「北朝鮮は今どうなっているのか?東京連続集会79」全記録
◆2002年よりは追い込まれていない
西岡 最初の問題意識に戻りますと、張成沢処刑後金正恩政権は今日本に接近してきている。もちろん潮さんから見れば不十分ですが、北朝鮮から見ると歴代政権がやらなかった日米同盟強化の方向に安倍政権が踏み出している。そして一番強い制裁をしてきた安倍政権と交渉しようとしていることは事実です。但し、まだ予断を許さない。
先ほど2008年の時との比較を言いましたが、実は北朝鮮の対応は2008年の水準までまだ来ていない。2008年の時は、「拉致問題で話し合いしましょう」と北が言ってきたんです。当時6者協議がありました。6者協議の枠の中で日朝の懸案に関する協議もありましたが、その外で突然、「拉致問題で話し合いしましょう」と。
従って、拉致だけを議題とする交渉が2008年6月と8月に行われたのです。そして再調査が決まった。今は、日朝両国がそれぞれ話し合いたいことについて話しましょう、と。
日本は最優先が拉致だと言われています。北朝鮮は過去の清算、それから今日宋日昊大使はスウェーデンに行く途中、北京の空港で、「月曜日からの交渉で朝鮮総連中央会館の問題をだすぞ」と言った。それが彼らの関心事です。だから今回の交渉は拉致が議題とは言えないんです。
つまり、追い込まれ度合いというのは2008年ほどはいっていない。しかし、積極的だという微妙な段階です。
2008年の時なぜ起きたのか。色々な要素がありますが、一番大きな要素はやはり外貨不足でした。当時効いていたのは金融制裁です。アメリカが厳しい金融制裁をかけた。
マカオの銀行は、先ほど言いました第2経済委員会と金正日の統治資金を扱う第3経済委員会の資金の出入り口だったのです。おそこだけまだコンピュータ化されてなくて、帳簿は手書きだった。アメリカが追跡せきなかった。それを止めてしまったから、世界中にあるお金を動かせなくて本当に困ったんです。
その時あまり報道されていませんが、その直前、第一次安倍政権の時に朝鮮総連に対する厳しい取り締まりをやりました。日本からの総連マネーはほとんど行かなくなりました。つまり、収入がなくなって預金がおろせなくなったんです。それで拉致について話をしましょうと言ってきたんです。
今、似たような状況になってきていますが、そして日本に接近してきていますが、まだ拉致だけで話し合いをしましょうというところまでは、私の目から見るとまだ困っていないかもしれない。
ただ、金正恩がぜいたく好きで、苦しいのにぜいたくな暮らしをしていますから、そういう暮らしができなくなる我慢度は低いでしょう。そういう情勢分析も成り立ちますが、簡単に次のスウェーデンでの交渉で調査やり直しまでいくのかどうか、困り方についていうと、まだ分からない。
しかし、制裁が効いてきて話し合いが始まった。先ほどA案、B案を言いました。A案は自衛隊による救出ですが、もう一つ、圧力をかけて交渉に引きずり出して、2002年の時のように、平和的にタラップから被害者が降りてくることを表向きは目指しているわけです。
それをしながら、混乱事態にも備えなければいけないということを今やっていますが、3月28日に安倍総理に会った時、「論者によっては制裁を強めれば話し合いはできないと言うが、しかし今日本は一番強い制裁をかけていますが話し合いが始まりました。入口につきました。つまり、制裁をかけて話し合いをする戦略が正しかった」と総理がおっしゃいました。
ただその後、日比谷公会堂でも私は言いましたが、「2002年よりも今の状況の方が困難だ。その理由は2002年に一度北朝鮮政権が出した回答がある。金正日という指導者が、『8人は死んだ』という説明をした。今我々がやろうとしているのはその説明を覆すことだ。北朝鮮のトップが一度決めたことを覆すのは大変なことだ。だからただの圧力を加えるだけではだめで、相当強い圧力を加えた上での話し合いしかない」と言ってきたわけです。
まさにその入り口には立ちましたが、北朝鮮は双方の関心があることで話し合いましょうというところにしか降りてきていないのが今の状況ですので、様子を見なければいけない。
しかし、方向としては、圧力をかけて話し合いをさせる。そうしながら日米韓の連携を強めながら、また日米同盟を強めて抑止力を高めるということではないかと思っています。
まだ議論をすべきテーマは色々ありますが、今日はこれまでとします(拍手)。
【質疑応答】
問 署名活動をしていると、「自衛隊を出せ」とよく言われます。何とお答えしたらいいでしょうか。
潮 総理に言ってくださいということですが。しかし、先ほども申しあげたとおり、自衛隊法の改正ですむことですので、それができれば出せといって、本当にすぐ出すかどうかは別次元の話ですが、少なくとも白昼堂々訓練することができます。それは軍事的に北に対する明確なメッセージになるだろうと思います。
西岡 「自衛隊を出せ」という世論が盛り上がっているということは北朝鮮に対する強い圧力ですので、「自衛隊を出せ」という声をどんどん出してください、そして首相官邸や与党の先生たちに国民はそう思ってますよと伝えてください。
決めるのは政府と国会ですから、まず国会で、自分の選挙区の先生にも言ってください、と。そして決定までいかなくても、怒っているということが強いメッセージになります。すべての手段を使って助けるべきではないでしょうか。自衛隊を使える法律改正のために世論を盛り上げましょうと言ってください。
惠谷 金正日は、日本の自衛隊は非常に強い軍隊だと常日頃から思っていました。そのことは息子にも伝わっていると私は思います。自衛隊を恐れていたというのが大事です。
問 朝鮮総連の本部売却問題は今後どうなるでしょうか。
西岡 報道以上のことは知りませんが、朝鮮総連が高裁に出した抗告が却下されましたので、ほぼ1か月の間にマルナカホールディングスが20数億円を払い込めば所有権が移転するということです。
一方、明日と明後日、十条の朝鮮会館で朝鮮総連の全体会議が開かれます。そこで新たな幹部の人事が行われますが、今の所許宗萬(ホジョンマン)責任副議長留任と聞いています。許宗萬は少なくとも全体会議までは引っ越しをしないですんでいる状況ですが、日本は法治国家で三権分立ですから、司法の判断に行政は何も言えません。
彼らはお金を借りて返さなかった。そして差し押さえにあっているだけで、これは政治でも何でもなく、朝鮮総連が踏み倒した600億円を返せばいいわけです。裁判所が認めたのが600億円で、私はもっと多いと思います。
そして日本中にある財産は担保に入っています。担保に入っていなかったのが中央会館だけだったから差し押さえられたのです。そこにいたいのなら簡単です。600億円返せばいいのです。
以上