「アメリカから見た拉致問題?東京連続集会74」全記録
◆横田早紀江さんのオーラに胸を揺さぶられたブッシュ大統領
第3のポイントは、よく日本でも知られていますが、2006年4月の横田早紀江さんらによるアメリカ議会での証言とそれに続くブッシュ大統領との面会でした。
私も横田早紀江さんの証言を聞きました。早紀江さんは次のようなことを述べたのです。
「娘は工作船の暗い船底に閉じ込められ、『お母さん助けて!お母さん助けて!』と壁をかきむしって、絶叫し続け、暗い海を運ばれたといいます」
万感をこめたような横田早紀江さんの声、この言葉は、その模様を知っていた脱北した元工作員の供述などを引用して証言した結果でした。満員の会場は静まり返って、議員たちのなかには涙をぬぐう人もいました。
その翌日、ブッシュ大統領が、早紀江さんと息子の拓也さんをホワイトハウスに招いて、愛する家族を北朝鮮に奪われた悲劇に耳を傾けたのです。大統領は「国家が外国の子供を拉致するとは信じ難い」と述べました。そして早紀江さんとの会談を「大統領になってから最も感動的な会合」と評したのです。
その後、ブッシュ大統領は、ことあるごとに早紀江さんとの話し合いに触れて、誰も質問もしていないのに、「大統領になるとこんな貴重な感動的な体験ができる」といって、早紀江さん、拓也さんとの会談の模様を記者団らに語り続けました。大統領としての演説でも、一般人との語り合いでも、その会談について語るのです。これは明らかに、ブッシュ大統領が横田早紀江さんのオーラや、その悲しみに胸を揺さぶられ、横田さんの家族の悲劇に本当に同情したのだという印象を我々は受けたんです。
ブッシュ大統領というのは、直情径行というか、ストレートな人です。ハーバード大学に行ったり、最高の教育を受けているんですが、英語の言葉を時々間違えたりします。
例えば皆さんご存知の、英語の「ストラタジー」、「戦略」という言葉があります。ブッシュさんは時々、「ストラタジリー」と。それは間違いなんですが、平気でいう。そうすると、支援者たちが、おもしろいなといって、「ストラタジリークラブ」と会をつくる。ブッシュさんを支援する会なんです。彼にはそういうふうに人をひきつけるところがありました。
その直情、あるいは軽率さからか、北朝鮮政策でも、融和派の意見を採用して、結局、北朝鮮を「テロ支援国」の指定からはずしてしまった。そういう経過こそあるにせよ、当初は早紀江さんとの会談から受けた感動によって、日本人拉致問題への共鳴とか、同情とか、温かい気持ちを本当に人間として抱いていたという印象を私は受けました。