「人道的なふりをし始めた北朝鮮への対応ー東京連続集会78」全記録
◆北朝鮮に対する国際社会のプレッシャーが今後強まる
増元照明(増元るみ子さん弟)
みなさんこんばんは。
補足になると思いますが、3月17日に行われた人権理事会の内容についてお話しします。私は人権委員会の頃から3回か4回くらいジュネーブで傍聴しました。そして、今回は決議案に対する賛同者が、北朝鮮の人権問題に対して真剣に、問題が大きいということを認識したことが如実に分かりました。
これまでは、国連の中では「北朝鮮は変な国」という認識であったようです。「仕方がない」とか「変な国だからしょうがない」と。しかし、今回は違った。これだけのことをやっている国が21世紀に存在するということに驚きを感じ、ただちに行動しなければならないという賛同がかなり増えました。
「速やかに、ただちに行動を起こすべきであり、世界は責任を持ってこの人権侵害問題に対して行動しなければならない」と言った国が多くありました。そういう点でも北朝鮮に対する国際社会のプレッシャーは今後強まっていくだろうと感じます。
昨年もヒューマン・ライツ・ウォッチのイベントが国連内であったのですが、昨年のイベントに比べて、人権理事会の後に行われた今年のサイドイベントに集まってきている傍聴者を含めた関係者が3倍くらいになりました。それだけ北朝鮮の人権侵害問題について非常に関心が高くなっている、関心を持つ人が増えたと私は思っています。
人権理事会の中で、EU(と日本の)提案に対し、40か国が質問や意見の表明をしました。私は記者会見のために途中で退席しなければならなかったのですが、28か国は聞いています。
その中で反対したのはまず中国。中国が何を反対したかというと、「北朝鮮の人権問題に対しては建設的な対話をするのがいい。調査委員会のマンデートのあり方には疑問がある。決定的な部分に政治的な思惑がある。中国に関する言及には現状と違うものがある」ということです。
「中国に関する言及」というのは、調査委の報告は、まず中国の脱北者者に対する行為、強制送還です。それから中朝国境で中国官憲がやっていることに非常に厳しい言葉で是正を求めていることです。それに対する言い訳で「現状とは違う」と言っていました。「根拠がない話がある」、つまりでたらめだと否定していました。
脱北者者のことを不法入境者ととらえて、中朝国境にはビジネスゾーンが作られていて、中国当局はだからこそ不法入境者を捕えて送還していると、自分の正当性を主張して、結果的に提案には反対するということでした。
キューバは、「政治的なものがあるという方向になっていてそれを懸念する」と。イランは、「本来会話によって解決すべきであり、政治的な思惑を感じる」と。個別の国に対する非難に関しては、「国連人権理事会の理念に反する」という趣旨でした。
シリアも同じように、「人権を外国が内政干渉していることには反対」と。また報告書に関しては「政治的な思惑を感じる」と。ベトナムはこれまでの北朝鮮の人権状況に関して、「状況を見守ってきている。その中で北朝鮮の人権状況に向上が見られる。国際法も遵守し、初歩的な改善をはかる必要がある。人々の権利の向上は具体的なやり方で投資をしていくことが必要だ」と言っています。中途半端な、賛成か反対か分からないような感じで、どちらかというと北朝鮮を擁護しているような雰囲気でした。
最後にジンバブエは、アフリカの国別のマンデート(安保理から与えられた任務)、個別の国を非難していくやり方に対して懸念を表明して反対しました。
キューバ、シリア、中国など自国にも人権問題を抱えている国々ですから、自国が責められては困るということで強く反対しているところもあります。中国は安保理の常任理事国として人権問題で名指しの非難されるような報告書は面子として認めることができない状況ではなかったかと思います。
先ほど飯塚代表がおっしゃったように、EU諸国でも、アジア諸国でも北朝鮮の人権状況に本当に懸念していると言っていました。最後にカービー委員長が、「我々人類は20世紀の間に、拉致、南アのアパルトヘイト、クメール・ルージュの虐殺、ダルフール(紛争での虐殺)、このような非道な状況を見過ごしてきたことが悔やまれる。21世紀の北朝鮮の人権状況も私たちは見過ごしてはならない」と強く言っておられました。
こういう意識が世界中に広がれば、必ず北朝鮮に対する国際的圧力が強まると私は感じました。今回の人権理事会での審議は北朝鮮に対し非常に厳しいものだったと思っています。