2025年の内外情勢と拉致被害者救出への展望2(2025/01/29)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2025.01.29)
■2025年の内外情勢と拉致被害者救出への展望2
西岡 トランプ政権になりアジア情勢がどうなるか。拉致問題を解決したい我々
の立場からそれをどう考えるか。トランプ政権の政策について日本で一番詳しい
島田さんにお願いします。
◆日朝外交で質問主意書を出した
島田洋一(日本保守党衆議院議員、前救う会副会長)
救う会副会長だった島田です。日本保守党の政調会長兼拉致問題対策本部の本
部長をしています。家族会・救う会と連携して、問題解決に進んでいきたいと思っ
ています。
私も拉致議連に入りましたが、私の名前で質問主意書を出しました。一つは小
泉訪朝の前に田中均氏が秘密交渉をした時の交渉記録を出してほしいと要望した
ところ、「ない」ということでした。
これは安倍さんも、「どういうことなんだ」と問題にしておられました。これ
にはっきり答えてくれというのが1点です。2月4日に、石破首相の名前で回答が
来ますので注目してください。
もう1点は、「外交交渉の内容については公開できない」と外務省は常に言っ
ています。それはある意味合理的なんですが、外務次官だった齋木昭隆氏が、
「田中実さん、金田竜光さんについて北朝鮮側からそれなりの情報があった」、
「それ以外には目新しい情報はなかった」と述べました。朝日新聞のインタビュー
に対してだったと思います。
それを受けて安倍さんが、「けしからん」と言われました。齋木氏の言動につ
いて政府がどのように考えているのか、注意等をした方がいいという質問です。
◆ウクライナ戦争の停戦は日本にとって総合的にプラスになる
今江崎さんがアメリカの軍事力が強くなるという話をされましたが、これは基
本的にいいことですが、ただ今日本が石破政権だということを考えると、危うい
面もあると思います。
ロシアのウクライナ戦争に関しては、速やかに停戦にもっていく方針です。ロ
シアはまがりなりにも選挙をしていますので、プーチン氏にかんしては、できる
だけ引き寄せて中国と引き離す基本戦略だと思います。
そしてウクライナ戦争が停戦になると、北朝鮮が今兵士を戦線に送って、かな
り被害者も出ていますが、その見返りにロシアから様々な物を受け取っている。
そのために北朝鮮に少し余裕が生まれています。これは拉致問題の解決をめざす
日本にとってはよくない状況です。
やはり北朝鮮を追い詰めないと、例えば拉致問題を解決すれば日本が食糧支援
をすると言ってもなかなか乗ってこない。その意味でも、ウクライナ戦争の停戦
は日本にとっても総合的にプラスになると私は思っています。
今のアメリカ議会の議論を聞くと、今後もっと厳しくしめつけるのはイランで
す。イランの場合核兵器を持つと、テロリストが密かにアメリカに持ち込んで、
それをイラン革命防衛隊がやるととんでもないことになります。配下の色々なテ
ロ団体がありますので、何かをやりかねない。だからイランを締め上げてつぶす
方向に行く。
中国に対しては、経済的に圧迫していく。軍事的に挑発するようなことはアメ
リカ側からはしない。経済的に、最先端のサプライチェーンからはどんどん外し
ていく。
北朝鮮に関しては、友だちのふりをしておとなしく封鎖するだろうと思います。
◆核問題でトランプ氏が北朝鮮とディールをする可能性が
核問題については、トランプ氏が北朝鮮とディールをする可能性がある。どの
形になるかですが、アメリカに届く長距離核ミサイルに関しては、配備しないで
廃棄する。日本に届くような短距離の核ミサイルは持ち続けてもいい。見返りと
してアメリカ側から北朝鮮に食糧支援、インフラ整備の資金援助をする。
但しアメリカは、議会が人権問題に非常に厳しく、アメリカ自身はそれらを出
せない。日本に出してもらう。それに韓国ですね。
日本に届く核ミサイルを置いたまま、それでディールというのは裏切りではな
いかという面もありますが、拡大核抑止理論から見るとおかしくない話です。ア
メリカが安全になれば、仮に日本が攻撃された場合、アメリカは自国が攻撃を受
ける心配なしに核兵器を適宜使えるようになります。だから、日本を射程におさ
める核兵器が残っても、アメリカを狙う核兵器が廃棄できれば日本にとっても安
全保障上プラスになるという議論です。
倒錯した話ですが、拡大核抑止理論が元々倒錯しているんです。正解なんです。
だから理論的には反論できない。これについては江崎さんに補足説明をしてくだ
