ジャーナリストの高世仁氏が和田春樹氏に抗議文(2001/01/27)
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救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会
TEL 03-3946-5780/FAX 03-3944-5692 http://www.asahi-net.or.jp/~lj7k-ark
〒112-0015 東京都文京区目白台3-25-13
担当:荒木和博(事務局長 k-araki@mac.email.ne.jp)
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■ジャーナリストの高世仁氏が和田春樹氏に抗議文
和田春樹日朝国交促進国民協会事務局長の雑誌「世界」に寄稿した論文について、
その中にも出てくるジャーナリストの高世仁氏(JIN-Net 代表)は昨日(26日)和田
氏に以下の抗議文を送りました。
和田春樹様
はじめまして。
私は、かつて日本電波ニュース社で報道部長をつとめ、現在は報道番組制作会社、
ジン・ネットの代表をしている高世仁です。雑誌「世界」に載った和田さんの論文
「『日本人拉致疑惑』を検証する」を読み、一言申し上げたく、ご連絡したしだいで
す。
安明進証言の内容についての論点はたくさんありますが、私に直接関わるものに、め
ぐみさんの「えくぼ」の問題があります。私が安明進の本のゲラの段階で「えくぼ」
の描写を発見して横田夫妻に知らせた経緯は、私の本に書いたのでご承知でしょう。
「えくぼ」が印象的な特徴であったなら、後になってから証言に出てくるのはおかし
いと和田さんは言います。しかし、記憶に強く刻まれていながら、それが最初に証言
として出てこないからといって、嘘だということにはならないでしょう。記憶は、さ
まざまな形で呼び起こされてくるものだからです。
安明進には10回近く取材していますが、えくぼの問題以外でも、「どうして先にそ
れを言わなかったのか」と、私自身、安明進に言ったこともありました。彼の答え
は、「その質問をされていないから」、というものでした。記憶をたどっていく場
合、まずは質問で方向づけられます。また、私の元工作員の亡命者を取材した経験で
は、余計なことを証言してトラブルに巻き込まれたくないという心理が働き、通常、
聞かれてもいないことを自ら話すことはきわめてまれです。
ご両親はといえば、失踪直後にめぐみさんの特徴として挙げるのは、その日着ていた
服や持ち物、身長、体重、髪型、顔の輪郭、体のアザなどであり、「えくぼ」を言い
忘れることは不思議ではないでしょう。とくに父親の滋さんは「えくぼ」家系で、娘
のめぐみさんに「えくぼ」があるのは当然すぎてかえって意識しなかったといいま
す。また、私の本に出した写真で分かるように、めぐみさんの「えくぼ」は、普段は
隠れていて、大きく口の両端を頬のほうに引き寄せたときだけに現れるタイプの「え
くぼ」です。母親の早紀江さんが、安明進の本で指摘されるまで思い出さなかったの
は、そういう事情からであり、「えくぼ」自体が「目立たないもの」だからではあり
ません。写真で分かるとおり、かなり深く大きく出る「えくぼ」です。
ご両親も気にとめないでいた「えくぼ」、警察もマスコミも知らないはずの「えく
ぼ」を安明進が知っていたということは、彼の証言の信憑性を高めるというのが自然
な解釈ではないでしょうか。
「えくぼ」についてはもう一つ。化粧が濃いというのと「えくぼ」は、あまりに異
なった印象を与えると和田さんは書いています。北朝鮮の人から見て、日本人の女性
の化粧が濃いと感じられるのは、少しでも北朝鮮事情を知っていれば分かるはずで
す。そのことと「笑うと深く窪んだえくぼは、見る人に心優しい印象を与えていた」
(拉致工作員P135)ことが矛盾するということにはならないはずです。むしろ、
この安明進の表現は、めぐみさんの「えくぼ」の特徴とよく合致します。
和田さんの「想像力」のほうに問題があるように思えますが、いかがですか。
