「韓国から見た拉致問題?東京連続集会75」全記録
◆南北離散家族は70代以上に
黒田 「産経新聞」の黒田です。僕と西岡さんの関係はもう30年くらいになりますが、昔は西岡君も紅顔の美少年でしたが、今そうとうお腹がでています(笑)。ずいぶん長い付き合いです。
ぼくはずっとソウルに沈殿しているので、逆に日本での厳しい、シビアな状況が実感できないことがあります。時にこういう集会で日本の雰囲気、皆さんの熱意を感じる機会があればいいなと思っていましたので、今日喜んで出席させていただきました。
先ほど、北朝鮮の内部におられた方の相当迫力のある話がありました。その後にぼくが出て、あまり迫力のない話になっちゃうんじゃないかと思って心配しています。
拉致問題は非常に難しい問題なので、ぼくも若干言葉を選ばざるをえないという感じがします。今日は拉致の問題と必ずしも直結しませんが、ソウルにいながら色々経験してきたことを、若干皆さんの関心にそってお話したいと思います。
つい最近、今の朴槿恵(パク・クネ)大統領になってから、南北離散家族再会をまたやろうということになりました。北の方が対話姿勢で、計算があって彼らはやるんですが、そういう計画があり、直前までいったんですが、北が突然、あれはなかったものにしたいと言いました。
離散家族の皆さんで、今回の面会に予定されていた人たちが、途端に失望しちゃったという場面がありました。南北離散家族再会は時々やるわけですが、今回なぜ北がまたやってもいいよと言ったのかについて色々な観測があって難しいんです。そしてなぜ急に止めたのか。
韓国の分析では、南北離散家族再会を韓国側に餌として与えたと。韓国政府にすると、南北離散家族再会という人道問題が実現すれば成果を上げたということになりますから、政府の手柄になります。そういうことを北は考えて、餌としてやってあげると言って、その見返りとして中断している金剛山観光事業を再開する。
金剛山観光を再開すると、北からすると南の人たちがたくさん来て、日銭が入るわけです。経済的利益がありますから、金剛山観光とセットで提案したのではないかという分析です。
結果的に、韓国側は金剛山観光の再開ではちょっと難しい条件を出しているということがあって、どうもすぐにはうまくいかないようだという判断があって、それじゃあ離散家族の再会もさせないということになったのではないかと。
結局人質外交ということです。離散家族というのは日本の敗戦の後、米ソが分割支配して南北を分断しましたね。その後また戦争もありました。北の体制を嫌って逃げてきた人たちがいるとか、戦争の時北に連れていかれた人がいて、そういう人たちの家族が南北に分かれているわけです。これが離散家族です。
そういう人たちを人質にとって、「会わせてやるから金を出せ」というようなものですね。それを北はずっとやっているんです。
今回しみじみと思ったんですが、今回離散家族再会がなれば、1回で2、3日、2?300人くらいを北から連れてきて、南からも連れてきて会わせるわけですが、そういうことを続けるとします。もし北がOKして毎月やったとすると、1回200人なら2500人くらい。
今韓国で面会申請を赤十字にしている人が6万人くらいいます。とすると、毎月やってもあと20年、30年かかるわけです。離散家族の人は分断以降時間が経っていて、みんな70歳以上なんです。毎月200人くらいが再会しても、みんな亡くなってしまいます。
それで北の体制はやっぱりすごいと思います。みんな年寄りですけれども、今なお南北で会わせないんです。手紙の交換も、贈り物の交換もさせない。本当にひどい人たちだと思いますね。
東西ドイツが分断している時は、手紙の交換や往来をさせていました。結果的にドイツはその後統一しましたが、ぼくはドイツ民族はやっぱり偉いと。コリアンはだめだと、民族的力量がないと思いますね。申し訳ないですが。
なぜそういうことができないのかということですね。できない理由は、北サイドの問題はみなさんご承知と思いますが、すごい非人間的な体制だと思いますね。
会わせる時も平壌とか一番行きやすいところじゃないんです。金剛山という一番はずれの山の中ですね。ぼくも観光で3回くらい行きましたが、遠いはずれのところですね。そこに呼んで人工的に会わせる。会わせ方もひどいんです。そういう人質外交をやっている。