「寺越事件50年、今何をすべきか 東京特別集会」全記録
◆「行動対行動」の原則厳守を
西岡 最後に、今起きていることについてコメントしたいと思います。飯塚さんが先ほどおっしゃったように、(飯島参与訪朝については)何も聞いていませんでした。今も何も聞いていません。政府は「ノー・コメント」としか言っていません。それなのに北朝鮮は色々な発信をしています。
当初、タラップから降りてくる映像は北朝鮮国内では報道されていないとされていたんですが、しかし、『労働新聞』などに写真入りで、金永南(キム・ヨンナム、国会議長相当)と会っていることが出ていますから、北朝鮮国内でも、内閣官房参与という人が訪朝したことを大きく報道しています。
特に金永南という人は、形式上は北朝鮮の序列ナンバー2です。権限はあまりないでしょうが、儀典上のことをやる時は出てくる人です。例えば金大中大統領が初めて大統領として北に行った時、迎えたのは金永南です。それくらいレベルの高い人が会っているということが何を意味するのか。
帰ってきて話を聞かなければ分かりませんが、私は今の段階で2つのことを思っています。第1は、接触は色んなところでやるべきだということ。交渉は正式のルートでやるべきですが、接触は色々な情報を取るためにすべきです。第1次安倍政権の時も、当時の井上秘書官が平壌を極秘訪問していたことが、後で明らかになりました。
接触は秘密でやることです。参与という立場というのは、正式の窓口ではない。そういう人が接触するということは、色々なことで情報を取るために必要だと思いますし、相手の本音を取るために必要だと思います。
しかし、それが報道されるということはどういうことなのか。当初から報道されるという約束で訪朝したのかということについて強い疑問を持っています。だまされたのではないか。
もちろん、すべてのことで話がまとまって、帰ってきて、被害者が帰ってくる合意ができましたというならば歓迎したいと思います。どういうやり方でもいいと思います。しかし、どうもだまされたのではないか。秘密接触をするといって、行ったらカメラがいたということではないかと疑っています。まだ、真相は分かりません。これが1点。
しかし、一方で、こういうことを北朝鮮がやって何のメリットがあるのか。国内向けに安倍政権が頭を下げてきたと宣伝できる。日本とアメリカの関係、日本と韓国の関係をぎくしゃくすることができる。短期的には彼らは何か勝利したように思っていますが、結局、彼らも何か日本から取りたくて接触のルートを作ったのに……。
そして安倍政権の中で、飯島さんは一番宥和派です。異色な人です。朝鮮総連と近い人だと私は認識しています。そのルートを今回切ってしまうことになる。公開の席に出してしまったら、次から秘密接触ができません。
この結果、日本からお米をもらったり、総連中央本部の競売が中止になるということはないわけですね。彼には何の権限もないです。
もう一つの仮説は、表向き何かやっていて、裏で秘密交渉が進んでいる。陽動作戦としてこれをやっている。そういうことだってありえる。
分からないことが多いですが、しかし北朝鮮が日本に接触をしたいと思ってきた。日本側はいつでも、どの政権でも、接触しようとするわけです。拉致被害者のことがテーマであれば。接触ができるかどうかは、彼らがどれだけ困って日本に手を伸ばしてくるかにかかっているわけですが、困ってきているんだなとは思います。
しかし、困れば困るほど、厳格な「行動対行動」の原則を厳守しなければならない。困ってきた後接触してくるのは彼らの手です。例えばブッシュ政権の末期、金融制裁で困って、ヒル国務次官補のところに接触してきた。「核をやめます」と言った。核施設の煙突を爆破した。
しかし、口で「止めます」と言ったことに対して、アメリカは金融制裁を解除し、テロ支援国指定を解除した。結果どうなったか。核武装が進んだ。
「口対行動」ではだめなんです。困った時に彼らはごまかしにかかります。今までずっとそうだった。だから「行動対行動」の原則を守りつつ、臨機応変な交渉が必要です。
そういうことについて安倍総理は、よく分かっていらっしゃると思います。私たち民間の運動としても緊張感を持って見つめていきたいと思っています(拍手)。
以上