安明進の証言内容には、教官から聞いた部分と自分が見た部分とがあります。非常に
若い日本人女性をニイガタから自ら連れてきたと教官が語り、安明進の目撃した女性
のエクボを含む外見がめぐみさんと一致します。そして拉致年代、女性の年齢、身長
その他はめぐみさんのそれらと矛盾しません。一方、石高論文に載った亡命者は、
「双子」、「バドミントン」、「13歳」、「中学生」など安明進の証言内容とは重複
しない情報をもたらしています。彼は安明進とは別人であり、総合すれば、めぐみさ
んが北朝鮮に拉致されたということは、きわめて高い確度で推定しうるのではないで
しょうか。
さて、和田さんが特に問題にしているのは、これらの証言が明らかになる過程です。
そして論文の中でも、この部分には、非常にたくさんの事実誤認が見られます。
しかも、単なるケアレスミスではなく、当然確認すべき重要な事柄を、しかも電話一
本ですぐに問い合わせることができるのに確認せずに、恣意的に「推測」したうえで
の誤りが多いのです。いわば「重過失」ともいうべき悪質な誤りです。なかには、考
えたくないのですが、ひょっとしたら意図的に事実をねじまげようとしているのでは
ないかと感じた個所さえありました。
例えば、めぐみさんのケースがブレイクする経緯についての記述です。
これまでも、97年の2月3日に産経とアエラの記事が出て、まさにその翌日に安明
進インタビューが設定されたのは、あまりにも「できすぎている」などと、私自身
も、まるで安企部のまわしものであるかのような批判を受けたことがありました。実
は、私の本で説明したように正真正銘の偶然だったのですが・・・。
和田さんもやはり、このブレイクの経過に重大な疑惑を匂わせていますが、その記述
から首をかしげざるをえない例を(たくさんありますが)ちょっと挙げてみましょ
う。
2月号で和田さんは、佐藤勝巳さんの役回りに異様に力を入れて書いています。佐藤
さんははじめから事情をすべて知っていたのに、わざと黒子の役に徹してブレイクす
る過程全体をコントロールしたという印象を与えています。
148頁では、兵本さんは横田滋さんに対して意図的に佐藤さんの関わりを隠したこ
とになっています。明らかに陰謀があるかのような書き方です。その前提となるの
は、兵本さんにファックスで知らせた「知り合いの方とは、佐藤氏のことであろう」
し、兵本さんは「石高情報も佐藤氏の発見も、現代コリアのホームページのことも
知っていた」はずだという推測です。ところが、この「推測」がそもそも的外れなの
です。
私の取材では、兵本さんに「新潟日報」記事のコピーを送って知らせたのは佐藤さん
ではなく、関西在住のKさんでした。そして兵本さんは日銀のOBに接触し、横田滋
さんの居場所をつきとめます。和田さんは、新聞記事には滋さんが「銀行員」としか
載っていないので、兵本さんが日銀OBにコンタクトすることは不自然だと見ます。
たしかに、20年近い年月が経っていますから、97年はじめの時点では、古くから
の新潟市民でも、「横田めぐみさん」という固有名詞を覚えている人はほとんどいな
かったでしょう。しかし、「日銀職員の娘さんが行方不明になったあの事件」として
記憶している人ならたくさんいたのです。新潟市在住の小島さんなどもその口でし
た。「日銀」というキーワードを得るのは難しいことではありません。兵本さんが関
係者に2、3本電話をかければ当然知るはずの情報であり、実際兵本さんはそうした
のです。
悪質なのは、横田滋さんが兵本さんを議員会館に訪ねたことを述べた後、「議員会館
という場所は、情報に信憑性を付与するにはよい場所だ」などという思わせぶりな表
現を挟み込んで、全体の経緯におどろおどろしい印象を与えるよう脚色していること
です。
以上は、ほんの一例ですが、和田さんの論文は、こうした誤った推測のうえに推測を
重ねていって、勝手な「結論」を導き出し、怪しげな印象を与えるという手法に満ち
ています。和田さんは、言わば一人相撲しながら「問題」を勝手に見つけて騒いでい
るのです。
そこで、ぜひともお聞きしたいのは、和田さんはこの論文に登場する人のうち何人に