されば。
◆政府・自民党の幹部では危ない
問題は、そういうディールをトランプ氏が持ってきた時に、日本が支援を北朝
鮮にすると言っても、それは拉致被害者が全員帰ってこなかったら日本はぜきま
せんよと、明確に安倍さんのように言えればいいのですが、トランプ氏にしても、
マルコ・ルビオ国務長官にしても、拉致問題の詳しいことを知っているわけでは
ありません。政府が、「それでいいですよ」と言ってしまえば、「そんなもんか」
と向こうは思ってしまいます。
だから石破政権が北朝鮮に連絡事務所を作るとか、合同調査委員会を設けるディー
ルに乗ったら、これはとんでもないことになるわけです。石破さんはそういうこ
とをやりかねないので、私は国会で追及したいと思います。
今日国会で松原仁さん(無所属)と話したのですが、拉致問題特別委員会に入
りたいのですが、日本保守党は国会で3議席しかないので入れてもらえない。議
員団の代表河村たかし前名古屋市長は、私に関しては外交委員会や拉致問題特別
委員会に入れてやってくれと、立憲民主党の議員たちに言ってくれていているの
ですが、まだ入れてない。
「松原さんはどうですか」と聞いたら、「俺も入れてない」と言っていました。
そこを何とかするには誰かを探さないとならないと思います。
今自民党・公明党は少数与党です。だから自・公だけでは予算案が通らない。
国民民主党は、例の「103万円の壁」を「178万円まで上げろ」と主張しています。
自民党がすぐに受け入れたらいいのですが、ところが宮沢洋一税調会長を中心に
「できない」と。
国民民主党は、これを主張して議席を倍ぐらいに増やした訳ですから、安易に
降りるわけにはいかない。
では日本維新の会と組めるか。自・公、維新で予算案を通したらどうかという
話が出てきています。そうなると維新の発言力が増すのですが、ここで極めて問
題なのが、今維新の国会議員のトップは前原誠司氏です。代表は吉村洋文大阪府
知事ですが彼は国会に議席を持っていないので、前原氏と共同代表になっていま
す。
問題は、この前原氏は北朝鮮問題についてとんでもないことばかり言っている
んです。「核問題が何よりも大事だから拉致問題にこだわるのはよくない」とい
う趣旨のことを言っています。彼はアメリカに行く度にアメリカ要路の人に言っ
ています。国会質問でもそういうことを何度も言っている。
石破氏は日朝議連のメンバーでしたが、岩屋外相も日朝議連の中心メンバーで
す。中谷防衛大臣、これも日朝議連です。要するに北朝鮮に融和的な姿勢を取る
日朝議連の幹部です。首相、外相、防衛大臣が日朝議連なのです。
林官房長官は日中友好議連の会長をずっとやってきています。日中友好議連は
アメリカから見ると、中国共産党の対日工作の窓口という位置づけです。現在の
会長は森山裕氏で、自民党の幹事長です。自民党の取り仕切り役が日中友好議連
のトップなんです。
つまり、今の政権の中心部分にいる人間は、媚朝派、媚中派です。極めて危な
い状況だと思っています。
トランプさんは、安倍さんから拉致問題の話をいっぱい聞いていますが、要す
るに、「安倍さんが北朝鮮とやりたいようにやってくれ」というスタンスでした
ので、細かいことは知らなくて当たり前です。ルビオ国務長官も細かいことは知
らない。そういう意味では、今危ない状況だと思います(拍手)。
◆トランプ政権になれば拉致問題にとってチャンス
西岡 後で島田さんに言いたいことがありますが、その前に私が話をしてから3
人で討論をしたいと思います。
私は、トランプ政権になれば拉致問題にとってチャンスになり得る、というこ
とを言ってきました。1月上旬に韓国に行き、米軍につながる人と話をしました。
まず、島田さんが言ったように、トランプ大統領がディールをするだろうという
ことですが、私が聞いている北朝鮮の情報では、金正恩氏もディールをしたがっ
ているということでした。
北朝鮮はバイデン政権の間に核実験をしていません。2017年9月に6回目の実験
をして以来、してないのです。「やるだろう」という情報はたくさんありました
が、やっていない。
私の情報では、金正恩氏は、「トランプ氏の当選の可能性がゼロになるまで
(核実験を)するな」と言っていたそうです。これはトランプ氏が次に当選して
会った時に、「あなたとの約束を守ったぞ」と言えるためです。
一方北朝鮮は、技術的には核実験をする必要があるのです。2022年10月ぐらい
から、繰り返し戦術核爆発訓練というのをやっています。そう言っているんです。
射程の短い巡航ミサイルや弾道ミサイルに、模擬核弾頭なるものを付けて、無人
