北朝鮮の再調査結果、予想される問題点?東京連続集会81 全記録
◆被害者を犯人の所に戻すなんてありえない
西岡 これまでの議論を踏まえて、今後の展開、そして注意すべきことで問題提起したいんですが、私が予想するのは9月のある時期に第1回目の通告があるでしょう。今の状況だと、もしかしたら拉致問題についてはゼロ回答かもしれない。
「真剣に調査を続けています」というような回答、あるいは新たな死亡診断書は出てきて、生きている人は出てこないかもしれない。もしかしたら、秘密をあまり知らない人、「自分は北朝鮮に住みたいと言っている人がいます」というような人が出てくるかもしれない。
さらには、4つの分科会の内の、残留日本人孤児で、「北朝鮮に助けられて感謝している」という人が出てきたり。それを平壌に行ったテレビが大々的に報道するというようなことが起きる可能性があると思います。
すぐに全員帰ってくれば一番いんですが、準備と言うのは最悪を考えてしておかねばならないので申し上げるんですが、その場合にポイントは1つです。見返りをいつ与えるかです。
彼らは困って日本に接近してきたんです。当面ほしいものは制裁の解除と人道支援、それから遺骨を日本に提供することで得られる外貨です。中期的には国交正常化のお金ですが、朝鮮総連が崩壊直前になって困っているわけです。
それも2006年以降、政府の方針で「厳格な法執行」が入って、本当に困っているのは間違いありません。中央本部の問題は氷山の一角で、彼らの不法行為を取り締まったことによって朝鮮総連は崩壊直前になっている。これは第1次安倍政権からやってきたことです。
12万5千トンの人道支援の約束は残っています。いつカードを切るのか。2つの意見に分かれると思います。
北朝鮮が少なくとも席を立たない、「拉致問題は解決済み」と言わなくなった、「調査を続けている」と言っている、他の問題で破格に人道的になっている、このパイプを切るべきじゃない、彼らが小出しに譲歩したらこちらも小出しに譲歩すべきだということで合意を守らなければならない、とかです。
そういうことをして、全員帰ってくるという保証がないのに、なし崩しに制裁を緩める、人道支援を始めるということをしようという動きが出てくると思います。その時が勝負だと思います。全員ということについては絶対に譲歩できないんだと。
国民の頭の中に、外交交渉で平壌やスウェーデンとか北京で向こう側が同じ人数で座って交渉しているから交渉しているみたいに見えるんですが、犯人が人質をとって立て籠もっており、人質を取り戻すということだけのために今交渉しているんだと、そのために制裁をかけているんだと、国際的な圧力を強めているんだと、これは全員を安全に取り戻すためだけに使うんだという風に国民が思えるのかです。
(2002年の)外交交渉で田中局長が、5人の被害者を一度日本に戻して、また北朝鮮に戻すと約束した。「この約束を守らないとパイプが切れてしまいます」と田中局長が言ったと報道されていますが、そういう論理に対して、犯人と被害者の関係で、被害者を犯人の所に戻すなんてありえないじゃないかという考え方との戦いになるのではないか。
政府の中にいて、外交交渉じゃないということをずっと主張されてきた中山先生が今の状況を大変心配しながら見ているということを、私たちは覚えておかなければならいことだと思っています(拍手)。