インタビューしたのかということです。和田さんが重視している、めぐみさんのケー
スがブレイクする過程だけに限っても結構です。佐藤勝巳、小島晴則、石高健次、兵
本達吉、横田滋・早紀江夫妻、大田明彦(産経)そして高世仁・・・。和田さんはこ
のうち誰と誰にいつ取材しましたか。単純な誤りがこれだけ多いということは、和田
さんはおそらく何のインタビュー取材もしないで、こんな重大な問題を論じようとし
ていたのではありませんか。少なくとも私には接触がありませんでしたね。
私はこれらの人々にすべて直接に会って話を聞いたうえ、互いの話に整合性があるか
どうかをチェックし、再び確認のインタビューをしたあとで本を書いています。
ジャーナリストとして当たり前ですが、これは国民の「命」にかかわる重大問題であ
り、大きな責任を自覚するからです。私は、研究者もジャーナリストも、真実に限り
なく近づこうとする同じ情熱に動かされている職業だと思っています。本や新聞に書
いてあることが本当なのかどうかを、当事者に確認することは必須の作業ではないで
しょうか。事実確認するにはちょっと電話をかければよいのです。小学生でもできる
ことなのに、和田さんはそれもせずに推測だけで書き、結果としてたくさんの誤りを
冒してしまいました。これを何と表現するのでしょうか。単なる「怠慢」でしょう
か。いや、ここまでくると単なる「怠慢」というより、和田さんは「見ザル」や「聞
かザル」のように、事実を知りたくないのかもしれません。ひょっとしたら、和田さ
んには特殊な政治的な意図でもあるのでしょうか。大変失礼かもしれませんが、私に
そうまで思わせるほど記述の誤りがひどいのです。
もし、私に話を聞きたいという要求があれば、立場が異なる人であっても、会ってき
ちんと説明したはずです。和田さんが論文で取り上げた他の人たちも取材に応じてく
れたでしょう。なぜなら、和田さんの「推測」とは逆に、めぐみさん事件がブレイク
する経緯には何の秘密も陰謀もないのですから。
研究者であるなら、誠実に、あくまで一つ一つの事実を確認するという調査・研究の
基本に戻って議論してほしいというのが、和田さんに対する私の要望です。
救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会
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〒112-0015 東京都文京区目白台3-25-13
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■ジャーナリストの高世仁氏が和田春樹氏に抗議文
和田春樹日朝国交促進国民協会事務局長の雑誌「世界」に寄稿した論文について、
その中にも出てくるジャーナリストの高世仁氏(JIN-Net 代表)は昨日(26日)和田
氏に以下の抗議文を送りました。
和田春樹様
はじめまして。
私は、かつて日本電波ニュース社で報道部長をつとめ、現在は報道番組制作会社、
ジン・ネットの代表をしている高世仁です。雑誌「世界」に載った和田さんの論文
「『日本人拉致疑惑』を検証する」を読み、一言申し上げたく、ご連絡したしだいで
す。
安明進証言の内容についての論点はたくさんありますが、私に直接関わるものに、め
ぐみさんの「えくぼ」の問題があります。私が安明進の本のゲラの段階で「えくぼ」
の描写を発見して横田夫妻に知らせた経緯は、私の本に書いたのでご承知でしょう。
「えくぼ」が印象的な特徴であったなら、後になってから証言に出てくるのはおかし
いと和田さんは言います。しかし、記憶に強く刻まれていながら、それが最初に証言
として出てこないからといって、嘘だということにはならないでしょう。記憶は、さ
まざまな形で呼び起こされてくるものだからです。
安明進には10回近く取材していますが、えくぼの問題以外でも、「どうして先にそ
れを言わなかったのか」と、私自身、安明進に言ったこともありました。彼の答え
は、「その質問をされていないから」、というものでした。記憶をたどっていく場