島に向けて撃っています。
核は当たってはだめなのです。その上空で爆発しなければならない。もちろん
核物質は積んでいませんが、爆発の訓練を繰り返しています。しかし、実際に戦
場で使う威力の小さい戦術核については実験をしていないのです。軍事的な必要
はあるのにしていません。
先ほど島田さんは、「トランプ氏は金正恩を好んでいるふりをする」と言いま
したが、金正恩も同じなんです。
◆韓国との関係は完全に遮断
そこでなぜ、トランプ大統領に会いたいと思っているかですが、まず韓国との
関係は完全に遮断する、鎖国政策ですね。一昨年の12月と去年の10月に、「韓国
は外国だ」、「交流の対象ではない」と言いました。それは文在寅放棄です。
文在寅(ムンジェイン)前大統領の時期に南北交流をやってみた結果、韓国を
ガタガタにすることはできたけれど、それ以上に北朝鮮がガタガタになった。韓
国の情報が入ったことがマイナスになった。そして開城(けそん)にある南北交
流のビル(共同連絡事務所)まで爆破した。
今韓国の政界が混乱していますが、保守系政権でも、左派系政権になっても交
流しない、と言っています。
一方ウクライナ派兵でお金を貰っていますが、島田さんが言ったように、トラ
ンプ大統領が出てきて、6か月の間に休戦になる可能性が高まっている。そうな
るともうプーチンは金正恩に支援しません。実は支援は今もしていないんです。
取引です。砲弾を出した、人の命を出した。15,000人派兵して、5,000人程度が
死傷した。
◆習近平は金正恩に圧力をかけている
問題は中国です。中国に頼れる状況であれば、トランプ大統領と交渉し、その後
日本と交渉して、島田さんが言ったように支援がもらえるのですが、そのお金の
魅力が下がるわけです。
北朝鮮の貿易は9割以上が中国ですから、中国が支えている部分が多いのです
が、私が韓国で聞いたのは、「中朝は最悪」、「戦争直前と言ってもいい」とい
うことでした。
プーチンから来た新年の挨拶状は「労働新聞」が大きく扱った。習近平から来
たものは他のベトナムなど4つくらいの国と一緒に、「中華人民共和国主席夫妻」
と書かれてありました。習近平という名前もなかった。
表で見られたことはそういうことですが、去年1年間、中国は脱北者の強制送
還を一人もしていない。我々はこの問題で中国大使館に行ったこともありました。
「脱北者を送還するな」、「難民として受け止めろとやってきたんですが、中国
は言うことを聞かなかった。
突然中国が人権に目覚めたのか。そんなことはないんです。それなのに去年1
年間、強制送還を一人もしていない。じゃあ脱北者がいなかったのか。そんなこ
とはない。
去年7月に、中朝国境の新義州辺りで大洪水がありました。中朝の間を流れて
いる鴨緑江が氾濫したのです。その結果、脱北者が出ないように見張り小屋があっ
たり、鉄条網があったのですが、それが流れてしまった。
そしてもう一つ、全国から若者が復興作業のあめに、突撃隊と称して水害地域
に行った。そこは中朝国境地域です。私が聞いたのでは、全国から来た若者の中
で、平安北道突撃隊が義州、新義州辺りにいたのですが、2,000が逃げた。一緒
に逃げたのではなく、少人数に分かれて逃げた。
中国はその人たちを捕まえたが、強制送還しなかった。逆にいい物を食べさせ、
いい物を着せたという話がありました。
去年の12月から「臨時居住証」を出して、合法的に居住を認めた。移動はでき
ませんが、居住地にいることは許す。この「臨時居住証」を貰うと就労ができる。
働いていい。
北朝鮮から派遣されている労働者たちは、中国で食堂や工場で働いていますが、
7割から8割が国によってピンハネされる。しかし、「臨時居住証」を貰った人は
100%給料をもらえるのです。人民元で貰える。
その話が今、北朝鮮内部に入っています。中国に行ってもつかまらない。つか
まらないで働ける。人民元で給料がもらえる。飢え死にしそうな家族を助けられ
るようになる、ということになるわけです。
これは嫌がらせです。もう一歩進んだら、「難民認定」するかもしれない。中
国へ出ると、韓国までいけるようになる。今みんなが韓国にあこがれています。
そういうことまでやって、習近平は金正恩に圧力をかけています。
その理由は何か。まずは会談をやるかやらないかだと言っていましたが、今習
近平が怒っているのは相談、報告です。勝手なことをやっていることです。
実は2018年、19年に金正恩はトランプ大統領と2回会いました。文在寅大統領
とは3回会いましたが、この2年間に4回訪中しています。中国に報告し、相談し
