「アメリカから見た拉致問題?東京連続集会74」全記録
◆北朝鮮には政府が嘘を言っても叱責する仕組がない
古森 アメリカ政府の当事者が、日本人拉致問題が未解決な限りは北朝鮮に対するテロ支援国指定ははずさないとはっきり言明していたわけです。それが変わりましたよね。明らかに日本人拉致が未解決なままでも北朝鮮はテロ支援国家ではなくなってしまいました。
これは繰り返しになりますが、明らかに北朝鮮側から米側に対して、テロ支援国家の指定をやめてくれれば、北朝鮮のプルトニウムによる核爆弾の製造をやめるという示唆があったのでしょう。結局、北朝鮮は寧辺の施設をデモンストレーション的に壊したりしました。しかし実はもう一つ、ウランを使っての核兵器開発をずっと着実にやっていた。北朝鮮は平気で嘘をつくわけです。
北朝鮮のような全体主義国家で政府が嘘を言っても叱責する仕組はありません。一方、アメリカや日本では政府といえども、そんな嘘をついて、平然としていることはできません。同じ国のなかで四方八方から非難されます。民主主義国家の弱さです。アメリカの場合、政府当局が明らかに事実と違うことを言えば、厳しく追求されますので、北朝鮮の交渉は非常にしたたかです。
さらにもう一つ。当時のアメリカが指定解除した理由には、やはり韓国の態度があったといえます。当時の韓国大統領は盧武鉉さんですね。盧武鉉さんというのは、鳩山由紀夫さんといい勝負の人です。「米韓同盟というのは実は同盟というよりも、韓国がアメリカの同盟国ではなくて、中国とアメリカの間に立ってバランサー、つまりバランスを取る役割が韓国なんだ」と公言していました。
それではアメリカはやはり、びっくり仰天して怒りますよね。盧武鉉大統領はさらに「在韓米軍は、朝鮮半島以外の軍事目的でいっさい動いてはいけない。台湾の有事でもいけない」などとも注文をつけていました。同盟を骨抜きにする態度です。同時に北朝鮮に対しては気持の悪いほど友好的でした。北朝鮮の嫌がることはしない。そんな韓国の当時の政権の態度もアメリカの対北政策に影響を与えたといえます。
盧武鉉政権の前任だった金大中大統領の時の太陽政策というのも、アメリカに影響を及ぼしていました。北朝鮮をあまり敵視してはいけないんだという雰囲気は一種の風としてアメリカ側にも流れていたと思います。