「日朝合意「再調査」?こんな問題が起きないか緊急国民集会」全記録
◆北朝鮮は山賊、まさに外交交渉が成り立たない国
荒木和博(特定失踪者問題調査会代表、拓殖大学教授)
私たちは今週金曜日に緊急理事会を開き、今後のことについて議論をしていく予定です。総理、官房長官、大臣への要請ということも含めて検討しています。
今回の合意についてですが、5月29日の発表の日に私たちが記者会見をして発表したことが基本です。こういう事態には私たちはほとんど何の意味もないと思っています。今、平沼先生や西岡さんが言われたように、北朝鮮というのは端的に言えば山賊であって、まともに約束を守る国ではない。まさに外交交渉が成り立たない国です。
94年の核の合意以来、アメリカも含めて世界中の国が北朝鮮にだまされ続けてきた20年間を忘れてはいけない。軍事的な圧力をかけられる国でさえそうしてくるわけですから、我が国が簡単にことを進めることはできないと考えておいた方がいい。
ともかく外交交渉ではないということは、つまり山賊相手に交渉をするということですから、宋日昊も背広を着ている山賊だと思って、その山賊相手にどういうことを言えば山賊が言うことを聞くかということしかないんだろうと思います。
元々我々の認識では、再調査というのは、あくまで北朝鮮の面子を立ててやるという日本側の温情であって、調べたら出てきましたということにしてやるということ以外の意味はない。いわんや1年間という期間は全く必要がなく、今日突然話が出てきても全く不思議ではないと思っております。
もう一つは、西岡さんの話でも少しありましたが、何人か帰ってくればすむという問題ではない。それは進展であってしなければならないことですが、一気に全部帰ってくるのは難しいということで何人かが帰ってくるということはあったとしても、それで終わりになってしまってはいけないということです。
12年前のことを覚えている人があまりいなくなった。救う会全国協議会の中でやった人間で残っているのは西岡さんと私ぐらいです。あの時の怒涛のような状況というのは今から思い出しても想像がつかないようなことですが、何人かが帰ってきただけでそういう状況は起こり得る。それによって、すべてを取り返すという一番大事な本質がすっ飛んでしまう可能性があります。
これは、ここにおられる方々はそんなつもりはないのでそんなことはないと思われるかもしれませんが、いったん始まってしまうと大変なことになります。その中で方向性を維持するというのはものすごく大変なことだろうと思います。その点は覚悟をしておく必要があるだろうと思います。
拉致問題でハッピーエンドは絶対にありえません。これも何度も言っていますが、拉致問題の完全解決というのは、例えば横田めぐみさんであれば昭和52年11月15日に時計の針を戻して、寄居中学からバトミントンの練習の帰りに無事に自宅に戻ること、それが完全解決ですが、それ以外の完全解決はありえない。
今帰ってきている蓮池さんや地村さんたちであっても24年間、日本に戻ってくるまでの間に奪われたものは取り返すことはできない。だからそこにどこまで近づけるかという努力というのは、おそらく限りなくこれから先も続くものだということを覚悟しなければいけません。
それから5人が帰ってきて二月経ってから新潟で5人が一緒になった時、私も当時救う会の事務局長でしたが、あの当時家族会の事務局長をやっていた蓮池透さんと話をしていて、透さんが弟の薫さんに、「お前なんで北朝鮮にいた時のことをちゃんとしゃべらないんだ」と言った。薫さんは、「兄貴もし、俺が全部しゃべって兄貴が耐えていられるんだったらしゃべってやるよ」という言い方をしたと言っていました。彼はおそらくそういう地獄をずっと見てしまったんだろうと思います。
これから帰ってくる方も、おそらくそういうものを見ているはずであって、そして様々なことが当然向こうで起きているはずですから、それは我々がどんなことをやったってこの問題のハッピーエンドはありえない。それでも今解決しなければならないんだということになるのであろうと思います。
◆強い国家意思、そして国民の覚悟が必要