やっていたのです。
2018年3月に訪中した時に習近平と会ったのですが、映像を見ると、あの金正
恩が習近平の話を聞きながらメモをとっているのです。国内では自分の話をメモ
させるのですが、人の話をメモすることはない。
習近平と何をしたかというと、「戦略的意思疎通」ということでした。「ちゃ
んと報告しろよ」と言われて、ちゃんとしていたのです。それを今はしていない
んです。プーチンとは2回会いました。そして条約を結んだ。そして派兵もした。
しかし、習近平とは「戦略的意思疎通」をしていないんです。
◆米朝間のディールが進むのではないか
アメリカの大統領選挙の前に、北朝鮮が東南アジアで、トランプ陣営と2回接
触していたという情報があります。当選した後は、ニューヨークの国連代表部を
通じて接触しているという情報があります。
トランプ大統領もしきりに、「金正恩は俺が当選したことを喜んでいる筈だ」、
「あいつとは友だちだ」と言っています。
習近平からすると、「お前どっちを向いているんだ」となります。トランプ政
権は、島田さんが言ったように、中国を経済的に圧迫しようとしている。そのト
ランプ政権との接触を、相談しないでやっている。おれが今の枠組みです。
これからトランプ大統領に接近する時に、2018年のように訪中しておけば、中
国の了解があるので一定の余裕がある。訪中なしに会うようになると、本当に背
水の陣になります。アメリカと日本しか頼るところがなくなります。
私が聞いたところでは、「金正恩は習近平と和解するつもりはない」と。これ
は情報ですから100%正しいわけではありません。北朝鮮の幹部たちが中国の話
をしていると、それだけで怒るそうです。だから中国と和解した方がいいと本音
で思っている幹部がいるんです。
そこは様子を見た方がいいと思いますが、彼は2018年、19年よりも、もっと切
羽詰まった状況でトランプ大統領と会おうとしているだろうと思います。
島田さんは、トランプ大統領は、金正恩が大陸間弾道ミサイルを放棄すると言
えば、ゲームをするだろうと、トランプ側の政策について説明しましたが、私は、
金正恩側がそれを準備していると思います。もしかしたらこの話が進んでいるか
もしれない。そこまで行っていないかもしれませんが。
2019年の2月に、ハノイで米朝首脳会談があった時、表向きは核の完全廃棄、
不可逆的で完全な廃棄を認めるかでしたが、金正恩とトランプが最後にディール
していたのは、金正恩は8割くらいの制裁解除を求め、トランプはこれ以上濃縮
ウラニウムを開発しないという主張でした。
しかし、金正恩が、「濃縮ウラニウム施設を全部廃棄する」と言ったのに、裏
で隠していた施設があった。降仙(カンソン)という平壌の南側の郊外に、秘密
の施設があったのをトランプは把握していたが、金正恩が隠したということで決
裂しました。
それだけでも核施設を隠していたことを金正恩は謝ることになるのですが、今
回金正恩が主張するのは大陸間弾道ミサイルの廃棄です。それには戦略的理由が
あります。
大陸間弾道ミサイルは金日成以来のことですが、それは奇襲南進をして朝鮮半
島のほとんど全部を取った後、アメリカが本土や在日米軍基地から介入しようと
した時、「介入したら撃つぞ」と言って脅すために持とうとしたものです。
ウクライナの戦争を見て、プーチンと陸軍が奇襲してもだめだった。もう南進
はできない。韓国と戦ってもだめだ。だから戦術核に特化し始めたのです。今彼
らは、自分を守るための戦術核ミサイルがほしいわけです。もうアメリカまで届
く核を持ってもしょうがない。だから廃棄するという合理的理由がある。
トランプとすると、「俺はアメリカまで届く核ミサイルを取り上げたぞ」と言
える。そういう枠組みがあるのではないかと思います。2019年よりも金正恩は切
羽詰まっている。そして大陸間弾道ミサイルを放棄してもいい理由がある。この
2つの理由でディールが進むのではないかと見ています。
(3につづく)
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■石破首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
https://www.kantei.go.jp/jp/iken.html
