「北朝鮮は今どうなっているのか?東京連続集会79」全記録
◆日朝協議をと取り仕切った国家保衛部の金元弘は健在
西岡 それをどう思いますか。
惠谷 張成沢とその部下は処刑しましたが、その半年前李英浩(リ・ヨンホ)という総参謀長、これは父親が付けた男ですがこれを外した。しかし、処刑はしていないんです。ある情報によれば地方で軟禁状態にあるようです。よくは分かりませんが少なくとも収容所に入れられたという情報はありません。可能性はありますが。
しかし、処刑したのは張成沢だけです。様々な理由で飛ばされた人間もある程度権力内部に、しかも中枢に置いているんですね。金正日なら一端飛ばしたら、二度と権力の中枢には置きません。金正恩の特徴は、人事で外しても側に置いている。私から見れば危険なのではないかと思いますが、逆に優遇することで安心しているのではないかと思います。
西岡 4月9日の最高人民会議で決まった国防委員会の名簿が出ていますが、国防委員の金元弘(キム・ウォンホン)は金正日が金正恩に付けた側近ですね。治安担当者はほとんどクビになっているのに彼だけ残っている。
惠谷 その通りです。最後の生き残りが金元弘です。西岡さんは国家保衛部を政治警察と言いましたが、分かりやすく言えば秘密警察です。その長官だけはまだ父親が任命した男が生き残っています。
西岡 それが今回の日朝協議を実質的に取り仕切っているというのがこの『日本経済新聞』の記事です。この国家保衛部が交渉に出ていけるということについて言うと、『産経新聞』が一番先に書き、『読売』も書き、『TBS』も報道した。金元弘は「金正日の遺言を守れ」という立場ですよね。そういう人間がまだ生き残っていて、拉致の交渉に何らかの関与をしていることをどう見るか。分からないですが、注目されます。
惠谷 そうですね。西岡さんも言いましたが、表の交渉は外務省対外務省、これは国家と国家の交渉ですから外務省が担当する。しかし、もっと機微にわたる条件を話す時に裏交渉をやる。わが方は外務省ですが、向こうは小泉訪朝の段取りをつけた時も国家安全保衛部でした。その伝統があります。
しかも金正日時代を知っている金元弘が未だに部長である限り、拉致に関する交渉は日本にとってやりやすいのではないかと感じています。