国際セミナー「北朝鮮は世界の拉致被害者をすぐに返せ!」全記録
◆国連安保理決議1441では拉致も制裁の理由に
西岡 力 救う会会長・東京基督教大学教授
先ほど、北朝鮮が今どのような状況かということでしたのでそのことについてお話します。今、会場におられる惠谷治さんからミサイル発射について情報をもらいました。
2月27日午後5時40分に発射されたのはスカッドで、5年振り。スカッドも弾道ミサイルです。そして3月3日、つまり今日午前6時19分に弾道ミサる2発が発射された。飛行距離が500キロで、これはスカッドERまたはノドンということです。
これは明らかに国連の安保理事会に対する挑戦だと思います。スカッドは対韓国用、ノドンならば対日本用です。我々のことを脅しにきている。彼らは今、核弾頭を持っていると言っています。実際持っているかどうかは分かりません。しかし、持っていると言っている国がミサイル実験をしたということは大変深刻な問題であり、当然安保理事会で取り上げるべきで、脅威を受けている日本や韓国が申し立てできる十分な根拠があることではないかと思います。
もう一つ、安保理事会との関連では、先ほど2006年の国連の決議で「人道上の懸念」という言葉が入ったと言いましたが、この前にも、我々は2002年くらいから継続してそういう要求を外務省にしてきたんです。
これは前例があります。国連の安保理事会は、拉致問題で制裁決議を通したことがあります。これはここにいる島田洋一副会長が見つけたことですが、実は国連安保理決議1441、2002年11月8日の決議です。
この決議が実はアメリカがイラクと戦争する一つの根拠に使ったものです。この中に、「湾岸戦争中にイラクによって不当に拘禁されたクエート人や第三国国民を送還、あるいは消息確定に向け協力すべきとした国連決議をないがしろにしてきた遺憾とする」という言葉が入っています。
「イラクが湾岸戦争中にクエート人を拉致した」、「戦中だ」としていますから、朝鮮戦争中の拉致と同じです。それを返せと国連の決議が出ているのに無視したことが遺憾だということが、国際社会が軍事制裁をする時に使った決議の中に理由として書き込まれています。
この時中国は拒否権を使いませんでした。こういう前例があるんだから核・ミサイル実験をした時の決議に、日本人拉致のことを書き込ませなかったら我々は外務省を糾弾するぞと、我々は家族会と一緒にずっと言ってきたんです。そしてニューヨークで頑張ってもらって、「人道的懸念」というのは入りましたが、中国が「拉致問題」という言葉を外したという戦いでした。
中国に対しても前例があるじゃないかということを突きつけることはできるのではないかと思います。
そして北朝鮮内部の情勢との関連ですが、12月に張成沢が処刑されました。2月16日以降、今ナンバー2と言われている崔竜海(チェ・リョンヘ)が出てきていません。韓国で脱北者者がやっている「自由北韓放送」では、平壌からの情報として、崔竜海が逮捕されたということを数日前から書いています。まだ真相は分かりません。
ただ、内部矛盾が高まってきていることは間違いありません。端的に言うと、その第1の理由は外貨がなくなったことです。つまり経済制裁が効いてきた。外貨がなくなってその外貨稼ぎ部門をどちらの部署がとるかで、血みどろな争いが起きている。
軍と外貨稼ぎ部門の54部の取り合いになって、一時54部を張成沢がとった。軍が怒って張成沢を処刑した。単純に言うとそういうことです。もちろんそんなに単純ではないんですが、しかし基本的には矛盾です。
そして崔竜海が今出てきていない。今日来ていただいた金聖浩先生もそのことを指摘されました。ということは安保理の経済制裁は効いているんです。なぜか。北朝鮮は毎年貿易赤字です。数億ドルから10数億ドル赤字です。それなのにベンツを輸入している。核開発ができる。別にお金を持っているんです。
金正日の統治資金と呼ばれたものを今金正恩が引き継いでいます。それが50億ドルくらいあると言われていました。過去には朝鮮総連の送金がそれを充当していた。韓国からも金大中・盧武鉉時代にお金がかなり行っていた。しかし、そのことを見抜いて国際社会が制裁を始めた。制裁を始めた時と比べ内部矛盾が高まった。
今日彼らは弾道ミサイルを撃ったんですから、我々は明日外務大臣を表敬することになっていますが、日本は今(安保理の)非常任理事国ではないですが、安全保障上の重大な脅威が日本に生まれている、国連の安保理事会で審議してほしいという日本の外交活動をすべきだと思います。
いよいよ勝負がニューヨークに移ってきた。安全保障上のことも、制裁のことも含めて。そういう中で、もしも日本が安保理事会の中で北朝鮮の人権問題を議論することについて躊躇しているとなると、情勢を見ていないんじゃないかと思いますが、私はそのことについて情報がないのでその判断は留保させていただきますが、いよいよニューヨークです。そして北朝鮮の外貨を枯渇させることにすべてが向いてきた。
アメリカが金融制裁をした時に、本当に効いたんです。盧武鉉大統領がブッシュ大統領に会って、金正日の代理人として、顔を真っ赤にして金融制裁をやめろと言ったんです。そう盧武鉉大統領が金正日に報告しているという秘密会議録が韓国で暴露されました。
金融制裁が効いて何が起きたか。日朝拉致協議が始まりました。今また彼らは日本に手を伸ばし始めてきた。動きが出てきています。そういう中でジュネーブの報告書は大変価値があると思っています。
しかし、これからが勝負で、いよいよ厳しい戦いになると思います。