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 石破茂殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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■2025年の内外情勢と拉致被害者救出への展望2
西岡 トランプ政権になりアジア情勢がどうなるか。拉致問題を解決したい我々
の立場からそれをどう考えるか。トランプ政権の政策について日本で一番詳しい
島田さんにお願いします。
◆日朝外交で質問主意書を出した
島田洋一(日本保守党衆議院議員、前救う会副会長)
救う会副会長だった島田です。日本保守党の政調会長兼拉致問題対策本部の本
部長をしています。家族会・救う会と連携して、問題解決に進んでいきたいと思っ
ています。
私も拉致議連に入りましたが、私の名前で質問主意書を出しました。一つは小
泉訪朝の前に田中均氏が秘密交渉をした時の交渉記録を出してほしいと要望した
ところ、「ない」ということでした。
これは安倍さんも、「どういうことなんだ」と問題にしておられました。これ
にはっきり答えてくれというのが1点です。2月4日に、石破首相の名前で回答が
来ますので注目してください。
もう1点は、「外交交渉の内容については公開できない」と外務省は常に言っ
ています。それはある意味合理的なんですが、外務次官だった齋木昭隆氏が、
「田中実さん、金田竜光さんについて北朝鮮側からそれなりの情報があった」、
「それ以外には目新しい情報はなかった」と述べました。朝日新聞のインタビュー
に対してだったと思います。
それを受けて安倍さんが、「けしからん」と言われました。齋木氏の言動につ
いて政府がどのように考えているのか、注意等をした方がいいという質問です。
◆ウクライナ戦争の停戦は日本にとって総合的にプラスになる
今江崎さんがアメリカの軍事力が強くなるという話をされましたが、これは基
本的にいいことですが、ただ今日本が石破政権だということを考えると、危うい
面もあると思います。
ロシアのウクライナ戦争に関しては、速やかに停戦にもっていく方針です。ロ
シアはまがりなりにも選挙をしていますので、プーチン氏にかんしては、できる
だけ引き寄せて中国と引き離す基本戦略だと思います。
そしてウクライナ戦争が停戦になると、北朝鮮が今兵士を戦線に送って、かな
り被害者も出ていますが、その見返りにロシアから様々な物を受け取っている。
そのために北朝鮮に少し余裕が生まれています。これは拉致問題の解決をめざす
日本にとってはよくない状況です。
やはり北朝鮮を追い詰めないと、例えば拉致問題を解決すれば日本が食糧支援
をすると言ってもなかなか乗ってこない。その意味でも、ウクライナ戦争の停戦
は日本にとっても総合的にプラスになると私は思っています。
今のアメリカ議会の議論を聞くと、今後もっと厳しくしめつけるのはイランで
す。イランの場合核兵器を持つと、テロリストが密かにアメリカに持ち込んで、
それをイラン革命防衛隊がやるととんでもないことになります。配下の色々なテ
ロ団体がありますので、何かをやりかねない。だからイランを締め上げてつぶす
方向に行く。
中国に対しては、経済的に圧迫していく。軍事的に挑発するようなことはアメ
リカ側からはしない。経済的に、最先端のサプライチェーンからはどんどん外し
ていく。
北朝鮮に関しては、友だちのふりをしておとなしく封鎖するだろうと思います。
◆核問題でトランプ氏が北朝鮮とディールをする可能性が
核問題については、トランプ氏が北朝鮮とディールをする可能性がある。どの
形になるかですが、アメリカに届く長距離核ミサイルに関しては、配備しないで
廃棄する。日本に届くような短距離の核ミサイルは持ち続けてもいい。見返りと
してアメリカ側から北朝鮮に食糧支援、インフラ整備の資金援助をする。
但しアメリカは、議会が人権問題に非常に厳しく、アメリカ自身はそれらを出
せない。日本に出してもらう。それに韓国ですね。
日本に届く核ミサイルを置いたまま、それでディールというのは裏切りではな
いかという面もありますが、拡大核抑止理論から見るとおかしくない話です。ア
メリカが安全になれば、仮に日本が攻撃された場合、アメリカは自国が攻撃を受
ける心配なしに核兵器を適宜使えるようになります。だから、日本を射程におさ
める核兵器が残っても、アメリカを狙う核兵器が廃棄できれば日本にとっても安
全保障上プラスになるという議論です。
倒錯した話ですが、拡大核抑止理論が元々倒錯しているんです。正解なんです。
だから理論的には反論できない。これについては江崎さんに補足説明をしてくだ
されば。
◆政府・自民党の幹部では危ない
