがいつの間にか外交交渉になっていった。その辺にも拉致問題の悲劇がある
わけです。

 この本来あってしかるべき警察行動的な動きというのは強制力を伴う。この強
制力を日本は持っていない。アメリカには強大な軍事力があり、強制力を持って
いる。しかも、相手国の北朝鮮は軍事力自体を深く、深く信奉する国家です。し
かし、アメリカの役割は大きい。アメリカに頼らねばならない面もある。

 拉致被害者家族の方々が初めてワシントンを訪れた時、23年前、2001年の冬の
ことですが、当時二代目のジョージ・ブッシュ大統領が就任したばかりでした。
この時の日本側の訪米団は、横田滋さんご夫妻、まもなく帰国する蓮池さんのご
両親で、いわゆる拉致被害者の親の世代でした。

 この訪米団に対してアメリカ側は驚くべき、前向きな対応をしました。2001年
当時は、日本では拉致問題は「拉致疑惑」とされていました。しかも、「これは
デマだ。拉致問題なんかないんだ」とされていました。

「拉致問題がある」というのは、北朝鮮に何らかの意図を持ったデマなんだとい
う人たちが多かったのです。にも拘わらず米国幹部の前向きな対応、しかも基本
的な事実関係、北朝鮮当局が間違いなく日本人を拉致したという事実関係をしっ
かり踏まえているようなアメリカ側の認識というものは、大きな励ましになりま
した。

 この訪米団の活動の最後の夜に、割合おそまつなワシントンのレストランで、
私も参加させていただいたのですが、寒い夜でワシントンでは冷えるのですが、
この中で何か温かいもの、ただならぬ雰囲気を家族会に見て取れました。それは
私も現場にいてよく覚えています。

◆アメリカの圧力と5人の解放

 この後すぎ、ブッシュ政権は、北朝鮮、イラン、イラクを「悪の枢軸」と言い
ました。そして当時北朝鮮のトップだった金正日総書記が、このアメリカの対応
に恐怖して、結局は5人を日本に帰国させることになったのです。

 その後もアメリカとの連帯は続きました。例えば2007年に、横田早紀江さんが
ワシントンにいらっしゃって、下院の公聴会で証言をしました。これは有名な話
です。その後に拓也さんを伴って、ブッシュ大統領と会見しました。

 これは日本にとって大きな出来事ですから私も詳しくフォローしましたが、こ
れ以後ブッシュ大統領は、事あるごとに早紀江さんとの会談のことを、誰も質問
していないのに自分から持ち出していました。

 例えば、「大統領をやっていると色々な貴重な体験がある。例えば自分の娘を
外国の工作員に拉致されてしまった母親の切なる嘆きの声を直接聞くなんて、こ
れは大変豊かな体験になるんだ」というようなことを何度も言った。

 こういう態度から何が起きたかと言うと、少なくともアメリカの中では、北朝
鮮の工作員による日本人の拉致という事件があって、これは大変なことなんだ、
と。半分国際問題で、完全な国際問題よりはもう少し距離がありましたが、アメ
リカの中で非常に多くの人に知られるようになりました。

 同時に同情が広がりました。この頃、拉致の詳細なことが明らかになった後で
も、しかも専門家とされるような人たちまでが、北朝鮮の工作員が日本人を拉致
したというのは、「日本国内ではなくてどこか別の所でやったのだろう、日本の
国内でそんなことできる筈がないじゃないか」という大前提があった。

 日本の治安というのはなげかわしく、極めてルーズで、外国の工作員が入って
きても取り締まりなんかほとんどなかった、ということを私は説明しなければな
らなかったのです。そういうことが何回もありました。

◆次期トランプ政顔の北朝鮮政策?拉致問題で日本支援

 そしてアメリカの歴代大統領はそれなりに拉致問題には取り組んでくれたので
すが、やはり2017年に登場したトランプ大統領が歴代の中で最も熱心に、前向き
に拉致問題に取り組んでくれた。

 国連総会での演説、これは「13歳の日本人のやさしい少女が拉致された。むご
いことが始まった」ですが、「やさしい」という言葉をどう言ったかというと、
トランプさんは「sweet」という言葉を使った。やさしいという感情が入ってい
ます。

