救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

北朝鮮の再調査結果、予想される問題点?東京連続集会81 全記録



◆北朝鮮で帰るかどうか「協議」しても「帰る」とは言えない

西岡 そしてもう一つ。北朝鮮側の5で、重大な、心配な文言が入っています。「調査の過程において日本人の生存者が発見される場合には、その状況を日本側に伝え、帰国させる方向で去就の問題に関して協議し、措置を講じることとした」とあります。これを見て中山先生は大変危機感を持たれたということです。

中山 西岡さんとはこの問題をすぐに相談した件ですが、具体的な話で言いますと、曽我ひとみさんの夫、ジェンキンスさんと二人のお嬢さんが北朝鮮に残されていました。2004年7月にジャカルタで、これも非常にやっかいなことがありまして、拉致問題というのは一つひとつに歴史やら物語があって、どこをどうまとめていいのか分かりません。
 話は長くなりますが、地村さんご夫妻、蓮池さんご夫妻のお子さん4人は「親のところに行きなさい」と北朝鮮側が出してくることがはっきりしていました。小泉総理の2回目の2004年5月の訪朝の時に、迎えに行くわけですが、その時に、金正日総書記から、「ジェンキンスさんは日本に行きたくないと言っている」ということが伝えられて、小泉総理がご自身で説得されるんです。
 私はそこにいたわけではありませんので報告を聞いただけのことですが、1時間くらいかけて、本当に一生懸命、小泉総理は自分と一緒に日本に行きましょうとジェンキンスさんを説得したけれども、ジェンキンスさんとお嬢さん二人は、「どうして今日ひとみを連れてこなかったんだ。どうしてお母さんを連れてこなかったのか」、その繰り返しだったそうです。
 この話は後でインドネシアのジャカルタで、ジェンキンスさんたちがホテルに入ったときにも聞いた話ですが、「そう言うように言われていた。小泉総理が日本に行こうと言うと思うけれど、なぜひとみを連れてこなかったのか、母親を連れてこなかったのかと言って、小泉総理を責めるように。これが北朝鮮側の指示だった」と。
 日本の被害者には必ず指導員がついていますから、この指導員の言うことを聞かなければとんでもない事態になるということを被害者はよく分かっていますので、言われた通りのことを言う。それしか言わないというのが、北朝鮮での被害者の現状です。
 その時、ジェンキンスさんが、「私は日本に行きたい。日本に行く決心をしました」と英語で伝えてきた時、「それはもう是非行きましょう」と。アメリカの脱走兵ということでしたから、場合によってはタラップから日本の土を踏んだ段階でアメリカ側に拘束される可能性があって、脱走兵の場合は死刑になる可能性もあるという、心の中の葛藤がある中で、それでも娘のことを考えれば、日本に行く決断をしたわけです。
 私は見ていて、北朝鮮を出た時から心の底では日本に行きたいと思っていたに違いないと読んではいたんですが、いずれにしても、日本に行くという心をはっきり決めて表明した時に、日本の総理が平壌で「自分と一緒に行こう」と。
 「どうしてあの時に、総理がそう言うのであれば『一緒に行きます』と答えなかったんですか」と質問をしたら、非常に不思議そうな顔をしてながめられました。「なんでそんな質問をするの」という、そんな感じでした。「当たり前でしょう。そんなことを質問されたってという、そんな感じでした。
 どういう答えかというと、「あの時もし自分が小泉総理に、『おっしゃることを信じて日本に行きます』と答えていたら、その後小泉総理は空港に行く。自分たちは、いったん自宅に戻るか別のところに行って、そこから合流する。その間に自分たちは殺されていますよ。なぜあなたはそんなことが分からないんですか」と、そんな感じで答えてくれました。
 北朝鮮で被害者として監禁状態に置かれている人々は、「日本に行きたいとか、日本がいいとか、日本に戻りたいね、日本はよかったね」と、そういう単語を使っただけでもとんでもない目にあわされる。
 「日本に行きたいと言ったら殺される」、そういう風に思っているわけですから、北朝鮮の中で、ここ(合意文書)にあるように、「被害者が見つかりましたよ」という報告があったら、日本政府の者が行って、そこで「あなた日本に行きましょうよ。行きますかどうですか」というような「去就の問題に関して協議」とありますが、そんなことを日本側がその場で相談して、被害者が「日本に行きたいです」と答えられるはずがないんです。
 そのくらいのことは交渉に入っている人は知っていてください。そんな思いでこの合意文書を見ました。
 当時、拉致対の中では、どういうことがなされていたかと言いますと、被害者が見つかった場合には、日本政府の関係者がすぐ北朝鮮に入って人定確認をする。本当に日本人なのかどうかの確認をし、日本人であることの確認ができた段階で直ちに帰国させる。そういう合意文書にしなければいけないということをずっと主張してきていました。
 ところが今回は、北朝鮮の平壌で「去就」について協議することになっていますから、これでは誰も「帰りたい。日本に行きたい」とは言えない。誰も帰ってこないという結果になる。北朝鮮側はそれを見越した上でこの合意文書を作っている。
 「帰国する方向で」と書き入れましたというのが外務省からの報告ですが、なぜ直ちに帰国させるという合意にしなかったのかと質問しました。すると、「帰国する方向で」と入れました、と。
 協議しても被害者はそのことを答えられない。そんな当然のことをなぜ分かっていてくれなかったのかと、非常に悲しい、残念な思いがしました。その点について、多分、安倍総理はこのことをご存じです。ですから、これではだめだということはお分かりいただいていると思っていますが、確認しているわけではありません。


  
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