合、まずは質問で方向づけられます。また、私の元工作員の亡命者を取材した経験で
は、余計なことを証言してトラブルに巻き込まれたくないという心理が働き、通常、
聞かれてもいないことを自ら話すことはきわめてまれです。
ご両親はといえば、失踪直後にめぐみさんの特徴として挙げるのは、その日着ていた
服や持ち物、身長、体重、髪型、顔の輪郭、体のアザなどであり、「えくぼ」を言い
忘れることは不思議ではないでしょう。とくに父親の滋さんは「えくぼ」家系で、娘
のめぐみさんに「えくぼ」があるのは当然すぎてかえって意識しなかったといいま
す。また、私の本に出した写真で分かるように、めぐみさんの「えくぼ」は、普段は
隠れていて、大きく口の両端を頬のほうに引き寄せたときだけに現れるタイプの「え
くぼ」です。母親の早紀江さんが、安明進の本で指摘されるまで思い出さなかったの
は、そういう事情からであり、「えくぼ」自体が「目立たないもの」だからではあり
ません。写真で分かるとおり、かなり深く大きく出る「えくぼ」です。
ご両親も気にとめないでいた「えくぼ」、警察もマスコミも知らないはずの「えく
ぼ」を安明進が知っていたということは、彼の証言の信憑性を高めるというのが自然
な解釈ではないでしょうか。
「えくぼ」についてはもう一つ。化粧が濃いというのと「えくぼ」は、あまりに異
なった印象を与えると和田さんは書いています。北朝鮮の人から見て、日本人の女性
の化粧が濃いと感じられるのは、少しでも北朝鮮事情を知っていれば分かるはずで
す。そのことと「笑うと深く窪んだえくぼは、見る人に心優しい印象を与えていた」
(拉致工作員P135)ことが矛盾するということにはならないはずです。むしろ、
この安明進の表現は、めぐみさんの「えくぼ」の特徴とよく合致します。
和田さんの「想像力」のほうに問題があるように思えますが、いかがですか。
安明進の証言内容には、教官から聞いた部分と自分が見た部分とがあります。非常に
若い日本人女性をニイガタから自ら連れてきたと教官が語り、安明進の目撃した女性
のエクボを含む外見がめぐみさんと一致します。そして拉致年代、女性の年齢、身長
その他はめぐみさんのそれらと矛盾しません。一方、石高論文に載った亡命者は、
「双子」、「バドミントン」、「13歳」、「中学生」など安明進の証言内容とは重複
しない情報をもたらしています。彼は安明進とは別人であり、総合すれば、めぐみさ
んが北朝鮮に拉致されたということは、きわめて高い確度で推定しうるのではないで
しょうか。
さて、和田さんが特に問題にしているのは、これらの証言が明らかになる過程です。
そして論文の中でも、この部分には、非常にたくさんの事実誤認が見られます。
しかも、単なるケアレスミスではなく、当然確認すべき重要な事柄を、しかも電話一
本ですぐに問い合わせることができるのに確認せずに、恣意的に「推測」したうえで
の誤りが多いのです。いわば「重過失」ともいうべき悪質な誤りです。なかには、考
えたくないのですが、ひょっとしたら意図的に事実をねじまげようとしているのでは
ないかと感じた個所さえありました。
例えば、めぐみさんのケースがブレイクする経緯についての記述です。
これまでも、97年の2月3日に産経とアエラの記事が出て、まさにその翌日に安明
進インタビューが設定されたのは、あまりにも「できすぎている」などと、私自身
も、まるで安企部のまわしものであるかのような批判を受けたことがありました。実
は、私の本で説明したように正真正銘の偶然だったのですが・・・。
和田さんもやはり、このブレイクの経過に重大な疑惑を匂わせていますが、その記述
から首をかしげざるをえない例を(たくさんありますが)ちょっと挙げてみましょ
う。
2月号で和田さんは、佐藤勝巳さんの役回りに異様に力を入れて書いています。佐藤
さんははじめから事情をすべて知っていたのに、わざと黒子の役に徹してブレイクす
る過程全体をコントロールしたという印象を与えています。
148頁では、兵本さんは横田滋さんに対して意図的に佐藤さんの関わりを隠したこ
