非主体的農業で北朝鮮の食糧は常に不足
はじめに
国連機関であるFAO(国連食糧農業機関)とWFP(世界食糧計画)が2012年11月12日、「北朝鮮の穀物および食糧安全保障調査団特別報告」を発表した。国連機関は1995年以降、毎年同報告を続けてきたが、非常に疑問が多い報告である。
以下報告年度毎に「レポート(年度)」と表記。各年度の報告書(英文)は文末「資料」にアドレス掲載。
本文では、まず、FAOとWFPの各年度の「特別報告」に基づき、各国政府や専門家等が、近年の北朝鮮の食糧生産が安定してきたと報告していること、それにも関わらず、食料不足の悲鳴が聞こえてくることについて報告する。
次に、食糧問題は一人当たりの生産量を見極めることが重要であるが、そのためには正確な人口調査が必要である。2008年に国連人口基金(UNFPA)が一部関わった人口調査(「2008年調査」)の疑惑について報告する。
以上を踏まえた上で、北朝鮮で主要な食糧となっている米とメイズ(飼料用トウモロコシ)を主に取り上げ、北朝鮮の食糧生産量は「主体農業」という非主体的農業により、また金氏政権を延命させるためだけの軍事優先政策、核・ミサイル開発により常に不足してきたこと、人民が飢えさせられてきたことを分析する。
また、国連機関の食糧報告は、北朝鮮の水増し報告を微調整したものに過ぎず、真実の報告とはなっていないこと、さらに、国連機関の国際支援のありかたについて問題提起する。
目次
※ 北朝鮮食糧問題最新事情(2015.03.26)
はじめに
?.「北朝鮮の食糧事情は安定」報告と北朝鮮から伝わる多くの悲鳴
1.北朝鮮の食糧事情は安定したのか
2.不足しているから聞こえてくる悲鳴
?.国連機関の報告は約300万人水増し?北朝鮮の人口
1.「2008年人口調査」は虚偽調査
2.おかしな報告の数々?北朝鮮人口調査
3.人口は300万人水増し
?.国連機関の報告は水増し?北朝鮮の食糧生産
1.米は10a当たり180kg程度
2.メイズは約100万トン水増し
3.国連機関の報告は毎回基準が異なる
4.飢餓を無視して核・ミサイルを開発
?.水増し統計を発表し続ける理由
1.個人独裁の責任が問われる
2.人口の水増しで国際支援を訴え
3.国連による食糧支援の問題点
4.独裁国家への「人道支援」は非人道
5.米よりご飯を(配給のモニターより消費のモニターを)
6.国連は家族農業を認めない国家には人道支援を行うな
資料: FAO/WFP「北朝鮮の穀物および食糧安全保障調査団特別報告」
1995年?2012年(英文)
資料: FAO/WFP北朝鮮食糧事情合同調査報告書2013
資料: FAO/WFP北朝鮮食糧事情合同調査報告書2014と2015
資料: FAO/WFP北朝鮮食糧事情合同調査報告書2016
資料: FAO/WFP北朝鮮食糧事情合同調査報告書2017