北の「特別調査委員会」をどう見るか?東京連続集会80 全記録
◆特別調査委員会は工作機関を調査できない
このことは、「産経新聞」に、党3号庁舎の中の統一戦線部事業部で働いていた張真晟(チャン・ジンソン)さんがこの説明概要を読んで、こんなでたらめがあるかと言って原稿を寄稿しました。
実はこの説明書が出た日に、私が全部朝鮮語に翻訳して彼に送ったんです。彼の意見を聞こうと思ったら、全く私と同じ意見で、党が国家の上にあるのに国家機関しか入っていないということは、全く意味をなさない、と。特に、国家安全保衛部は党の課長以上の幹部及び工作機関には権限がない、と。そして、組織指導部のもとにある機関が党の課長以上の幹部及び工作機関を管轄している、と統一戦線部にいた人が言っているんです。
拉致はどこがやったのか。統一戦線部はよど号グループを指導しているわけです。よど号グループに拉致された有本さんたちは統一戦線部に管理されている可能性が高い。そこにいた人が、国家安全保衛部には権限がなかったと言っているわけです。
西側でも政治警察というのは、スパイを捕まえるところなんです。アメリカで言うとFBIです。日本でもスパイを捕まえる警察庁の公安部というのがあり、大変力があります。それに対して工作機関というのは、アメリカで言えばCIAです。海外に対して工作を仕掛けたり、海外の情報を取ってきたりする。
アメリカでもFBIはCIAの作戦文書を読むことはできません。国内に入ってきたスパイを捕まえる部署は、海外で工作する部署に対して権限はないんです。当たり前のことなんです。西側でもそうですが、北朝鮮ではもっとそうなんです。
なお全体を見ることができるのは組織指導部だけです。まさに張真晟さんも、組織指導部が工作機関と党の課長以上を管轄していると言っています。このことについてどうですか。
惠谷 全くその通りで、今回の特別調査委員会には色々な組織が関わっていますが、この中で最高権限を持つのは国家安全保衛部です。しかし、3号庁舎の中に4つの工作機関がある。党調査部の工作員が原敕晁さんを拉致したのは証言から間違いないと思います。しかし、特別調査委員会が党調査部に対して調査権限があるかというと、それはないとしか言いようがありません。
その意味では、拉致がどこまで明らかにされるかについては期待できないと言えると思います。