問題は、そういうディールをトランプ氏が持ってきた時に、日本が支援を北朝
鮮にすると言っても、それは拉致被害者が全員帰ってこなかったら日本はぜきま
せんよと、明確に安倍さんのように言えればいいのですが、トランプ氏にしても、
マルコ・ルビオ国務長官にしても、拉致問題の詳しいことを知っているわけでは
ありません。政府が、「それでいいですよ」と言ってしまえば、「そんなもんか」
と向こうは思ってしまいます。
だから石破政権が北朝鮮に連絡事務所を作るとか、合同調査委員会を設けるディー
ルに乗ったら、これはとんでもないことになるわけです。石破さんはそういうこ
とをやりかねないので、私は国会で追及したいと思います。
今日国会で松原仁さん(無所属)と話したのですが、拉致問題特別委員会に入
りたいのですが、日本保守党は国会で3議席しかないので入れてもらえない。議
員団の代表河村たかし前名古屋市長は、私に関しては外交委員会や拉致問題特別
委員会に入れてやってくれと、立憲民主党の議員たちに言ってくれていているの
ですが、まだ入れてない。
「松原さんはどうですか」と聞いたら、「俺も入れてない」と言っていました。
そこを何とかするには誰かを探さないとならないと思います。
今自民党・公明党は少数与党です。だから自・公だけでは予算案が通らない。
国民民主党は、例の「103万円の壁」を「178万円まで上げろ」と主張しています。
自民党がすぐに受け入れたらいいのですが、ところが宮沢洋一税調会長を中心に
「できない」と。
国民民主党は、これを主張して議席を倍ぐらいに増やした訳ですから、安易に
降りるわけにはいかない。
では日本維新の会と組めるか。自・公、維新で予算案を通したらどうかという
話が出てきています。そうなると維新の発言力が増すのですが、ここで極めて問
題なのが、今維新の国会議員のトップは前原誠司氏です。代表は吉村洋文大阪府
知事ですが彼は国会に議席を持っていないので、前原氏と共同代表になっていま
す。
問題は、この前原氏は北朝鮮問題についてとんでもないことばかり言っている
んです。「核問題が何よりも大事だから拉致問題にこだわるのはよくない」とい
う趣旨のことを言っています。彼はアメリカに行く度にアメリカ要路の人に言っ
ています。国会質問でもそういうことを何度も言っている。
石破氏は日朝議連のメンバーでしたが、岩屋外相も日朝議連の中心メンバーで
す。中谷防衛大臣、これも日朝議連です。要するに北朝鮮に融和的な姿勢を取る
日朝議連の幹部です。首相、外相、防衛大臣が日朝議連なのです。
林官房長官は日中友好議連の会長をずっとやってきています。日中友好議連は
アメリカから見ると、中国共産党の対日工作の窓口という位置づけです。現在の
会長は森山裕氏で、自民党の幹事長です。自民党の取り仕切り役が日中友好議連
のトップなんです。
つまり、今の政権の中心部分にいる人間は、媚朝派、媚中派です。極めて危な
い状況だと思っています。
トランプさんは、安倍さんから拉致問題の話をいっぱい聞いていますが、要す
るに、「安倍さんが北朝鮮とやりたいようにやってくれ」というスタンスでした
ので、細かいことは知らなくて当たり前です。ルビオ国務長官も細かいことは知
らない。そういう意味では、今危ない状況だと思います(拍手)。
◆トランプ政権になれば拉致問題にとってチャンス
西岡 後で島田さんに言いたいことがありますが、その前に私が話をしてから3
人で討論をしたいと思います。
私は、トランプ政権になれば拉致問題にとってチャンスになり得る、というこ
とを言ってきました。1月上旬に韓国に行き、米軍につながる人と話をしました。
まず、島田さんが言ったように、トランプ大統領がディールをするだろうという
ことですが、私が聞いている北朝鮮の情報では、金正恩氏もディールをしたがっ
ているということでした。
北朝鮮はバイデン政権の間に核実験をしていません。2017年9月に6回目の実験
をして以来、してないのです。「やるだろう」という情報はたくさんありました
が、やっていない。
私の情報では、金正恩氏は、「トランプ氏の当選の可能性がゼロになるまで
(核実験を)するな」と言っていたそうです。これはトランプ氏が次に当選して
会った時に、「あなたとの約束を守ったぞ」と言えるためです。
一方北朝鮮は、技術的には核実験をする必要があるのです。2022年10月ぐらい
から、繰り返し戦術核爆発訓練というのをやっています。そう言っているんです。
射程の短い巡航ミサイルや弾道ミサイルに、模擬核弾頭なるものを付けて、無人
島に向けて撃っています。
