特別セミナー「拉致問題の全体像と解決策」全記録
◆日本人拉致の目的の第1は工作員化、在日韓国人も拉致
次に、なぜ北朝鮮は日本人を拉致するのか。皆様はよくご存知だと思いますが、私の考えを申し上げたいと思います。北朝鮮が日本人をたくさん拉致した理由は、当時韓国人もたくさん拉致したのですが、まず第1に、その人たちを工作員として使おうとするという理由でした。
従って、初めから拉致をしたのも工作部署であり、その人たちを収容して工作したのも工作部署です。日本人であれば、別途日本の言葉や習慣を教える必要はなくて工作員としての教育さえすれば日本に潜入させることができるし、海外で活動させることもできる。
韓国人も同じでした。彼らを拉致して最初から工作員教育をしました。しかし、拉致を不作為で、作為なしで(西岡=これは選ばないでという意味だと思います)行ったので、その中には工作員としてふさわしくない人も含まれていました。
そこで工作員に使うことができなかった人たちを、北朝鮮の工作員に日本語や日本文化を教える講師として使ったのです。そして講師として使えなかった人たちは、日本に関係する通訳や翻訳など適当な仕事をさせたと聞いています。 また、被害者の身分は、日本に潜入する工作員の身分偽装のためにも使われました。
それでは実例をあげて申し上げたいと思います。80年代末から92年まで、韓国で活動した夫婦の工作員がいました。その夫婦は中国系マレーシア人に擬装した対南工作員でした。夫は、チン・ウンバンという名前で呼ばれており、奥さんはチョン・オクチョンという名前で呼ばれていました。
しかしその奥さんは日本人でした。その当時、30代から40代の女性でしたが、92年に韓国の中で大型スパイ事件があったので北に逃げました。韓国から逃げ帰ったその夫婦は、北朝鮮から共和国英雄称号を受けました。そして二人とも金日成党高級学校という幹部学校で教育を受けました。
そして夫は、今度は韓国人オン・ジウに擬装して98年10月に韓国に潜入して、その年の12月、半潜水艦に乗って北朝鮮に帰る時、韓国軍によって撃沈され、死亡しました。奥さんは今現在も北朝鮮で生きています。
その日本人の夫人が拉致被害者かどうか、私は確認できていません。しかし、その人の年や工作員になった過程を見ると、拉致被害者である可能性が十分にあると見ています。
先ほど申し上げた「タナカ」さんの場合は、工作員として活用できなかったから日本語講師として使ったケースであり、金賢姫が日本語を学んだ李恩恵(リ・ウネ)さんもそのようなケースだと思います。
そして80年代の半ば、韓国に入って捕まった辛光洙(シン・ガンス)氏の場合は、拉致被害者の身分を擬装用に使ったケースだと思います。
また注目しなければならないのは、この時期、日本にいる日本人だけを拉致したのではなく、在日韓国人も拉致しました。当時、公開的な北朝鮮への帰国があったわけですが、それとは別に、必要な人は拉致しました。ひどい時には、在日の幼い子どもを、睡眠剤を飲ませて拉致したこともあります。
私が90年に韓国に潜入しまして、韓国で活動していたおばあさんの大物工作員李善実(リ・ソンシル)を北朝鮮に連れ帰ったのですが、彼女は日本で幼い10代の自分の甥たちを北朝鮮に拉致したということがありました。そして同じ年の北朝鮮の子どもを、その身分を使って日本に送り込んで、日本で現地化教育をしましたが、結果的に失敗して、その二人を北朝鮮に呼び戻したというケースがありました。