「北朝鮮は今どうなっているのか?東京連続集会79」全記録
◆安保法制懇の報告書?4つのポイント
西岡 冒頭でも言いましたが、まず安保法制懇が報告書を出した。それを受けた安倍総理が記者会見した。そして今与党協議が始まっている。潮さんに聞いたところ、報告書の内容と今与党で協議している内容にちょっとずれがあるようですが、まず報告書の内容から、特に拉致の観点から注目すべきことはどういうことなのかということをご説明ください。
潮 配布資料の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)報告書のポイント」は、私が作成したものではなく、安保法制懇が自らポイントはこれだと、紙一枚で分かりやすく理解していただこうという趣旨で作成したものです。
現在も総理官邸のホームページに掲載されていますのでダウンロードすることも可能です。
また「概要」と題されたもの、そして報告書の本文もホームページにあります。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/anzenhosyou2/
本文はあまりにも膨大な文字量であり、中味を限られた時間でお話しするのは非常に難しいんですが、本日はこの「ポイント」をお借りしてお話しし、ご理解いただければと思います。
4つの項目があります。「集団的自衛権」、「軍事的措置を伴う国連の集団安全保障措置」、「PKO在外自国民の保護・救出・国際治安協力」、「武力攻撃に至らない侵害への対応」です。
ところが日本のマスコミは集団的自衛権だけに焦点を当てて報道をしていると思います。NHKの方もおられますが、NHKのニュースでも「集団的自衛権報告書」あるいは「集団的自衛権会見」というテロップが流れていました。他の放送局や新聞社もすべて「集団的自衛権」で見出しを立てていたわけです。
もちろん注目されている論点ですのでそこを強調するのは一つの見識なのかもしれませんが、しかし、配布資料は、報告書を書いた人たちが自らこれがポイントだと言っているもので、「集団的自衛権」は4つある内の一つに過ぎないのです。
しかも3番目の「PKO、在外自国民の保護・救出、国際治安協力」を3つのポイントと読むのであれば、6つあるポイントの1つに過ぎないということが報道によって正しく伝わっていないと思います。
現在の与党協議では、是非はさておき、事実として4番目の「武力攻撃に至らない侵害への対応」、いわゆるグレーゾーン事態について、この報告書では太字で強調されていますが、「侵害を排除する自衛隊の必要最小限度の国際法上合法な行動は、憲法上容認されるべき」という立場に立って、法制のすきまを埋めるような検討がなされています。
実はこの報告書は、一番下に書いてありますが、結論として「政府が本報告書を真剣に検討し、しかるべき立法措置に進むことを強く期待」する形で総理に報告がなされています。
実はこの報告書を受けて、総理がその日のうちに会見をされました。ご覧になられた方も、報道で一部をご覧になった方も多数いらっしゃると思いますが、ここも多く誤解をされているところで、この報告書は単なる報告書に過ぎないわけです。
これを受けた安倍内閣がこの報告書の通り頑張るのか、頑張らないのかという選択肢がありえるわけです。そして、この報告書の通り頑張るというプランAを選んだ場合にも、実際にそれを受けた、例えばグレーゾーン事態に対応するため必要な自衛隊法の改正が必要です。
現実に法律が制定されない限り、問題は解決されないことになるわけです。