とになっています。明らかに陰謀があるかのような書き方です。その前提となるの
は、兵本さんにファックスで知らせた「知り合いの方とは、佐藤氏のことであろう」
し、兵本さんは「石高情報も佐藤氏の発見も、現代コリアのホームページのことも
知っていた」はずだという推測です。ところが、この「推測」がそもそも的外れなの
です。
私の取材では、兵本さんに「新潟日報」記事のコピーを送って知らせたのは佐藤さん
ではなく、関西在住のKさんでした。そして兵本さんは日銀のOBに接触し、横田滋
さんの居場所をつきとめます。和田さんは、新聞記事には滋さんが「銀行員」としか
載っていないので、兵本さんが日銀OBにコンタクトすることは不自然だと見ます。
たしかに、20年近い年月が経っていますから、97年はじめの時点では、古くから
の新潟市民でも、「横田めぐみさん」という固有名詞を覚えている人はほとんどいな
かったでしょう。しかし、「日銀職員の娘さんが行方不明になったあの事件」として
記憶している人ならたくさんいたのです。新潟市在住の小島さんなどもその口でし
た。「日銀」というキーワードを得るのは難しいことではありません。兵本さんが関
係者に2、3本電話をかければ当然知るはずの情報であり、実際兵本さんはそうした
のです。
悪質なのは、横田滋さんが兵本さんを議員会館に訪ねたことを述べた後、「議員会館
という場所は、情報に信憑性を付与するにはよい場所だ」などという思わせぶりな表
現を挟み込んで、全体の経緯におどろおどろしい印象を与えるよう脚色していること
です。
以上は、ほんの一例ですが、和田さんの論文は、こうした誤った推測のうえに推測を
重ねていって、勝手な「結論」を導き出し、怪しげな印象を与えるという手法に満ち
ています。和田さんは、言わば一人相撲しながら「問題」を勝手に見つけて騒いでい
るのです。
そこで、ぜひともお聞きしたいのは、和田さんはこの論文に登場する人のうち何人に
インタビューしたのかということです。和田さんが重視している、めぐみさんのケー
スがブレイクする過程だけに限っても結構です。佐藤勝巳、小島晴則、石高健次、兵
本達吉、横田滋・早紀江夫妻、大田明彦(産経)そして高世仁・・・。和田さんはこ
のうち誰と誰にいつ取材しましたか。単純な誤りがこれだけ多いということは、和田
さんはおそらく何のインタビュー取材もしないで、こんな重大な問題を論じようとし
ていたのではありませんか。少なくとも私には接触がありませんでしたね。
私はこれらの人々にすべて直接に会って話を聞いたうえ、互いの話に整合性があるか
どうかをチェックし、再び確認のインタビューをしたあとで本を書いています。
ジャーナリストとして当たり前ですが、これは国民の「命」にかかわる重大問題であ
り、大きな責任を自覚するからです。私は、研究者もジャーナリストも、真実に限り
なく近づこうとする同じ情熱に動かされている職業だと思っています。本や新聞に書
いてあることが本当なのかどうかを、当事者に確認することは必須の作業ではないで
しょうか。事実確認するにはちょっと電話をかければよいのです。小学生でもできる
ことなのに、和田さんはそれもせずに推測だけで書き、結果としてたくさんの誤りを
冒してしまいました。これを何と表現するのでしょうか。単なる「怠慢」でしょう
か。いや、ここまでくると単なる「怠慢」というより、和田さんは「見ザル」や「聞
かザル」のように、事実を知りたくないのかもしれません。ひょっとしたら、和田さ
んには特殊な政治的な意図でもあるのでしょうか。大変失礼かもしれませんが、私に
そうまで思わせるほど記述の誤りがひどいのです。
もし、私に話を聞きたいという要求があれば、立場が異なる人であっても、会ってき
ちんと説明したはずです。和田さんが論文で取り上げた他の人たちも取材に応じてく
れたでしょう。なぜなら、和田さんの「推測」とは逆に、めぐみさん事件がブレイク
する経緯には何の秘密も陰謀もないのですから。
研究者であるなら、誠実に、あくまで一つ一つの事実を確認するという調査・研究の
基本に戻って議論してほしいというのが、和田さんに対する私の要望です。