核は当たってはだめなのです。その上空で爆発しなければならない。もちろん
核物質は積んでいませんが、爆発の訓練を繰り返しています。しかし、実際に戦
場で使う威力の小さい戦術核については実験をしていないのです。軍事的な必要
はあるのにしていません。
先ほど島田さんは、「トランプ氏は金正恩を好んでいるふりをする」と言いま
したが、金正恩も同じなんです。
◆韓国との関係は完全に遮断
そこでなぜ、トランプ大統領に会いたいと思っているかですが、まず韓国との
関係は完全に遮断する、鎖国政策ですね。一昨年の12月と去年の10月に、「韓国
は外国だ」、「交流の対象ではない」と言いました。それは文在寅放棄です。
文在寅(ムンジェイン)前大統領の時期に南北交流をやってみた結果、韓国を
ガタガタにすることはできたけれど、それ以上に北朝鮮がガタガタになった。韓
国の情報が入ったことがマイナスになった。そして開城(けそん)にある南北交
流のビル(共同連絡事務所)まで爆破した。
今韓国の政界が混乱していますが、保守系政権でも、左派系政権になっても交
流しない、と言っています。
一方ウクライナ派兵でお金を貰っていますが、島田さんが言ったように、トラ
ンプ大統領が出てきて、6か月の間に休戦になる可能性が高まっている。そうな
るともうプーチンは金正恩に支援しません。実は支援は今もしていないんです。
取引です。砲弾を出した、人の命を出した。15,000人派兵して、5,000人程度が
死傷した。
◆習近平は金正恩に圧力をかけている
問題は中国です。中国に頼れる状況であれば、トランプ大統領と交渉し、その後
日本と交渉して、島田さんが言ったように支援がもらえるのですが、そのお金の
魅力が下がるわけです。
北朝鮮の貿易は9割以上が中国ですから、中国が支えている部分が多いのです
が、私が韓国で聞いたのは、「中朝は最悪」、「戦争直前と言ってもいい」とい
うことでした。
プーチンから来た新年の挨拶状は「労働新聞」が大きく扱った。習近平から来
たものは他のベトナムなど4つくらいの国と一緒に、「中華人民共和国主席夫妻」
と書かれてありました。習近平という名前もなかった。
表で見られたことはそういうことですが、去年1年間、中国は脱北者の強制送
還を一人もしていない。我々はこの問題で中国大使館に行ったこともありました。
「脱北者を送還するな」、「難民として受け止めろとやってきたんですが、中国
は言うことを聞かなかった。
突然中国が人権に目覚めたのか。そんなことはないんです。それなのに去年1
年間、強制送還を一人もしていない。じゃあ脱北者がいなかったのか。そんなこ
とはない。
去年7月に、中朝国境の新義州辺りで大洪水がありました。中朝の間を流れて
いる鴨緑江が氾濫したのです。その結果、脱北者が出ないように見張り小屋があっ
たり、鉄条網があったのですが、それが流れてしまった。
そしてもう一つ、全国から若者が復興作業のあめに、突撃隊と称して水害地域
に行った。そこは中朝国境地域です。私が聞いたのでは、全国から来た若者の中
で、平安北道突撃隊が義州、新義州辺りにいたのですが、2,000が逃げた。一緒
に逃げたのではなく、少人数に分かれて逃げた。
中国はその人たちを捕まえたが、強制送還しなかった。逆にいい物を食べさせ、
いい物を着せたという話がありました。
去年の12月から「臨時居住証」を出して、合法的に居住を認めた。移動はでき
ませんが、居住地にいることは許す。この「臨時居住証」を貰うと就労ができる。
働いていい。
北朝鮮から派遣されている労働者たちは、中国で食堂や工場で働いていますが、
7割から8割が国によってピンハネされる。しかし、「臨時居住証」を貰った人は
100%給料をもらえるのです。人民元で貰える。
その話が今、北朝鮮内部に入っています。中国に行ってもつかまらない。つか
まらないで働ける。人民元で給料がもらえる。飢え死にしそうな家族を助けられ
るようになる、ということになるわけです。
これは嫌がらせです。もう一歩進んだら、「難民認定」するかもしれない。中
国へ出ると、韓国までいけるようになる。今みんなが韓国にあこがれています。
そういうことまでやって、習近平は金正恩に圧力をかけています。
その理由は何か。まずは会談をやるかやらないかだと言っていましたが、今習
近平が怒っているのは相談、報告です。勝手なことをやっていることです。
実は2018年、19年に金正恩はトランプ大統領と2回会いました。文在寅大統領
とは3回会いましたが、この2年間に4回訪中しています。中国に報告し、相談し
やっていたのです。