そのためには我々一人ひとりが、これは議員であろうが、官僚であろうが、国民であろうが、運動体の人間であろうがそこは覚悟を決めなければいけない。先ほど古屋大臣が、「北朝鮮が嘘をついたら許さない」という言い方をしていましたが、北朝鮮に対して、彼らが本当に許してくれていないということを理解させるためには、平壌に爆弾を落とすこと以外に方法はありません。これは冗談じゃないです。それくらいのことをしなかったら、日本は本当に許さないという覚悟を持っているとは思わないだろうと思います。
その覚悟を我々が持てるかどうか。現実にどうするかということより前に、そういうことが場合によっては起こらざるをえないという覚悟を持っていなければ相手側がまともに交渉に応じるはずはないということだろうと思います。
帰ってくる人の名前が何人かマスコミに出たりしていますが、北朝鮮は何年も前から考えていることで、何人か帰ってくるということはありえると思いますが、そこでおしまいにすることは絶対にできないことです。
しかも、向こうに行っている方の中には、自分の意思で行って帰れなくなった人、これは有本さんみたいにさまされてというケースではなくて、ある程度北朝鮮にシンパシーを感じた。しかし行ってみて、こんなはずじゃなかったけど帰れなくなったとか、様々な理由で向こうに行っている方がいると思います。これを全部取り返してくるというのはもう一つ別の苦労が当然必要になります。
しかし、我々は国家の意思として、向こう側に日本の法律に沿わない形で行って暮らしている人というのは、ともかく本人が嫌だと言おうが何と言おうがすべて日本に取り返す。そして日本で物を考えさせて、それでも北朝鮮に戻りたいというのであればそういう風に考える。それだけの強い国家意思がなければいけないと思います。
これは日本国内でも相当の反発が起きることが考えられますが、それを押し切らなければいけない。これは相当大変なことです。オールジャパンでやらなければいけないのですが、2002年の小泉訪朝の時に、あれが何でうまくいったか。ある意味で、私たちは拉致問題の棚上げをして国交正常化は許さないということをずっと言い続けてきた。国民の意思がそこにあった。
一方で当時の政府は、できれば棚上げをしてでも国交正常化をやりたいというのがあった。実は2つあったから成功した。我々だけなら相手が話に乗ってくるはずがない。そして政府だけがやったら間違いなく拉致問題は棚上げをされていた。政府が交渉して、北朝鮮側にこれで棚上げにすると事実上言ったに近い状態になっていた。だから向こう側はそれに応じてきた。しかし、それに対して国民の意思が許さなかった。
ある意味で、別に共同謀議をしたわけではありませんが、その2つの流れがあったから北朝鮮側は交渉に応じ、なおかつ返してきたんだろうと思います。相手は山賊ですから、どんな嘘でもつくかわりに、自分たちに都合が悪かったとなれば、全部今まで嘘でしたと平気で言う国だと思います。
だから意外と出口は近いところにあるのかもしれません。いずれにしても問題はこちらの意思と力だろうと思います、そのことの覚悟を是非共有していただきたいと思います(拍手)。
櫻井よしこ
これからパネルディスカッションに入りたいと思います。その前に会場に何人かの国会議員がお出でですのでご紹介させていただきます。
拉致問題に当初からひじょうに深く関わってきた松原仁さんです(拍手)。参議院議員の井上義行さんです(拍手)。財政金融委員長の塚田一郎さんです(拍手)。宜しくお願いいたします。皆さん方にはフロアーから随時ご発言をいただくかもしれません。
さて、平沼さん、それから西岡さん、荒木さん。今、それぞれのお立場で考える問題点を伺いましたが、日本国政府、安倍内閣としては、古屋大臣がおっしゃったように、「今回は絶対にだまされない」、「北朝鮮の嘘は許さない」、「ちょっとばかり譲歩して、日本からたくさん物やお金を取るのは許さない」という決意表明をしてくださったわけです。
同時に、私たちから見ると、この合意文書を読んでも非常にあいまいな所がある。このようなあいまいな所を故意に残したんだろうと思います。また残さざるをえなかったんだろうと思います。
安倍総理は20年来拉致問題に関わり、自分の政治生命に関わることだとお考えになっているお立場から考えて、また踏み切るからには絶対に成功しなければならないという政治的決意から考えて、なぜこの時期にこのような合意に踏み込んだのかということを改めて考えたいと思います。北朝鮮の都合もありましょうが、こちら側の意図ということも含めてご意見をお願いします。どなたからでも結構です。