国際セミナー「北朝鮮は世界の拉致被害者をすぐに返せ!」全記録
◆中国が安保理で拒否しても国連総会で裁判できる
土井香苗 ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表
この報告書は非常にクリエイティブな提案をしています。つまり公的な責任の追及、刑事裁判にかけることで、つまり懲役刑で、言葉は悪いんですが、脅すということです。
現実には刑事裁判にかけることはしにくい。テクニカルな話ばかりで恐縮ですが、安保理の決議が要り、中国の拒否権が予想されるということがあり困難な戦いを強いられることがありますし、現実的な実効性はどうかと西岡さんがおっしゃっておられますし、そういう懸念があるわけです。
それはカービー委員長もご存じで、今まで国際社会がほぼ全く考えていなかったオプションを示してくださいました。カービー委員長は国連のシステムをよくご存じの国際法の権威ですので、彼が提起してくれたことは、皆さんの中でも初めてお知りになる方がいらっしゃるかもしれません。
実は、国際的な裁判の法廷、国際法廷は、安保理が拒否権を持っているところだけでなく、総会でも作れますよということを、脚注を駆使しながらよくよく読むとそういうことを提示してくれています。これは私にとっても、目を見開かされることでした。
確かに法的には可能性があるんです。例えば(クメール・ルージュ政権の虐殺責任を問う)カンボジア特別法廷の例があります。仮に国連で法的制裁がうまくいかなくても、これは何としてもやるという決意で臨まなくてはいけないのですが、実際にできた例がありますので、これは有効なプレッシャーになると思います。
中国が安保理で拒否しても、我々はやるという強い決意を持って我々国際社会は中国と交渉していかなければならないと思います。
土井さん今のご指摘ありがとうございました。私たちは国連を考える時、5大国が拒否権を持っていて、大事なものになればなるほど動かないという、ある種の苦しい現実を見せつけられて、最初からあきらめるところがなきにしもあらずですが、安保理常任理事会で拒否されても、総会に持ち込むことができることを示唆してくださったことは、大変な勇気のみなもとになるんじゃないかと思います。みなさんどうでしょうか(拍手)。
土井さんは中国という言葉をおっしゃいましたが、私も中国の国名を口に出しました。本当にアジアのことに関して、私たちの前に立ちふさがっているのは中国だと思います。
同じ人権を守るということに関して、同じように前に向かって進んでくれるのであれば、体制が違っても私たちはお互いに受け入れることができると思いますが、体制が違う、価値観も違う、国際法の解釈も違う、そして自己の利益だけを追求するという、21世紀の最大のトラブルメーカーだと私は思っています。
その中国のため、私たちの国民が国に帰ることもできない、あの北朝鮮に捕われ続けている。北朝鮮一人の力ではとっくの昔に全く別の道が開けていると思うんですが、あの金正恩体制のもとで、未だに拉致について譲ろうとしない。色々な形で中国がテコ入れをしてもちこたえている。そして私たちは実際にすさまじい害を受けているわけです。
日本人だけでなく、タイ人だって、中国人自身だって、悲劇を受けているわけですから、何とか中国に対して、「あなた方のやっていることは間違いなんですよ」ということを突きつけることですね。
西岡さんもう少し詳しくお話をお願いします。