 ご存じのように日本人の拉致被害者のご家族の方々との、文字通りひざを交え
ての会談が数回ありました。さらに金正恩総書記との会談での日本人拉致問題へ
の複数回の直接の要求、こういうことがありました。

 私が冒頭、「明るい光」と述べたのは、第二次トランプ政権でも、日本人拉致
問題への協力は、間違いなく政策に入っている。この姿勢は以前と変わりません。

 では次期トランプ政権の政策とは何なのか。今の日本の中では、識者と言われ
る人により色々な言論が飛び交っていますが、その根拠がはっきりしていない。
例えば、NATOから撤退するとか、同盟はすべて停止するとか、場合によっては日
米同盟も崩れるかもしれないというようなことが言われていますが、現実は全く
異なると思います。

 私が何を根拠にして次期トランプ政権の政策の手がかりを得たかというと、ア
メリカ第一政策研究所(AFPI)という大きな研究機関があって、これはトランプ
氏自身に直結しています。この研究所が既に発表した安全保障政策というのは、
はっきりしたものが既に出ていますが、ここで日本や北朝鮮の関するものもでて
きます。

 このAFPIの研究者が今どんどん次期政権に入っています。例えば理事長のリン
ダ・マクマホンさんは教育長官になる。所長のロリンズ氏、この人も女性ですが
閣僚級になる予定です。ロリンズ氏は農務長官とされています。安全保障担当の
中心にいたケロッグ氏、この人がウクライナ問題でも主席を務めました。

 さらにホワイトハウスで主席補佐官になるマイク・ウォルツ氏、この人もAFPI
の主要メンバーです。こういう人たちはトランプさんともしょっちゅう直接のや
りとりをしていて、トランプさんは政策に関してちゃんと見ています。

 AFPIによって作られた政策を見ると、かなりはっきりしています。まず日本に
対しては、「次期トランプ政権が日本との同盟堅持をグローバルな最優先事項と
する。日米同盟はアジア政策の礎石(コーナー・ストーン)と何度も書いていま
す。

 その上で、アジアでの当面の主要な課題として3つ挙げています。北朝鮮の非
核化、ほんとうにできるかどうかは疑問ですが、少なくともトランプ政権は非核
化をめざしています。

 2番目は、中国の南シナ海での侵略阻止、3番目に北朝鮮による日本人拉致事件
の解決への支援とはっきり書いてあります。これはトランプさんの下で働くこと
になっている人たちが作った次期政権の政策です。

◆再び、「軍事オプション」と言うのではないか

 こうした姿勢はバイデン政権とはかなり違います。バイデン政権は過去4年近
く、北朝鮮問題で新たな動きはほとんどとらなかった。北朝鮮の非核化という歴
代政権の最重要課題さえも仕事をしていない。

 実はバイデン政権の中にいたスーザン・ライスという補佐官、朝鮮問題や安全
保障問題に詳しい人ですが、この人がトランプ政権時代に、「北朝鮮非核化の問
題はもうやめた方がいい。核兵器保有国と認めた上で色々な制約を加えようと言っ
たのです。

 これをトランプ陣営のサポーターが、「とんでもない」と反対をして収まった
のですが、そういう考え方の流れがバイデン政権の中にある。

 北朝鮮に対しては、オバマ政権の時代は「戦略的忍耐」と言いました。じっと
我慢しているということです。バイデン政権はこの言葉は使わなかったけれど、
実態としては同じことをしていた。

 これに対してトランプ政権は、「炎と怒り」という言葉を使った。最悪の場合
は、北朝鮮という国家を消滅させてしまう、と。そして常に、「軍事オプション」
という言葉が出てきました。

 トランプ政権の時は、北朝鮮問題を論じる、これは政権の内外を問わず何かと
いうと「軍事オプション」と言いました。それまでの朝鮮問題は、どんなことに
なっても戦争だけはできない、と。なぜかと言えば、北朝鮮の大部隊が38度線の
すぐ北に展開していて、ロケットやミサイルを山のようにあり、攻撃されるとあっ
という間に何十万という死傷者が出てしまうから、と。だから戦争だけはできな
い、と。

