特別セミナー「拉致問題の全体像と解決策」全記録
◆まず認定被害者等の「一定の解決」から
松原 この拉致問題を解決するには、今お話があったように世論の盛り上がりが極めて重要です。従って、1000万人の署名は極めて意義があると思っています。また、当然制裁も一定の効果が上がっていると思います。
私は、拉致問題の解決には、タイミング、間合いがあると思っています。警察庁によると、私が担当大臣になった後、北朝鮮に極めて影響力のある大国が、今がチャンスだ、うちが仲立ちしてやろうかという申し出があったのも事実です。
そういった声はそのままでは聞こえてこない。実はあの段階でいくつか、いわゆる北朝鮮の関係から話があって行った社もありますが、同じ人物に会っても、その前と後では前々対応が違う、顔をつぶされたというようなこともありました。
つまり、それは行いうるタイミングがあり、極めて気まぐれな国ですから、相手の気まぐれに我々が右往左往してはいけないと思うものの、被害者を取戻すとなれば、潮目が一番こちらに向いているタイミングをピンポイントでつかんでいかなければいけないというのが一つです。
私は担当大臣から1年以上はずれていますから分かりませんが、1年間の中でも、ぐっとこの問題の解決が開かれる瞬間というのが現場では分かると思うんです。そういった時、一つの感性でその瞬間をとらえて、一気に行動することが当然必要だと認識をしています。
私が担当大臣の時に、北側を動かす立場に立った時どうなのかということを想定することが必要だと思っていました。誘拐した国はけしからんという議論は当然ですが、彼らが解放しようと思う条件は何だろうかと、彼らの立場に立って考えるのも解決のために必要で、そうするといくつかあるわけです。
例えば制裁が効いている。これは西岡さんが前から言っているように効いているわけで、じゃ制裁解除はどこでやってくれるのかということを、きちんと分析していかなければならない。
拉致の被害者は分かりません。「全員返せ」というテーゼは、我々は最後まで貫徹すべきですが、私が当時野田さんに言ったのは、「全面解決は最終的な局面である。しかし、一定の解決というのがその前にあるだろう」と。その一定の解決の条件を出すことによって、北側に目安を与えることは必要だと思います。
実はこれは家族会と話をした時もそういう話が出ましたが、要するに、一定の解決をした後の全面解決に向かって、絶対これはやるんです。しかし、一定の解決という一つの突破口を築かないと、恐らくこれは進まない。
一定の解決というのは、大臣時代に北側にずっと様々なチャンネルを通して言っているわけですが、一定の解決というのはハードルを下げたわけではない。つまり、一定の解決の中には、認定被害者やそこに荒木さんがいますが拉致の疑いが濃厚な1000番台の一部を入れて、そこは何十人かの人がいるという中で、そこまでははっきりしろ、と。
もちろん、そこに入ってこない、我々が認識をしていない拉致被害者もたくさんおられるかもしれない。北に対してそういう交渉をしていかないと、私はなかなか進まないだろうと思っています。その上で、全面解決を目指すのは当然です。
僕は、北側に対して一定の解決を言う時に、5人の拉致被害者を日本に戻した時のトラウマが彼らにはすごくあるんですね。彼らは返したと思っているが、日本国内ではすざまじい反北朝鮮になった。
私は、そのことをきちっと北朝鮮が学習しているんだから、少なくとも5人とか6人とか、思いついて2、3人とかという話じゃなくて、日本側が、「そうだな。これは確かに一定の解決だな」と、もちろん全部やれということですが、一定の解決のところで、制裁に関してどういう判断をするかがあってもいい。
いわゆる向こうのトラウマを学習しているかということと、三位一体の関係の中で、ここはきちっとやっていかなければならないだろうというのが私のメッセージでした。