国際セミナー「北朝鮮は世界の拉致被害者をすぐに返せ!」全記録
◆日本政府が人権理事会に書いているドラフトは非常に弱いらしい
土井香苗 ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表
今日は貴重な機会をいただきましてありがとうございます。カービー委員長の報告書は内容は本当にすばらしいものです。100点満点だと思います。しかしこれは第1歩に過ぎず、第5歩、第6歩までいって本当の国際的なプレッシャーになるものです。
拉致問題の解決、北朝鮮の人権問題の解決に向けた第1歩に過ぎないが、しかし重要な第1歩が示されたと感じています。これは日本の、具体的に言えば、安倍首相の類まれなるリーダーシップがあってこそ実現できたことです。本来ならば、カービー委員会はもっと早く組織されるべきであったわけですが、今このタイミングになった大きな理由は、安倍政権であったからと思っています。日本の安倍政権というのはヒーローであったとまず言いたいと思います。
では我々は第2歩に向けて何をすべきかですが、「安倍政権というのはヒーローであった」と過去完了形の状態で、この1、2週間くらい、暗雲がたれこめているという情報に接しました。
第1歩が完璧なものになったのも皆様のお声があってこそで、被害者の方々が一致団結して声を上げたからです。その上で安倍首相のリーダーシップがあり、頑として動かなかった国際社会を動かした面がありますので、もう一度第2歩に向けて皆様の結束をお願いしたいと思います。私も持てる力をすべて捧げて皆様をご支援したいと思います。
では第2歩というのは何なのか、国際社会の最大のプレッシャーとは何なのかことをまずお伝えしたいと思います。
ゴールは何かというと、国連安全保障理事会による経済制裁であり、刑事訴追を含めた責任追及だと思います。これは実は、カービー委員長が実際に提案していることで、報告書の中の94項(a)と(c)にあります。それは経済制裁と法的責任の追及であると明記してあります。これは非常に大きなプレッシャーです。
人権問題が解決しなければ、拉致被害者や特定失踪者などを返さなければ経済制裁、すなわちお金がなくなるというものです。また人権侵害をやめなければ国際裁判にかけられるかもしれない。これが今国際社会が持ち得る最大のカードです。そのカードを使いなさいとカービー委員長は言いました。非常にありがたい勧告だと思います。
日本は経済制裁をしていますが二国間のものです。これが国連安保理になれば強烈な制裁になります。
先ほど西村副大臣が言われましたが、まず3月17日からジュネーブで国連人権理事会の質疑が行われます。ここでカービー委員長の提案をオーソライズして盛り込むことが必要です。そうでなければすばらしい勧告だけれども、残念ながら棚の上に置いておくだけになりかねないわけです。つまり、国連人権理事会で決議をすることが非常に重要です。
この決議案の第1ドラフトを書く国は、実は我が国、日本なんです。しかし、残念ながら日本政府は今怠惰だと聞いています。また私が聞いている限り、カービー委員長はちゃんとしたものを書いたけれど、日本政府が書いているドラフトは非常に弱いと聞いています。
弱いと言っても0点ではありません。まず、国連で人権問題を取り扱っている事務局のスタッフはこれまでパートタイムの人が一人いただけということです。この陣容を強化することは大事なことですが、ここに今日お名前を連ねておられる先生方が非常にご尽力をしてくださり、これについては日本政府のドラフトに盛り込まれる方向性だと聞いています。
しかし、スタッフの増員は技術的なことに止まってしまうわけで、本当に北が嫌がることはプレッシャーです。これは安保理が行動することで、経済制裁と法的な制裁です。そのアクションを要求しているという情報は残念ながら今のところありません。
これは一生に一度しかない、二度とこのような報告は出ないわけですから、ここでモメンタムを失ってはならないと思います。これから2、3週間が正念場です。去年の人権理事会で安倍首相が見せてくださったすばらしいリーダーシップをまた是非とも発揮していただきたい。また皆様のご努力をお願いしたいと思います(拍手)。
櫻井よしこ
どうもありがとうございました。日本がドラフトを書く立場にありながら、その内容が十分ではないというご指摘は深刻に受け止めなければならないと思います。なぜなら安倍政権は、必ず拉致問題を解決すると国民に約束をしているわけですから。また平沼先生初め、拉致議連の先生方はずっとこの問題に熱心に関わってきたわけですから。
日本がドラフトを書くというチャンスを与えられた時に、なぜ日本国政府の決定や方針がきちんとドラフトにつながらないのかということです。これは何かの意志の疎通があるのかと思いますが、是非国会議員の先生方がしっかり監督し、第1ドラフトに盛り込むべき内容を盛り込んでいただきたいと思います。
次に、民主党の松原仁さんにお願いします。与党、野党の立場を超えて、担当大臣や議連の幹事長として最も熱心に取り組んでこられた国会議員の一人です。