 トランプ政権になるとその大前提が変わった。そういう事態を防ぐための、例
えばサイバー攻撃とかレーザー攻撃とか、新しい近代ハイテクを使った形の対処
方法があり、大規模な攻撃を北朝鮮に実行させる前に北朝鮮の中枢を抑えてしま
うような政策がありました。

 トランプ陣営は今もなお、2018年6月のシンガポールにおける、金正恩総書記
と合意文書に留意しています。ここで何をしたかったかというと、北朝鮮側に
CVID(完全で検証可能で不可逆な非核化)をさせたかったのだけど、北朝鮮側が
認めず、文書にCVIDの言葉は書けなかった。第二次トランプ政権はここが出発点
になると思います。

◆ルビオ国務長官起用は明るい光に

 それからもう一つ。北朝鮮がロシアにウクライナ戦争で協力しています。この
ことについてトランプ陣営の人たちはものすごく懸念と反発を強めています。
「とんでもないことだ」と。だからこれを止めさせるとか、これについて懲罰を
加えるということで、これまで以上に北朝鮮に対して厳しくなるという大きな要
因がこのウクライナへの北朝鮮の介入です。

 さらにもう一つ、さらに明るい光があるかなと思うのは、第二次トランプ政権
の中枢に立つマルコ・ルビオという上院議員で、これが国務長官に指名されてい
ます。この人は、安倍晋三さんと政策的にも個人的にも近かった。

 例えば、拉致問題には関係ないですが、安倍さんが2013年12月に靖国神社に参
拝しました。この時に時のオバマ政権が、「失望した」と言ったのです。その1
か月後に、上院外交委員会の主要なメンバーとしてルビオ議員が東京に来て、安
倍さんと会った。この時に、安倍さんの靖国神社参拝を支持したのです。

 「同盟国のトップが、自分の国の中でやっていることに対して批判するのはお
かしい」と正面から批判しました。そしてルビオさんは議会での公の場でも、
「尖閣諸島は日本の主権である。日本の領有権が正しい」と言った。

 アメリカの政府というのは、よその国の領有権訴訟でも立場を取らない。議会
は立場が違いますが、議会の中枢のメンバーが「尖閣は日本の領土だ」と言った。

 拉致問題についてもルビオさんは、安倍さんの心情というものを十分に分かっ
た人だと思いますから、日本側にとっての重要性はよく分かっている。もちろん、
政府に入ってくる時の立場の違い、主張の違いは考えられますが、トランプ政権
の国務長官になると前向きの動きがあるのではないかと思います。何か拉致問題
にとってもいいニュースが出てくるかもしれない。希望的観測の一つです。

 日本側としては民主党に緊密な連携のきずなを作って意思疎通をしなければな
らないと思います。

 拉致問題が官民にとって、より衝撃的と言えるような段階を迎えるということ
を改めてアメリカ側に伝えて、日米連帯で、とにかく日本側にとって役立つこと
はどんなことでもいただいていくという態度で進むべきだと思います。

 少しは希望を持ってもいいだろうと思いますが、その希望を日米両国の実務面
で生かしていこうと思います。終わります(拍手)。

(5につづく)


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
■石破首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
https://www.kantei.go.jp/jp/iken.html

葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 石破茂殿

■救う会全国協議会ニュース

発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
  
■ サイト内検索 ■


■ メールニュース ■
2024/12/20
国際セミナー報告4
2024/12/20
国際セミナー報告3
2024/12/18
国際セミナー報告2
2024/12/16
国際セミナー報告1
2024/12/06
国際セミナー12/13(金)ご案内

■過去のメールニュース■

  ■ 2024年
  ■ 2023年
  ■ 2022年
  ■ 2021年
  ■ 2020年
  ■ 2019年
  ■ 2018年
  ■ 2017年
  ■ 2016年
  ■ 2015年
  ■ 2014年
  ■ 2013年
  ■ 2012年
  ■ 2011年
  ■ 2010年
  ■ 2009年
  ■ 2008年
  ■ 2007年
  ■ 2006年
  ■ 2005年
  ■ 2004年
  ■ 2003年
  ■ 2002年
  ■ 2001年
  ■ 2000年
  ■ 1999年
■あなたにも出来る救出運動■
あなたにもできること

 ■ 映画「めぐみ」 ■ 

映画「めぐみ」

■ 書 籍 ■