2018年3月に訪中した時に習近平と会ったのですが、映像を見ると、あの金正
恩が習近平の話を聞きながらメモをとっているのです。国内では自分の話をメモ
させるのですが、人の話をメモすることはない。
習近平と何をしたかというと、「戦略的意思疎通」ということでした。「ちゃ
んと報告しろよ」と言われて、ちゃんとしていたのです。それを今はしていない
んです。プーチンとは2回会いました。そして条約を結んだ。そして派兵もした。
しかし、習近平とは「戦略的意思疎通」をしていないんです。
◆米朝間のディールが進むのではないか
アメリカの大統領選挙の前に、北朝鮮が東南アジアで、トランプ陣営と2回接
触していたという情報があります。当選した後は、ニューヨークの国連代表部を
通じて接触しているという情報があります。
トランプ大統領もしきりに、「金正恩は俺が当選したことを喜んでいる筈だ」、
「あいつとは友だちだ」と言っています。
習近平からすると、「お前どっちを向いているんだ」となります。トランプ政
権は、島田さんが言ったように、中国を経済的に圧迫しようとしている。そのト
ランプ政権との接触を、相談しないでやっている。おれが今の枠組みです。
これからトランプ大統領に接近する時に、2018年のように訪中しておけば、中
国の了解があるので一定の余裕がある。訪中なしに会うようになると、本当に背
水の陣になります。アメリカと日本しか頼るところがなくなります。
私が聞いたところでは、「金正恩は習近平と和解するつもりはない」と。これ
は情報ですから100%正しいわけではありません。北朝鮮の幹部たちが中国の話
をしていると、それだけで怒るそうです。だから中国と和解した方がいいと本音
で思っている幹部がいるんです。
そこは様子を見た方がいいと思いますが、彼は2018年、19年よりも、もっと切
羽詰まった状況でトランプ大統領と会おうとしているだろうと思います。
島田さんは、トランプ大統領は、金正恩が大陸間弾道ミサイルを放棄すると言
えば、ゲームをするだろうと、トランプ側の政策について説明しましたが、私は、
金正恩側がそれを準備していると思います。もしかしたらこの話が進んでいるか
もしれない。そこまで行っていないかもしれませんが。
2019年の2月に、ハノイで米朝首脳会談があった時、表向きは核の完全廃棄、
不可逆的で完全な廃棄を認めるかでしたが、金正恩とトランプが最後にディール
していたのは、金正恩は8割くらいの制裁解除を求め、トランプはこれ以上濃縮
ウラニウムを開発しないという主張でした。
しかし、金正恩が、「濃縮ウラニウム施設を全部廃棄する」と言ったのに、裏
で隠していた施設があった。降仙(カンソン)という平壌の南側の郊外に、秘密
の施設があったのをトランプは把握していたが、金正恩が隠したということで決
裂しました。
それだけでも核施設を隠していたことを金正恩は謝ることになるのですが、今
回金正恩が主張するのは大陸間弾道ミサイルの廃棄です。それには戦略的理由が
あります。
大陸間弾道ミサイルは金日成以来のことですが、それは奇襲南進をして朝鮮半
島のほとんど全部を取った後、アメリカが本土や在日米軍基地から介入しようと
した時、「介入したら撃つぞ」と言って脅すために持とうとしたものです。
ウクライナの戦争を見て、プーチンと陸軍が奇襲してもだめだった。もう南進
はできない。韓国と戦ってもだめだ。だから戦術核に特化し始めたのです。今彼
らは、自分を守るための戦術核ミサイルがほしいわけです。もうアメリカまで届
く核を持ってもしょうがない。だから廃棄するという合理的理由がある。
トランプとすると、「俺はアメリカまで届く核ミサイルを取り上げたぞ」と言
える。そういう枠組みがあるのではないかと思います。2019年よりも金正恩は切
羽詰まっている。そして大陸間弾道ミサイルを放棄してもいい理由がある。この
2つの理由でディールが進むのではないかと見ています。
(3につづく)
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■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
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担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
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